ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

150 / 178
お待たせしました。
気が付けば、涼しくなってしまってまして。

三千界の方で思わぬ報酬を得て、そっちに注力していたのもありますが
私生活も母の熱中症だの自身の不摂生兼持病悪化などありまして。


Nothing comes of it

第二試合。

ギャスパー・ヴラディ 対 氷上涼(ひかみりょう)

 

人間チームの半数がコスト1と言う状況であり

最早ダイス・フィギュアルールは形骸化している。

一応、ファンブルした時にセージやゼノヴィアが出られないという制約こそあるものの

そんなものはほとんど意味が無い状態だ。

 

通常、コスト1となると悪魔の駒(イーヴィル・ピース)による編成では

さしたる力を持たない転生悪魔が宛がわれることになる。

しかし、こと人間チームとなるとそれは通用しない。

何故ならば――

 

 

「スプリットミサイル、発射!」

 

「うわあっ!」

 

氷上の駆るゲシュペンストに搭載された多弾頭ミサイル、スプリットミサイル。

バックパックのコンテナを射出した後に、コンテナ内部に搭載された無数の小型ミサイルが

敵を追尾し攻撃すると言うものだ。

その性質上、想定敵はゲシュペンストと同等の機動兵器やドローン

果てはアインストやインベス等、数にモノを言わせる怪異が想定されているが

氷上はそれを躊躇うことなくギャスパーに向けて発射したのだ。

 

それと言うのも、ギャスパーも無数の蝙蝠へと変身してゲシュペンストを攪乱しようとしたのだが

それに対抗する形で、スプリットミサイルを使われたのだ。

要は、メタを張られたわけである。

 

では何故、彼がそんな戦術を取ったかと言うと。

その答えは単純である。ゲシュペンストの携行火器に、閃光弾が搭載されていたのだ。

それによって、停止世界の邪眼は容易く封じられたのだ。

正確には、一回はゲシュペンストないしそれを操る氷上の動きを止める事自体は成功した。

しかし、動きを止めた後ゲシュペンストを破壊するだけの火力をギャスパーは持たなかったのだ。

これが岩戸山で見せたように、ライリィの雷撃を纏った形で蝙蝠突撃をするのならば

曲がりなりにも精密機器の塊であるゲシュペンストを機能不全にさせることはできただろう。

しかし、ギャスパー自身では雷を起こすことはできない。それはライリィや朱乃の領域だ。

そのため、ゲシュペンストの動きを止めたはいいが、とどめが刺せなかったのだ。

生身が露出している特殊強化スーツと違い、全身機械のゲシュペンストであることが

結果的に明暗を分けた形になったのだ。

 

「君に恨みは無いですが、これは人間の戦い。

 特効のある武器は、遠慮なく使わせてもらいます!」

 

「ひ…………っ!?」

 

そう言って氷上が取り出したのは、『本来とは大きく仕様が異なる形で実装された杭打機』。

かつて薮田(やぶた)博士が製造したナイトファウルを、よりゲシュペンスト向けに改修した代物。

傍から見たそれは大型のリボルバー式拳銃にも見えるが

その銃口には本来の拳銃にはあるまじきもの――

 

――鉄杭が、取り付けられていたのだ。

 

スプリットミサイルで各個撃破され、止む無く再集合したギャスパー目掛けて

ゲシュペンストは、最大速度で突撃する。

その勢いに気圧され怯むギャスパーだが、ゲシュペンストの加速は止まらない。

そして、ギャスパーに杭の先端が宛がわれ――

 

 

――拳銃の引鉄が、引かれた。

 

 

響き渡る、氷上の勝利を告げるアナウンス。

ギャスパーが弱かったのではない。ゲシュペンストが、人間の技術力が

悪魔――半吸血鬼をも打ち破るほどに進化していた証左であったのだ。

 

「……やはり、そう言う戦い方をするのね。

 だから尚の事、あなた達をここで倒さなければならないわ!」

 

リアスが激昂したのは、ギャスパーを傷つけられたことだけに起因しない。

無論、それが大きな要因であることは否定のしようがないが、今氷上が用いた武装は

どれも、半吸血鬼たるギャスパーにとっては弱点足り得る攻撃だったのだ。

閃光弾による強い光。銀や木製でこそないものの、杭による一撃。

日光には耐性のあるギャスパーだったが

それでもあからさまに弱点を狙われれば一たまりもない。

 

「そう言うも何も、これが人間の戦い方だ。いや、より正しくは日本人の戦い方だな。

 鬼退治にあたってあらかじめ鬼を強い酒で酔い潰しもしたし

 それをさらに遡れば神様だって使った手段だ」

 

それに対し、セージは事も無げに涼しげな応対を返す。

大江山の鬼退治、古事記にも記された大蛇退治と

知恵や身近な道具を用いて強大な力に挑む説話は枚挙に暇がない。

セージはそこまで外国の説話に長けていないので、日本人の戦い方と語ったが

話自体は日本に限った話でもない。魔除けに牛乳を添えるのも、ある意味ではこれの系譜だ。

 

翻って、リアスや彼女と懇意にしている悪魔や眷属は、戦いとなると

「己の強大な力を以て、それでぶつかり合う」事を正義としている節がある。

当然それはそれで一つの正解だが、その土俵には何時までたっても人間は立てない。

また、そのぶつかり合いによって多大な被害が齎される危険性だって無視できない。

一応、対話による解決を兄であるサーゼクスは推し進めているのだが

それも対話すべき旧魔王派は対話に応じようともしない。

これは対話に持ち込む土壌が互いに腐り果てているのも一因ではあるのだが。

 

 

こうして、悪魔と人間の戦いは人間チームが連勝を果たすこととなった。

しかし、まだ決着はついていない。それどころか、試合ルールの上では

未だ人間チームは不利な状況に立たされているのだ。

何せ、次に出られるメンバーは三人のみ、うち一人は倒されたら終わりの「(キング)」相当だ。

対するグレモリーチームは、まだまだ戦力に余裕はある。

何より、一番推しとも言える赤龍帝も、その実力のほとんどが未知数の

新たな「戦車(ルーク)」も控えている。

今までの戦いは、まだ前哨戦に過ぎないのだ。

 

そして運命の三投目が告げた次なる戦いの役者は――

 

 

――――

 

 

「うあああああっ!?」

 

第三試合。

ゼノヴィア・伊草(いくさ) 対 布袋芙(ほていふ)ナイア。

 

ナイアはその実力のほとんどを見せていなかった。

否、正しくは彼女は神器(セイクリッド・ギア)群像の追憶(マス・レガシー)」を使い、力を示しはしたが

この試合において活躍したのは、殆どが彼女の使い魔である紫藤イリナであった。

――本人は、使い魔と言う呼称を頑なに否定しているが。

 

「だから言ったでしょ。私はもう、昔の私じゃないの。

 店長とダーリンのおかげで、私は新しい私になれたの。

 この新しい私こそが、本当の私。

 ミカエルに……天使に尻尾を振っていた私がバカらしく思える位、すがすがしい気分よ」

 

「フフフ……どうだい? 見違えただろう?

 テロリストから足抜けし、信仰の名の下に傀儡を作ろうとしていた天界連中から

 彼女を救ったんだ。見たまえよ、彼女のこの生き生きとした姿を」

 

事も無げにイリナを自慢するナイア。確かに生き生きとした表情を見せてはいるが

その瞳は、何故だか生きている人間のそれとは違う、違和感のようなものが見え隠れしていた。

 

「ふざ……けるな……っ!

 傀儡にしたのが……ミカエル様か……貴様位の違いだろう……がはあっ!?」

 

「言わなかった? ダーリンや店長の事、悪く言ったらたとえゼノヴィアでも容赦しないって。

 ねえ店長、ゼノヴィアの『教育』、私に任せてくれない?

 ダーリンの前に出しても恥ずかしくない、立派なメンバーにしてみせるから」

 

何処か危なげな輝きを見せていた眼から一転、感情の無い眼でゼノヴィアを見下ろし

紅い光沢を放つボンデージを彩るヒールでゼノヴィアの右掌を踏み抉るイリナ。

そこには、かつての同僚に対する情けなどは一切無かった。

 

その在り方は、異教徒に向け刃を翳していた頃のゼノヴィアとほとんど変わらない。

自分達と同じ信徒に非ずば、人に非ず。

殺すか、「教化」するかの二択。イリナは、後者を選ぼうとしているあたり

やはりまだ、ゼノヴィアに対する情が残っている……

 

……訳ではなく、ただ「ダーリン」への供物を確保しようと躍起になっているだけであった。

「ダーリン」からの寵愛を受ける存在としては、若干矛盾しているとも言えるが

供物を求めるのが「ダーリン」の意向であり、彼女はそれを遵守しているに過ぎないのだ。

 

「したいのは山々だけど、この試合ではそこまでの権限は『まだ』無いよ、残念だけどね」

 

「だってさ。でもまあ、時間の問題よね。

 あんな人間風情がダーリンに勝てるわけ無いし。店長でも余裕じゃないかな。

 後でどうすればダーリンが悦んでくれるか教えてあげるから、シャワーでも浴びておいたら?」

 

イリナのその一言に、ゼノヴィアは歯軋りをし、左拳を握り締める。

彼女には、今のイリナが「捻じ曲げられてしまった」風に思えたのだ。

こんなことを言わせるとは、イリナに対する辱めではないか。

それを言わせたのがナイアであろうと、イリナの言う「ダーリン」であろうと大差は無い。

つまり、ゼノヴィアはこう考えていたのだ。

「紫藤イリナと言う『個』は既に無く、あるのは傀儡としての存在のみ」――と。

 

ともあれ、ここで人間チームは一敗を喫する。

ただでさえ少ないメンバーで回している人間チームにとって、ただ一度の敗北でさえも

その後の展開を圧迫しかねないほどに苦しい展開となってしまうのだった。

 

 

――――

 

 

「……す、すまない……相手がイリナだからと、油断したわけでは無いのだが……

 だが、あれは明らかに私の知っているイリナとは戦い方も、力量も違っていた……

 あれが使い魔になる、という事ならばそうなのかもしれないが……」

 

ダメージも癒え切らぬうちに、ゼノヴィアは戦いの中で得た情報を共有せんとする。

「使い魔」と言うものとの戦いは、ゼノヴィア自身が既にアーシアとの戦いで痛感していた。

しかし、今戦う羽目になったイリナもまた、使い魔であった。

口では油断したわけではないと言っているものの、変わり果てた同僚を相手に

心のどこかで迷いが生じてしまったのかもしれない。

勿論、甘さの残るアーシアと違い、ナイアの非情とも言える指揮のもと

イリナが斬りかかって来た、というのも間違いなく存在するが。

 

「まずは傷の治療にあたってください。まだ自分達は戦えます」

 

「ああ。寧ろ、俺と氷上巡査と光実(みつざね)でケリ付けられるだろ」

 

ゼノヴィアの傷の具合を心配する氷上と、今後について気丈に答えて見せるセージだが

これがあまりにもカラ元気であることは、この場にいる全員がわかりきっていた事だった。

数の不利は如何ともしがたい上に、まだ半分も倒していないうちに

此方は四分の一を失ったことになるのだ。

 

何より、幾度となく戦ったセージが一番、相手の恐ろしさを知っている上に

相手方にも未知数の戦力がいるのだ。今の戦いで全ての手札を出したとは思っていない。

この彼我戦力差では確実な勝利は正直に言って、疑わしい。

 

しかし、そんな逆境においても戦わなければならない場面は幾度となくあった。

以前セージがリアス達と疑似レーティングゲームをしたときなど

この時よりも酷い、一対多の戦いを余儀なくされていたのだ。

しかし今回も、実質的にはほぼニ対一の戦いである。不利は変わらない。

 

そして、戦いは次の木場対光実へと進んで行くこととなるのだ……

迷いを抱えた悪魔の騎士と、『別なる可能性』ではそんな彼同様に

迷った挙句に一度は道を踏み外した戦士。

その奇縁故か意気投合した、好青年同士の戦いへと。




殺意が高いのはセージだけじゃないんです。

>鉄杭付拳銃
ゲシュペンストと言えば、のアレ。
流石に原作同様に固定兵装で実装したら右腕言わせるのは確実なので
一応手持ち装備にしました。それでも反動で右手言わせそうなので
パワーアシストやショックアブゾーバーとかも含めて大型化してます。
ATとか作れる技術があれば固定兵装としてのパイルバンカーも実装できそうですが
一応、ブレイクスルー起きてるとはいえ21世紀初頭の地球なので……

>教化
ここで言っている教化、は一般的な意味で別に巨人族絡みは関係ないです。
まどろっこしいですね。

ここだけC.E.もかくやな絶滅戦争に発展しそうな勢い(煽ってるのがすぐそこにいる的な意味含む)。
原作も長い目で見たら(いずれ何だかんだで人類が滅亡しそうなので)絶滅戦争になりそうなんですけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。