ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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サブタイの癖にあの部屋出てきません。
Bパートをお待ちください。


Will9. 全ての「人」の魂の詩 Aパート

DJサガラに怪しげな鍵を貰った俺は、その後はどっと疲れたのもあってホテルに直帰していた。

もう一つ、祐斗が送って来たメールで気になることがあったので

腰を据えて祐斗と話しておかなければならないと思ったのだ。曰く――

 

 

――明日、オカ研の2、3年がユグドラシルタワーに社会見学に来る。

 

 

どういうことだ。明日ユグドラシルタワーは神仏同盟と北欧神話の会談が行われるんだぞ。

そのタイミングでユグドラシルに社会見学か。よく許可が通ったな。

推測だが、部署が違うという雑な理由で通された可能性が一番高い。

企業の在り方というものを、俺は全く知らないので完全な推測だが。

 

とにかくだ。オカ研の2、3年が来るという事は……「あの」グレモリー軍団が来るという事だ。

そしてあの過保護で有名な兄や父の事を思えば、何らかの干渉もあり得る。

そこで俺は、ぎりぎりまで祐斗に様子を見てもらい、得られるだけの情報を得た上で

それを警護班に伝えることにしたのだ。一応、このことは氷上さんに話してある。

伝える情報を収集するため、俺は部屋でスマホを弄っていた。

 

「……本当、君は部長に対する風当たりが強いよね。言いたいことはわからなくもないけど」

 

「下手すれば国際問題になりかねないんだから神経すり減らすさ。

 自国内だけの問題ならいざ知らず、よその国を巻き込めば

 取り返しがつかないことになるってのをどうして理解しないのかねぇ。

 グレモリーってところは。特にあの兄妹」

 

「……部長のお母上の事は勘弁してあげてくれないかい? 聞けば、お父上や魔王様を止めるのに

 必死になったってそうだから」

 

祐斗がリアス・グレモリーの母、ヴェネラナ・グレモリーの事を庇い立てるが……

俺は正直言って、ここ最近の出来事で、そんなのどうでもよくなっていた。

所詮、人間と悪魔では価値観が違う。まぁ利害の一致から手を組むことはあるだろう。

だが、それだけだ。人は人の領域に、悪魔は悪魔の領域にそれぞれあるべきなんだ。

そうでなくとも、ここ一週間凰蓮(おうれん)軍曹の特訓でへとへとだし

今日は今日でDJサガラに変なものを寄越された。肉体的にも、精神的にもさっさと休みたい。

 

……別に、姉さんに会えなかったショックで不貞腐れてるわけじゃない。

 

「……こっちから世間話振っておいてなんだが、そろそろ本題に移らないか?」

 

先述と矛盾するようだが、俺は祐斗を悪魔とは見做していない。

少なくは無い(と思う)が、多くもない、俺の友人の一人として見ている。

そんな祐斗と話すのはまだいいが、それ以上に疲れていた。

凰蓮軍曹に忠告されたのもあるが、明日の事を考えたらなるべく休みたい。

 

「……そうだね。そっちに行くのは朝の10時頃。移動は電車になるね。

 ユグドラシルタワーで、ユグドラシル・コーポレーションの企業見学をする……

 

 ……ってのは名目上で、もう既に皆――イッセー君も含めてだろうけど――

 神仏同盟と、北欧神話の会談の事は知っているよ。

 ああ、イッセー君は来ないと思うよ。多分、だけど」

 

そう言えば、兵藤は退学だったな。そりゃあ、学校行事に来るわけがないか。

ただそれよりも、会談の事を知ってるってのか気になった。

いくら怪異に精通しているオカ研っつったって

国家同士の重要な会談の情報が伝わるのがおかしいし

まるで知ってて来たようなタイミングだ。偶然にしては、出来過ぎてる。

俺はメモを取りながら、祐斗の話に耳を傾けていた。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を使わなかったのは、単純に疲れていたからだ。

神器(セイクリッド・ギア)を使うのは疲れる。結構疲れている手前

手動で出来ることは手動でやりたかった。

 

「2、3年だったな。って事はグレモリー先輩、姫島先輩、アーシアさんに祐斗……

 このメンツでいいんだな?」

 

「そうだね。あと引率として布袋芙(ほていふ)先生が来るかな」

 

……聞かない名前が出てきた。いや、厳密には事前に貰ったメールで

情報だけは受け取っていたが、それ以外の情報が無い。

曰く、オカ研に新しい顧問が来て、それが神器持ちで

かつグレモリー先輩の「戦車(ルーク)」になったという、出来過ぎていて俄かに信じられない話だった。

駒は2個使ったらしいが、それにしたって。

 

「……祐斗。俺は今オカ研離れてるから無責任なことを言うようだけどな……

 

 ……その先生、気をつけろ。話のムシが良すぎる。

 何か良くない事が起こる前触れかもしれない。

 俺に気力があれば、検索かけることもできたんだが……」

 

情けない話だが、ここ連日凰蓮軍曹のシゴキでへとへとになっており

今日にいたるまで碌に神器を使う気力が無かった。

布袋芙ナイアという名前だけは聞いたが、それを調べる余裕が無かったのだ。

因みに、記録再生大図鑑と全然関係ない俺の記憶を探ってみたが、そんな名前に聞き覚えは無い。

 

 

……「ニャルラトホテプ」、って単語が頭を掠めはしたが……

 

 

「いや、セージ君の意見は正しいと思うよ。僕もこのタイミングで顧問の先生が来るってのは

 何かおかしいと思う。ただ、誰が何のためにオカ研に新しい顧問を寄越したかってのは

 まるで分らないんだけどね……一応怪しいのはジオティクス氏とサーゼクス様だけど」

 

ああ、あの過保護で有名な父親と兄上か。もし彼らの差し金だとしたら

意外とグレモリー当主に魔王陛下も甘いようで。

まぁ、あれらの考えそうなことと言ったら、状況打開のために戦力を投入したって事だろうか。

何に対する戦力かは知らんが……頼むからアインストや禍の団(カオス・ブリゲート)相手の戦力であってほしい。

あんなとは言え、一応明確に禍の団やアインストと敵対しているグループだ。

同盟は風評被害が及びかねないので避けたいが、共同戦線程度は応じるべきだと思う。

 

「……話戻すぞ。その新しい顧問の先生が引率役で来るって事だな。

 そう言えば、オカ研とはあまり関係ないがゼノヴィアさんはどうだ? 彼女も2年だが」

 

「彼女は……ごめん、参加か不参加かまでは覚えてないや。

 それと生徒会は確か駒王町の警護担当になってるはずだから

 今回は沢芽(ざわめ)市には来ないはずだよ」

 

それはここに来る前に警察で聞いた、と伝えながら相槌を打った。

正直、シトリー会長は後方支援の方がいい活躍をしてくれそうだと思う。

言っちゃなんだが、今のオカ研と同等か、それ以下だろう。

兵数はともかく、場数が足りなさすぎる。フューラーの軍勢と戦ったって話も聞いてない。

本当に俺が知らないだけかもしれないが。

 

「……今俺が考え得るリスクとしては、以下が挙げられる。

 一つ、オカ研が抜けて手薄になった駒王町でテロが多発する。

 二つ、魔王にかなり近しいリアス・グレモリーがやって来ることで、会談に悪影響が出る。

 そして三つ、これはお前たちがこっちに来るのはあまり関係ないんだが

 『今沢芽市のクロスゲートは動いている』状態なんだ。何が起こるか想像がつかない」

 

「なんだって! それは本当かい!?

 クロスゲートが動いているとなると

 猶更僕たちがそっちに行くのはマズいかもしれないね……」

 

正直、俺だってかなりクロスゲートは警戒している。

ここでオーフィスなんぞに出張られたら俺達の全滅どころか

沢芽市が地図から消える、なんて事態も想像できる。

これは最悪の事態としても、そういう可能性だってゼロじゃないんだ。

 

「……や、ここは前向きに考えよう。

 『もしクロスゲートから上位種のアインストが出てきても

  お前たちが来てくれるお陰で戦力は追加できる』と。

 それ位には、お前達を戦力として計上できると踏んでいるが……買い被りか?」

 

「……そう言ってもらえるのなら、微力を尽くすまでだよ」

 

……俺はかなりえげつないことを考えている。

人間を守るために、怪異の存在を鉄砲玉に仕立て上げようとしているのだ。

いや、そりゃあ協力はするし守ったりは可能な限りするつもりだ……利害関係があるなら。

だから、祐斗を見殺しにする気はない……リアス・グレモリーや姫島朱乃は割と怪しいが。

 

だが、それが無いのならば優先順位は人間の、何も関わっていない市民の安全だ。

とは言え、今となってはそんな人間が珍しくなりつつあるんだが。

フューラー演説のお陰で、各地では住民による悪魔、天使、堕天使と言った三大勢力に対する

排斥運動が活発化している。

 

そして、これは最近知ったことなのだがそれを扇動している組織があるという。

その正体まではまだわからないが、反社会的組織がそれに一枚かんでいるという噂さえある。

全く現金な話だ。それが曲津組(まがつぐみ)だとしたら悪魔の甘い汁を吸っていたくせに

状況が変わればすぐに掌を返す。

 

まぁ、ある意味ビジネスライクでドライな関係だが。相互に同意があるなら、それでもいい。

そう言う関係は、俺も理解はできる。どこぞの魔王陛下には理解でき無さそうだとは思うが。

 

「……クロスゲートについては、一応こっちの警備担当にも話は通してある。

 だから、そうそう手薄にはならないと思うが……如何せん、相手が相手だ。

 何事もないことを願いたいが、万が一の事態だけは常に想定していてくれ」

 

「わかったよ。因みにセージ君、当日空き時間はあるかい?」

 

「……残念だが無いと思う。俺がどこの警備に回されるかは明日になってみないとわからないし

 あまり俺と話すとグレモリー先輩に睨まれないか?」

 

会って情報交換をしよう、あわよくば口裏を合わせて行動しよう、って事なんだろう。わかる。

だが、それをやるには俺の側に自由が無いし、向こうだって自由に動けるとは思ってない。

俺の側から、ユグドラシルの企業見学に関する情報を集められればと思ったが……無理だ。

凰蓮軍曹のシゴキで動けなかったのもあるが

それ以前にそもそも俺はユグドラシルに顔が利くわけではない。

 

ここに来たのだって、あくまでもいち警備員としてだ。身分こそ学生だが、やることは警備員だ。

そんな身分で、企業のイベントの情報を引き出すというのはなかなか厳しい。

いくら企業見学で訪れる駒王学園の生徒だって言っても、だ。

 

「部長はなんとかするとしても……困ったね。いざって時に連携が取れないのは痛くないかい?」

 

「それはごもっともだが……悪ぃ祐斗。

 そっちで何とかグレモリー先輩をうまく誘導してくれないか?

 俺は立場上、あんまり持ち場離れられないと思うから。

 逆に言えば、そっちからこっちに入ってくるようなことがあれば問答無用に押し返せるがな」

 

そう。

警備員ならば、怪しい奴は通さないという不文律が確定する。仕事の一環だ。

だから、下手にリアス・グレモリーに干渉される前に追い返すという事は出来るのだ。

というか、恐らくだがそのために俺が呼ばれたのだろう。

……まさかリアス・グレモリーが会談の会場にマジでやって来るとは思わなかったが。

それでも、サーゼクスやセラフォルー辺りよりはマシだろうか。

 

「じゃ、明日の警備頑張ってね」

 

「そっちも気をつけてな。最近、怪しい黒い足軽が駒王町を中心に出没してるらしいからな」

 

黒影(くろかげ)の事だ。

ユグドラシル製のものが、何故台湾マフィアである天道連(ティエンタオレン)に運用されているのか。

そして、天道連が何でこっちを襲ってくるのか。

俺は警察関係者って言い訳もある程度は効くが……

しかも聞けば、祐斗らオカ研も黒影に狙われたそうじゃないか。

そうなると、まるで奴らの狙いが読めない。

だがこれも、出所がユグドラシルである以上今騒ぎ立てるとマズいしなぁ……

 

因みに、オカ研の面々には黒影がユグドラシル製という事は知られていない。

俺は先述の通り知っているが、今これは提示すべき情報じゃない気がした。

 

……絶対、一悶着起こりそうな気がしたから。

警備って神経すり減らす仕事をするのに、さらに爆弾増やすとかバカのやることだ。

 

挨拶を終えた俺は、急激に襲ってきた眠気に耐え切れず

シャワーを浴びるのも忘れてベッドに突っ伏してしまった……

 

 

――そこで、俺は蝶になった夢を見た……かもしれない。




※来週は作者取材(という名のレッパラ・八景島巡り)のため休載です。

祐斗からセージの下に情報が流れます。
騎士なのにやってることがコウモリだよ!

そしてセージからは完全にモンペ扱いされてるジオティクスと
ダメなシスコン扱いされてるサーゼクス。
そう言えば敵役を輩出しなかった方(サーゼクス、セラフォルー)ともに
ドン引きするレベルのシスコンですが……
これ、何か薄ら寒いものを感じます。うまく説明できませんが。

……そして、ドン引きするレベルのシスコンと言えば某ルキフグスがいましたが
彼についても拙作ではちょっとしたことが起こる……かもしれません。
セージもシスコンっちゃシスコンですし。

>リアスの眷属事情
結局ナイアさんは「戦車」2個で眷属になりました。
現状、これで残るリアスの駒は「騎士」が1個のみです。

……一応、以前駒を奪われた際のペナルティはもう期限切れとなってます。
さて。「戦車」をここで全部使ったという事は、あの人は……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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