少し気が早いですが、アンケートご協力ありがとうございました。
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「……さて。では約束を守ってもらおうか。サーゼクス・ルシファー」
来賓室。
人間チームとグレモリーチームのレーティングゲームは、ユーグリットの目論見通り
人間チームが勝利を収めた。
そして、ユーグリットはこの大会の協賛の条件として
「人間チームがグレモリーチームを下した場合、グレイフィア・ルキフグスの身元を貰い受ける」
という誓約を交わしていたのだ。それが大会協賛の条件であった。
――つまり、文字通り「女房を質に入れて大会を観戦していた」形なのだ。
「……大丈夫だ、グレイフィア。私が後で必ず……」
「次など無いよ。君が味わうのを許されるのは、敗者に相応しい結末だけだ。
……姉上、いや、グレイフィア・グレモリーを連れていけ!
そいつは我がルキフグスにとって逆賊だ!」
ユーグリットの配下が、グレイフィアの身柄を拘束する。
しかしそれに対し、グレイフィアは抵抗を試みる。
「……自分の妻との意思疎通もまともに出来ないのか?
ここで彼女が叛意を示すというのは、我々の誓約を反故にするという事と同義だが?
いいのか? 現悪魔政権代表は、都合が悪くなれば身内との誓約さえも反故にする
自分勝手な者であり、四大魔王筆頭はそんな自分勝手な輩であり
そんな奴が今まで悪魔を率いていた……そう公言する準備は既に整っているが?」
「ぐ……っ!!」
ユーグリットの動きは速かった。
イェッツト・トイフェルに加担した際に得た情報網を利用し
既に四大魔王のスキャンダルをリークしていたのだ。
後は合図一つで、これらのリークした情報を悪魔の情報ネットワークに流すのみだ。
しかも、ユーグリットが何処まで把握しているかは定かでは無いが
冥界にも噂結界――噂が現実になる現象――は確認されている。
だからJOKER呪いなんてものが流行っているし
企画倒れになったはずの番組が何食わぬ顔で放映されていたりする。
――まあそう目くじらを立てるものでは無いよ、ユーグリット君。
何処からともなく響く声に、思わずユーグリットが振り返る。
そこには、グレモリーチームの布袋芙ナイアが何食わぬ顔で立っていた。
彼女は兵藤一誠の看病をしている、と人間チームからは聞いていたユーグリット。
それがここにいることに、一瞬だが疑問を覚える。
「僕の得た情報では、君がここにいるのはおかしいな。
そもそも、いちチームの眷属に過ぎない君が、来賓室に勝手に入ってくるのはどうかと思うが」
「そこなら気にしないでくれたまえ。既にサーゼクス様のお父様……
ジオティクス卿の許可は得ているのだからね」
グレモリーのセキュリティ管理はどうなっているのか、とユーグリットが鼻を鳴らす。
そんなユーグリットを気にも留めず、ナイアはサーゼクスの
そしてセラフォルーのフォローに入る。
「まずシトリー家にかけられていた『
これは手違いで『初めから「
そうアジュカ様から公表があった。
従って、シトリー家への嫌疑は無罪だ。よかったね、セラフォルー様」
事情を知る者が聞けば、耳を疑いそうな内容。
初めから「兵士」の駒が「4つ」足りない。
――つまり、匙元士郎の存在など、「初めからいなかった」事にされたのだ。
「そうよ! 全く失礼しちゃうわね!
ソーナちゃんがそんなつまらない不正を働くはずがないじゃない!」
「次にサーゼクス様周りについてだけど……申し訳ありません。
これについては、僕の方でも八方手を尽くしたのですが、解決には至らず……」
「いや、大丈夫だ。寧ろ君はよくリアスやイッセー君達を支えてくれた。ありがとう」
サーゼクスの労いに対し、「ジオティクス様にも言われましたよ」と愛想よく返答するナイア。
しかしユーグリットはこの時、ナイアの口角が妙に上がっている事に気が付いた。
それは裏を返せばルキフグスの利にもなり得ることかもしれないとの判断から
この場ではユーグリットはナイアについてはこれ以上追及することを避けたのだった。
「話は済んだか? では僕はこれからこのルキフグスの逆賊を連行しなければならないのでね。
試合も終わった以上、僕からこれ以上あの人間に関与することは無い。
褒賞については、配下の者に既に手配させている。
僕も忙しいんだ。これ以上、下らない茶番に付き合う気は無い……が。
サーゼクス。グレイフィア・グレモリーとの『最期の』挨拶は済ませておくことを薦めるよ」
「最期!? 君は、グレイフィアに何をするつもりだ!!」
ユーグリットが去り際に残した台詞に、サーゼクスは思わずいきり立つ。
ここに来て、ユーグリットはサーゼクスとグレイフィア、両者の今生の別れを匂わせてきたのだ。
「何も? ただ、罪を償ってもらうだけですよ。
罪には罰が課せられ、犯した罪は罰を以て償わなくてはならない。
悪魔にだってそう言う概念はあるでしょう」
「死刑にでも……するつもりか!!
ならばルキフグスの都市機能は私が直接管理する! 君の代わりに、私がルキフグスの……」
「ご冗談でも止してくださいよ陛下。
散々痛い思いをした戦争を、もう一度やろうというのですか?
それに、そんな事をするようでしたら僕が既にリークした以上の情報を
この場で追加で然るべき機関に流しますが……よろしいので?
ああ、『僕を口封じする』なんて滅びの魔力を使えば簡単でしょうけど
それをやった瞬間、問答無用でマスコミが動くように指示してますので。
……ほんと、人望ありませんねぇ、陛下?」
薄ら笑いを浮かべながら、サーゼクスを煽るユーグリット。
ユーグリットの言ったことはブラフでは無い。
その証拠に、四大魔王の一角、ファルビウムの怠惰による悪魔領への被害と
セラフォルーによる対外関係の悪化問題が看過できないものになりつつあることを
合図一つで悪魔社会のネットワークに流し、それが噂結界で加速したのだ。
噂結界。珠閒瑠市でかつて猛威を振るったそれは、かつては情報社会の未成熟が原因で
情報の伝播に時間がかかる欠点があったが
現代においては、悪魔社会においてさえも、人間社会のSNSを模倣したネットワークが仇となり
一度広まった情報の伝播速度はかつての比にならず、また誰しもが発信源となれる。
ユーグリットは、彼と手を組んだイェッツト・トイフェルはそこを最大限に活用したのだ。
「嘘だと思うのなら、一度ニュースをご覧になるといい。
現サーゼクスの支持率がどうなっているか」
促されるまま、ニュースを確認するサーゼクスとセラフォルー。
そこには、サーゼクス政権に対し好き勝手言う悪魔の姿が映し出されていた。
恐らく、彼ら彼女らもかつては、サーゼクス政権の恩恵を受けていたであろうに。
「そ、そんな……」
「み、みんな! 騙されないで! 今ニュースで言われている事は……」
「おやおや。プロパガンダにテレビ番組を使っている者とは思えない発言ですな。
まさか、テレビで公表されているニュースが嘘だなどと言うのは。
これはよくてこれはダメ、そんなもの、悪魔の常識でも通りませんよ」
映し出されているニュースを信じられないものを見る目で見る二人だが
これに関してはナイアもフォロー出来ていない。
……出来ていない、が言葉として適切かどうかはさておき。
何故なら、ニュースで言われている事は脚色こそあれど凡そは事実なのだから。
こうして広まった噂は、燃え広がる火のように留まるところを知らない。
これでは、閉会式の挨拶どころではない。
「そんなわけで、我々もこれから混乱する経済対策に乗り出さなければなりません。
逆賊の事もありますので、早々に引き上げさせてもらいますよ」
ユーグリットの側近がグレイフィアの手首に冷たい輪をかけようとするが
グレイフィアは首を横に振り拒否する……が
そんな彼女の意思とは関係なく、鉄の輪は冷たい音を立ててかけられる。
「グレイフィア!!」
「言ったでしょう。あなたは我々ルキフグスの名を貶めた逆賊だと。
逆賊に与える権利など、初めから持ち合わせてはいない。
無論、その輪を破壊して抵抗しようものなら、その時もサーゼクス政権の終わる日だ」
恋愛結婚の末の夫婦という絆が仇になったのか
互いに人質を取られる形となり、ユーグリットの一人勝ちのような状態に落ち着いてしまった。
「連れていけ」
姉に対する言葉とは思えない程に冷たい一言。
あれほどグレイフィアに執着していたユーグリットと同一人物とは思えない程に
淡々と話を進めており、ここには既にルキフグスの当主としての
ユーグリットしかいないという事を暗に示していた。
連行されるグレイフィアを伴いながら部屋を後にするユーグリットと
その背を見送ることしか出来なかったサーゼクス。
それはまるで、恋愛結婚の末が悲劇で終わった形を暗示しているようであった。
かつて、彼らの婚姻は地上のとある恋物語に喩えられたこともあった。
しかし、その恋物語の結末は悲劇であるという事を、多くの悪魔は知らなかったのだ。
これはただ、その喩えを忠実になぞっているに過ぎないのであろうか。
掌から血が滲み、噛み合わせが悪くなるレベルで歯軋りをしているサーゼクス。
そんな彼の怒りと呼応するかのように、セラフォルーもまた困惑していた。
来賓の者達が、こぞって帰り支度を進めていたのだ。
中には、ユーグリット同様もう帰った者さえいた。
「ちょっ……こ、これってどう言う事よ!? みんな私達の活動を応援するために……」
「はて。儂らも耄碌したからのう。市井の悪魔の事は儂らもしらんが
儂らも悪魔を応援する、そんな事を一言でも言ったかのう? なあハーデスさんや」
「ファファファ、儂も覚えがないのう。
カラスや蝙蝠どもから常日頃ハーデスの耄碌ジジイなどと言われておるから
本当にボケが回ってしまったかもしれんのう。そんな状況では約束も何も無いわい。
ああ、困った、困った」
わざとらしくオーディンとハーデスは認知症を患った好々爺の演技をするが
実際アザゼル辺りが耄碌ジジイと呼んでいたため、噂結界の影響が無いとも言い切れないのが
また微妙な所ではある。
なお、神の影武者である
アジュカの盟友たる
「発明のアイデアが浮かんだ! 最後まで観戦できなくてすまないね! ハッハッハ!!」と
笑いながら既に自分の研究所に帰ってしまっている。
彼の場合、最後まで戦っていた宮本成二は確かに研究対象ではあるのだが
その彼の持つ
自分の研究のために他者の研究を利用することはあっても、他者の研究そのものには興味を示さない。
己の研究こそが、唯一にして無二なのだから。戦極凌馬とは、そう言う男だ。
だから、セージがゲシュペンスト・タイプFRを用意した段階でもう帰る準備を始めていたのだ。
そのため、今この場にはサーゼクスとセラフォルーの味方はいないと言ってもいい。
ある歴史では友好的だったインド神話も、彼らとは縁深い仏教勢力――神仏同盟が
三大勢力に対し懐疑的であるという理由から、静観と言う立場を取っており
その三大勢力にしたって、この歴史では同盟が結ばれている訳ではない。
精々、個人的な付き合いがある程度だ。
その証拠に、天界勢力は未だに音信不通である。
「そ……そんな! だったらなんでここに……」
「さあ? なんでだったかのう? 案外、蝙蝠どもがバカな事をして
そのバカな事で自滅する様を見て愉しむためだったのかもしれんのう。
いやすまんのう。どこぞのカラス曰く、儂は耄碌してるから忘れてしもうたわい」
くどい位に耄碌老人の演技をして当て擦りに走るハーデス。
喋っている内容とは裏腹に、嗤う度に音が鳴る髑髏の頭が不気味さを煽る。
尤も、そんな事で震えあがるものなど、この場にはいやしないのだが。
「何にせよ、今この場で見せられた結果が全てじゃよ。
己の力に胡坐をかいた悪魔は、人間の可能性の前に敗れ去った……
ただ、それだけの話じゃ。
さて、もうここで得るものは損害以外何も無いわい。帰るぞ、ロスヴァイセ」
ハーデスに同調して耄碌老人の演技をしていたオーディンも
護衛のヴァルキリーを伴って帰り支度をしている。
北欧神話はドラゴンアップルの害虫――インベスへの対応で多忙を極めているのだ。
何せ、ドラゴンアップルは彼らの地元ヘルヘイムにも生育しているのだから。
それ故「ヘルヘイムの実」などとも呼ばれており、解毒のための血清完成が先んじて行われた反面
インベスの影響を強く受けている地域でもあるのだ。
本来ならば、ここで暢気に競技鑑賞などしている暇は無い。
「ま、待ってくれオーディン! せめて閉会式のセレモニーまでは……」
「若造魔王。人間は限りある命だからこそ、こういう言葉を残したそうだぞ。
『
耄碌の入った好々爺じみた口調から一変し、オーディンは厳かな口調で
なおも縋りつくサーゼクスにぴしゃりと言い放つ。
オーディン個人としては、ハーデス程三大勢力に悪感情は無い。
だが、悪感情が無いだけであり、友好的とは一言も言っていない。
即ち、どちらにも転がり得る中庸の立場であったのだ。
サーゼクスは、そこを読み違えたのだ。
同盟相手でもない外部の主賓を、これ以上留めてはおけない。
さっきまでかたかたと歯を鳴らし嗤っていたハーデスも
もはや興味も失せたとばかりに、いつの間にか姿を消していた。
彼が統治する冥府もまた、問題は山積みなのだ。
そもそも、各地其々に問題が山積みな中で
こうして自分達の祭りに参加させようとする方が問題であり
悪魔にとっては正しいことでも、周囲にとってはただの大迷惑でしかなかった。
……ただ、それだけの話であった。
「……ま、こうなって当たり前だわ。あっちもこっちも問題だらけな中で
こうして集まって試合観戦で親睦を深めようだなんて
土台無理な話だったんだよ……でなくとも、俺らは嫌われ者みたいだしな」
「そんなはずないわよ! マジカル☆レヴィアたんはみんなの人気者なんだから!」
「……現実見ろや。俺ら三大勢力でさえまとまりが取れてないんだ。
横槍があったとはいえ、同盟は結べてないのが現状なんだからな。
俺がここにいるのだって、個人的な付き合いに過ぎねぇ」
嘆息しながら肩を竦めるアザゼルの指摘にも、セラフォルーは真っ向から否定する。
ところが、今回はそれを意外な所から肯定する声があがったのだ。
「そうですよセラフォルー様。僕らが推している『乳龍帝おっぱいドラゴン』との
タイアップ企画も順調に進んでいます。
何も心配することは無く、いつも通りに職務に邁進なさってください。
……いつも通りに、ね……」
布袋芙ナイア。一節では彼女こそが「乳龍帝おっぱいドラゴン」の発起人であり
ブームの仕掛け役とも言われている。一時は凍結しかけた企画を、だ。
「う~ん、でもナイアちゃん。そのおっぱいドラゴンの彼。
なんかすごいカッコ悪い負け方しなかった……?」
「お恥ずかしながら。そこは僕がきちんと鍛え直しておきますので。
ヒーロー番組にもよくある、パワーアップ回と言う奴ですよ」
セラフォルーの眼にも、イッセーの負けっぷりは情けなく見えたのだ。
それ故に去来する不安さえも、ナイアは悪魔が
ヒーロー番組に関して中途半端な知識しか有していないことをいいことに、言い包めたのだ。
「な~んだ、パワーアップの前振りかぁ」
「そうだとも。私が認めたイッセー君が、あの程度で終わるはずが無いともさ!
で、具体的にはどんなパワーアップをするんだい?」
「おっと。そいつはネタバレ厳禁というやつですよ。
人間界においても、承認欲求でネタバレをばら撒いた奴は村八分にされてしまいますから
楽しみに取っておいてください……フフ」
イッセーのパワーアップ。それ自体は間違いは無いのだろう。
だが、その内容を知るのはナイアただ一人であり
その内容故か、思わず笑みが零れてしまっていた。
……とてつもなく悍ましく、邪悪な笑みが。
ロミジュリ婚などと持て囃された結果がこれだよ!!!
(後によりを戻したとはいえ)どっかの天才バルキリー乗りとメルトランディの夫婦だって
拗れに拗れたことはあったわけですし。
今回その程度で済むかどうかは……さて。
というかこう言う事してるからジャンル問題で悩んでるんだよなあ自分。
反省すべき点かもしれません(治すとは言って無い)。
便利なものに頼ると肝心なところでしっぺ返しを食う。
混沌に魅入られているのは、間違いなく作者たる私でしょうね……
ちなみにおっぴろげジャンプで負けたのは悪魔的にも「ねーわ」だったらしく
それも今回のサーゼクス支持率低下の一因になってたりします。