ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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最近かなり筆のノリが悪いです……

九州地方の方のご無事をお祈りいたします。


Incredible Ryouma Bパート

凌馬の作ったロックシードの一つ、ザクロロックシード。

このロックシードは単体ではアーマードライダーへの変身機能を持たないため

ロックシードという括りで見れば欠陥品である。

だが、凌馬はこれに「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」と同様の性質を持たせようとしていた。

悪魔の駒は、冥界においては(生産地を押さえているから可能なのであるが)大量生産され

転生悪魔を多く生み出すきっかけとなっている。

 

その生産性と機能に目を付けた凌馬は、まず最下級ランクのヒマワリロックシードを基に

ザクロロックシードの試作品を作った。

だが、これは数ばかり多い欠陥品で、悪魔の駒の性能の一割も発揮できない代物だった。

その後改良を加えながら生産性と悪魔の駒が持つ(転生悪魔化に起因する)身体能力の強化と

精神操作機能を加え、言わば「人造悪魔の駒」として開発したものだが

当然そんなものが表向きに出回ることは無い。

 

例えこれに悪魔化の機能がないものだとしても、精神操作は極めて危険なものであるため

本来ならば、厳重に封印されてしかるべきものである……はずだった。

 

しかし、かねてから香港マフィアの天道連(ティエン・タオ・レン)へのロックシードや

戦極ドライバー横流しの容認を行っていた凌馬であるがゆえに

そうした事態には結果以外、無頓着をつらぬいていた。

ただ、「欠陥品」であるザクロロックシードを「完成品」として扱われることは

彼のプライドが許さなかったらしく、意図的に流出させようとはしていなかったが

現実問題既に出回っている。

 

――黒の菩提樹。

 

それが、出回った未完成品のザクロロックシードを運用している組織であった。

彼らがどのような経緯でザクロロックシードを入手したのかは定かではないが

新興宗教である黒の菩提樹の信徒には、何故かザクロロックシードが渡されていたのだ。

 

「どうだい、リアス君? これは人間が悪魔に敬意を表して作ろうとしているものさ。

 ま、これはまだ未完成なんだけどね。完成品はこっちさ」

 

そう言って凌馬が出したのは、スイカ、キウイ、イチゴ、ドングリ、クルミ。

そして色こそついていないがマスカットの絵柄が描かれたロックシード。

完成品とは言っても、いずれもアーマードライダー用の代物であるため

戦極ドライバー無しの単体ではやはりインベス召喚しかできない。

 

「こんな玩具がどうして……って、なんであなたは悪魔の事を知っているのかしら?」

 

「ふっふっふっ、大人を甘く見ない方がいいよリアス君。

 そもそも、フューラー演説で公表されている存在じゃないか。

 まぁ私はその前から知っていたがね。

 ……ところで君は『悪魔の駒』というものを知っているかい?」

 

その単語を聞いたとき、リアスは顔を顰めた。

悪魔の事を知っているのはまだいい。フューラーにバラされた上、彼が本当に天才だとしたら

悪魔の事を独学で学んでいる可能性だってあるからだ。

だが悪魔の駒ともなれば、悪魔に関してもかなり深いところまで知っていることになる。

少なくとも、上辺だけを知っていたり、ただの契約者だったりしたら知り得ない情報だ。

 

「ま、知ってるものという前提で進めるよ。

 あの道具はあらゆる生物――ま、流石に神なんかは対象外らしいけど。

 それを悪魔に作り変えてしまう、物凄い効果を持った道具らしい。

 私はそれに目をつけてね、人間に悪魔の能力を持たせられないか、と色々考慮した末に

 このロックシードを作ることが出来たんだ」

 

嘘はついていない。

実際、ザクロロックシードはその思想の下に作られたものだ。

しかし、それ以外のロックシードは寧ろ悪魔に対抗するために作られたような節がある。

アーマードライダーシステムなど、その最たるものだ。

 

(フューラーはちょっと言い出すのが遅かったね。私はそれより前から知っていたさ。

 だからこうしてアーマードライダーシステムを作ったんだ。

 貴虎の目指していたプロジェクト・アークじゃない、私なりのプロジェクト・アーク。

 アジュカみたいな奴がいるって事は、それに対抗する術は持つべきだからね)

 

(……悪魔の駒の事を知っている、それに悪魔の駒を参考に作ったというこの錠前。

 確か、これは前に私達を襲ってきた黒い足軽兵のベルトについていたものに似ているわね……

 

 ……と言う事は!)

 

リアスらは、この企業見学の前に駒王町で天道連が変身した黒影に襲撃されていた。

その際に、戦極ドライバーは回収できなかったものの

ロックシードについてはその大まかな要素を知ることが出来ていたのだ。

それが故に、リアスは凌馬に対する疑惑をさらに強めることとなったのだ。

 

「……その前に、一つ聞きたいことがあるわ」

 

「なんだい? 私に答えられることならなんでも答えよう。

 ああ、因みに収録してある音声は私の趣味だ、いいだろ?」

 

聞いてない、と返しながらリアスは凌馬を問い詰める。

その顔には、ただの女学生ではなく元駒王町領主としての面影さえあった。

だが、それでも所詮は学生。悪意において、凌馬に翻弄されるしかなかったのだ。

 

「私達は、以前あなたの作ったその錠前をつけた奴に襲われたわ。

 それは、貴方の差し金なのかしら?」

 

「そんなわけないだろう。私はここでロックシードなんかを開発しているにすぎないよ?

 なんで態々君達を襲わなければならないんだい?

 それに、君のその言い分だとまるで銃の製造工場の人間も悪人であるという風に聞こえるよ?」

 

凌馬は確かに天道連へのロックシード横流しを黙認している。

だが、その流通したロックシードをどう使うかなど、そこまでいけばそれは天道連の責任になる。

凌馬は只力を提供しているに過ぎない。得た力をどう使うか。そこまで、凌馬は関与しないのだ。

 

(……やはり思った通り、天道連は少し過激すぎるきらいがあるな……

 ま、こっちから冥界に攻め込むルートが確立していない以上こっちにいる悪魔を叩くより他

 仕方ないってのはわかるけど……

 

 それに、やはり黒影じゃリアス・グレモリーを倒すことはできないか。

 それならそれでデュークのテスト相手に相応しい相手と言えるだけだ。

 頃合いを見て、仕掛けるとしようか。

 貴虎や湊君のエナジーロックシードからもデータは得られるけれど

 サンプルは多い方がいいからね)

 

凌馬の後ろ手には、レモンの絵柄が象られたクリアブルーの錠前が握られていた。

 

 

――――

 

 

凌馬によるユグドラシルの企業説明は、その後驚くほどスムーズに運んでいた。

というよりは、ロックシードを解説して以降は悪く言えば投げやりに近い態度で

凌馬は開発した製品を紹介していたのだ。

 

何せ、中には凌馬が開発したものでは無いものも含まれていたのだから。

現在警察――超特捜課で運用されているものの中には

確かにユグドラシルで製造されたものもあるが、その開発に凌馬は関わっていない。

特殊強化スーツのコンペに、黒影は間に合わなかった――というのもあるのだが

マフィアにも横流ししている都合上、凌馬がコンペに出すことを渋ったのだ。

 

それは別に警察の面子を立てるとかそんな殊勝な理由ではなく

現状維持の方がアーマードライダーシステムの使用者が確保できるという

そういう理由に過ぎない。要は、モルモットを確保したいのだ。

 

凌馬は色々な意味で天才であるため

被験者の量より質を重視する警察の特殊強化スーツコンペより

数を確保できるシステムの横流しを選んだのだ。

有象無象の対象だが、それでも数が確保できれば強い。

足りない部分は、斬月や龍玄を使えばいい。そう考えていたのだ。

 

そのおかげか、アーマードライダーシステムの開発は順調に進み

バージョンアップしたモデルの開発も成功したのだ。

既にロールアウトしたメロン、ピーチのエナジーロックシード。

自身がデータ取り用に持っているレモンエナジーロックシード。

まもなく完成するチェリーエナジーロックシード。

これら、新世代のアーマードライダーシステムで悪魔やアインストに対抗するつもりなのだろう。

 

「さて、長話に付き合ってもらって疲れただろう?

 少し休憩を挟むとしよう、光実(みつざね)君」

 

「ええ、お昼を持ってきますね」

 

光実が席を外した少し後、凌馬も席を外してしまう。

残されたのは、オカ研メンバーのみだ。

 

「……朱乃、どう見る?」

 

「完全に私達悪魔や三大勢力を意識した設計ですわね。

 悪魔の駒の構造を人間の技術力で真似られるとは思えませんけど

 違うアプローチから攻められたら、わからないですわね」

 

リアスは、完全にロックシードというアイテムに危機感を抱いていた。

以前自分たちを襲った黒影のコアとも言える装置であるため無理もないのだが。

 

だがその襲ってきた黒影とのつながりは

確かにここで作られたものだということくらいしかわからなかった。

それどころか、その黒影よりも高性能らしきものが次々開発されているという。

量産はされていないようだが、リアスにしてみれば気が気でなかった。

 

「そのアーマードライダーとやらが人間を襲っていない以上、狙ってるのは悪魔……

 何よこれ! 完全に人間の悪魔に対する宣戦布告みたいなものじゃない!」

 

(……宣戦布告は言い過ぎだよ。政府で運用しているわけじゃないんだしさ。

 フューラー演説に端を発した反悪魔感情が、こういう形で表れているだけじゃないのかな?)

 

アーマードライダーの作られたであろう理由の推測に、リアスは激昂する。

そんなリアスを冷ややかな目で見ている木場だが、その目の冷ややかさには

本人でさえも気付いていなかった。

 

「で、でもさっき会社の人に聞きましたけど

 他にもインベスやアインストと言った怪物相手にも戦ってくださってるみたいですし……」

 

「何よそれ! 私達悪魔はインベスやアインストと同じ穴の狢って言いたいわけ!?」

 

アーシアのフォローにも、リアスは当たり散らしていた。

昨今の悪魔に対する迫害とも言える対応は、確かに純血悪魔であるリアスにしてみれば

許しがたいものがあったのだろう。だがここは人間界だ。

領域を侵してくる悪魔に対して、対策を練るのは何らおかしなことではない。

自分の身を護る、ただそれを純粋に行っているのだ。建前上は。

 

「よしなよ、リアス君。人間にちょっかいをかけてきたのは悪魔が先だろう?

 彼らが悪魔を拉致監禁するとか不当に扱っているならともかく

 そうでないなら、国交も交わしていない相手がいること自体が問題さ」

 

ナイアにも窘められ、リアスは黙り込んでしまう。

この時代は、悪魔にとってとても過ごしづらいのかもしれない。

リアスは、現状を時代のせいにしていた。実際は因果応報という言葉がふさわしいのだが。

ナイアの言う通り、実際には悪魔が人間や他の種族を悪魔の駒を用いて

半ば強引に拉致紛いの事をしている。

そう考えれば、過激ながらもアーマードライダーシステムは

民間が悪魔に対抗する術を得たという事の証左であった。

そしてそれは、悪魔にとっては望ましくない話とも言える。

 

(……とはいえ、アジュカは何処までこの事を知ってるんだろうねぇ。

 いつまで凌馬の好きにさせておくつもりなのかな?

 

 ……それとも、「アレ」に夢中で後の事はどうなってもいいのかな……?)

 

ナイアが思いをはせていると、外が急に騒がしくなる。

緊張が走るオカ研のメンバーの下に、光実が走りこんできた。

 

「皆さん、落ち着いて行動してください。タワーで爆発事故が起きました。

 これから外まで誘導しますので、僕についてきてください」

 

オカ研のメンバーは知らない事だったが、この爆発事故こそが

黒の菩提樹が起こした自爆テロであった。

 

彼らの手には、凌馬が作るだけ作って放置したザクロロックシードの初期型が握られていた。

彼らはうつろな目でこう呟き――

 

 

――救済を。

 

――我らが主をこの地に。

 

――忌まわしき邪悪な世界樹を焼き払い、真なる統馭者を再臨させん。

 

 

ザクロロックシードが赤く輝き、タワー内部に爆炎が広がっていった。




いくらかロックシードが作られてますが、やはりオレンジとバナナはありません。
ドリアンは言及されてませんがあります。この場にないだけで。

マスカットはオリジナル。色がついていないので、まだ未完成品。


黒の菩提樹の背後にいるのは……
「統馭者」という単語がヒント。

一応、既に出ている奴ですよ?

テロが起きたので、次回以降いよいよ戦闘パート……?

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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