ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Will56. 魂解き放つ生霊の剣 Bパート

『二つ教えてあげよう。

 悪魔契約は、セージ君の力が僕を上回っていれば、上書きできる。

 だが、そうしたところで小猫ちゃんは君の下には帰らない。

 なぜなら……彼女に以前あった「戦車(ルーク)」としての情報を再現させてもらっているからね。

 その上で、悪魔契約を施したんだ。

 つまり、今彼女に悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は無いが、扱いは悪魔のそれだ。

 まあ、僕が「戦車」2個だから結果として共有している形になるね』

 

ナイアが言う白音さんの魂に施されたと思しき使い魔契約。

しかも、以前の彼女が持っていた悪魔の駒の情報を再現されてしまった上でのものだ。

そうなると今回は、悪魔化を解くには「存在しないものを抜き出す」という工程が必要になる。

どうすればいいんだ。

 

『悪魔の駒の共有。それは君もよく知っているはずだよ。

 そして、その状態を解除することが極めて困難であることも。

 取り戻したければ、自分にした工程を、彼女相手にしてみたらどうだい?』

 

バカを言うな。あれはアモンの協力があって初めて成功したものだ。

そもそも、俺のケースと今回のケースじゃ話が違う。

前提からして、ナイアは白音さんを解放するつもりがないらしい。

 

ナイアの声が止むと同時に、白音さんは引き続き俺を攻撃してくる。

何とか往なしながら、事態の解決策を考えるべく

無限大百科事典(インフィニティ・アーカイヴス)での検索を交えながら逡巡するが……

 

……そもそも、あの時は人間のままの俺の肉体にアモンを憑依させ

悪魔になった魂の俺とのシンクロを出来るようにした上で

力の上回るアモンの力を使い、リアス・グレモリーの契約を上書きした形だ。

今回のケースには、ほとんど合致しない。

 

肉体と魂、どっちに強く作用しているか。

これさえわかれば……!

 

・使い魔契約では、種族は据え置きである。

・悪魔の駒を用いた場合、種族は悪魔となる。

・悪魔の駒の共有は、今までには俺と兵藤のケースしかない。

 その場合、肉体の無い俺は魂だけが悪魔になった。

 

実体験と、今までに得た知識によるものだ。

これを基に推測するなら……

 

……今の白音さんは、悪魔の駒を共有しているだけだ。

そこに使い魔契約を重ねて、転生悪魔っぽく仕立てているだけだろう。

 

(アモン! 白音さんから悪魔特有のマグネタイトの流れはあるか?)

 

『……微かだがある。早く処置しないと、また悪魔になっちまうかもしれねぇぞ』

 

とすると、肉体も悪魔に変える悪魔の駒は無い。

しかし、悪魔に準ずる存在に変える使い魔契約は生きている。

ならば……魂の方をどうにかすれば、この事態を解決できるかもしれない!

そして、魂に干渉する方法が俺にあるとするなら、それは……

 

……ディーン・レヴ。だがこれは、悪霊を喰らうディス・レヴにしなければ

恐らく俺が想定しているような使い方は出来ないだろうし

そもそも、白音さんは死んでないし、死んだら本末転倒だ。

 

取り込んだものを、元に戻す手段があればいいが……都合よく無いだろう。

だが、魂への干渉の手段とする。それならば……

 

『セージ……お前、まさか!?』

 

(ああ。ディーン・レヴを……ディス・レヴを使う。

 ディス・レヴで白音さんの魂を削って……俺の魂で、補填する)

 

『バカな!? 悪魔の駒を抜き取るよりも難しい状況とは言っても

 そんな事をすれば、共倒れになるぞ!

 それに、人間のお前の魂で猫魈の魂が補完できるものか!』

 

(それでもだ。このまま……白音さんを悪魔の傀儡になんかさせるものか。

 そうさせる位ならば……!

 それにあるだろう。悪魔に……妖怪に人間の魂をくれてやる方法が!)

 

当然、アモンからもフリッケンからも止められた。

だが、今俺にある手札で魂に干渉できそうなものは

ディーン・レヴ位しかない。それも、ディス・レヴに仕立てた上で。

意を決し、俺はディーン・レヴに悪霊を集め――ディス・レヴへの覚醒を促した。

 

そんな中、はっと気づいたようにアモンが声を上げた。

 

『……お前! 悪魔契約にディス・レヴを交えるのか! 無茶苦茶だぞ!』

 

(勿論俺の魂全部じゃないし、ディス・レヴの悪霊を白音さんに流し込むことになるが

 その後で白音さんに溜まった負念を俺が吸収する。

 だが、こうなった白音さんを元に戻す方法はこれ位しか……!)

 

ディス・レヴ。それは、漂う悪霊を吸収することで力へと還元し

事実上無限にも等しい力を得られるとされる機構であるとされる。

言い換えれば、悪霊が無ければ無用の長物なのだが、そんな場面は残念ながら存在しない。

生きとし生けるものすべて、或いは点在する道具にさえ魂は宿る。

そしてそんな魂が負の側面に転じた、それこそが悪霊である……と、俺は考えている。

だからこそ悪霊が、魂が存在しない場面などあり得ないのだ。

故に、ディス・レヴは無限の力を発揮できるのだろう。

 

では、何故ここでディス・レヴになど覚醒させようというのか。

答えは簡単だ。ここは冥界だ。正念よりも、負念の方が多く渦巻いている。

いや、人間界も似たようなものではあるのだが、こと最近の冥界においては

負念の方が多く渦巻いている。それはこっちに来てから肌で感じている。

クロスゲートを潜った残り香のようなものがこびりついているから

そう錯覚しているという訳でも無く。

 

無限とも言える魂の力を使い、白音さんを囚える悪魔の鎖を解放する。

恐らくだが、それが今俺にできる最大限の手段――

 

を繰り出す直前に、フリッケンからダメ出しがかかった。

 

 

『ダメだセージ! ディス・レヴじゃ……ディス・レヴじゃ威力があり過ぎる!

 アキシオン・バスターの例を忘れたのか!

 悪魔契約の鎖を解放しても、大元の魂を悪霊に変えてしまうぞ!』

 

 

――!!!

 

な、なんてことだ……!

ちょっと考えればわかることだ。ディス・レヴは悪霊を取り込んで力に変える機関。

その悪霊の力を使えば、魂が負念に汚染されることなど、容易に想像がつく。

結果を焦るあまり、大事なことを見落としていたか……!!

 

 

「……来ないのなら、こっちから行きます」

 

この迷いは、白音さんが攻撃を繰り出す機会を与えるには十分すぎる猶予があった。

ここ最近の白音さんからは感じられなかった、「戦車(ルーク)」を思わせる重い一撃の乱打。

当然こっちは身構えていないのだから、まともに受けてしまう。

 

鳩尾から込み上げてきたり、口の奥で鉄の味がしたり

視界が歪んだり、目の裏に火花が走ったり。

一撃一撃が、少なくないダメージを与えてくる。

マグネタイトによる補強など、何の意味も無いと言わんばかりだ。

 

「がふっ……!?」

 

勝利宣言と言わんばかりに、彼女はローファーで倒れた俺の鳩尾を思いっきり踏みつけてくる。

痛みで逆に目が覚め、何とか顔を上げて彼女の顔を見遣る。

アルビノの体質を物語るその紅い双眸は、信じられない程に冷たい目線を俺に向けていた。

彼女が兵藤に向けていた目線を考慮に入れても、ここまでのものは覚えがない。

まるで、彼女そのものが何か別の物に変えられてしまったかのような目つきだ。

 

「き……きこえ……るか……

 目は……覚めて……るか……」

 

思わず、俺は声をかけた。

寝惚けている、催眠術にかけられている、そうした「心ここにあらず」な様子が見て取れた。

俺のシャドウでさえ、彼女に自我を失わせるようなことはしなかった。腐ってもあれも俺か。

俺の声に気づいた白音さんの返答は、鳩尾に乗せている足にかかっている力の増加だったが。

 

「……話しかけないでください。そんなに私が気になるんでしたら

 サンドバッグとしてなら、私の目の前に存在することを赦します」

 

この傲岸不遜な物言い……まるで布袋芙ナイアに堕ちた紫藤イリナだ。

……この腐ったような物言いが。本当に彼女の本音か?

俺を挑発するために。態々彼女を選んで。それを言わせているんじゃあるまいな?

 

「か……家族は、相手を……一方的に……

 サンドバッグになんか……したり……するものかよ……。

 黒歌さんに……だって……そんな風に……思ってる……はず……がぐぅぅぅっ!?」

 

「……思い上がらないでください。あなた如きが姉様と同じ扱いな訳が無いでしょう。

 姉様とは、一緒にイッセー先輩の……」

 

言い終える前に、踏みつけられる力を強められたことで俺は確信した。

今の彼女の状態は、やはり紫藤イリナ、もしくは姫島先輩とほぼ同じ状態だろう。

あの二人の行動の原点になっているのは、恐らく兵藤にあるという

前世ないし向こう側の世界の記憶――虚憶(きょおく)だ。

今の白音さんの置かれている状態も、兵藤の虚憶を基にこう仕向けられているのだろう。

 

だが、分かったからなんだ。解除する方法が、無いじゃないか。

もう……やるしかないのか。そう覚悟を決めたその時。

左手に無限大百科事典(インフィニティアーカイヴス)からカードが零れ落ちた。

恐らくさっきの攻撃の衝撃で零れ落ちたのか。ふとそのカードを見て見ると。

 

 

――ベルベットルームで貰ったフリータロット。6番「恋人」だった。

 

 

カードからは、よく知った気の流れを感じる。

目の前の存在が本来持つべき力とよく似たその気の正体は――黒歌さんだ。

必死に手を伸ばし、カードを手に取った瞬間。黒歌さんの声が響き渡った……気がした。

 

『ふっっっっっっざけんじゃないわよ白音!!

 いくら私でも、ヤる相手は選ぶっつーの!!

 だから私は自分の意思でセージを選んだんだし

 あんただってその場の勢いとは言えセージなら大丈夫だからって頼んだんでしょ!?』

 

 

…………俺は思わず全身の痛みも忘れて呆気に取られていた。

以前見た猫の動画でそんなようなリアクションを取る(取らせていた?)猫を見た気がするが。

そんな俺の置かれている状況を他所に、黒歌さんの声はまだ続く。

 

『それを訳の分からない力に支配されたからって他の男、それも普段なら選ばないような男に

 媚売ってケツごと尻尾立てるような子に育てた覚えは、お姉ちゃんありません!!!』

 

無茶苦茶な事を言っているが、このノリは間違いなく黒歌さんだ。

彼女は確か負傷して動けなかったはずだが……フリータロットの力か?

 

フリータロット……絆の力……魂の……

 

「……間違っているのは姉様です。そもそも姉様は……姉様は……

 

 …………あ、あれ? 姉様は……禍の団(カオス・ブリゲート)で……私は……私は……???」

 

なんだ? 白音さんの様子が変わった?

そうか! ナイアに植え付けられた兵藤の虚憶との齟齬か!

どうやら、向こうじゃ黒歌さんとはちょっと拗れたらしいな。

今なら、呼び掛ければ正気を取り戻すかもしれない!

せめて、植え付けられた虚憶に囚われたままって状態だけでもなんとかしないと!

 

EFFECT-HEALING!!

 

傷を回復させ、俺は改めて白音さんに呼び掛ける。

彼女に植え付けられた情報。事実だった世界はあったとしても、それは今この世界じゃない!

 

「白音さん! 目を覚ませ、こっち側で黒歌さんがテロリストだった事実はない!

 だから、今白音さんにある記憶はこっち側の記憶じゃない!

 黒歌さんも、俺も、君の帰りを待ってる! 目を覚ませ、白音さん!」

 

「……ううっ、せ、セージ……せん……」

 

彼女の紅い瞳に、光が戻る。

だが、それと同時に自分が何をしたのかも理解してしまったようだ。

このタイミングでか!? まずい、錯乱したりしないだろうな!?

 

「……!?!?!?!?

 わ、わた、私……と、とんでもない……事を……!!」

 

「落ち着け! 俺は大丈夫だ!」

 

取り乱す白音さんの両肩を掴み、宥めようとするが

錯乱状態に陥ってしまったらしく、植え付けられた悪魔の力と

生来の気の力が混ざり合って暴走を始めてしまった。

ただでさえ容量が少ない彼女がこんなことになったら、自壊しかねないぞ!

 

こうなったら、やはり…………

 

『セージ! ディス・レヴは使うなって言っただろうが!』

 

(俺に考えがある!

 負念を力に変えるのなら、その負念に対しフィルターを作る!

 負念を濾過して、魂の力だけで彼女の魂に干渉する!

 その勢いで、彼女の魂に巣食う悪魔の力を吹き飛ばす!)

 

ぶっつけ本番だが、今俺にある手札で使える手段。それは……

 

(黒歌さんとの絆がフリータロットに紡がれているのなら

 白音さんとの絆だってあるはずだ! いや、あってくれ!

 彼女を助けるためにも……答えてくれ! 心の海の中の……全ての魂よ!!)

 

無限大百科事典から飛び出したフリータロットの10番「運命」を標として

白音さんと俺の魂を繋ぎ合わせる。そして…………

 

 

まつろわぬ霊達……いや、心の海を揺蕩う全ての魂よ!

今ここに器を作る! そして、鎖に囚われた魂を解放するために、その力をここに!!

 

 

――テトラクテュス・グラマトン

 

 

……!? 今、何処かから声が……

いや、これは……ディス・レヴ……違う、心の海に響く言葉……

 

 

――我等は汝。汝は我等。

  我等は汝の心の海で繋がりし者。

  今こそ唱えよ、器を象るその言葉を。

 

 

「テトラクテュス・グラマトン……!」

 

 

言霊を発したその瞬間、俺の脳裏に剣のイメージが浮かび上がる。

祐斗がよく扱うような細身の剣では無く、かと言ってデュランダルほど大きな剣でも無く。

これが……俺の象った器、か?

 

剣を手に取るようなイメージを思い描く。

その次の瞬間、朧気だった剣に凄まじい勢いで光が、力が流れ込んできた。

今まで手に入れた武器の、どれよりも凄まじい力だ!

近い感覚を挙げるとするならば……アキシオン・バスター。

やはりこれは、俺が思い描いたディス・レヴ。いや……

 

 

――魂の、剣。

 

 

ARCHIVE MEMORISE!!

 

手に取った瞬間、無限大百科事典にも記録された。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)による記録とは異なるようだが、今はそれを確かめるよりも

何よりも早くやらなければならない事がある。

 

この剣で、白音さんの魂を……解放しないと!!

 

ディス・レヴはまつろわぬ霊、悪霊、負念を喰らいエネルギーとする「死の力」。

だが、今俺の手元にある剣は未来を掴む力、生きる力、正念からなる力。

俺の想定とは多少異なったが、うまく行った!

死が……生に転じた!




おめでとう!
ディーン・レヴは ディス・レヴに しんかした!

……おや?
ディス・レヴの ようすが……
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