ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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The Outcome of the Rebellion

 

冥界・悪魔領首都リリス

 

「くっ……本命はアグアレスの方とは言え、こちらは恐ろしいほどに静かだな。

 現地との連絡はまだ取れんのか?」

 

「はっ、アグアレス周辺の次元交錯線が酷く不安定で

 あらゆる通信手段が途絶えています!」

 

リリスにあったクロスゲートがアグアレスに顕現し

アグアレスを異界化させている頃、ハマリアはリリスに影響が及んでいないか

調査にやって来ていたが、そこは恐ろしいほどに静かであった。

 

 

――アインストの連中は、こういう世界を望んでいるのかもしれねぇけどな。

 

 

ハマリアの背後から、突如として声がする。

彼女が振り返ると、そこにはかつてルシファーとして名を馳せていた

リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが空から静寂に包まれたリリスの光景を

興味なさげに眺めていた。

 

「貴様……リゼヴィム!」

 

「おっとそうカリカリすんなよハマリア・アガリアレプト。

 俺はもう別にこんな世界に興味なんか無いんだから

 後はもうテメェらで勝手にやってくれ、ってスタンスなんだからよ」

 

「……禍の団(カオス・ブリゲート)、いやクリフォトはどうするつもりだ?」

 

リゼヴィムもまた、禍の団の末席を汚す身分……というよりは

主要グループであるはずのクリフォトの首魁と言う

ともすればアインストに成り果てたオーフィスよりも

集団に対しては影響力の大きい立場にいるはずの悪魔である。

それが「もう興味が無い」とはどういうことか。

ハマリアには、そこが気がかりで仕方が無かったのだ。

 

「いやぶっちゃけ俺があーだこーだやるよりも、あいつら――アインストに任せた方が

 冥界も人間界もしっちゃかめっちゃかになって面白いだろ。

 俺別に冥界がどうなろうが興味無いし。それ以上に興味深いもんがあるだろ。

 何だか分かるよなぁ?」

 

「……クロスゲートか!」

 

この悪魔をして狂人と言わしめるリゼヴィムが興味を抱くであろうもの。

それそのものは、ある意味自分達のよく知っているものであろう。

其処に当たりを付けたハマリアは、リゼヴィムの狙いがクロスゲートであることを看破した。

 

「よく知ってんな。そうでなきゃ『現代の悪魔(イェッツト・トイフェル)』なんて名乗りやしないか」

 

「フッ、だが残念だったな。クロスゲートは、ここには無いぞ」

 

したり顔でクロスゲートの不在を指摘するハマリアだったが

リゼヴィムは「そんな事は知っている」と言わんばかりにくつくつと嗤っている。

 

「バーカ、そんな事は知ってるんだよ。これでもリリスって名前にはちょっと縁があってな。

 最期にお別れの挨拶に来てやった、ただそれだけだ。

 それにクリフォト……あんなもんも正直、俺の暇つぶし以上の何物でもない。

 欲しければ、くれてやるよ」

 

クリフォトの存在ですら最早無関心と言わんばかりのリゼヴィム。

その関心がクロスゲートに行っているのは間違いないと見たハマリアだが

クリフォトもそれなりの規模を誇る組織。イェッツト・トイフェルとの合併が

すんなりと行くものかどうか。

それにリゼヴィムもくれてやる、とは言っているものの

本気でイェッツト・トイフェルとの合併をさせたいかと言うと

答えはノー、であろう。

 

「一ついい事を教えてやるよ。俺がこうして何の後腐れも無くリリスを、冥界を棄てるのは

 『後釜が出来た』からだ。電波にちょっと教えてもらってな。

 お前も聞いたら驚くぞ~? ま、後のお楽しみに取っておけ。じゃあな」

 

言うだけ言って、リゼヴィムはアグアレスの方角へと飛び去ってしまった。

目的はアグアレスに転移したクロスゲート。それは最早間違いの無いことだろう。

しかし、リゼヴィムの言い残した「後釜」については

ハマリアには皆目見当もつかないのだった。

 

「ヴァーリ・ルシファー……? いや、奴はあり得んな。

 最後に姿を確認したのは人間界だ。こちらでは姿を見ていない。

 ならば、奴の言う後釜とはいったい誰の事だ……?」

 

ハマリアは静寂に包まれたリリスの調査をしつつ

リゼヴィムの残した言葉を、脳裏に仕舞っておくことにしたのだった。

 

 

――――

 

 

冥界・アグアレス領

レーティングゲーム会場跡

 

「部隊の大半はクロスゲートに飲み込まれたか……

 私がこうしてこちら側に残ったのは、不幸中の幸いと言うべきか

 何と言うべきかわからんな……だが」

 

元々アグアレスは、悪魔の駒の原料となる鉱石の採取場でもあったのだ。

そこにクロスゲートが現れたという事は、今後の悪魔の駒の生産に影響が出るのではないか。

ギレーズマはその点を思案していた。

彼自身は悪魔の駒否定派だが、それが故に悪魔の駒の生産が停止された時に

肯定派がどう動くのか、それを気にかけていたのだ。

 

「……政権を握り悪魔の駒の全面廃止を掲げたところで、肯定派の貴族共が黙ってはいまい。

 聖槍をちらつかせるにも、フューラーもいつまでも我々の味方と言う訳でもあるまい……

 

 実働部隊への呼びかけは続けろ。あの中で何が起きているかを把握しない事には何もならん」

 

異界化に巻き込まれなかった安堵からか、ギレーズマは政権奪還後の問題点を思案していた。

その一方で、異界化に巻き込まれた実働部隊からの情報が滞っている事への焦りも

少しずつではあるが、見え隠れし始めていた。

 

暫く呼びかけを続ける中、何人かの兵士が帰還に成功したという報告が上がって来た。

曰く、中の転送装置がここに繋がったという事で、これ幸いにと利用して来たそうだ。

 

「司令、報告申し上げます!

 クロスゲート内は極めて混沌の様相を呈しており、我々の知るところの『異界化現象』に

 近い状況下にあるものと推測されます!

 

 ……また、現地にてヴェネラナ・グレモリーが死亡したという情報が入っておりますが

 こちらについては、遺体の確認が出来ずじまいでありました」

 

興味深げに帰還兵の報告を聞くギレーズマ。

そこから導き出した結論は、ある意味では当然のことと言えるものだった。

 

「報告ご苦労。今後2時間の観測を行った後

 以後クロスゲートについては、こちらからの干渉を行わないものとする。

 リリスのハマリアにも伝えておけ」

 

「し、しかしまだ未帰還兵が……ウォルベン様も帰還なされていないようですし……」

 

「アレは最早我らにも手に負えぬ厄災だよ。

 下手に手を出し、痛手を被るよりはヤツ……意思があるかは知らんがな。

 ヤツの好きにさせておけ。いずれあの厄災をも制するときは来るだろう。

 だがそれは、今ではないという事だ。

 

 ……フン、とんだクーデターになってしまったな。

 ウォルベンを喪ったのは痛いが、これ以上留まり続けるのもな。

 下手にあの中からアインストが現われでもしたら、些か面倒だ」

 

ギレーズマの想定では、閉会式を急襲し混乱に乗じて政権を確保する事であったが

クロスゲートと言う横槍が入ってしまった事で、それどころではなくなってしまった。

 

(サーゼクス共の安否も不明、これ以上は徒に兵力を消費するだけか。

 これではラスト・バタリオン共のいい笑い者だな)

 

撤退を視野に入れ始めたギレーズマの前に

アグアレスの異界化に巻き込まれたと思しきフューラーが現れる。

その手に持っている聖槍の切先を、赤く染めて。

 

「フューラーか。誰ぞを討ち取ったと見えるな」

 

「如何にも、我らの……いえ、私にとってやらねばならぬ相手でしたのでな。

 これで穿たれし者の傷は、決して癒えぬ事……司令も知っておいででしょう?」

 

聖槍によってつけられた傷からは、とめどなく血が流れだすという。

かつて知らぬ者はいないであろう聖人の処刑の際の伝説――噂が

脈々と受け継がれ、最早呪詛と言っても過言ではない程の影響力を持つに至っていたのだ。

 

「そんな話をしに来たのではあるまい」

 

「如何にも。しかしここで一つ、私には気がかりな事が出来ましてな。

 結果はどうあれ、こうしてクーデターを起こされたわけですが

 サーゼクスを討ち取るにせよ、放逐するにせよ、その後どなたが冥界を導くのか」

 

「私だ……という答えでは不満かね?」

 

眉一つ動かすことなく、ギレーズマはいけしゃあしゃあとフューラーの質問に答える。

フューラーが言外に「ギレーズマは冥界の指導者に相応しくない」。

そう言っているようなものにもかかわらず、ギレーズマは声を荒げはしなかった。

 

「そのような事は。ただ、我ら人間からすれば……

 

 ……誰が冥界の指導者に就こうが、結果は変わらないと思いましてな」

 

チャキ、と聖槍の切先の動く音がする。

その音から、ギレーズマはフューラーが聖槍で自分を狙っているのではないかと判断。

悪い冗談だ、と窘める言動に出るが……

 

「……フ、冗談は止せ」

 

「意外と……司令も甘いようですな」

 

 

刹那。

聖槍の切先が、ギレーズマの喉元を掻っ切る。

同盟相手のラスト・バタリオンの反逆行為に控えていた親衛隊員が行動を起こすが

こちらもラスト・バタリオンの聖槍騎士団によって消し炭へと変えられてしまった。

 

ギレーズマが座っていた司令の椅子からは喉から血を流す遺体が蹴り落とされ

代わりに、赤い髪の壮年の悪魔が司令の椅子に就いたのだ。

 

「新たに紹介しておきましょう元司令閣下。ジオティクス・グレモリー。

 貴方に代わり、イェッツト・トイフェルの指揮を執り……

 

 ……新たな冥界の魔王となるお方ですぞ」

 

「……人間を討つ力と、冥界の混乱を収める手法を与えてくれたことには感謝するが

 私は人間を憎んでいる。これ以上の干渉はご遠慮願いたい。

 

 …………ヴェネラナを討ち、リアスを誑かし、冥界に混乱を与えた人間ども。

 たとえサーゼクスが許そうとも、この私は決して許しはしない……!!

 地上の人間界諸共、根絶やしにしてくれるわ!!

 我が恨み思い知らせてやらねば、ヴェネラナの死は報われぬ!!」

 

そのヴェネラナを討った張本人がすぐそばにいることにも気づかず

ジオティクスは意思表明としてイェッツト・トイフェルによる悪魔新政権の樹立と

魔王の権力の集中化など、本来ギレーズマがやるはずだった事を

瞬く間に成し遂げ……

 

 

……冥界を、掌握したのだった。

 

 

「ヒャーッハハハハハハハハハッ!! 電波に感謝しなくちゃな!!

 こんな面白い見世物があるかよ!!

 人間に対して比較的友好だったジオティクスが人間抹殺を宣言し

 息子たるサーゼクスを政権から放逐。

 俺が何にもしなくても、やっぱり悪魔は悪魔だったってことなんだよ!!

 悪魔だから悪事を成す、いいや逆だ! 悪事を成すから悪魔なのさ!!

 悪魔も、ともすりゃ人間も悪魔に帰結するもんなのさ!!

 だから『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』で悪魔を増やすなんざ無駄な事!

 放っておいても、勝手に悪魔は増えていくんだからよ!!

 ヒャーッハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

その様子を見ていたリゼヴィムは、これ以上ない後釜の誕生を目の当たりにして

狂ったように笑い続けていた。

ジオティクスはクリフォトに所属したわけでは無いが

リゼヴィムが成そうとしていた事の凡そが、今のジオティクスの目的と被っている。

ジオティクスは本来、息子や娘に受け継がれる程の穏健派で知られる悪魔であった。

それがここまで強硬派に鞍替えを果たすとは、リゼヴィムを以てしても見抜けなかったのだ。

 

「さて。俺も俺の用事をするとするかな。

 この世界はあいつがいればもう十分だろうし

 俺は……この門の先がどうなっているか知りたいしな!」

 

不安定になり始めたクロスゲートへと、リゼヴィムは何の迷いもなく飛び込んでいく。

その先に待ち受けているのが、彼の望む世界であるという保証など何処にもないままに。

寧ろ、これこそが彼にとって永遠とも言える地獄の旅路の始まりであったのかもしれない……

 

 

――――

 

 

その後。

這う這うの体で帰還を果たしたウォルベンと、リリスから駆けつけてきたハマリアは

合流を果たしたフューラーの口からとんでもないことを聞かされるのだった。

 

「……というわけで、ジオティクス・グレモリー……いや。

 ジオティクス・ルシファーが新たな魔王に就任。

 それに伴い、我らの同盟も一方的に解消。

 ギレーズマ元司令は名誉の戦死を遂げられた」

 

「は、ハマリア様!? これは一体どういうことなのですか!?」

 

「ええい、私に聞くな!

 ……総統閣下。ギレーズマ閣下の死因は何でございますかな?」

 

サーゼクスがいるにもかかわらず、その父親であるジオティクスがルシファーに就任し

他の三大魔王を放逐するという前代未聞の政策。

その突拍子の無さにウォルベンは取り乱すも、ハマリアはそうなるに至った

ギレーズマの死因をフューラーに尋ねている。

 

「それは私に対する尋問と言う事でよろしいですかな?

 間もなく貴方方にも指令が届くと思われますが、まずは人間をこの冥界から放逐する。

 そう新魔王は仰ってましたからな。我々も、それに巻き込まれるわけには行かんのです」

 

ハマリアの尋問に対し、逃亡を図るフューラー。

それらしい理由ではあるが、実際にハマリアの下に新たな指令として

冥界にいる転生悪魔以外の人間を全て抹殺せよという指令が届いたのだ。

 

「一つ、忠告させていただきますぞ。

 こんな時に私情を挟む、ましてや私情で国を動かすような輩に指導される集団は

 遠からず、滅亡するでしょうな。

 ジオティクス陛下は滅びの力は持たぬようですが

 そう言う『滅びの力』は持っていたようですな」

 

「……それを憂うのは我々悪魔の仕事だ。

 貴様らも狙われているのなら、さっさと逃げたらどうだ。

 部下に聞いたぞ。逃げる手段を用意しているそうだな」

 

フューラーを逃がそうとするハマリアに、ウォルベンが待ったをかける。

ウォルベンは、フューラーこそがギレーズマ殺害の犯人ではないかと疑っているのだ。

しかし、ハマリアはそのウォルベンの意見を制する。

 

「ハマリア様! 宜しいのですか!? どう考えても……」

 

「言うなウォルベン。証拠が無いのだ。聖槍なぞ、我らが接収できるものでも無いしな」

 

ハマリアの言葉に口角を上げながら、用意していたプチ・デヴァで

次々と撤退を開始するラスト・バタリオンの軍団。

クロスゲートの異界化が収まり、イェッツト・トイフェルの兵団や

観客の大半が飲み込まれたまま再び沈静化したクロスゲートは

引き続きアグアレス上空に点在。

これによりアグアレスは政府によって封鎖されることとなってしまったのだ。

 

「ジオティクス……陛下に応答しろ。

 ラスト・バタリオンについては対象をロスト。アグアレスのクロスゲートは沈静化。

 これより、冥界の人間狩り任務に移る……とな。

 

 ……ただし部隊再編のため時間がかかる、とも伝えておけ」

 

渋々ながらも新魔王ジオティクスへの応答を行うイェッツト・トイフェル。

ギレーズマと言う要を喪い、混乱が続く中

その混乱は新魔王ジオティクスの手によって、図らずも加速していくのであった。




あれドンパチやってる最中で内輪揉めしたから(ギレンにとって)最悪の結果になったわけで

Q:急に人間憎しに走るの短絡過ぎない?

A:「人間が殺した」としか聞かされてないので

リゼヴィムの後釜がジオティクス、しかしクリフォトの後釜と言うよりは
イェッツト・トイフェルってさらに自由に動かせる組織があるんだから
もうギレーズマも(本当はデコ貫きたかったけど得物の都合上)退場させて
精神的なリゼヴィムの後釜としてジオティクスが参戦。
人間を憎む速水奨キャラで親父って少し前どっかで聞いたな……
問題は改心フラグゼロなわけですけど

リゼヴィムはリゼヴィムでクロスゲートなんてもんがある以上
こっちに興味が行かない方がおかしいとすら思えるので
そう言う意味でも後釜は必要でした。

クリフォト? ユーグリットも所属してないし
他の派閥と同程度の扱いに収まってしまいましたとさ。
(つまりアインストに(存在感が)喰われる)
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