――我等は汝。汝は我等。
我等は汝の心の海で繋がりし者。
今こそ唱えよ、器を象るその言葉を。
「テトラクテュス・グラマトン……!」
言霊を発したその瞬間、ディス・レヴの魂の力を媒介に俺の脳裏に剣のイメージが浮かび上がる。
祐斗がよく扱うような細身の剣では無く、かと言ってデュランダルほど大きな剣でも無く。
これが……俺の象った器、か?
剣を手に取るようなイメージを思い描く。
その次の瞬間、朧気だった剣に凄まじい勢いで光が、力が流れ込んできた。
今まで手に入れた武器の、どれよりも凄まじい力だ!
近い感覚を挙げるとするならば……アキシオン・バスター。
やはりこれは、俺が思い描いたディス・レヴ。いや、これは最早……
――魂の、剣。
ARCHIVE MEMORISE!!
手に取った瞬間、
何よりも早くやらなければならない事がある。
この剣で、白音さんの魂を……解放しないと!!
ディス・レヴはまつろわぬ霊、悪霊、負念を喰らいエネルギーとする「死の力」。
だが、今俺の手元にある剣は未来を掴む力、生きる力、正念からなる力。
俺の想定とは多少異なったが、うまく行った!
死が……生に転じた!
この生の力ならば、必要以上に彼女の魂を傷つけずに済むはずだ!
『お前……ディス・レヴの負念にフィルターをかけたのか?』
(オイルエレメントみたいなもんだ。そうでもしなきゃ、白音さんが参っちまうんだろ。
この魂の力で形成した刃なら、白音さんの魂を縛る鎖だって切れるはずだ)
うずくまっている白音さんを見据え、「運命」のフリータロットが指し示す位置に向けて
俺はディス・レヴから生まれた魂の剣を振りかざす。
死の力から生まれた、生の力。
そう。もはやこれは死せる力の剣ではない。
生きる明日を、生をつかみ取るための剣。
魂から死へ。そして死から生へと歩みを進めたのだ。
エレメント――
この魂の剣に刻まれた銘となった。
「剣よ! 魂を縛る因果を……断ち切れぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
「――――!!」
銘を受けた魂の剣――サイブレードの刃からは生の力らしく、暖かな眩い光が放たれている。
その光は、周囲を覆う霧を吹き飛ばしながら俺と白音さんとの間の道筋を確かなものにする。
そして、振りかざした剣の切っ先は白音さんを捉え、容易く切り裂いた。
手応えはあった。彼女は赤黒く染まりあがってこそいないが、あった。
『お、おい!? 助けるんじゃなかったのか!?』
『いや。俺は大体わかっ……セージ! 最後まで気を抜くな!』
(ああ! フリッケン、一仕事頼む!)
俺はサイブレードの刃を消失させ納刀し、振り向きざまに白音さんの手を握る。
そして、繋ぎ合わせた俺と白音さんの魂の情報を基に……
…………施されていた悪魔契約情報を、改変した。
それでもサイブレードの刃を受けた衝撃は大きかったのか
膝から崩れ落ちてしまう白音さん。
辛うじて抱きかかえながら、地面に降ろす。
「……成功だ。白音さんの魂の鎖を解き放ち、俺の魂で悪魔契約を交わして
契約を強引に消し飛ばした事に伴って、消滅しかけた白音さんの魂を繋ぎ留めた。
あの水底のサーカスで得た情報も、ヒントになった。
悪魔契約をしたって事実は変えられないから、それを無かったことには出来ない以上
アモンの言う通り、契約を上書きするしかなかったからな。
俺一人では、白音さんを救えなかった……ありがとう」
『つまり、諸々の知識や事前準備が必要な悪魔契約の呪文やらなんやらを
全部お前の
この場で強引に契約を成立させたってわけか。
で、そうするためにはあの嬢ちゃんにまだ何らかの形で残っていた
邪魔だった悪魔としての情報をまず断ち切ったと。ややこしいな』
『プログラミング……いや、リプログラミングって奴だ。
完全なリプログラミングは出来なかったけどな。
その結果が、セージと白猫の悪魔契約だ。前に口約束で契約していたのと違って
今度は正式な契約だ。セージ、そこは覚えておけ』
正式な契約。それはつまり、白音さんの立ち位置はアモンやバオクゥ
それから名目上はユーグリットと同じになるってわけか。
前者二つの例が現状大丈夫なら、心配は無いとは思うが……
『正式な契約か。だったらマグネタイトは共有になるな。
俺はお前の身体を間借りしてる状態だから忘れてるかもしれないが
悪魔契約は何らかの形で悪魔の側にマグネタイトを上納しないといけないんだぞ?』
妙にニヤついた声色でアモンが話を振って来る……言わんとすることは大体わかったが。
マグネタイトの上納って、別にそう言う方法で無くてもいいだろう。
それにそれを言ったら、俺だって悪魔契約で受け取る側になっていた時期だってあるんだし。
その時だってそう言うやり方はしてないし、バオクゥだってやってない。
当然だが、ユーグリットにだってそう言う上納方法は向こうから断られるだろう。
とにかく、これで白音さんは助け出せた。後は……
そう思い、俺はナイアがいるであろう方角を改めて向き直す、が。
「……参った。僕の負けだ。
僕ももう君に太刀打ちできる手札が無いよ」
「……は?」
そのナイアの言葉と共に、残っていた霧も完全に晴れる。
突然の降伏宣言に面食らうが、勝ちは勝ち……か。
正直、まだ何か隠し玉の一つや二つ持っているのではないかとは思うのだが……
退いてくれるのなら、正直ありがたい。
JOKERが3連戦、続いてゴッド神取に白音さん。
実質5人も相手にしたようなものなので、こっちも消耗が半端ない。
それにサイブレードを揮った後遺症か、身体が少し重い。
警戒する俺を他所に、宣言が本当だと示すように
ナイアはあっさりとステージを降りてしまった。
助かりはしたが、ここまであっさり退かれると逆に不安になる。
――あーっと! グレモリーチームの「
まさかの投了宣言だ!
これで勝者は人間チーム! 首の皮一枚繋がった形だぁ!!
実況席のアナウンスに、どよめきだつ観客。
あてが外れて残念だったな。と内心毒づきながら、俺は白音さんを抱えてステージを後にした。
……しかし、状況に安堵した俺は、その時グレモリーチーム側にいた姫島先輩の
背筋が凍るような怖ろしい視線に気づくことは出来なかった。
そしてそれは、この直後に思い知ることになるのだが……
――――
「白音! 大丈夫なの、白音!
セージ! 一体あの霧の中で何があったのよ!
なんであの霧の中から白音が出て来るのよ!?」
「それについては追々説明しますんで、一先ずは……」
控室に戻るなり、黒歌さんは血相を変えて飛び込んできた。
まず俺は黒歌さんを宥めながら、白音さんをベッドに横たえた後に
布袋芙ナイアとの戦いの中で起きた事を改めて説明する。
まあ半分以上白音さんとの遣り取りだから、起きてもらわないと説明できない部分もあるが。
「あの霧の中でそんな事が起きていたのか……
ともあれ、無事に片付いたようで何よりだ」
「今回は向こうが負けを宣言しましたからね。
僕達の時のようには行かないでしょう」
「ご丁寧に霧に覆われている間の事はモニターに映していた、って触れ込みだけど
あれはデタラメよ。見る人が見たらわかるにゃん。
セージ、あの中では手も足も出ずにやられていることになってたわよ。
……当たり前じゃない! 白音を操って嗾けていたんだから!」
やはり、霧に覆われている間の事は正確に外には伝わっていなかったようだ。
皆が口々に大なり小なりの憤りの声を上げていた。
しかし、そんなカバーストーリーだったとすると、殊更霧が晴れた後に
ナイアが敗北宣言を出したってのは不自然に映るだろうな。
「……やっぱり、『不正を働いて勝った』って話が吹きあがってるみたいですね。
こちらに言わせば、不正を働いたのは向こうですが……立証できませんからね」
試合のハイライト映像とそれに対する反応を受けて、氷上巡査からも不平の声があがる。
確かに、相手の選手を使い魔にして取り入れる……
ルールブックに記載は無かったが、普通に反則だろう。
そうなると、黒歌さんを襲撃したのも、もしかして……
「…………う、うう」
などと話していると、白音さんが目を覚ましたようだ。
後遺症などは無いように仕立てたつもりだが、ぶっつけ本番の初仕事だ。
不具合が起きていないとも限らない。
声をかけようとした矢先に、黒歌さんがとんでもない反応速度で食いついてきた。
「白音! 身体はどこもおかしくない? 大丈夫!?」
「……おはようございます?」
当の本人は寝惚けている様子なのか、少しとぼけた反応を返している。
しかし、今見る限りでは寝起きが悪そうな様子は無さそうだ。
「おはようじゃないわよ! あんた、大変だったんだから!」
「……体の調子はすこぶるいいんですけど…………
…………思いだしました。私……その……」
「貸し借りゼロ。俺は君を誘拐した。君はその腹いせに反撃した。
その件についてはそれで終わり」
『セージ。それはそれでいいかもしれないが、他に一番大事な事があるだろうが』
わかってる。
本人の同意を得ずに悪魔契約したことだ。
だが、それについても手は打ってある。
記録再生大図鑑からマグネタイトで生成された契約用紙を出力し
白音さんの前に指し示す。
「見ればわかると思うが、悪魔契約の羊皮紙だ。
ここに俺と白音さんの名前が記された、正式な形のものだ。
ちょっとどうにもならない理由があったから止む無くこうした。
後はこれを……アモン、火」
『俺はライターじゃねぇっつうの』
不承不承ながらに、俺の指示でアモンが表に出てくる。
そして、右手に翳した火を契約用紙に付けようとした
――矢先、右手を白音さんに掴まれた。
「……待ってください。私、セージ先輩との契約、受け入れます」
「……ほう?」
『……自分が何を言ってるのか、わかってるのか?』
アモンも燃やすつもりではあったようだが、白音さんの態度に火を消している。
可能性の一つとして彼女がこう言う事も考えなかったわけでは無いが
いざ実際に言われると、ちょっとどころでなく驚きが隠せない。
「はい。元々、仮とは言え契約してたじゃないですか。
それが本契約になっただけです。私としては、断る理由がありません」
俺ならブチ切れた(実際、そうだったし)ことではあるのだが
こうもはっきり言いきられるとな……
アモンの言っていた通り、悪魔(彼女は妖怪だが)と人間では考え方が違うのか
やはり俺が、そう言う事に関して狭量が過ぎたのか。だとしたら……
何かを察したのか、アモンは出る幕は無いとばかりにあっさりと引っ込んでしまい
必然的に俺が表に引っ張り出されてしまう。
その上で、黒歌さんも納得したように俺達の顔を覗き込んできた。
「あー……そう言う事ね。完全に理解したわ。
セージ。これ白音を取り戻す最適解ではあるけれど、ちゃんと責任持ってくれるのよね?
動物遺棄は普通に犯罪よ? セージに限ってそんな事する訳が無いと信じてるけど」
「当たり前ですよ…………あっ」
寿命を考えたら、俺より確実に長生きするだろう白音さん。
という事は、生涯の伴侶……それって即ちやはり……
改めて考えたら、俺はかなりとんでもない事を口走っていた事を思い知らされた。
とは言え、「家族としての伴侶」として接する分には今までと変わらないが。
「恋人」というよりは自分の中ではしっくりくる。
少なくとも、自分の魂を分け与えた存在が他人な訳が無いだろう。
「……コンゴトモ、ヨロシク」
そう呟く彼女は心なしか、頬を赤く染めはにかんでいる……ような気がした。
生霊剣サイブレード……どこかで聞いたな……
と言う訳でセージのディーン・レヴはこう言う形に落ち着きました。
名前は触れている通りの流れ。(オイル)エレメント→精霊→(聖霊)生霊
まるでどっかの武神装攻みたいな流れだ。
ライブレード→レイブレードと来てここではサイブレード。
サイバスターが混じっていることは見ての通りです。
性能は白楼剣ですけど。あれは短刀ですが、こっちはシンプルな両刃の剣。
斬りつけた相手の魂を縛り付ける因果や未練といったものを斬ることに特化してます。
そのため通常の武器としてはアキシオン・バスターと見比べた場合明確に弱体化。
その代わり悪霊系や転生悪魔(はぐれ含む)に対して使った場合
無力化&自己強化を同時に行えるこれまたどっかの絶対殺すファフナーに。
……ただし、その吸収した悪霊の浄化装置までは「まだ」積んでないので……
とりあえず、もうモツ抜かなくても、神話勢に頼らなくとも悪魔の駒は破壊できます。
これが露見したら悪魔の駒推進派に確実に狙われる厄案件がまた。
>白音との契約
ナイアが施したのをセージが利用して上書き改変した形。
悪魔の駒が抜けてフリーになっていたもんだからそこも突かれた形でした。
やったことは魂のリプログラミング。なんかいきなりマキシマムゲーマー生えてきた。
契約については記録再生大図鑑をCOMPに見立ててやってます。
ただし白音をCOMP(記録再生大図鑑)に仕舞えるわけではないです。召喚による呼び出しは可能になりましたが。
ちなみにここで触れたリプログラミングですが、サイブレードが無いと(相手の魂に干渉できないため)出来ないです。
セージが「自分の魂を分け与えた」と言っていますが、これは
「サイブレードで悪魔化しつつあった魂を消し飛ば」して
「欠けた魂を補うためにセージの魂を使い、元の形になるようにリプログラミング」したので
白音の存在が人間寄りになっては無いです。