――魔王顕現剣!
先程のエンジェルジョーカーの光の剣に対し、デビルジョーカーが闇の剣を放つ。
さっきはこの剣からアルファブラスタが展開された……という事は!
『恐らく闇属性に起因する何かだろうな。俺が前に出れば防げるぞ』
(いや、今
検索能力を失うと、対処が遅れかねない)
『まさかディーン・レヴで取り込むつもりか? それならやめておけ。
冥界って環境のせいか知らんが、もうディーン・レヴの容量は限界に近い。
使うなりなんなりしないと、自爆になるぞ』
アモンの提案は合理的だが、こっちも手札が制限される関係上、今は逆にマズい。
何せ何の脈絡も無くペルソナ、しかもJOKERを出してきた。
おまけにそのJOKERはこうして二度も変異している。
まだ変異を残している可能性だってある。
そんな状況で手札が絞られたら、対応されかねない。
そうなるとフリッケンの心配も尤もだ。
つまり、今俺はアモンの防御能力、ディーン・レヴ以外の方法で
この攻撃を凌がなければならないわけだが……あるんだな、その方法は!
懸念通り、魔王顕現剣から展開された闇の力場――オメガクラスタは
長時間この中にいたら命に係わる危険な領域だった。
アルファブラスタはじわじわと体力を削る力場だが
オメガクラスタは力場内の耐性を持たない者を次々と斃していく危険な力場。
しかも、一人ずつ斃れていくため、迫りくる死の恐怖を味わい続けなければならない
なんとも悪趣味な魔法だ。
さて。そんな力場の中にいるのに何故俺は呑気に検索なんかしているのかと言うと。
懐から取り出した、銀のマニシャ*1を回転させていたのだ。
『成る程な。銀のマニシャとは、用意のいい事だ』
「フェニックスの涙やゲシュペンスト、アーマードライダーがありなら銀のマニシャ位ありだろ。
長くは続かないが、攻撃を凌げるだけで十分だ!」
これはベルベットルームでは無く、大日如来様よりお守り代わりに賜ったものだ。
やはり、人の身で悪魔に挑むには準備が必要になる。
いつぞやのシスターさんだってそうしていたし。
とにかく、これでオメガクラスタの力場にある程度の耐性を得た。
効果があるうちに、デビルジョーカーを打ち消さないと!
「アポロ!」
「…………
オルタ・アポロの投げつけた円盾が、オメガクラスタを維持している魔王顕現剣を粉砕する。
その間に、俺はデビルジョーカー目掛けてギャスパニッシャーを投げつける。
そして、全速力でギャスパニッシャーの軌道上に先回りし、次のカードを引く。
SOLID-PLASMA FIST!!
プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ラ・イ・ズ・アッ・プ
電子音と共にプラズマフィストが起動。ギャスパニッシャーがデビルジョーカーに当たればよし。
当たらなければ、プラズマフィストで軌道修正をかける作戦だ。
勿論、この作戦は布袋芙ナイアが動かないことを前提にしているものであるからして。
「セージ君。よもや僕が棒立ちで君の好きにさせると思ってはいないだろうね?」
「……フッ」
時間差で、布袋芙ナイアを狙撃してくるものがいる。
先程円盾を投げたオルタ・アポロの右手の銃が火を噴いたのだ。
互いにペルソナの真似事みたいなものだが、結果として勝負はイーブンであったのだ。
……それより驚いたのは、アポロを知っているはずの布袋芙ナイアが、オルタ・アポロの攻撃に対して
完全に後手に回っていた事だ。まるで、見たことも無い攻撃を受けたかのように。
「…………僕としたことが迂闊だったよ。やはり、そのアポロは彼のアポロでは無かった。
彼のアポロは、銃など使わないからね――だが」
「――その隙が命取り!!」
案の定、躱されたギャスパニッシャーの投擲を、俺はプラズマフィストの電撃を込めて
ギャスパニッシャーを叩きつけることで軌道修正。
改めて、デビルジョーカー目掛けて叩きつけられるような形に修正を加える。
中身がギャスパーのままだったら、とてもじゃないが出来ない芸当だ。
SOLID-FEELER!!
そして、今度はデビルジョーカーの側を拘束する。
あの見た目だと、また二つに分裂して躱されやしないかと不安になったからだ。
そのため、左右に分かれて回避されないように触手で簀巻きにする。
そのまま、飛来する帯電したギャスパニッシャーに叩きつけたのだ。
(手ごたえは、あった――!!)
電流と、叩きつけられた衝撃で爆発四散するデビルジョーカー。
これには観客席も、リング脇も色めきだつ。
「なるほど。イレギュラーとは言えJOKERを退けるその実力。
やはり、君はこの世界の特異点に相応しい存在のようだね。
だがそれだけに……この世界の異分子は排除されなければならない。
さあ、今度は大衆が求めた道化師では無く、道に迷った愚かな神気取りが相手だ」
布袋芙ナイアがそう告げると、爆発四散したはずのデビルジョーカーの中央部分。
その部分が影となり、ずるりと這い出てくる。有体に言って気色悪い。
影は再び人型を象り、今度は観音像の破片を寄せ集めたような姿になった。
「フフフ……これはかつて道に迷った愚かな男の辿り着いた末路さ。
彼は若くして大企業の重役となり、その力で以て全世界を手中に収めることに一度は成功した。
……だが、それだけだったよ」
……突然、布袋芙ナイアは語り出した。
あの影の詳細は既に検索済みだが、語っている男については心当たりがある。
まあ俺も、話に聞いた程度の知識しかないし、今検索しても詮無き事だが。
「彼にはその先が無かったんだ。世界を制し、全てを手に入れても尚、道に迷っていたのさ。
だから、彼は一つの手段を取った。
……世界諸共、自分を含めたすべての人類のそうした悩みを取り除こうとしたのさ」
「世界……諸共?」
「JOKERの雛型も、道に迷った愚かな神気取りも、そうした意味では同類と言えるね。
結局、人間は導いてくれる誰かに縋らなければまともに生きていけない。
その導いてくれる誰かが迷っただけで、諸共に呆気なく滅びるものさ」
はっきり言って、話に脈絡が無さすぎる。
いきなり語り出した話の内容は、この試合には少なくとも何の関係も無い。
一体、何が言いたいのだろうかと疑問に思うが……
今の布袋芙ナイアの立場と、やろうとしていることを合わせると
俺はこう結論付けざるを得ない。
「……だから、悪魔や三大勢力による支配を正当化しようというのか!?」
「いいや? 言っちゃなんだが、僕もあれらがまともに世界を、人類を導けるとは思って無いよ。
それに僕もイッセー君にそこまでの事は期待していない。
僕は彼にはあくまでもハーレムの主として君臨してほしいだけだからね。
それ以上を求められても、僕の手に余るよ」
布袋芙ナイアはこう言っているが、受け手側はどう思っているんだか。
それに、今に始まった事では無いがこの女の言う事は胡乱に過ぎる。
そもそも、今語ったのが神取の終生、夢を追い続けた末路だとしたら……!
「焚きつけるだけ焚きつけて、後は知らぬ存ぜぬと無責任に部外者気取りか……!」
「部外者? 僕を呼ぶなら傍観者……いや、観察者と言ってほしいものだね。
ま、ちょっとテコ入れはしたりするけどね。
そう言う意味では、イッセー君もだが、君も中々に興味深い対象だよ」
そのテコ入れで、兵藤に要らん知恵や力を吹き込んだか!
やはり、元々地盤の危うかった兵藤が決定的に狂ったのは、天野さん殺害もだが……!
「やはり……兵藤を誑かした責任は、取ってもらうぞ!」
「アハハハハッ! 誑かすだなんて人聞きが悪いなあ?
僕は本気だし、彼だって本気で僕に入れ込んでくれているみたいだし?
人の色恋沙汰に口を挟むなんて野暮な真似は、慎んでもらおうか?」
どの口が言うか。シャドウは兵藤の人生を狂わせたのは俺のせいだと言っていたし
ある意味でそれは正しいのだろう。何せ横槍入れていたのも事実だ。
だが、その決定打となったのは間違いなく……こいつだ!
「あんたがどう思おうが知った事じゃないさ。
そもそも大人なんだからそれ位責任を取れって話だ。
俺が腹立たしいのは、間接的にアーシアさんやリアス・グレモリーを傷つけさせている……
そこも併せて責任を取れって話だ!」
「僕に言われても困るよ。この道を選んだのは他でもない、イッセー君なのだから」
「その責任を取れと言っている!!」
俺の啖呵にグレモリー側が色めきだつが、そっちを気にしている余裕はない。
アーシアさんはともかく、自分で思っている以上に
リアス・グレモリーを気にかけているのが驚きだが。
とにかく、ギャスパニッシャーを手に、ナイアの脳天から叩き下ろさんと振りかざす。
だが、俺の一撃は驚くことに片手で止められてしまった。
確かに相手は二個も「
「君は幾らか見所があるかと思ったけど……やはり若さ故に逸るか。
僕としてはそう言うのも嫌いではないけど、それはイッセー君で間に合っているからね。
若さ故の逸りに釘を刺すのも、大人の役目なんだろう?」
観音像の破片を纏った黒い影が、俺の背後から攻撃してくる。
しまった。布袋芙ナイアに気を取られて、こっちへの注意が散ったか。
今俺が対峙しているのは――「ゴッド神取」。
そうか、JOKERに雛型がいるなら、これはかつての神取に連なるペルソナだという事か。
そうなると、俺が知っているJOKERとは、能力も強さもまるで違う。
布袋芙ナイア――ニャルラトホテプの系譜なのか、深追いして検索しようとすると
過剰な情報が流れ込んでくる。
辛うじて分かったのは、光力による攻撃は効かないことくらいか。
それだけならさっきのエンジェルジョーカーと大差ないはずだから
他に何か、隠し玉があるだろうが。
「君はオカ研の皆よりは社会を知り、大人と接している機会が多かったから
多少は物分かりがいいかと思ったが……僕の買い被りか。
それとも、なまじそう言う立ち位置にいたから思い上がったかな?
だとしたら、そうした思い上がりを糺すのも大人の役目だ」
ゴッド神取をオルタ・アポロで牽制しながらもう一度ナイアを攻撃しようと試みる。
が、オルタ・アポロの力ではゴッド神取に一歩及ばないのか
気づけばオルタ・アポロが追い込まれていた。
その隙を突いて、ゴッド神取が突如として聞いている側の気を狂わせる声を発する。
――ディレンジボイス。
音と言う効果の性質上、防ぐのが極めて難しい。
咄嗟に耳を塞ぐが、それだけでどうにかなるものじゃない。
思わず気をやってしまい、俺の記憶は咄嗟にアモンが飛び出すところまでは続いているが――
――次に気が付いたら、天を仰ぎ見ていた。
『…………ジ! 立て、セージ! このままじゃ負けになるぞ!』
(ぐ……そうは言っても、何が起きたのか……!)
『俺のミスだ。俺が飛び出した途端、奴め光力の魔法を使ってきやがった。
幸い破魔魔法とかじゃなかったから、致命的な一撃は避けられたが……』
EFFECT-HEALING!!
何とかダメージを回復させ、立ち上がる。
成る程、ディレンジボイスで無理矢理アモンを引きずり出したところに光力魔法か。
間の悪いことに銀のマニシャも効果切れだ。
そうなると戦術としては理に適ってる。これに対抗するには――
ディレンジボイスを何とかしないといけない。
音波攻撃を防ぐあてなんか、今の俺には思いつかない。
ならば、どうやって防ぐ?
……まあ、ゴッド神取を抑えるしか思いつくところは無いが。
「フフフ、その程度で折れられては、僕も甲斐が無いというものだからね。
今対峙しているのは確かに存在した過去であり、君達の未来だ。
それを打ち破る位は、見せておくれよ」
やはり、思いつくのはこれ位だ。
そう考え、オルタ・アポロに銃や火炎魔法を撃たせるが
思ったより通りがよくないようだ。まさか、ユーグリットの時みたいに検索結果を改竄されたか?
――つまり、ゴッド神取は攻撃に対し耐性を持っている。
攻撃の耐性を打ち消す方法だが、俺はそれを見た事がある。
それを再現できるかどうかは……わからないが。
当然、シャドウが召喚したアナザータナトスを再現することはできない。
アレが再現できればゴッド神取にも太刀打ちできるかもしれないが、無いものは仕方がない。
こうなったら……手の内を隠しながら戦える相手でも無いしな。
PROMOTION-BISHOP!!
(行くぞ、アモン!)
『力押しか。まあ、悪い気はしねえけどな!』
俺が「
シャドウのそれを見たことのある兵藤だけは、少し違う反応を示していたが。
QUINT-SPREAD SUMMON!!
SWORD!!
STRENGTH!!
CHARGE-UP!!
PLASMA-FIST!!
HEALING!!
ユーグリットから手配してもらった超魔合金Dを媒介に、召喚の術式を発動させる。
オルタ・アポロで足りないのならば、手数を増やすだけだ。
分身だけが、俺の手数を増やす手段じゃない!
「応現せよ、魔神剛の鎧……
俺の中から飛び出したアモンが赤い光となって、象った魔神剛の鎧の頭部へと吸い込まれていく。
その後、ステージのタイルで作られた魔神剛の鎧の眼が光り、黒い四肢に赤い翼をもった
鐵の輝きを放つ、まさに魔神の鎧とも呼べる風体を手に入れた。
「召喚……!? そんなの、私の知る、いえ『
「あ、あれはあの時あいつが使った……!!」
外野がうるさいが、今に始まった事でも無いので無視する。
そう言えば、超魔合金Dを交えた魔神剛の鎧はまだ使ったことがないはずだ。
どれほどのものか、ぶっつけ本番だが試してみるか。
SOLID-GUN!!
「僧侶」最大の欠点は、俺自身の戦闘力が相対的に落ちるところだ。
だが、それでも牽制ぐらいはできる。銃を生成し、威嚇射撃をゴッド神取に敢行する。
やはりと言うか、ほぼ効いてないが。
……だが、今回の一撃。本命は他にこそある。
「
魔神剛の鎧を纏ったアモンから繰り出される、コークスクリューロケットパンチ。
強固な装甲を誇るアインストを容易くぶち抜いた実績のある一撃。
今回はそれに加え。魔神剛の鎧の生成材料に超魔合金Dを利用している。
それもあってか、魔神剛の鎧も自壊せず、逆にゴッド神取に見事なまでの風穴を開けていた。
……だが、元が影の集合体みたいなところもあるゴッド神取は
ぶち抜かれた部位をすぐさま再生にかかろうとしていた。
「させるか!
今度は鎧兜の口元のスリットから、息を吐き出すかのように竜巻を起こす。
この竜巻を受けたゴッド神取の観音像の部分が腐敗を始め、さらに再生を遅らせている。
どうやら、耐性を失わせるほどでは無いものの、守りを崩しにかかっているようだ。
ならばとばかりに、ゴッド神取は再生などの守りを固める姿勢では無く
攻撃に転じたらしく、影で象られた右腕部分を無数の青い仮面を張り付けた触手に変え
攻撃を繰り出してきた。
――
影で作られた無数の矢が飛んできたが、魔神剛の鎧に届くものは何一つなかった。
超魔合金Dの守りが硬すぎるのか、今の一撃で威力が切ないことになったのか。
或いは、両方か。
そして、ゴッド神取を――今や忘れ去られようとしている、理想を追い求めるも
道に迷い、踏み外してしまった挙句に闇に葬られ、影に沈んだ男――。
そう、神取鷹久の亡霊を鎮めるために、アモンが最後の一撃を繰り出す。
「とどめだ!
胸の蝙蝠の翼を模した赤い放熱板から、凄まじい威力の熱線が放たれた。
まともに受ける形になったゴッド神取は消滅し
その余波はナイアにも少なくないダメージを与えたようだ。
今のが魔神剛の鎧の必殺武器……いや、アモンの今出せる全力、か?
だとしたら、悪魔の勇者と嘯かれたのも伊達じゃないな。
「ナイア先生! おいセージてめえ! やり過ぎだろうが!」
……問題が一つあった。威力が大きすぎて、立ち込めた煙が中々晴れない。
これでは、安否確認も出来たものでは無い……うん?
……今なんか、煙の向こうに極彩色の格子に囲まれた目玉みたいなものが見えたような……?
しかも、煙の真ん中と言うか、あれが煙を出していたような……?
その証拠に、辺りはどんどんと煙に包まれていく。
ただならぬ気配を感じ、俺は念のためにアモンを戻すことにした。
――それが悪手だと知るのに、そう時間は要さなかったのだが。
実質ニャルラトホテプ戦。
散々道具使っているので、今更戦闘中の消費アイテム使用であーだこーだ言うのもアレだと思い銀のマニシャ解禁。
持ち込めるアイテム量には限りがありますので、まあ妥当かと。
(昨今のゲームみたく四次元ポケット内蔵している訳でも無いですし、記録再生大図鑑は消費アイテムは記録できませんし)
>魔王顕現剣
聖王光臨剣に対しての捏造技。昔のペルソナはこうした対になる名前の魔法・技が多かったイメージ。
不滅の黒・永遠の白とか。
>ゴッド神取
これも神取本人ではなく、罰みたく神取のペルソナを再現した存在。
なので見てくれは罰のそれ。
能力はディレンジボイス使ってきたり、異聞録の方も再現されてますが。
>魔神剛の鎧
今回から本領発揮。手の内晒しちゃってますが、隠して戦える相手では無いですし
手も抜けない状況だったのでもう使っちゃえ、と。
>極彩色の格子に囲まれた目玉
JOKERやゴッド神取とは何の関係も無い存在なんですが、ニャルとして見ると
実は強ち無関係でも無いのでは? と思い。
……そう、あいつです。が、直接戦闘はしません。顔見せだけ。