風邪ひいてましたが、何とか回復しました……が
どうにも頭が回らないのが今日この頃。
「お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
グレモリー先輩の慟哭に合わせて、空間が軋むような音がし始める。
別に衝動でグレモリー先輩の力が目覚めたとかそんなんじゃないだろう。
フューラーの言う通り、この異界が維持できなくなりつつあるか
……或いは、維持する必要が無くなったとみるべきか。
「おのれ……フューラー・アドルフ……よくも……よくもお母様を……!!」
「クック……貴様を縛り付ける楔の一つを解いてやったというのに、礼儀が足りんぞぉ?
もう二つの楔についても、一つは解けたも同然、もう一つもじきに解かれる。
知っているぞ。自らの駒王町の治世や生き様に過干渉する家族を疎ましく思っていたことを。
私はその一つの楔を解いたにすぎんのだ。礼こそ言われ、恨まれる筋など無いのだがなぁ?」
「駄目だ、耳を貸すな! それは詭弁に過ぎない!!」
怒りで増幅された滅びの力がフューラーを狙うが、その滅びの力は
フューラーのペルソナ――ニャルラトホテプによって、容易く打ち消されてしまう。
力の性質は……やはり、あの時に見た……!!
「……ならば言葉を変えよう。私は貴様に『自立』を促してやったのだ。
自分一人でも、魔王たる兄やグレモリー領主たる父の力を借りずとも
自分一人の力で物事を成し遂げられる、と。
その第一歩として、まずは貴様の母から自立させてやったのだ」
「なっ……私は、そう言う意味じゃ……!!」
「子はいずれ親元を離れるものだ。それが遅いか早いかの違いに過ぎぬよ」
フューラーの悪びれぬ追い打ち。
この悪辣さは「人々が想像と口伝で伝え聞くあの20世紀最悪の独裁者」
であるだろうが……俺は当然本人にあった事が無いのだからそれは何とも言えない。
噂で復活した本人なのか、誰かが悪趣味にでっち上げた存在なのか。
「やっておいてよくも抜け抜けとぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「くっ……ダメだ、抑えて!!」
物凄い力でフューラーに掴みかかろうとするグレモリー先輩を何とか止めようとするが
やはり悪魔の力に人間の力で対抗するには中々無理がある。
アーシアさんも協力しているが、はっきり言って悪魔の彼女の力を加えたとしても焼け石に水だ。
そもそも、彼女は悪魔ではあるが物理的な力では
はっきり言って俺どころか超特捜課の人達にさえ下手したら劣る。
ライリィで押さえつけようものなら、攻撃のターゲットが先にこっちに向きかねないからか
ライリィの召喚は控えているようだ。というか、そこは俺がストップをかけた。
俺達を引きはがしながら返す刀でフューラーに滅びの魔力をぶつけようとするが
やはり前回同様、フューラーのペルソナに打ち消されてしまう。
このままじゃグレモリー先輩がばてて自滅するのが目に見えているだけに、何とかしたいが……
「クック……今の貴様に、私は倒せんよ。そこのユンゲはその点実に賢明だ。
リアス・グレモリー。貴様もまた……『選択を誤った』ようだな。
さあ、もうこんな場所に用はない。私はこれから『
大切な仕事が待っているのだからな。生きていたら、その全貌を見ることもあるだろう。
では、
言うだけ言い残し、聖槍を手に飛び去って行くフューラー。
ここは天井の在る屋内だというのに、頭をぶつける様子すらない。
まあ、単純にテレポートの類を使ったのだろう。
……ペルソナがあいつなら、それ位やってのけても不思議じゃない……
「ううう……うああああああああああああっ!!!」
取り残されたグレモリー先輩の慟哭だけが響き渡るが
俺もアーシアさんもかける言葉が見つからない。
しかし、落ち着くまで待つという選択肢も無い。
さっきから地震と言うか、空間が歪んでその関係で部屋が崩壊を始めているのだ。
その証拠に、分身から『これ以上は待てない』という連絡が来た。
引きずってでも転送装置から脱出しないと、何処に飛ばされるか分かったものじゃない。
「部長、こうなった以上、私達だけでも脱出しましょう」
「嫌よ! お母様は死んだ! お父様もまだ見つかっていない!!
お兄様達だって……」
「根拠のない話だが、脱出できてることを信じるしかない。
ここで俺達が崩落に巻き込まれたら、何のためにヴェネラナ・グレモリーは死んだんだ。
彼女のためにも、あんたは生きなきゃいけないんじゃないのか」
何と言われようと、どんな手を使おうと、少なくともグレモリー先輩は無事に返さないと
いけない気がしてならなかった。
別に、恩義の無い相手の死に際の約束を律儀に守る必要なんか何処にも無いってのに。
「嫌だっつっても、引きずってでもチェックマンのところまで運ぶぞ。
アーシアさん、悪いが手伝っ…………」
――アーシアさんに手伝いを頼んだその瞬間。
そう、グレモリー先輩を連れて戻ろうとしたその瞬間。
俺の中に、恐ろしいまでの悪寒が走る。
今まで体験したものだと、
アレとは比べ物にならない!!
……くっ、立ってるのも辛い規模のものが来やがった……何でまた、俺に……!?
「せっ、セージさん!?」
「大丈夫……と言うと、嘘になっちまうな。
グレモリー先輩はライリィに載せて運んでくれ。二人乗りはきついかもしれないが
俺を載せるよりはまだマシなはずだ。行け」
グレモリー先輩は肉付きがいいから、重量的にはライリィが音を上げかねないが
まあ流石にこれは……だろう。俺と比較するのは何かおかしいし。
それに、ここでグレモリー先輩はともかく、アーシアさんが巻き込まれたら最悪だ。
「納得いかないなら、後で『自分が一番信用できる者』を連れて救助に来てくれ。
正直、今の俺がそのままあんた達について行っても、足手纏いになりかねない。
それ位……今……ヤバいのが来てる……」
――反影ノ贄……今此処ニ奉ゲラレン……
光陰番ト成リシ今……我ハ顕現ノ刻ヲ迎エン……
今、何か頭に悍ましい声が走った。
反影の贄……一体何のことだ……?
――裏切ラレ……何者ニモ成ル事能ワヌ英雄ノ紛ヒ物ノ「絶望」……
最期マデ……理解ヲ拒マレシ糸無キ操リ人形ノ「無念」……
死ノ間際デモ……未来二「希望」ヲ託シ続ケシ者等……
其等怨毒ノ魂魄ガ……此処ニ集ヒ……我ハ……此ノ刻ヲ……
「監視」ノ刻ハ……終焉ヲ告ゲ……
此ヨリ……我ガ「統馭」ノ刻ガ始マラン……
「う、うわあああああああああっ!?
あ、があああああああああっ!!!」
「セージさん!?」
「セージ!!」
物凄い量の負念が吹きあがってくる。
出所はわかる。ディス・レヴだ。
この量はサイブレードにして浄化させられる量じゃない。
俺を依り代にする……いや違う、ディス・レヴに集めさせた怨念を使って
何かとんでもないものが出て来る前触れだ。
「ぐっ……い、いいか……よく聞け……
俺が持ってるモノから、何かとんでもないものが出てこようとしている。
規模で言えば……オーフィス、いや下手したらそれ以上だ。
こうなった以上、俺が脱出したら出た先でそいつが出てきて
人間界がどうなるか分かったもんじゃない」
ちゃちな自己犠牲に走るつもりは無かったが、ちょっとこれ他に方法が思いつかないし
そもそも無駄死にの可能性の方が高い。
だが、これに他の奴らをつき合わせたらそれこそ無駄死にだ。
「だ、だったら私が……!!」
「ちったあ頭冷えたみたいだなグレモリー先輩。
だが、俺ごと滅びの力で吹っ飛ばしても無駄だぞ。
こいつ、『俺を依り代にする』んじゃなくて『俺がいようがいまいが出てくる』タイプだ。
そのカギになってるのが俺が持ってる『怨念を力に変える装置』だ。
これを……何とかして、この異界にわざと召喚させて、そのままここに放り捨てる。
今思いつく対処法は……これしかない」
「その装置を、捨ててしまえば……」
アーシアさんの提案だが、それは俺も思った。
だが、今此処で俺が制御してないとすぐにこいつ、出てきかねないんだ。
つまり、今此処で二人の逃げる時間を稼いでるので精一杯、って状態。
そんな中、フリッケンが勝手に
しかも、
『セージ! 検索をかけるぞ! 意識飛ばすなよ!!』
COMMON-SCANNING!!
「……カドゥム・ハーカーム。
あらゆる世界に似た存在が確認される、光輪を頭蓋に抱いた白い巨人。
人間に力と知恵を与えるその様は、別なる世界では『神』とも形容される存在である」
――深遠ノ知恵ヲ求メシ者ヨ……其ノ業ハ巡ル……
「ぐ……く……二人とも……逃げ……ろ……」
『「神」……こ、こいつだ!! 俺達が、俺達デーモンが戦った聖書の神は、こいつだ!!
セージ、俺を出せ! 俺の力なら、こいつにも……』
『バカを言うな。お前一人で倒したわけじゃないんだろ。
それに、今のセージに魔神剛の鎧を出す力は……』
「いや……少なくとも俺がいる。
サイブレードと魔神剛のアモンで、出てきたところを抑え込めば、あるいは……」
足止めになるかどうかだ。このカドゥム・ハーカームとやらの復活はもう、防げないだろう。
奴の言葉が本当なら、生贄が既に揃ってしまったって事だ。
そう言う生贄を使う儀式についてなら、ここに詳しいのがいるから一応確認を取る。
「……グレモリー先輩。一つ聞きたい」
「こんな時に何よ!?」
「生贄が完全に揃った儀式ってのは、もう止める術は無いんだよな?」
「モノにもよるけど、基本は止まらないわね……あ、あなたまさか!?」
PROMOTION-BISHOP!!
QUINT SPREAD-SUMMON!!
「
魔神剛の鎧を召喚し、アモンを憑依させる。
その間に怨念が俺の身体の中に幾らか入ってしまったが、許容範囲だ。
「戦うんなら、援軍を……」
「やめろ! さっきも言ったが、もう時間が無い!
『神』とは言ってもその実、怨念を糧にしているのなら俺のサイブレードでなんとかできる!
防御に関しても、ゲシュペンストを鎧代わりに使えばいい!」
ハッタリだ。一世一代クラスのハッタリだ。
なんでオーフィスよりも強いかもしれない相手にいくらほぼ全盛期とは言えアモンと
修理が不完全なゲシュペンストだけで勝てると踏んでるのか。
俺はここまでバカだったか。
……ああ、そうか。バカがうつったのか。そもそも、あのバカどもともつるんでいたしなあ、俺。
「アーシアさん……悪いけど、こっから先は……」
「…………わかりました。
セージさんに、祝福の在らんことを……痛っ」
頭痛に耐えながら、アーシアさんが俺に祝福を授けてくれる。
相手が神を僭称すると言っても、その構成材料は100%怨念だ。
そんなものが、まともな神であるはずがない。
少なくとも、アーシアさんの信仰する神とは対極に位置する存在だろう。
「…………さあ、部長さん。セージさんのためにも…………
ライリィ君、お願いします…………!!」
「ま、待ちなさいアーシア! 主の命令が聞けないって言うの!?」
「……今は聞けません! 部長さんを、皆さんの下へ無事に送り届けるのが
セージさんの、そしてヴェネラナ様の願いなのですから……っ!!」
無理矢理ライリィにグレモリー先輩を載せる形で
アーシアさんがこの場を離れようとライリィを飛び立たせる。
……最期にふと、グレモリー先輩の顔を見たくなった。
何かわめいているようだが、俺はそれに向けて精一杯笑ってやった。
いつもみたいにバカにする嗤いじゃなく、「俺は大丈夫だ」という、男の意地で。
悪いな兵藤。またお前の取るべきカッコいいところを取っちまったよ。
いい加減、お前も真剣にグレモリー先輩に向き合え。
ただ性欲だけをぶつけても、女が靡くわけがない。考えればわかりそうなものなんだけどな。
……それと。
――ごめん。母さん、黒歌さん、白音さん…………お姉ちゃん。
最後の最後くらい、まともに話しておくべきだったな。
俺は姿を現そうとしている頭上に輝く光輪を抱いた巨人に有無を言わせずサイブレードを突き立てる。
サイブレードから怨念が逆流してくる感覚があるが、それでも只管サイブレードで斬りかかる。
それに合わせ、魔神剛の鎧を纏ったアモンが攻撃を加える。
――深遠ノ知恵ヲ求メシ者……汝ヲ教化出来レバ……
怨念の影響が強くなりつつある身体に、カドゥム・ハーカームが手を翳して来た。
その光をまともに受けてしまった俺は…………
ヴェネラナを殺したのは「希望」が欲しかったからでした。
リアスと言う明確な希望を持っているため、お眼鏡に適っちゃったわけですね。
ジオティクスは……他に役割があったりしますので。生贄は一種一人で十分なんです。
他は英雄派の内輪揉めで殺された聖槍持ってたアイツ……誰だっけ?が「絶望」。
アインストの支配を脱するも娘との和解が叶わず非業の死を遂げたバラキエルの「無念」。
この3つをただ揃えただけではグラギオス、ヴォルクルス、ラスフィトートの3柱が復活するだけなんですが
ここに「この3柱はカドゥム・ハーカームのシャドウである」との解釈を加え
「シャドウが完成したので完全体になって顕現した」のが今回のカドゥム・ハーカームです。
もう第七天に引きこもってるだけの状態は脱したわけですね。
で、これ全部あいつが糸引いてるので実質カドゥム・ハーカームを完全体にさせたのは
アイツなわけで……ホント何したいんだアイツ。
ちなみに、邪神としての3柱がこの世界に存在しないのは「異界の邪神」と明言されているというのもあります。
その邪神に関する知識はリアスも持ってたんですが、まさかそれが神のシャドウだなんて想像もつかないわけでして。
(ヴォルクルス教団だけでもガチ再現すると禍の団が規模で大敗しかねない)
元ネタ的にはインド神話の協力体制がもう少し強ければ対処法あった……かも?
拙作主人公の癖に「ここは俺に任せて先に行け」という死亡フラグ立ててるセージ。
同時に闇堕ち(?)フラグも立ってる訳なんですけどね。