ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Proxy war Bパート

薮田と氷上の対話が終わり、彼がセージ達と合流した時、そのセージは神妙な表情をしていた。

医務室からの連絡で、白音の傷の治りが悪いというのだ。

 

(……そう言えば、シーグヴァイラさんも匙の攻撃で再起不能にさせられていたな。

 まさかあの時から既にJOKERになっていたのか……?

 いや、あいつはヴリトラの能力の増強も行っていたからそこ由来か……?)

 

ふと、シーグヴァイラ・アガレスの身に起きた事を思い出すセージ。

彼女もまた、匙の一撃で再起不能扱いにされたのだ。

その時とは事情が異なってはいるものの、結果としてはそう変わらない。

まともに妖刀で斬られた自分が、そこまでの後遺症を負って無い事を訝しがりながらも

白音の現状を鑑みるに、彼女に無理はさせられないとして

次の試合への白音――カムカム・ミケの参加を見送る形をとったのだ。

結果として、人妖チームはただでさえ少ないメンバー数から

三名も欠員を出す形となってしまったのだ。

 

つまり出られるのは氷上・ゼノヴィア・光実(みつざね)・黒歌・セージの五名。

チェス駒の総種類よりも少ない数である。

 

「……思ったより、苦しい展開だな。

 数の不利はこうした試合では大きく出てしまうだろう」

 

「前回のシトリー戦と違って、今度は従来通りのルールでやるそうです。

 一試合毎のインターバルがどれくらいかはわかりませんが、一人当たりの負荷は

 今まで以上にのしかかって来るでしょうね」

 

光実はレーティングゲームに明るくないため、本来の工程を経て行われたシトリー戦を

特別ルールと評しているが、実際にはダイス・フィギュアと呼ばれるルールを採用している

この試合全体こそが特別ルールに基づくものではある。

それを態々訂正する必要も無いので、セージも黙ってはいたが。

 

「……そんな時に言い出しにくいんだけどさ。私、白音の見舞いに行ってもいいかにゃん?

 勿論、試合には間に合わせるようにするから」

 

「無論です。妖刀で斬られたわけではないにせよ、容態が芳しくないってのは心配だ。

 それに、ついこの間白音さんは狙われたんだ。また狙われる可能性だってゼロとは言い難い。

 寧ろ、俺も見舞いに行くべきだ」

 

「それには及ばないにゃん。セージの分は私がきちんと見舞っておくからさ。

 それに……試合にJOKERが紛れ込んでたんでしょ?

 

 ……あのビナー・レスザンって何考えてるかわかんない悪魔も言ってたけど

 この試合、何仕掛けられてるか全くわからないから

 セージは自分の身も心配した方がいいわよ」

 

セージ自らも白音の見舞いに行くべきとの意見を述べたが、黒歌からそれは反対された。

ここ最近のきな臭い動きに、もしセージに万が一が起きてしまえばどうしようもなくなるのだ。

最悪、黒歌自身に何かが起きたとしても。

セージが無事ならば辛うじてではあるが、試合には出られるのだ。

 

「何よりも。

 ここまで来たら、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』なんてふざけたもんで他人を悪魔にした上で

 自分達のいいように服従を強いるような連中に、徹底的にノーを突き付けてやんのよ!

 一試合は不戦勝だけど、実質全勝出来てる時点で言ってのけるだけの説得力は十分にあるわよ!

 だから、次も勝つわ! あんなもんに頼らなくても、人間は、妖怪は十分に強いんだって事を

 証明して見せるのよ!

 

 ……そのためにも、セージが不戦敗なんて洒落にならない事態だけは何としても避けたいのよ。

 じゃ、私は白音の見舞いに行ってくるわ」

 

そう。

次の試合は事実上の全勝対全勝。つまり、決勝戦と言ってもいい試合だ。

その大一番に、セージ達は著しく戦力を欠いた状態で挑まなければならなくなった。

特に黒歌は悪魔が秩序として掲げる悪魔の駒と

それに基づく他種族との関係の構築を全肯定している、現悪魔政府のやり方を快く思っていない。

そのため、動機こそ異なれどチームのスポンサーであるユーグリットが目指す

「グレモリーの撃破」は、彼女にとっても悲願なのであった。

 

光実も、本人の意思はともかくとして、彼に協力している戦極凌馬(せんごくりょうま)の思想は

正しく黒歌の思想にほぼ合致している。彼もまた、己の研究成果と言う前提こそつくが

悪魔に頼らない人間の救済を目的としている節があるのだ。

 

ゼノヴィアは教義上、悪魔を討つ事に何ら異議はない。

悪魔を討つ事が目的ではなく、人を護るために悪魔を討つ、と師匠とも言える下宿先の家主である

元教会戦士の伊草慧介(いくさけいすけ)からきつく言い聞かせられたことではあるが。

 

氷上も先刻薮田と話した通り、悪魔の理不尽から人々を護るという警察としての矜持がある。

ここで敗北を喫することは、悪魔による人間界への干渉の抑止が果たせなくなる。

そう言う意味では、負けられない戦いだ。

 

セージもなんだかんだで、リアス・グレモリーとの因縁は払拭されていない。

既に一度ついている決着とは言え、言うなれば今度の戦いは防衛戦だ。

以前レーティングゲームで己の意見を通したのならば、今度もそうすればいい。

それだけの話だ。そしてそれは、リアス自身が掲げた方針でもあるのだ。

 

大なり小なり、各々悪魔と戦う理由はあるのだ。

 

「どうもー、バオクゥです。恐縮ですが試合前の意気込みをインタビューに来ましたー」

 

白音の見舞いに向かう形で部屋を出た黒歌と入れ替わる形で

間延びした声でセージ達の控室を訪ねてきたのはフリージャーナリストにして

自称盗聴バスターの弟子バオクゥ。

インタビューと称し、意気込みを聞きに来たのだ。

 

先程の口上に違わぬことを、各々端的に語っていく。

既にカムカム・ミケやビナー・レスザン。

そして影人間と化した匙元士郎の妹・弟の保護に向かった安玖信吾(あんくしんご)

彼らの不参加がアナウンスされていることもあり、数的不利を強いられている人妖チーム。

 

それに対し、昨今の謎の赤龍帝人気に支えられているグレモリーチーム。

 

下馬評の優位性は、圧倒的にグレモリーチームにあった。今までも似たようなものであったが。

 

そして、それぞれ事実上の全勝同士の戦いという事もあり

否応なしに注目が集まっていた。

 

セージらの従軍記者に近い立ち位置とも言えるバオクゥだが

こうしてインタビューを行い、彼らの様子を余すところなく記録しようとするその姿勢は

紛うことなくジャーナリストの姿と言えよう。

 

「インタビューって言えばリーは……

 ま、こっちよりもうまそうなネタがあったな」

 

「サイラオーグさんですよね……私としても気がかりですけど

 それ以上に、この戦いの顛末のほうが気になるんですよ。

 

 これは私の主観ですけどね。もう、次の戦いはただのレーティングゲームじゃない。

 そして、その決着は悪魔社会の行く末をも如何様にも変えることが出来る。

 ……そう、思えてならないんですよ」

 

バオクゥが言う通り、図らずも今度のセージとリアスの戦いは

人間と悪魔の代理戦争として成立しつつあった。

 

人間との戦いを経て、人間が培った技術力に憧憬を抱き

悪魔の大公の家系として人間との接し方を見つめ直そうとしている

シーグヴァイラ・アガレス。

 

かつて人間(当時は転生悪魔であったが)の容赦のなさを目の当たりにし

そしてそれが変わることなく敵対者に揮われることを体感し

行く末を注視し、決して路傍の石等と侮ることは出来ないことを再確認した

レイヴェル・フェニックス。

 

人間との交流こそ短かったものの、自らの特性から

悪魔と言うよりは人間に近しい者としてある種の親近感を覚えた

サイラオーグ・バアル。

 

そして悪魔の優位性に拘るあまり、人間によって足元をすくわれ

悪魔でありながら人間の生み出した呪いに手を染めて取り返しのつかないことになった

ソーナ・シトリー……匙元士郎。

 

このように、今までの試合も少なからず人間と悪魔の代理戦争としての側面を持ち

戦いに臨んだ悪魔に対し、大なり小なりの影響は与えてきた。

今度はセージとリアスの間に紡がれた因縁が、それをさらに強固なものとしている。

 

かたや人ならざる領域に足を踏み入れつつも、人間社会に対して何ら影響力を持たず、発揮せず

その人間社会で生きることを強く望む、一介の小市民。

体験してきたことこそ非日常にどっぷり浸かっているが、感性は一般市民のそれに近い。

 

かたや魔王の妹とは言え、悪魔基準として見れば家督の継承権こそあれども

それを良しとせず、人間社会で思うが儘に生きることを強く望んだ、悪魔のご令嬢。

身分こそ高いが、同程度の身分の悪魔は悪魔社会には掃いて捨てるほどいる。

ちょっと家柄がいいだけの、一般市民と言う喩えも強ち間違いとも言い切れない。

 

たったそれだけの存在でありながらも、世界は彼らの手によって大きく変わろうとしていたのだ。

 

人と魔が真に共存するための禊と言うべき闘いの儀となるか。

或いは人と魔の最終戦争の前哨戦となるか。

試合に参加する選手らの思いとは裏腹に

課せられた運命だけが大きく膨れ上がっていくのだった。

 

 

そしてその運命は、残酷な形で動き出したのだ。

 

 

――白音の見舞いに向かった黒歌が、何者かに襲撃され負傷したという報せが届いたのは

  試合開始を目前に控えたタイミングであった。

 

 

さらなる不利を強いられる形となったセージ達の前に

布袋芙(ほていふ)ナイアによって細工が施されたステージの上で

リアス・グレモリーらとの最後の戦いが、今始まろうとしていた――




セージチーム:ゼノヴィア・氷上(ゲシュペンスト)・光実(龍玄)・セージ(アモン憑き)
リアスチーム:アーシア(使い魔ライリィ)・ギャスパー・木場・朱乃・ナイア(使い魔イリナ)・イッセー・リアス

……え? あれ? やばくね……?
決してリアス達が今一だからセージ側にデバフかけまくったれとか
そう言う意図は一切なく。メタ的なデバフと言うよりは致し方ないデバフ。

安玖:もう金欠で神器使えない&匙姉弟の保護役が早急に必要。つまり警官に白羽の矢。
白音:図らずも匙対シーグヴァイラ戦の再現になってしまったパターン。ネタバラシするとアレンビいやなんでもないです。
黒歌:白音って餌に食いついたって考えるといつぞやのセージの二の轍。メタ的には大事な試合前に覆面()キャラが負傷するのはお約束(何の)。
ユーグリット:寧ろこいつが一番の舐めプ野郎かも。自分が出たら確実に勝てると思ってるからセージにリアス達始末させようとしてる。
人間チームが悪魔のいいように扱われているというとんでもない皮肉。
でもセージ達にこのレーティングゲームで勝たなきゃいけない理由もあるんだからまた厄介。
人間の自由と平和を~なんて掲げてるくせに悪魔のいいように扱われてる(風に見える)んだから面白くないのもさもありなん。

猫姉妹が揃ってリタイア状態だから正真正銘人間チーム……と思いきや
アモンがいたわ。
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