海東の前に姿を現したナイアと一誠は、異様なほどにやる気に満ちた表情をしていた。
ダークブレインを倒すという目的は一致しているが、何かが噛み合っていない。
二人の表情を見た黒歌が、そう言う印象を受ける程度には。
「……手伝ってくれるのは嬉しいけど、話聞いてた?
今回、そのダークブレインってのを倒すのと同じくらい、セージを助けるのも
重要な問題になって来るんだけど」
「そりゃ僕だって教師だからね。生徒の安全を確保するのは義務だよ」
「……けど、そのダークブレインってのはとんでもなく強いんだろ?
だとしたら、セージを助け出す余裕は……」
「……やりもしないうちから諦め。敗北宣言ですか」
少々弱気な一誠の発言に、白音がぼそりと反論する。
この言葉は一誠に対して反論したものだが、リアスにも流れ弾として命中していた。
「……そうね。やりもしないうちから諦めるのはグレモリーの名折れよ。
どんな形であれセージが生きているってわかった以上、塞ぎ込んでもいられないわ。
みんな、ダークブレインを倒してセージを……」
「だから話を聞きたまえ、君は。
ダークブレインを倒すことと宮本成二を助け出すのはイコールじゃないんだ。
そもそも、どうやって助け出すのか……そこまでは、僕も知らない。
僕が知ってるのは、攻略のための鍵だけさ」
意気込むリアスに海東からのツッコミが入る。
実際、海東もダークブレインに取り込まれた人間の救出方法など知らない。
知っているのは、ダークブレインと言う存在と
それに対峙したことのあるヒーローの存在だけだ。
「仮面ライダー、ってのは君と
部長、シーグヴァイラ様と連絡は取れませんか?
ダンガムなら、彼女が一番詳しいと思うのですが」
「え? アグアレスの件があるから呼び出すのは難しいと思うけれど……」
「呼びました?」
突如として現れたのは、やや緑がかった長髪に眼鏡の奥に鋭い眼差しを湛えた女性。
人間界にいるはずの無い、シーグヴァイラ・アガレス本人であった。
名前を出した木場も、何の予告も無く現れたのには驚きを隠せずにいた。
「ええっ!?」
「あ……あなたどうしてここに!?」
「……お恥ずかしい話ですが、アグアレスは陥落しました。
今は逃げ延びたような形で、こちらに滞在させていただいております。
……そして、大公家としての不始末をまざまざと見せつけられてしまい
人間界の皆様にはお詫びの言葉もありません……」
アグアレスの陥落。それは冥界にとってはアガレス家の危機以上の意味を持っていた。
何故ならば、
これ以上転生悪魔を増やすための手段を喪失した事も意味している。
そして同時に、アグアレスに残留したセージの消息不明は、これで確定した事にもなる。
(成程。それで思ったより新生悪魔政府の攻撃が弱いわけですか。
アグアレスを奪還しようとしつつ、こちらを精力的に攻撃する事は出来ませんからね)
「そ、そうだセージ! あなたセージを見なかった!? あの人間の……」
「い、いえ。見てませんが……それより、今話す事では無いのは重々承知ですが……
あの……ダンガムの話をしてませんでした?」
ダークブレインに対抗する鍵の一つの代替品、ダンガム。
そのプラモデルを使い戦う彼女ではあるが、セージとの戦いでそれらは今は修理改造中であった。
「していたけれど……君が思っているような話じゃないよ。
ところで、だ。君はこっちの世界には
『本当に乗れるうえに、動く』ダンガムがあるって言ったら、信じるかい?」
「なっ、ななななななななななんですかそれは!? その辺詳しく教えてください!!」
ダンガムの話どころか、乗って動かせるダンガムの話を海東がしだす始末であった。
勿論、そんなものは何処にもない。無いのだが……
……実物大のダンガム、それも動くものならば、ある。
実物大ダンガムの像が建立され、今もパフォーマンスの一環として動いているのだ。
そのため、シーグヴァイラが思っているのとは、少し……いや、全く違う。
「まさか……彼女を利用して『噂』を流すつもりですか」
「プラモデルがダメなら、他のアプローチを使えばいいのさ。
武器の類は無いだろうけど、ガンダムは武器が無くてもダークブレインと戦い、勝った。
そう言う逸話は実際にある。何なら、ドッジボールの話もあるけど……少し話が逸れるね。
それと、アルテルマンについてもあてなんだけど……」
「……成る程。読めましたよ。しかし噂を利用して対処にあたるのはいいですが
噂で動き出したものは、後始末が大変ですよ」
空の科学館の噂で飛んだ飛行船は、終いには墜落した。
今回のダンガムの立像が同じ運命をたどるかどうかは定かでは無いが
噂で動き出したものは、止まるまでが大変である。
「そこを突かれると痛いけど、他に思い付かなくてね。
で、アルテルマンなんだけど……八百万の神に加えてはどうか、と言ったら
その八百万の神の代表に解釈違いと釘を刺されたね。
同席していた教授は肯定していたけれど……
僕に言わせば、半世紀も親しまれた英雄なんて、神も同然だと思うけどね」
神をも畏れぬとはこの事か、と海東の言葉に薮田はこめかみを押さえる。
それに本場の神……の影武者である薮田からすれば、年季が違い過ぎる。
海東の口八丁も多分にあるが、そこまでしなければならない相手であるのかと
改めてダークブレインへの危機感を募らせるのだった。
「『アルテルマンは神ではない』とはそんなような旨の事を作中実際に言ったらしいけどね。
僕も詳しくは知らないけど、僕だって全能の神としてアルテルマンを神に推した訳じゃない。
時代を超え、遠い空の彼方から見守る存在としての神性を推しただけさ」
「全能の神ではない神……うーむ、やはりわからん。
それに、ただ見守るだけの存在が、今回のような有事に役に立つのか?」
「……アルテルマンでは、実際に事態の解決の決め手になったのは人間が動いた結果。
そう言う話も少なくないです。多分、今回もそう言う事かと」
白音の答えに正解を出しつつ、今回海東が得ようとしているのはダークブレインに対する対策。
仮面ライダーは自分達が担えばいい。
だが、残り二つが存在しない。存在しないのならば、作り出せばいい。
作り出すための手段として、手っ取り早いのは「噂」である。
「噂」はJOKER等様々な脅威を生み出したが、使い方次第ではこうして味方も生み出せるのだ。
「本当は噂屋使いたいところだけど、僕が頼もうとしたら逃げられちゃってね。
あの様子だと珠閒瑠市に逃げたみたいだから、ダンガムの噂は意外と広まっているかも。
ただ……どう広まっているかは僕にもわからないが」
「そ、そうですよ行きましょうよ珠閒瑠市! 観たいです! 乗りたいです!
私が一番うまくダンガムを扱えるんですから!
そりゃあアグアレスの件も気にならないわけが無いですが、今はダンガムですよ!」
「ちょっと待って。珠閒瑠市って確か、霧に覆われて外部から隔離されていなかった?
この半年の間で霧が晴れたかもしれないけれど」
リアスの言う通り、珠閒瑠市は
そのため、外部との行き来は出来なくなっているはずだった。
「それなら心配は無いよ。僕がここにいるのがその証拠……とは言えない事情があるけれど
珠閒瑠市を覆っている霧については、今は晴れている……ただ」
「ただ?」
「クロスゲートは稼働している。あそこのクロスゲートが稼働しているってのは
もしかすると、あまりよろしくないかもしれない。僕も詳しくは知らないが」
海東は自分が次元移動に似た能力を持っているために隔離をものともせずに移動できるため
彼が駒王町にいることは珠閒瑠市の隔離が解除された事の担保にはなり得ない。
だが、彼に曰く霧は既に晴れている。それが意味するところは不明だが
代償としてなのかクロスゲートが稼働しているとのことである。
しかも、珠閒瑠市のクロスゲートは殊更に危険なものである……と、海東は語る。
そしてそんな海東に餌をちらつかされたシーグヴァイラは
すぐにでも珠閒瑠市に向かいたい様子だが、実際のところは
リアス達も、当のシーグヴァイラも消耗している。
特にシーグヴァイラのダンプラは、まだ修理が終わっていない。
それを改めて後からやって来たアリヴィアンに指摘され
結局今は各自休息を取ることに落ち着いた。
ちなみに、ダンガムの話を聞いたシーグヴァイラはハイテンションで眠れなかったのか
一晩で先日の試合で氷上のゲシュペンストに破壊されたダンプラを全て
修復・改造しきったのだった。
――――
某所
ダークブレイン軍団本拠地
ダークアイアン・キャッスル
「ちぃぃ……歯ごたえがなさすぎるぅ~」
「ソウ言ウナラバ JOKERノ 大元デモ 狙ッタラドウダ」
「クリ公、おどれ知ってて言うとるやろ。大元には手を出すなって直々に命令されとるがな。
せやけど、デブ公の言う事も尤もや。ワイの眼は誤魔化せへんで。
おどれ一人だけ、白龍皇なんちゅうでかい獲物とやりあったらしいやないか」
人間への直接攻撃を禁じられているからなのか、ダークブレインの三幹部は
各々不平不満を募らせていた。
「白龍ナド 何スルモノゾ。アノ様子デハ 赤龍ノホウモ 大シタコトハ ナイダロウ」
赤龍。そのキーワードを聞いた途端、彼らの奥に控えている「それ」に
確かな反応があった。
「……ハッ。慢心ハ 厳ニ 慎ミマス」
「ぶふふぅ~、ダークブレイン様にぃ、怒られたなぁ~?」
(気に喰わへんな。赤龍ってワードに反応したんか。
もしかすると、まだあのボンの意識が残っとるのかもしれへんな。
……そもそも、ダークブレイン様が復活なさったんはええ。
気に喰わんのは、ロアやヒーローどもも碌におらん、混沌にまみれた地に
ダークブレイン様が復活なさった事や。
ワイらワルは、ヒーローがおらなワルとしての役割を果たせへん。
その事は、ダークブレイン様も重々承知のはずや。
……まるで、ワル同士ぶつけ合っとるみたいや。
ま、ワル同士かてつるむ気は無いんやけどな)
髑髏の騎士がふと場違い感を心に浮かばせながらも
下された命令通り、地上に混沌を齎すために三幹部は再び出撃するのだった。
――――
時間城・駒王町支店
今まで通り、ここを根城としているナイアや一誠ら。
昼間忙しかったと思しき朱乃もまた、ここに帰ってきていた。
「おかえりなさ……っぷ、く、苦しいですって朱乃さん……」
「いやですわ。イッセー君を補給しないとやってられないんですもの」
「そうよね。あんた避難所の人達にもおべっか使ってるもんね。
人畜無害アピール? 笑っちゃうわ」
イリナの少しとげのある何気ない一言に、朱乃の表情が急に変わる。
一誠をその豊満な胸に押し付けたまま、イリナの言葉に反論する。
「私がそんなことするはずがありませんわ。私にとってはイッセー君だけが全てなの。
他の人なんて、どうなろうが知ったこっちゃありませんわ」
その言葉に衝撃を受けたのは、意外にも一誠であった。
豊かな双丘に圧迫されながらも、恐る恐る朱乃に問い質す。
「そ、それは……部長やナイア先生、それにイリナも……?」
「イッセー君のものならば、まだ我慢は出来ますわ」
一誠は知らない事だが、朱乃は確かに避難所で避難民への奉仕活動を行っていた。
しかし、それは「ここにいる朱乃ではない」という但し書きが付くことになるが。
その事は、質問をした張本人であるイリナですら知らない事だった。
ただ一人、「全てを」知っている店の主人はただ不敵な笑みを崩さずに
三人のやり取りを黙って眺めているのであった。
「そうだよイッセー君。君が全てをものにしてしまえば万事解決さ。
そのためには……諸悪の根源とも言われている『あの』ダークブレインを倒せさえすれば
君は晴れて悪を打ち倒したヒーローになれるって訳さ。
悪を打ち倒せばヒーロー……簡単だろう?」
この理論には大きな穴がある。かつてそれを鵜呑みにし
あろうことかラスト・バタリオンと組んだ、旧英雄派とほとんど変わらない発想なのだ。
しかし、それを一誠が気付くことはない。彼は知らないのだ。旧英雄派の顛末も、その存在も。
彼にとっては、今目の前に在るものと、既に知っているもの。それだけが世界なのだ。
その世界を広げてくれているものこそ、信頼を置いている布袋芙ナイア。
彼女によって歪められた世界こそが、あるべき正しい世界であると信じて。
混沌を以て混沌を打ち払う。彼女が為そうとしているのは、まさにそれであった。
毒を以て毒を制す。それを体現したヒーローがいたのは事実ではあるが
それは同時に、新たな毒を生み出す危険性と隣り合わせなのだ。
「そのためにも、あの仮面ライダーの計画には協力するさ。
僕だってセージ君の事は気がかりだが、ダークブレインは倒さなければならない相手だ。
倒す鍵があるというのなら、利用させてもらうまでだよ」
「俺はあいつ気に喰わないんですけど……先生がそう言うのなら、まあ」
「この間の試合では不完全燃焼で終わってしまいましたから
今度は徹底的に痛めつけて差し上げますわ」
「そーそー。相手がそんなバケモンなら、店長の使徒として倒しに行くのは必然だもんね」
打倒ダークブレイン。その目的のために結束は出来ている。
いや、そもそも結束自体は彼らは元々出来ているのだ。
ただ、その旗印に不穏な影が付きまとっているというだけで。
(今のイッセー君の力ならば、ヒーローの力で弱体化したダークブレインを倒す事は可能な筈さ。
そして、そのダークブレインを倒せさえすれば……
…………特異点は、崩壊する)
不穏な影を体現するかのように、ナイアの口角はつり上がっていたのだった。
動くダンガムの元ネタはお台場ユニコーンと横浜ガンダム。
シーグヴァイラが騒がなくても地元じゃ既に噂広まっていそうな気も。
そう言えばダンガムの必殺技みたいな技持ってる子が既に一人いるような。
ただ今回これは元ネタは確かにそうなんだけど、ダンガムとは全然関係ないところからの
必殺技獲得なので、海東の思っているのとは少し違う罠。
アルテルマンを八百万の神に加えるのはいいとして、どうやって顕現させるんだ問題も同時に。
召喚魔法?使える人ダークブレインの器になってますが何か。
厄モノだけど倒す(ぶっ壊す)したらマズいってのは
第三次Zのアクシズみたいな……