ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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お待たせしました、Bパートです。
思ったほど進まなくて、タワーに行けるかと思ったけど
行けてないのも全部私のせいだ!


……ほっぽ妹から漂うヤベーイ臭。
何で「妹属性」と「ヤベーイ」のは累乗するんですかね。
どっかの吸血鬼とか、どっかのドラマCDとか。古いですけど。


Sour grapes Bパート

その後、他の乗客が皆別の車両に移ったのもあってか

静かな電車の旅を満喫したオカ研一同。

リアスが余計な事をしたからなのだが、別段他の乗客と何かを話そうとは

誰も思っていなかったため、大きな損害とはならなかった。

 

ただ、腫物を触られるような扱いには変わらず、魔女として虐げられた経験のあるアーシアは

「またか」といった思いもまた去来していた。

結局、悪魔となっても扱いはかつて魔女と虐げられたころと変わらない。

彼女が強くあれるのは、単に「経験したことだから、心をどう持つべきか」という対処法を

既に知っているからに過ぎない。要は、リアスと比べて遥かに打たれ強いのだ。

 

木場に関しては、打たれ強さ云々というよりは「諦観している」と言った方がいいかもしれない。

確かに、彼はリアスに拾われて現在の地位を得ている。

だが、その後自分の置かれている立場を「外から」見た際に

如何にとんでもない場所に立っているのか、を気付かされたのだ。

今彼は、自分を拾い上げた恩人と、自分自身の進路の狭間で苦悩しているのだ。

 

そんな彼らの心を知らず、いや知ろうともせずに

リアス・グレモリーは今後について音頭を執っていた。

 

「みんな。企業見学という事でユグドラシル・コーポレーションってところを

 訪ねるわけだけど……ナイア先生、ここって何の会社だったかしら?」

 

「……前もってパンフレットを渡しておいただろう?

 朱乃君も黙ってないでアシストしてくれないかい? まぁいいけどさ。

 一応、ユグドラシル・コーポレーションは医療・福祉を中心に多角経営を行っている

 大企業として、日本のみならず全国にその拠点を構える大企業さ。

 日本における拠点が、これから向かう沢芽(ざわめ)市というわけさ」

 

興味が無く、かつ半強制的に予定を組まれた企業見学とはいえ

曲がりなりにも学校行事であるそれに対して、リアスの態度はあまりにもいい加減であった。

教師として、ナイアは嘆息しながらも説明をしている。

だが、同時にこうも思っていた。

 

――彼女は、人間の文化を本気で学ぶ気があるのか?

 

と。

 

顧問に就いてから、眷属になってからまだ日は浅いが

彼女がどのような態度で学校生活に、そして部活動に臨んでいたかは

副部長である朱乃や他の部員たち、そしてナイアが懇意にしている――

というよりはいいように扱っている一誠からも聞いている。

そのうえでナイアがリアスに対し下した評価は――

 

――人間社会にその身をおいても、悪魔貴族としての暮らしの習慣から抜け出せていない。

 

その代表例が、旧校舎の私物化、有力貴族との婚約の強引な破棄に

自己の矜持を優先した報告すべき事柄の黙殺や根拠のない自信に基づく行動によって

機密漏洩を起こしているなど、枚挙に暇がない。

出来るものならば、冥界に強制送還させてもいいのではないか。とナイアは思っていた。

……あくまでも、教師としては。

 

(ま、これ位単純でわかりやすい方がイッセー君にとっては都合がいいだろうねぇ。

 彼女はへし折らずともハーレムの一員になってくれそうだけど……

 

 ……愛情深いという事は、同時に嫉妬深くもある。

 今の彼女をイッセー君のハーレムに入れるわけにはいかないね。

 いや、そもそも彼女は「自分『だけ』を見てほしい」タイプだ。とてもハーレム向きじゃない。

 なんだ、結局へし折るしかないのかな?

 

 ……全く。心をへし折った、従順な相手だけを囲ったハーレムがお望みだなんて

 イッセー君も相当屈折した性癖の持ち主だねぇ……僕に他人の事は言えないけどさ)

 

ナイアは、教師として、そしてリアスの眷属の一人としての貌の他に、別の貌も持っていた。

しかし、その貌は決してリアスにも、一誠にも見せることは無い。

何故ならその貌は、あまりにも混沌としており、直視しようものならば

間違いなく狂ってしまいかねないからだ。

そんな狂気も秘めた謎の女性、それが布袋芙(ほていふ)ナイアという女性の個性……なのだが

一応の主でもあるリアスは、ナイアの持つ神器(セイクリッド・ギア)にしか目が行っていないため

注意すべき彼女の裏の貌に気付かない。

この場にいない一誠もまた、ナイアのリアスにも勝るとも劣らない

プロポーションにしか目が行っておらず、ナイアという女性の本質をまるで知らない。

彼女が神器持ちであることを知ったのも、知り合って暫く経ってからの話だ。

 

「ナイア先生、医療・福祉という事は病院ともつながりがあるって事ですか?」

 

「いい質問だよアーシア君。確かに、ユグドラシルは傘下の病院を多数抱えている。

 駒王総合病院にも、ユグドラシル製の医療機器があったはずさ。だよね、リアス君?」

 

ここで、ナイアがリアスに対し意地悪な質問をする。

今でこそ管理者の立場を追われているが、かつて駒王町の管理者だったリアスに

駒王町の施設に関することを質問しているのだ。

答えられないようならば、沽券にかかわる。

 

「え? ええ、そうよ。病院の設備はユグドラシルのものを使っているわ」

 

リアスの回答は、事実を言い当てるという意味では正解だが

ナイアが意図した質問として言うならば不正解だ。

ナイアは「リアスがきちんと駒王町の管理者としてふさわしい仕事をしていたかどうか」

という点について問うたため、確かに駒王総合病院にユグドラシル製の医療機器は

導入されていたが、実際のところリアスはそこまで知らなかった。あてずっぽうで答えたのだ。

よって、正解こそ言い当てたものの、リアスはナイアの質問には

満足に答えられなかったという事になる。

 

管理者、などと一言で言うのは容易い。

だが、その役割は途轍もなく多く、一介の学生が学業の片手間に出来るようなものではない。

それを補うために通常は部下――この場合は使い魔など――を総動員するのだが

それは果たして「リアス・グレモリーが管理する」駒王町と言えるのだろうか。

実際に町の管理運営の仕事をしているのは使い魔であったり、町の役所の人間であったりする。

リアスは、ただ指示だけ出して高級な椅子にふんぞり返っていただけに過ぎない。

 

(彼女の心はへし折るのは容易いけど……それはイッセー君も表向きは望まないだろうしね。

 まぁ、完膚なきまでに叩き壊したうえで肉人形に仕立てた上で

 イッセー君の玩具に宛がうのも一興ではあるけれど。

 虚憶の一部にそういう世界もあっただろうから、今度打診してみようかな……?)

 

自分が一誠の邪な欲望の対象であることを知ってか知らずか

リアスは一誠を猫かわいがりしていた。

だが、リアスは一誠に対して「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の保有者」かつ

「自分に従順な下僕」以上のものは求めておらず

一誠もまたリアスに対して「何があっても自分を庇護してくれる主人」かつ

「自覚せず屈折したリビドーの対象」としてしか見ておらず

互いに見事に食い違った見方をしていたのだ。

 

そんな状況は、ナイアにとって格好の遊び場だった。

初めに一誠と接触したナイアがさらにリアスにお接触したのは、一誠に頼まれたからというよりは

自らがリアスを焚きつけ、諸共にどう転がるかを見届けるためでもあった。

そういう意味では、リアスと一誠は似た者主従であり、同じ混沌の哀れな玩具だ。

 

――まもなく、沢芽シティ駅、沢芽シティ駅。お出口は――

 

「おっと。どうやら目的の駅に着きそうだ。忘れ物のないようにね。

 それと最後にもう一度注意しておくけど、沢芽市では魔力や使い魔や

 神器なんかの行使は極力控えるように。

 駒王町と違って、怪異に対する免疫が薄いからね。

 フューラー演説で辛うじて悪魔の存在は知れ渡ったけれど

 それでも住民の半数は眉唾程度の認識だそうだ。

 だからこそ、君達も活動しやすいかもしれないけどね。

 

 ……特にリアス君、朱乃君。さっきみたいなことはしないようにしてくれよ?」

 

到着を告げるアナウンスを合図に、改めてナイアが注意喚起を行う。

その腹の内は混沌に満ちていても、教師としての仕事は全うしているのだ。

先刻騒動を起こしたリアスと、それを止めなかった朱乃に対して釘を刺しつつ

ナイアの先導で駅に降り立った。

 

――沢芽シティ駅、沢芽シティ駅。ご乗車、ありがとうございます。

  本日もユグドラシル鉄道をご利用いただき、ありがとうございます。

  2番線より発車の列車は、巌戸台(いわとだい)珠閒瑠(すまる)八十稲羽(やそいなば)経由の特急、御影町(みかげちょう)行きです。

  次は、東沢芽に停まります。まもなく発車します、閉まるドアにご注意ください――

 

ホームドアが閉まり、ナイア達を乗せてきた列車が発車する。

沢芽市。駒王町とはまるで違った発展を遂げた、ユグドラシルを抱えた企業都市。

改札をくぐった先には、スーツに身を包みながらも年のほどはリアスらとそう変わらない少年が

黒服の男を従えて立っていた。

 

「駒王学園の生徒の皆さまですね? 本日案内をさせていただく呉島光実(くれしまみつざね)です。

 ユグドラシルタワーまでお送りいたしますので、お車までご案内いたします」

 

「ご丁寧にどうも、引率の布袋芙ナイアだ。今日はうちの生徒達が迷惑をかけるかもしれないが

 よろしく頼むよ」

 

光実と握手を交わすナイア。ナイアの底知れなさに光実は背筋に寒気を覚え

ナイアもまた、光実の心の奥に潜んだ影を見抜いていた。

 

(この先生……何だって言うんだ!? 僕の……僕の中を見透かしたような目をして……っ!!

 今ここに兄さんの代わりで立っているって立場でなかったら、こいつを……!!

 

 !? ぼ、僕は今何を考えていたんだ……?)

 

(フフッ、なるほどね。やはり外にも出てみるものだね。

 ここにも運命に囚われた昏い影の持ち主がいたか。

 けれど……いや、気のせいか? 誰しもが持っている「影」と、この少年の「影」は

 何かが違うように思えるな……)

 

光実の手の中には、いつの間にかブドウロックシードが握られていた。

それはつまり、すぐにでも龍玄に変身して事を起こすつもりだったのだろう。

勿論、こんな人通りの多い場所でアーマードライダーの力を行使すればとんでもないことになる。

それは奇しくも、先刻車内で滅びの力を発現しかけたリアスに近いものであった。

 

「ふむ。君は見たところまだ学生だろう? だのに会社の手伝いとは殊勝だね。

 今日はうちの生徒達とも、仲良くしてやってくれると嬉しいかな」

 

「……わかりました」

 

先ほどの感覚があり、光実も身の入った返事が出来ずにいたが

ナイアがそれに対して咎めたりする様子は無かった。

従えている黒服――光実が免許を持っていないことに因む運転手――も

空気を読んでか、光実の異変を口に出すことはしなかった。

 

ただ一人、空気を読まないことに定評のあるものを除いては。

 

「案内を買って出てくれるのはありがたいのだけど、そんな様子で大丈夫なのかしら?」

 

「……見苦しいところをお見せして、申し訳ありません。

 さておき、これから私共ユグドラシルの概要と沿革についてご説明いたしますが

 そちらにつきましては、資料をお渡しいたしますので車内でご説明させていただきます。

 社屋であるユグドラシルタワーに到着後、我が社の研究者である戦極凌馬(せんごくりょうま)による

 開発品の解説と実践を行わせていただく予定です」

 

リアスの指摘に、光実は反論したくなるのを抑えながらその日のカリキュラムについて説明していた。

ユグドラシルタワーにて、凌馬の製作したものの解説と実践を行い

それを以て、ユグドラシルという会社の説明とするつもりのようだ。

 

「開発品? やはり、医療機器なんかですか?」

 

「それもありますが、昨今のテロ騒動や怪物騒動などで被災した地域向けの

 重機やドローン、パワードスーツなども開発しております。

 我がユグドラシルは、多角経営を掲げておりますので」

 

アーシアの質問に、光実ははきはきと答える。

光実の回答に、今度は木場が疑問を抱いた。

 

「多角経営……とは言っても、医療・福祉に重きを置くユグドラシルが

 重機やパワードスーツを? 一体どうしてだい?」

 

「先ほどもお話した通り、被災地向けの開発品になります。

 また、パワードスーツにつきましても、被災地向けのみならず

 将来的な介護福祉の現場の一助となるよう、開発が進められております」

 

パワードスーツと介護福祉、一見噛み合わない要素に思えるが

介護の現場は毎年人が減っており、要介護者とは反比例している形だ。

それを補うべく、機械を導入しているところは枚挙に暇がない。

そうした介護用ロボットの延長線上であると、光実は説明していた。

 

(セージ君のお母さんが、介護の現場で働いていたっけ。

 そうした人たちの一助になるのなら、ロボットの導入は強ち間違いでもないのかもね)

 

だが、光実の説明に今一つ要領を得ない者がいた。

リアス・グレモリーである。

 

しかしその件に関して、彼女を責めるのは些か酷であろう。

何故ならば、悪魔の世界において「介護」という概念は極めて希薄である。

魔力という概念が存在しているため、年老いた悪魔も若い悪魔も

肉体能力が人間ほど重要視されない。

酷いケースだと、魔力で肉体年齢を偽ることだって可能であるし

魔力を持たないなどの要素が無い限り、身体障碍とも無縁である。

そうなれば、「介護」という要素や概念など学びようがない。

その為、リアスにしてみれば光実の話はこの上なく退屈なものなのであった。

 

「そんなことより、ユグドラシルという名前の由来を知りたいのだけど。

 これは北欧に伝わる世界樹の名前よ?

 どうして日本の企業がその名前を使っているのかしら?」

 

 

――だから呉島光実は、辟易としていた。

 

目の前の生徒――特に胸の大きい赤い髪の生徒――はまるでこっちの話を聞いていない。

いや、そもそも興味すらない様子だ。なら何で企業見学に来たのかと問いたい。

やる気のないものは去れ、とはどこかの企業の社訓らしい。ユグドラシルではないが。

だが今、それがそのまま当てはまっている状況にしか思えない。

答える気も失せた光実は、ただ「僕にはわかりません」とだけ答えたのだった。

 

 

――リアス・グレモリーは、鬱屈としていた。

 

何故自分が人間の企業の見学をしなければならないのか。

そもそも、自分は人間の学校に通うために駒王町に来たはずだ。

卒業後も、大学にそのまま行くつもりだった。就職など、するつもりは毛頭ない。

もっと言えば、何故自分が働かなければならないのか。

当然、アルバイトなんてこともやったことは無い。悪魔契約ならともかく。

つまり、「人間の」社会に出るつもりはないのだ。

それなのに、目の前のどこか陰鬱とした小僧――自分と年はそう変わらないのだが――の

企業説明と銘打ったつまらない話を延々と聞かされるのだ。

周りを見渡すと、姿勢だけでも聞いている顧問教師と、割と真面目に聞いている眷属二人。

側近の女王は、張り付いた笑顔を崩していない。

 

自分の価値観がおかしいのだろうか? 否、自分は曲がりなりにも貴族悪魔として育ち

それなりの教育を受けてきたつもりだ。そんな自分の価値観が間違っているはずがない。

だから自分は正しいのだ。自分の行いは、正義であるべきなのだ。

グレモリー次期当主として、誰に与え、誰から奪うのか。

それを決める力を持てる立場に立つはずなのだ。

 

 

……その力の名は、権力。

だが、権力のみならず歪んだ心で望んだ力は、どうあがいても破滅しかもたらさない……




今回書くに当たって、「リアスって結局学校行って何したいの?」って点が気になりました。
人間社会で働きたい、って風には全然見えないですし
かといって人間社会の在り方は態々冥界に持ち込まなくても既に体現されてる(悪い意味で)

家の意向に逆らってまで、人間の高校・大学と行った理由がまるで分らないんです。
人間でさえ大学行くならそれなりの理由が必要ですし。結果はどうあれ。
(今のご時世、就職目当ての大卒もそこまで価値があるかどうか……)

また、悪魔社会って絶対「介護」とか全然発達してないよね、とは思います。
身体障碍、精神障碍問わず悪魔に対するヘルパーとかそういう概念はゼロと思ってます。
(悪魔契約でヘルパーっぽいことはしてるっぽいですが、悪魔契約とヘルパーの仕事は
一緒にしてほしくないというか、何というか)
故に、医療系にも精通しているユグドラシルの表側の話は
リアスにとっては途轍もなく退屈と解釈しました。

そして色々ちりばめられてる黒ミッチフラグ。
ミッチ本人もさることながら、リアスが黒ミッチ的な道を進みかねないのもまた……

そういえば、今回電車で移動してますが鎧武の同期の戦隊はトッキュウジャーでしたね。
なので、一応駅名とか拾ってます。
因みに駒王町→沢芽市→巌戸台→珠閒瑠市→八十稲羽市→御影町と路線が繋がっているイメージ。
因みに劇中の列車は、珠閒瑠で特急から普通に変わります。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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