何とかキリのいいところまで書けたので投下します。
次回は再び未定となります、ご了承ください。
『タワー内部の全警備員に告ぐ!
現在、ユグドラシルタワー内部の多数のフロアで爆発による火災が発生!
被害、負傷者の有無は未だ不明、各警備員は負傷者の保護、並びに
社員の避難誘導にあたれ!
なお、錠前を持った不審人物が数名確認されている!
繰り返す! 現在、ユグドラシルタワー内部の多数のフロアで――』
爆発が起きた。
正直言って、どこかを見落としてないかと何度も思い返した。
だが、何も思い浮かばなかった。
『今はごちゃごちゃ考えている場合か、被害状況を確かめるぞ』
フリッケンに促され、俺は分身を総動員してタワー内の状況の把握に努めた。
だが、不審人物はいなかったはずだ……
……アインストみたく転移してきたのならば、そりゃあ打つ手も無いが。
だが、そういう情報は入っていないし、分身もアインストを見ていない。
精神支配を受けた、とかなら見落としもあるかもしれないが、考えだしたらキリがない。
そんな中、会議室周辺を警護している分身から情報が入る。
どうやら、会議室周辺は今のところ無事らしい。よかった。
――ならば、他のところはどうだ? 俺は必死に情報を集めようとした……その時だった。
突如として、アモンに体の支配を奪われた。
そして俺が立っていた場所には、鉄パイプが振り下ろされていたのだ。
「我らが主の世界のために……救済を……」
「ぼさっとしすぎだぞセージ。俺がいなかったら、どうなっていた事か」
アモンの言う通りだ。俺自身の身の安全の確保をすっかり忘れていた。
鉄パイプを振り下ろした主は……ユグドラシルの社員だった。
どういうことだ!? 下手人は、ユグドラシルの社内にいたって言う事か!?
それに鉄パイプが振り下ろされ、叩きつけられた床を見ると
とても人間の力で叩きつけられたものとは思えないクレーターが出来上がっていた。
まさか……
ユグドラシル、ひいては
「いや、こいつは悪魔じゃねぇ。悪魔特有のにおいがしやがらねぇ」
俺の仮説は、アモンによって否定された。悪魔であるアモンが言うのならば、信憑性もある。
だが……だとするとこいつは一体何なんだ?
ただの人間に、ここまでの力が発揮できるとは考えにくい。
何らかのドーピングが施されているとしか考えられないが……
『アモン、代わってくれ! 奴らの力の正体を探る!』
「そうしたいのは山々だけどよ……囲まれてるぜ、俺ら」
そう。アモンに交代したという事はフリッケンの力を維持できなくなるという事。
そうなれば、フリッケンの力で現出させていた分身はすべて消える。
分身が押さえていた下手人が、一気にこっちにやって来てしまったのだ。
「主の教えを受け入れぬ者に……鉄槌を……」
虚ろな目で、こっちを狙っているユグドラシル社員。
悪魔の駒もない、普通の人間だったらこれは下手に手が出せない。
『アモン、何とか殺さずに切り抜けられないか?』
「甘っちょろいこと言ってるなお前。言いたいことはわかるがよ、それが通るような状況か?」
ぐ……アモンの言いたいことはわかる。だが、ここで殺人を犯してしまうと
後が面倒というのもあるし、要らぬ問題に発展しないだろうか。
だが、状況はアモンの言う通りにしかならなかった。
振り下ろされる鉄パイプを躱しながら、アモンは反撃を加えている。
一応、超音波の矢や熱光線、空気の刃と言った殺傷力の高い特殊能力は使ってないみたいだが。
しかし、いくらアモンの力があるとはいえ、相手も強化されているのに
そんなちまちました戦い方をしていては、事態は好転しないのは必然と言えた。
「どうすんだよセージ。これじゃキリねぇぞ?」
『くっ……』
囲まれた時の定番としては、通路に誘い込んで
一度に相手する数を物理的に減らすことが挙げられるが
この状況では誘い込むのも難しそうだ。なにせここはそれほど天井が高くないので、飛べない。
さらに包囲網の手薄なところを狙うにしても
その隙を作らせてくれない位に次から次に湧いてくる。
自我が無いようなリアクションしかしていないが、それだけに統率されているという事だろうか。
……やりにくい。
――
声と同時に伏せると、眩い光と轟音が辺りを包んだ。
いつの間にか、アモンから体の支配権は戻っていた。
って事はさっきの光と言い、閃光弾を誰かが使ったみたいだ。
そして聞きなれない言葉って事は、まさか――
「バッカモーン! 何をしているの!
ワテクシは肝心な時に手を抜けなんて教えた覚えはなくてよ!」
視線の先には、ベレー帽に迷彩服の所謂アーミールックの偉丈夫がいた。
凰蓮軍曹だ。どうやらフラッシュグレネードで事態を解決したみたいだ。
ああ、それでアモンが引っ込んだわけか……
「凰蓮軍曹! すみません、ですが相手は人間――」
「
いくら相手が人間だといっても、相手はこっちを殺しにかかってきているのよ。
そうなれば、手を抜けば殺されるのはアータよ!
いいこと? 戦場において相手の命の心配をするような浮ついた考えで動くのは
アマチュアのやる不完全な仕事、それも何も知らない、知ろうともしない素人よ!
プロフェッショナルなら、まず何としても自分が生き残る道を探しなさい。
相手を生け捕りにするのは、それからでも遅くはなくてよ!」
過剰防衛は適用されないのだろうか、と気になったが言ってる場合でもない。
アモンに交代しているならともかく、鉄パイプの直撃なんぞを脳天に食らったら
俺の身体の方はただでは済まないだろう。折角取り戻したのに、それは困る。
「それよりボウヤ。アータ、
「す、すみません」
凰蓮軍曹の突然の指摘に思わず狼狽え、平謝りしてしまう。
だが、その後に続いた言葉は叱責の言葉ではなかった。
「ワテクシは力は使うべきところでは使いなさいとも言ったわよ。
それで、今起きている事態の情報収集はどれほど進んでいるのかしら?」
「それなら――」
俺は凰蓮軍曹に今までの経緯を説明した。
タワーで爆発が起きた事、タワー内部を分身を使って調べてみたが特に異常は無かった事。
爆発は、本当に前触れもなく起きた事。分身から得られた情報は、本当にそれ位だ。
「ふーむ……確かにワテクシが鎮圧したのもユグドラシルの社員だったわね。
内部から情報が洩れている危険性もあり得るわ。そこはワテクシが突き止めるから
ボウヤは避難誘導に回りなさい」
記録再生大図鑑を使えば、そっちを調べるのは容易い。
だが、その後俺でうまく立ち回れるか? 相手は大企業も大企業、ユグドラシルだぞ?
その事を考えれば、俺が行くよりは凰蓮軍曹に頼んだ方がいいかもしれない。
大人のやり取りを、俺がうまくできるとは思えないし。情報収集ならともかく。
そう考え、俺は今後を凰蓮軍曹に頼むことにした。
「わかりました、凰蓮軍曹も気を付けて」
「
凰蓮軍曹を見送りながら、俺も避難誘導に回る。
こうなった以上、タワー内部は危険だ。となると外に出るしかないが……
……うん? 外? 外って言えば……!
俺は慌てて、レーダーを起動させた。
この状況で、クロスゲートからアインストが出てきたりしたら厄介だ。
外に避難させた人達を一網打尽にされるわけにはいかない。
幸い、今のところ外にそういった気配はないが……
動いている以上、いつそうなったっておかしくない。
警戒しながら外への道を確保しようと歩き出した矢先――
「
「
目の前に現れたのは黒い足軽の鎧に中国語……
タワー内部の混乱に乗じて仕掛けてきたか!
放置していたら道を確保できない、ここは……戦うべきか!
SOLID-SWING EDGE!!
刃のついた触手を実体化させ、黒影に立ち向かう。
やはり黒影の鎧部分には、これではダメージは与えられないみたいだが
あまり派手な攻撃も避けたい。瓦礫で避難経路を潰すわけにもいかない。
槍よりリーチは長いから、その点で優位に立てるか……?
『セージ! あいつら槍以外に武器は無い、槍を奪え!』
フリッケンのアドバイス通り、黒影の槍――
相手の武器を奪う、その点においても触手の実体化は有効だった。
触手で影松を奪い取り、逆にベルトのバックル部分を影松で破壊する。
このアーマードライダーシステムの弱点は、既に検索済みだ。
どんなに優秀な装備でも、心臓部を破壊すれば機能停止できる!
ただ、そうすると影松も消滅してしまうがこれは仕方がない。
変身の解けたマフィアは適当に締め上げて、その辺に放り投げる。
襲撃してきた黒影は、粗方倒せた。しかし……
……ユグドラシルって会社と、台湾マフィアである天道連の接点が、今一思い浮かばない。
黒影そのものはユグドラシルが作ったものだとしても、だ。
どっかで天道連とユグドラシルが繋がってるんだろうが……わからん。
それにしたって、ユグドラシルの方の様子がおかしすぎる。
明らかに正気じゃない言動に、尋常じゃない力。
悪魔の駒じゃないとしたら、一体何なんだ?
そもそも、ユグドラシルって会社自体がかなり怪しいが……
……今考えていても仕方がない、無事な人を集めて外に逃がさないと。
そう決断し、俺はさらに移動を開始した。
――――
移動の途中、俺はオカ研の連中……と言うか祐斗の事を思い出した。
あいつらもここに来ているという事は、この騒動に間違いなく巻き込まれているだろう。
悪魔の駒があるなりグレモリー眷属だったりしたなら
魔法とかで連絡を取る方法はあったんだろうが、今の俺にはそんな便利機能は無い。
故に、人間の方法で連絡を取る。つまりスマホだ。
混線している様子もなく、あっさり祐斗に……
……繋がらなかった。
ただならぬものを感じた俺は、十数コールを何度かしつこくかけた。
それが三回目程度で祐斗が出たが……
『ごめんセージ君! 今戦闘中なんだ! 青くてレモンの鎧を着た黒影の仲間みたいな奴に……
……うわっ! くっ、こっちは何とかするけど、後でかけ直すよ!』
「お、おい祐斗!?」
そう言うなり、電話は一方的に切られた。
状況はよく把握できなかったが、取込み中でかつ危険な状態に間違いはない。
しかし……青くてレモンの鎧? なんのこっちゃ? まぁ黒影も黒いマツボックリの鎧だったしなぁ……
装備のイメージが今一湧かないが、電話の後ろでは結構やばげな様子だった。これは祐斗の加勢に行くべきか?
その事で逡巡していると、俺のスマホの方に連絡が来た。祐斗……ではなく、氷上さんだ。一体何が?
『宮本君、不味いことになった! 天道連がユグドラシルタワーに押し寄せてきた!』
「氷上巡査、天道連はこちらでも確認しました。
それに、奴らが使用している装備はユグドラシルのものです」
『やはりか……あっ、すまない、少し待ってくれ…………
…………宮本君、大変だ! 外にアインストが現れたという報告が入った!』
アインスト!? やはり現れたか! これは……恐れていたことが現実になったな。
こうなった以上、祐斗の加勢に向かってる場合じゃない。
外のアインストを何とかして食い止めないと!
それより、この事態は前に経験したことがある。
以前五大勢力会談が駒王学園で行われた時、
あの時は、会場にアインストが攻撃を仕掛けてきて、外堀を禍の団の協力組織である
日本の指定暴力団、
今回は天道連が会場を襲撃し、アインストが周囲に現れて外堀を埋めるという逆パターンだが
人的被害を考えたら、住宅街にアインストが現れる方が格段にマズい。
何より、今のプランでは正気を保っているタワー内部の人達を外に逃がす手筈になっている。
その外に出た時に、アインストにやられてはおしまいだ。
そうならないために、ここは俺が行く。
「氷上巡査、アインストは俺が何とかします! そちらで避難経路の確保を願います!
外の安全確保は、俺がやります!」
『……くっ、確かに神器やアモンの力のある宮本君ならば……
わかった、なるべく手早く済ませるから、無理だけはしないように!』
氷上巡査にタワー内部の安全確保を頼み、俺は一路外へと駆け出す。
上空を見上げると、何もない――実際には光学迷彩でクロスゲートが隠されている――から
光が降り注ぎ、アインストが地上に降り立つ。
その様子を眺めている沢芽市民も、インベスは見慣れていても
アインストには驚きを隠せていないようだ。俺に言わせば似たようなもんなんだけど。
そのせいか、逃亡の足が少し鈍い。こりゃまずいな。
――被害を広げないためにも、ここは何としてもアインストを食い止めないと!
ザクロ持った社員は、黒の菩提樹の信者です、念のため。
セージはその情報を知らないので今回描写してませんが。
そしてオカ研を襲撃した青くてレモンの鎧を着た何者か。
一体何ュークなんだ……
次回はオカ研視点になる予定です。
それまで、またしばしお待ちください……