ハイスクールD×Dっぽくはないかもしれませんが
この度戻ってまいりました。
前回までの三つのあらすじ
一つ! 身体を取り戻した
そこを襲撃した台湾マフィア・
二つ! 駒王学園一時的疎開で
そして三つ! クロスゲートを通って冥界に飛んだ成二達人間チームはユーグリット・ルキフグスの協力を得てサーゼクス主催のレーティングゲームに参加することになった!
来賓室が騒がしくなっている頃、木場とギャスパー、
駆け足で会場医務室へと向かっていた。
――今の兵藤一誠と
その一心で団結し、医務室のドアを蹴破りかねない勢いで開けると
そこには――ベッドから身体を起こしているイッセーしかいなかった。
「ちょっと。怪我人いるんで静かにしてほしいんですけど」
否。正しくは、イッセーと看病でリンゴの皮を剥いているイリナがいるだけであった。
特に汗をかいているなど、怪しい様子も見受けられない。
「あ……ごめん。それよりも布袋芙先生は?」
「店長なら仕事だって。私にダーリンの看病任せて行っちゃったわよ」
この状況がいいのか悪いのかわからないが、駆け込んできた三人は
一先ず胸を撫で下ろす。
「店長になんか用なの? 何もないなら私とダーリンの時間の邪魔だから
さっさと帰ってほしいんだけど」
まだ首の痛みからかうまく喋れないイッセーの代わりに
イリナが三人を追い返そうとしている。
「それに、閉会式のセレモニーとかあるんじゃなかった?
ダーリンはしばらく安静で出席しなくていいってお墨付き貰ってるけど
あんた達は出た方がいいんじゃない? あの堕天使だってそれで歯軋りしてたくらいだし」
朱乃の事である。
ナイアがイッセーの看病をイリナに託した時、朱乃も当然名乗り出たわけなのだが
閉会式への参加準備、という理由から却下されてしまった。
イリナは出席の義務がないため、こうしてここでイッセーの看病をしている訳である。
ナイアも来賓室で仕事をした後に閉会式なのだから大変は大変なのだが
教師だしそんなものか……と、三人共に納得してしまっている。
……それこそが、ナイアの仕組んだ罠でもあるわけだが。
結果として、彼らの思い描いたことは杞憂で終わったわけだが
それはこの場だけの話である。イリナに看病を託したという事は
既にイッセーと接触していた可能性すらあるのだ。
事実、ナイアはリアスとセージの戦いにおいて碌なアドバイスを残していない。
いたとしてもリアスが聞かなかった、というのもあるかもしれないが
それでもステージ脇にすらいなかった、となると話が変わってくる。
「これは……後手に回ってしまったかもしれないね」
「だけど、あの人の行動を把握するなんて無理ですよぉ……
試しに僕の一部の蝙蝠を付けてみたんですが、いつの間にか戻されて
碌に情報を得られなかったんです」
「セージさんも『検索を試みたら妨害されて返り討ちに遭いかねない』
……って旨の事を言ってましたね」
帰り道、三人はナイアの危険性を再確認する。
しかし、そこで得られた情報は「深く知ろうとしてはならない」
という一点に集約されるものであった。
結果として徒労に終わったのではないか。そう不安が去来しつつも
木場とギャスパーはリアスの下へ、光実はセージの下へそれぞれ戻っていくのだった。
「じゃ、光実君。また後で」
「ええ、そちらも気を付けて」
――――
少年三人が徒労に終わろうとしていた中、挨拶の準備を進めるサーゼクスだが
その言動には覇気が無い。
無理もない。最愛の妻がルキフグス――実家の逆賊として連行されてしまったのだ。
そしてそれを止めることが出来なかった自分に苛立ちを覚えながらも
今は魔王としての役職を果たさねばならない。
……自分がかつて思い描いていた魔王とは、こういうものであっただろうか。
「ほらほらサーゼクスちゃん、気持ちはわかるけど笑って笑って☆」
「……セラフォルー。これが笑っていられるか!!
イッセー君は無様に負け、リアスは人間に誑かされたような負け方をし!
サイラオーグ君は濡れ衣を着せられ! 勝利の栄光は人間が掻っ攫っていき!!
その上今度はグレイフィアが逆賊扱いだ!! こんな状況で何を笑えというんだ!!!」
「ちょっ、ぎゃ、逆ギレしないでよぉ……あたしに怒ったってしょうがないじゃん。
悪いのはあのソーナちゃん達にも恥をかかせたクソ人間達なんだから。
あたしだってさっきからなんか大事なことあったような気がするんだけど
思い出せなくてイライラしてるのよ!!」
事もあろうに、司会進行の二人が挨拶を控えているこの段階でギスギスと口喧嘩を始める始末。
何時まで経っても現れない二人にしびれを切らしたのか、同じ四大魔王の
アジュカとファルビウムが様子を見に来たが
目の前で繰り広げられていたのは、醜い口喧嘩だった。
「あ、アジュカちゃんちょうどいいところに。
ねぇ、さっきはソーナちゃんに渡した駒の数は『
不手際があったって言ってたけど……本当にそれで合ってるのよね?
あたし、どうしてもそこで引っかかることがあるのよ。
何がどう引っかかるか、ってのはうまく言えないんだけど……引っかかるのよ!!」
「無論だとも。その件についてはソーナ君にはすまない事をしたと思っている。
貴重な『
さぞ、眷属関係で頭を抱えた事だと思う」
「眷属……眷属……あああああっ!!!
思い出せない!! 思い出せない!! 思い出せないぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!
ソーナちゃんが可愛がっていた眷属がいた気がするんだけど……
思い出せないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
記憶の混乱に、ついに頭を掻き毟りながら壁に頭を叩きつけ始めるセラフォルー。
とても魔法少女のコスプレでやっていい行動とは言い難い。
それも一応少女向け正義の魔法少女として売り出している魔法少女の恰好で。
「思い出せないなら、その程度の事だったんだよ。
……二人してめんどくさ。
もうじき挨拶なんだから、顔でも洗って壇上に上がらないと怪しまれるよ?」
我関せずとばかりに呟くファルビウム。
だが、彼の言う通り壇上に上がらないと怪しまれる。
……最も、壇上に上がったところで彼らを出迎えるのは
歓声ではなく、巷に出回っている噂に対する真偽を問い詰める声であろうが。
「……出回ってる噂については、俺の方からも何とかしよう。
しかしそれにしても、出回るスピードが速すぎる。
いくら悪魔社会にもネットワークが普及しているとは言っても
昨日今日呟かれた事が、こうもすぐに反映されるものか?」
アジュカは、四大魔王は所謂「炎上」と言うものを甘く見ていた。
そもそもこの四大魔王派閥。大王派を中心とする老害的思考を持つ悪魔達からは
「若造がいきがっている」などと思われ。
今でこそアインストに吸収されたが旧魔王派からは「名だけを騙る偽者」扱いされ。
悪魔の未来を憂う悪魔からは
「他神話はともかく、堕天使や天使との交渉もまともに出来ないのか」と
政治能力不足を指摘され。
ゼクラム・バアルによって任命された魔王と言う職であるが
実際はゼクラムの傀儡政権であったとはこの騒動の前から噂されており
そのゼクラムが暗殺された今、後ろ盾を欠いたも同然の状態なのだ。
目の上のタンコブが取れたとも言えるかもしれないが、それ以上に膿どころか出血が酷いのだ。
では力だけは強いので、力を以て現政権を維持するか。
それでは旧い悪魔――デーモン族と同じであると、彼ら自身は否定している。
しかし、とどのつまり彼らが過去に行ったことは、力を以てしての政権打破。
つまり、クーデターだ。
この行動の矛盾が今、こうして突き付けられる形となったのだ。
――――
イェッツト・トイフェル司令室。
「司令。予想通りと言いますか、四大魔王は身動きが取れないようです。
ただ、アジュカ・アスタロトとファルビウム・グラシャラボラスは
まだ我々の情報戦に対し抵抗を試みているようですが」
「やらせておけ。あれらにもいずれ、聖槍の刃が突き立てられることになる。
特にアジュカは悪魔社会に混乱を齎した張本人だ。かつての聖人よろしく
処刑台に張り付けた上で、聖槍を突き立ててやるのも良かろう」
「悪魔を聖人に見立てての処刑か……司令殿は中々冗談がお好きのようだ」
ハマリアの報告に、ギレーズマがほくそ笑む。
さも自分のもののように聖槍を扱っているが、別に彼は聖槍の持ち主でも
ましてや、コピーを所持している訳でも無い。
しかし、その聖槍の本当の持ち主もギレーズマの発言を咎めることなく
寧ろ乗っかっている様子であることから、彼自身もやる気なのかもしれない。
「フッ、冗談などではないさ。奴があんなものを作りさえしなければ
我々悪魔の血は穢されることは無かったのだ。
純粋なる悪魔こそが、真に冥界を統治し繁栄するのに必要なのだ」
「純粋なものによる統治……まるでアインストのようなことを仰いますな」
「その冗談は止せ。我々はあの怪異にはご退場願いたいのだよ。
悪魔の中にも、力を求めるあまりあんなものに手を出したものがいると聞く。
それも、かつて魔王としてその名を轟かせた末裔が、だ。
これを面汚して言わずして何と言うか。敢えて言うならば、カス……か?」
聖槍の持ち主……フューラーの指摘に対しては声色を変える形で否定にかかる。
悪魔とアインストは別物であり、アインスト等に下る悪魔などカスである。
たとえそれが、魔王の末裔であったとしても。
ギレーズマのこの物言いに従うのであれば、JOKER呪いに手を染めた悪魔もまた
カス、なのかもしれない。
「(その理屈だと、一体どれだけの純粋な悪魔とやらがいるのだろうな……ククククク)
私からも、今回の大会に際してささやかながらプレゼントを用意しておりましてな」
「フン。下らん魔王の下らん道楽にご苦労な事だ。一体何を用意したというのだね」
それは開けてのお楽しみであります、とフューラーにはぐらかされてしまうギレーズマ。
態々そんな事をしなくともいい、という態度は隠そうともしていない。
魔王直属とは言っても、その魔王がいない場所ではこんなものなのだ。
「……司令。我々はそろそろ次の準備に取り掛かります」
「うむ。頼むぞ、ハマリアよ」
イェッツト・トイフェルの次の準備。
ここまで混乱した悪魔政府に対し、彼らに二心を持つ正規軍が行う行動など、一つしかない。
「いよいよ、決行の時ですか」
「そうだ。恐らくサーゼクスの演説に際し、会場内は混乱が生じる。
その混乱に乗じ、我々が首都リリスを制圧。
会場内の魔王側近はラスト・バタリオンとの混成部隊で攻撃する」
既にリリスでは顕現したクロスゲート監視の名目でイェッツト・トイフェルの部隊が
多数配置されている。
これが一気に四大魔王不在の中首都陥落のために動けば……答えは明白だ。
そしてレーティングゲーム会場たるアグアレスも既に、ラスト・バタリオンとの
混成部隊によって包囲されている。
その中には「
気合の入りようが窺える。
武者震いを隠そうともしないウォルベンだが、不穏な情報も彼の口から告げられた。
「…………ですが、リリスの部隊の報告では
『クロスゲートは稼働している』と入ってきています」
「だとしても、司令はやるだろうさ。
恐らく今回のレーティングゲーム、サーゼクス以上に司令が結果に不服だったろうよ。
何せ、転生悪魔はもとより、純血悪魔が軒並み人間に倒され
純血悪魔の中には、人間に手を貸したものまでいるという噂だ」
我々もその人間をスカウトしようとしたではありませんか、と
ウォルベンは出かかった言葉を飲み込んでいた。
ハマリアもウォルベンが何を言おうとしたのかは察したため
これ以上追及することはしなかったが。
「ウォルベン様、ハマリア様!
間もなくサーゼクスの演説が始まります!」
「始まるか。サーゼクス、お前が全てを失う様を、私は眺めさせてもらうとするよ……」
モニターに映し出されたアグアレスの会場。
そこは既にどよめきに支配されており、サーゼクスがまともに演説を出来る状態ではなかった。
それでも魔王としての体裁を整えようとするサーゼクスを
昔の女であるハマリアは黙って見ていた――
――その時である。
「た、大変です! リリスの部隊から緊急報告!!
く……『クロスゲートが、転移を開始した』そうです!!」
「何ですと!? 予兆などは無かったのですか!?」
「それが全く……あ、ああっ!!
アグアレス上空のあれ……あれは……!!」
首都リリスにあったはずのクロスゲート。
それは突如として、レーティングゲーム会場のアグアレス上空に現れたのだ。
当然、そこからはアインストの大群が現れる。
しかも、かなり強いエネルギーを帯びているのか、会場の空間が歪んだその瞬間
ハマリア達が監視していたモニターにノイズが走り、何も映し出さなくなってしまったのだ。
「現場のカメラがやられたか……
ウォルベン、貴様はアグアレスに向かえ。私はリリスの部隊を指揮しに行く。
司令とフューラー総統にもこの事は伝えておけ!」
イェッツト・トイフェルの行動隊長たるウォルベンに現場を任せ
ハマリアはクロスゲートが消えたことで混乱しているリリスの部隊に回ることにした。
三日月状の鎌――クレセントサイダーを肩に担ぎながら、ウォルベンは転移を開始。
伝令に次の命令を与えた後、ハマリアもまた転移を行うのだった……
戻ってきました(そしていきなり急展開)。