ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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お待たせしました、いよいよあの部屋とあの人が登場です。

……「まだ」殴らないでくださいね?



ある時、私は蝶になった夢を見た。
私は蝶になりきっていたらしく、それが自分の夢だと自覚できなかったが、
ふと目が覚めてみれば、まぎれもなく私は私であって蝶ではない。
蝶になった夢を私が見ていたのか。
私になった夢を蝶が見ているのか。
きっと私と蝶との間には区別があっても絶対的な違いと呼べるものではなく
そこに因果の関係は成立しないのだろう。

~荘子~


Will9. 全ての「人」の魂の詩 Bパート

気が付くと、俺は輝く黄色の床に、蝶の意匠が象られた部屋――部屋?

壁のある所には、星空……いや、宇宙?

宇宙だとしたらおかしい。息が出来ている。

一体、ここは何処なんだ……? 近いのは、いつぞや訪れた白金龍(プラチナム・ドラゴン)の世界だが……

 

 

――ようこそ、意識と無意識の狭間の世界へ。

 

 

声がした方を振り向くと、そこには黄色い蝶が漂っていた。

蝶は光り輝くと、蝶を模したオペラマスクをした男の姿になった。

こいつは……?

 

「私の名はフィレモン。この普遍的無意識に住まう存在だ。

 今、君がその力を使う必要はない。答えられることならば、私が全て答えよう」

 

……うん? この人(?)は記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)の事を知っているのか?

というか、なんで俺の事を知ってるんだ?

この不思議な空間と言い、わからないことが多すぎる。

 

……いや、フィレモン……フィレモン……どこかで聞いたな……

 

「……すみません。何から聞いたらいいものか……」

 

「ふむ。君の疑問も尤もだ。

 だが、私は君にこの普遍的無意識の世界のありようについて話すため

 君をこの地に招いたわけではない。

 

 君はこれから、過去と対峙することとなるだろう。

 地獄門が開き、かつて噂が現実となった都市、人を蝕む理由なき悪意に覆われし都市。

 そして、見えざる力で無理に仕立て上げられた英雄が顕現する都市。

 これらの地は悪意の跋扈する異界と化した。

 

 君はその意思と絆の力をもって、地獄門より出でし悪意に立ち向かい

 己の存在と未来を掴み取らなければならない。

 今までの戦いは、その前哨戦に過ぎないのだ」

 

地獄門……クロスゲートか。

噂が現実になった都市は……珠閒瑠(すまる)市か。あとは……?

 

……ダメだ、特定するには情報が無さすぎる。

それより、今までの戦いが前哨戦って……

いや、確かに禍の団(カオス・ブリゲート)とは幾度となく戦っているが

言われてみれば、オーフィスともフューラーとも直接対決はしていない。

禍の団って組織だって、そもそも壊滅していない。

 

……これが本当に俺が勝てる相手かどうかは、さておいて。

 

「……ふむ。私はかつて君に、『ある力』を授けたが……

 どうやら、それは違う形となって顕現したみたいだ。

 だが、どんな形であれ力は力。心の海より出でし力は、これからも君の助けとなるだろう。

 

 神のように、慈愛に満ちた自分。悪魔のように、残酷な自分。

 人は様々な仮面をつけて生きるもの。今の君の姿も、無数の仮面の一つに過ぎない。

 それは、努々覚えておいてくれたまえ」

 

抽象的過ぎて、よくわからない。

というか、この世界に来てからというもの……頭がよく回らない。

夢なのか、と言えるくらいに。

しかしこの話ぶりだとかつて俺はこの人に会ったことになる。

だが……記憶が無い。

 

「では……かつて問うたが、今一度君に問おう。

 この地を踏みしめた上で、君は自分の名を名乗ることが出来るかね?」

 

「宮本成二、宮本成二だ」

 

「……結構だ。ここを訪れ、その上で己が名前を名乗れるものは極僅かだ。

 やはり、君は合格のようだ」

 

仮面の下の表情を伺い知ることはできないが、満足げに頷いたように見える。

……さっきから気になってるんだが、俺はこの男と前に会ったことがあるのか?

向こうは、まるでこっちの事を前から知っているような口ぶりだが。

この場所と言い、目の前の存在と言い、言ってることと言い……

 

……ダメだ。さっぱりわからん。夢と認識するのが一番近いのだろうか、これ。

だとしたら物凄い明晰夢だが。

 

「どうやら、行くべき時が来たようだ。さあ、その青い扉を開けるのだ。

 そこには、君の心の力の支えになるものがあるだろう。

 そして心したまえ。この先の道は、君が想像するよりも遥かに険しく

 過酷なものであることを……」

 

フィレモンが手をかざすと、俺の右隣に突如として青い扉が現れる。

……うん? この扉、どこかで見たような……?

他に進むべき道も無いので、俺はフィレモンに促されるままに青い扉を開ける。

扉を開けた途端、黄色い蝶が目の前を横切り、さらに扉の向こうからまばゆい光が射してきて――

 

 

――――

 

 

気がつけば、また別の場所にいた。

今度は一面青の部屋。どことなく、駒王学園の教室と、学園祭で行った事のある

大那美(だいなみ)高校の教室の雰囲気がごっちゃになった感じだが……

 

ピアノがあることから、音楽室かと思ったが……

それと対面するように置かれているイーゼルが、その答えを否定する。

音楽室にイーゼルは無い。まして、キャンパスの乗ったイーゼルなど。

そう言うところも、何か不自然さが際立っているような。

 

「ようこそ、ベルベットルームへ」

 

声がした方を振り向くと、そこには独特な風貌の黒いスーツを纏った老人が腰かけていた。

独特な風貌……特に細身の身体とアンバランスな大きな目と濃い眉毛、そして何より長い鼻。

 

「私はイゴール……我が主、フィレモン様の命により我らは貴方様の力となりましょう」

 

そう言ってイゴールと名乗った老人が指し示した先には、2人の男性と1人の女性がいた。

目隠しをした男性曰く

 

「俺はナナシ……閉ざされし、心の扉を開くピアノ弾き……」

 

オペラ歌手のような風貌の女性曰く

 

「私はベラドンナ~♪ 己という魔物に挑む、もののふ称える歌歌い~♪」

 

そして、ニット帽にサングラスをかけた男性曰く

 

「僕は悪魔絵師。人の内に住まう、神と悪魔を描く絵師」

 

「我ら4人、人の心の海に眠る力を呼び覚ます手助けをするよう、仰せつかっております。

 以後、お見知りおきを……」

 

ベルベットルーム……ベルベットルーム……

 

……そうだ! 周防(すおう)巡査が言っていたのって、ここの事か!

ちょっと、周防巡査に聞いた話と微妙に違っているところはあるが……

中に入れたのも、DJサガラに鍵を貰ったからで……

 

……また、わからないことが増えた。

とりあえず、何を聞こうか……

 

……まず、周防巡査に貰ったフリータロットについて聞くか。

 

「……すみません。ではまず、これについてなんですが……」

 

俺は懐から、周防巡査に貰ったフリータロットを出す。

イゴールがそれを受け取り、真剣な表情で眺めている。

 

「……聞いた話では、貴方様はペルソナではなく、別なる心の力をお持ちとのこと。

 ですがこれは、ペルソナを召喚するのに必要なカード。

 このカードは、どこで手に入れられましたかな?」

 

俺は正直に、周防巡査からもらったことを話した。

嘘をついても仕方が無いし、何より俺より彼らの方がこの道具について詳しそうだ。

 

「……左様でございますか。絆とは、時を経ても連綿と受け継がれてゆくもの。

 貴方様がそれを持ち、そしてこの部屋を訪れたのも絆の導き……

 いや、或いは必然なのかもしれませんな。

 

 さて、件のカードについてですが……ふむ、ふむ……」

 

言葉を交わしたのち、改めてイゴールはカードに目を通す。

はて。あれは無地のカードだったはずだが……?

 

「どうやら、半数以上のカードから力を感じられます。

 このカードは、貴方様の築き上げた絆の力そのもの。

 今はまだ、微弱な力ながらもこれから先、強い力になる可能性は大いに秘めております。

 特に『13』――死神のカードに秘められた力は、とても大きなものを感じます。

 ですが……」

 

「死神」か……いいのか悪いのか、判断に困るな。

タロットなんて原則「塔」以外どっちとも取れるが。

考え込んでいる俺をよそに、イゴールは俺に2枚のカードを寄越してきた。

そこには、「3」「4」とナンバリングされたカードがあった。

タロットカードの3と4って、確か……?

 

「この2枚に関しましては、どうやら停滞が起きているご様子。

 このままでは、ただの紙切れ以上の力は発揮いたしませんな。

 特に『4』――皇帝につきましては、停滞どころか破局に至っている危険性もございます」

 

……他に言及しないって事は、この2枚だけ特別マズい状態ってことか。

解決方法、わからないけど。

 

「……絆、つまり人間関係的なものがそのカードの力になる、って事は

 逆に言えば、それが力を発揮しないって事は人間関係がマズくなってるってことですか?」

 

「まぁ、そうなりますな。心当たりはおありですかな?」

 

……2人、うち1人が壊滅的な状態の俺の人間関係……

 

……あいつら、しかないよなぁ……

 

「……力を取り戻すも、別なる絆を紡ぐも貴方様次第。

 ですがお節介を言わせていただきますと、元に戻した方がよろしいですな。

 力のために別なる絆を紡ぐのも一つの答えではありますが」

 

イゴールの言いたいことはわかる。

だが、俺にはどうしてもあいつともう一度仲良くするってのは出来ない。

少なくとも、今のあいつとは。出来ないものは出来ない。逃げかもしれないが。

 

「……一考しておきます」

 

その答えに、イゴールは「左様でございますか」と答えたっきり、何も語らなかった。

そこで、俺は他の人にも聞いてみることにしたが……

 

あまり、俺の中の答えは変わらなかった。俺の意思が強いのか、それとも……?

だが、悪魔絵師にも話を聞いてみたが妙な事を聞いた。

 

「今現世を騒がせているあの地獄門、僕はあれをどこかで見た気がする。

 あれは……そう、銀河の終焉の地だったか?

 零にして霊なる皇帝と、黒き銃神が刃を交える、鋼の巨人達が集う世界……

 ただ、あの時に見たそれとは、あり方が違って見える気もするが……」

 

まさかここでクロスゲートについて話が聞けるとは思わなかった。

試しに他の人にも聞いてみたが、要領を得る答えは返ってこなかった。

ここも、何か不思議な場所だ。さっきの……あれ? はっきり思い出せないが……

さっきいた場所よりは、はっきり自分の意思で動けるが……

 

「そうそう。そこ――銀河の終焉の地で、こんなものを貰ったんだ。

 絵のアイデアになるかと思ったけれど、僕が持っているよりは君が持っていた方が良さそうだ。

 『審判の火(ディーン・レヴ)』というらしいが……」

 

そう言って寄越されたものは……何かの火を象っているのか、握るとほのかに暖かい。

だが……これは今まで俺が受け取ったものの中でもトップクラスに危険な予感がする。

言葉にできないが……何か、とんでもない力の奔流を感じるとともに……

 

「この世にあってはならないもの」というイメージが、何故か沸いた。

本能が、記録再生大図鑑や無限大百科事典(インフィニティ・アーカイブス)での検索を避けた。

きっと、須丸清蔵(すまるせいぞう)を検索した時以上に酷いことになる。

知ってはいけないことを、知ってしまうような。

身震いしていると、俺のそんな様子を察したのか悪魔絵師は話題を変えて来た。

 

「それとタロットについてだが、カードに力が真に宿った時、僕がそのタロットに絵を描こう。

 だが……愚者のカードだけは、僕には描けない。

 あの日から、様々な世界を渡り歩いたが……未だに描けないよ。

 絵の道は、かくも険しいものという事か……」

 

それは特に問題ないだろう。今イゴールに見立ててもらった限りだと

「0」……愚者のカードは、無かったはずだ。

 

その後も一頻り対話をしていると、イゴールに呼び止められた。

 

「……どうやら、お時間のようです。

 ここは意識と無意識の狭間をたゆたう部屋。感性豊かな者のみが、ここへの扉を見出すのです。

 貴方様は鍵を手にし、その扉を開きましたが、貴方様のお仲間であるのならば

 きっと、この部屋に立ち入ることも叶いましょう。

 

 では、新たな絆を紡ぐまでの間、しばしの別れですな……」

 

ふと、目の前が歪んでいく。

立っていられないほどではないが、感覚がぼやけていく。

最後に見たのは、ベルベットルームに入った青い扉だった……

 

 

――――

 

 

気が付くと、俺は制服のままベッドに突っ伏していた。

時計を見ると、もう日付変更が目前だった。

 

……その後、俺は慌てて着替えたりシャワーを浴びたり……

 

……する前に、氷上さんに祐斗から聞いた情報を伝えた。

時間が時間だから、かなりぎりぎりになってしまい

有効活用できるかどうかは微妙になってしまったが。

 

 

そして、改めてベッドで横になる。

いよいよ、明日は会談当日。神仏同盟の皆様と、北欧の神様が一堂に会するとされる会議。

何を話すのか、までは俺は知らない。だが、この無茶苦茶な世界に対し

何か行動を起こすためのものだろう。

 

その無茶苦茶な世界を演出している装置の一つであるクロスゲートは、俺が眠っている最中も

怪しい光を放ちながらタワーの上空に鎮座していたという……




※来週は作者取材
(という名の東山奈央嬢ステージ観覧&新種のボクカワウソ発見ツアー)のため休載です。

ベルベットルームはP2方式と、P3以降の法則を一部交えてます。
なので、セージが入ったら文化部の教室になりました。
一応、これには(メタ的要素含め)理由がありまして

・ペルソナ主人公's(舞耶姉以外)に比べると、セージはジュブナイル感が薄い
・原作()のハイスクール要素の補強のため、ベルベットルームが学校施設になった
・P2のベルベットルーム面子的に、適切なのは文化部教室では?
・セージの爺さんの晩年が酒浸りだったので酒関係にあまりいい印象が無い

以上の観点から、こうなりました。

>フィレモン
PQ2にも絡んでた疑惑のあるお方。
罰と違い、ぴんぴんしてます。白スーツの肩幅紳士か
全身黒タイツのぶん殴りたくなるあいつかはお任せします。

話ぶりから、過去セージにペルソナ能力を授けようとしていた様子。
セージは全然覚えてませんが、時を経てそのペルソナ能力が
記録再生大図鑑に変異した可能性は、大いにあります。

>悪魔絵師
あの人だからこのネタは入れたかった。
語っているのは「第三次スーパーロボット大戦α」の世界。
公式認定されたかどうかは微妙ですがMX→αなので
MXについても言及させようかと思いましたが
悪魔絵師が関わってるのがサルファだけなのでこうなりました。
時系列的には当然P2本編→サルファ→現在 です。
以前達ちゃんが「いない」と言っていたのはサルファの世界に行ってた可能性があります。
ですがこの旅をもってしても「愚者」を描くには至れなかった模様。

……で、なんてもの持ってるんですか金子さん!?
(サイズは当然オリジナルではありませんが)

>フリータロット
P3以降よろしく、各アルカナ(愚者以外)にコミュ(コープ)が割り当てられています。
「死神」「女帝」「皇帝」についてはかなり大きなヒントが出ていると思います。
(原作では恋愛コミュじゃないとブロークンまでは至りませんでしたが、まぁそれはそれ)
そして「死神」は何気に今後を暗示していたり……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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