ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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筆が進んだと思ったらPC異常。
びくびくしながら書いてます。


Invitation of the evil god Aパート

ユグドラシルタワー・会議室。

 

日本神話と仏教からなる神仏同盟と北欧神話体系の会談が行われていたが

その最中、黒の菩提樹による自爆テロが発生、会談は中断を余儀なくされた。

さらに畳みかけるように、ユグドラシルタワー上空に現出したクロスゲートより

アインストとインベスが出現。それに立ち向かうべくユグドラシル社の

アーマードライダー部隊が出撃、警備についていた警視庁、自衛隊と共に

アインスト・インベス軍団との戦いが繰り広げられ

会談に来ていた神仏たちは迂闊に動けない状況に陥ってしまったのだった。

 

彼らの力ならば、この場にいるアインストやインベスを一掃することは容易い。

だが、それではユグドラシルタワーの、ひいては沢芽(ざわめ)市の人間を巻き込みかねない。

そのため、超常の力を不用意に行使することはできないのだ。

その上、ユグドラシルタワー内部には会談そのものを快く思わない天道連(ティエンタオレン)が侵入している。

会議室から外に出ることは、戦場を広げてしまう事にもつながりかねないのだ。

 

「我としては、このタワーごとアインストやインベスを蹴散らしても構わんが。

 あと我らに歯向かう身の程知らずな賊共もな」

 

「滅多なことを言うでないわロキ。名前こそ同じじゃが

 ここは我らのユグドラシルではないのじゃぞ」

 

過激な事を言うロキを、オーディンが窘めている。

しかし、手早く片付けるのならばロキの意見も尤もである。

それ自体は日本神話の須佐之男命も同意しているが

こちらもまた姉である天照や兄弟神の月読に窘められていた。

 

「そうは言うけどよ月読、じゃあどうやってこの事態を収拾つけるんだよ?」

 

「……人々を信じるより他なかろう」

 

月読の言う通り、ユグドラシルには人間が開発したアーマードライダーシステムがあり

また今回の会談に合わせ警視庁や自衛隊が対怪異用の装備を持参した上で警備についていた。

これらならば、確かに出来るかもしれないが。

 

「人の力……ですか。恐れながらツクヨミ様。

 私には、あのような面妖な鎧でアインストやインベスを

 どうにかできるとは考えにくいのですが……」

 

「口を慎まぬかロスヴァイセ。お主もヴァルキリーの端くれならば、人間の力こそが

 エインヘリャルにとって重要なものであると共に

 わしら神々をも打ち破るやもしれんのじゃぞ。

 

 ……現にあの白い鎧、呉島貴虎(くれしまたかとら)を見てみよ。

 統率を執り、アインストやインベスの軍勢にも一歩も引かぬではないか。

 お主、ヴァルキリーとしてはまだまだじゃな」

 

ロスヴァイセの疑問は、貴虎という明確な反論が存在することで拭い去られた。

人の世界は、人の手で守らなければならない。

そのために使う力が、異質なものであったとしても。

 

(フン。セラフォルー辺りは何というだろうな。

 人間どもは自分達の世界を自分達で守っているだけで

 別に貴様ら悪魔を否定してはいないはずなんだがな……

 これもフューラーが現れてから、微妙になりはしたがな)

 

外の喧騒を他所に思案に耽るロキだが、そうも言っていられない事態が起きた。

結界を張っているはずの会議室に、天道連と黒の菩提樹の信者が入り込んできたのだ。

 

「神は……唯一の存在があればいい……」

 

人類敵人、死了(人類の敵め、死ね)!」

 

天道連は外で戦っているものと同型のアーマードライダーシステム、黒影(くろかげ)を用いており

黒の菩提樹の信者も傍目にはユグドラシルの社員にしか見えない。

このちぐはぐさは、この場にいる神々全員が感じ取った。

 

黒の菩提樹は何者か知らぬ神を崇め、異教の神である神仏同盟や北欧神話の神々を否定している。

菩提樹という単語から、仏教勢力の一部かとも思われたが

大日如来もいるこの場に襲い掛かってくる時点で違う。

そして天道連はこの場にいる神々全てを人類の敵と見做し襲い掛かってくる。

ここにいる神仏を打ち倒す。それだけならば、利害が一致していると言えよう。

 

……だが、それにしては腑に落ちない点が多すぎる。

何故天道連が黒影を使っているのか。何故黒の菩提樹がこのタイミングで蜂起したのか。

これでは、まるで禍の団(カオス・ブリゲート)ではないか。

 

彼らの統率のとれなさは各神話体系や、今となっては国連も知るところではあるが

目の前の者たちの行動原理は、極めて禍の団に近いものであったのだ。

 

「お釈迦様は言っていた――

 

 『まず、自分を正しく整えてから他人に指摘しなさい。

  そして、他人に指摘したことは、自分も実行しなければなりません』

 

 ――とな。盗んだ力を我が物と錯覚したり、己を見失っていながら他者を責めるお前達に

 俺達を倒すことはできない」

 

大日如来の言葉は、そのまま旧来の禍の団にも言えた事である。

だが、大日如来も、この場にいる神々も知らない。

 

――既に旧魔王派をはじめとした禍の団は、アインストによって統率されていることを。

 

 

――――

 

 

会議室になだれ込んだ天道連や黒の菩提樹の信徒が、神仏に返り討ちにあっている頃

アインスト・インベス連合軍の本隊から離れた位置に、駒王学園の生徒が数名いた。

飛び出した姫島朱乃を追いかける形で出てきたリアスらだ。

幸か不幸か、ほとんどのアインストやインベスは斬月(ざんげつ)・真らユグドラシルの本隊に向かっており

リアスらを足止めするアインストも、インベスもほとんどいなかった。

それは逆に、飛び出した朱乃を止めるものが誰もいなかったことも意味していたが。

 

「……どうやら、相当な勢いで飛び出したみたいだね。僕と祐斗君で先行して彼女を探そう。

 祐斗君、二手に分かれることになるけれどいいかい?」

 

「敵の数も少ないですし、その方が良さそうですね。

 部長、僕と布袋芙(ほていふ)先生で副部長を探します。部長はアーシアさんを」

 

「……そうね。先生、祐斗。朱乃をお願いね」

 

スピードに優れる木場と、応用力の高いナイアが朱乃の捜索に出る。

単純に、リアスは索敵能力がそれほど高くなく

その上でアーシアという戦力面ハンデを負った状態では

この二人が中心となって動かざるを得ないという状況でもあるのだが。

ともあれ、戦力的にも重要な二人を欠いた状態でリアスはユグドラシルタワー前で待機する……

いや、せざるを得ない状態になったのだった。

 

「副部長さん、無事だといいですけれど……」

 

「大丈夫よ。朱乃は私の『女王(クィーン)』。アインストやインベスはおろか

 堕天使相手にも引けをとることは無いわ」

 

いつの間にか呼び出していた蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)を抱えながら、不安げに漏らすアーシア。

リアスはその不安をかき消さんと自信満々に答えるが

その言葉を裏付けるには実証が足らなさ過ぎた。

 

まず、朱乃は禍の団英雄派を率いるフューラーの精鋭、聖槍騎士団を前に

なすすべもなく敗れたことがある。

その時には「自身の持つ力の全てを出さなかったが故に敗れた」と指摘されたが

今回もそうなるのであろうか。その答えを、少なくともアーシアは知らない。

 

(……襲ってきたのは堕天使。けれど妙ね、アインストやインベスばかりだというのに

 何でそこに堕天使が来るのかしら? アザゼル――シェムハザは何も言ってきていない。

 だとするとこれは堕天使の独断かしら?

 

 ……いえ、そもそも堕天使と悪魔は和平にこぎつけていない。

 私達に関係なくここに来たっておかしくはない。

 でも、なんでこのタイミングで? クロスゲート絡みだとでもいうのかしら?)

 

思案を巡らせるリアスだったが、その答えが出ることは無かった。

ただ、その暗雲の向こうでは彼女の腹心の心情を示すかのように雷鳴が轟くばかりであった。

 

 

――――

 

 

「――バラキエルぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

憤怒の形相で、堕天使の軍団へと突っ込んでいく朱乃。

彼女に生えた翼は悪魔と堕天使のそれが対になっている。

彼女の出生を物語るそれは、同時に彼女の価値観への楔となっていたのだった。

 

「母様を、姫島の皆を殺し、どの面を下げて私の前に現れたぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

慟哭と共に、稲妻が堕天使の集団を襲う。

散り散りになる堕天使だが、その黒い翼からは緑色の触手が生え

心臓部分には赤い宝玉がその存在を主張している――そう。

 

――彼らは既に、堕天使であり、アインストである存在なのだ。

 

バラキエルの黒い鎧にはアインストリッターを思わせる宝玉が点在し

バラキエルの精悍な顔には、不可思議な紋様が彩られ

その瞳から光は喪われ、ただ敵を駆逐せんとする獰猛さのみを物語っていた。

 

「彼らは……純粋たる……存在では……無かった……

 故に……排除……そう……お前も……純粋たる……存在では……無い……!」

 

朱乃の稲妻がバラキエルを捉えることは無く、バラキエルから放たれた雷が逆に朱乃を襲う。

その力は、朱乃のそれとは比べるべくもない。

アインストと化したことでリミッターが外れていれば、猶更だ。

 

――母の仇に、バラキエルに、勝てない。倒せない。殺せない。

 

雷に撃ち落とされた朱乃は、天に手を伸ばし、ただ怨嗟の声を上げていた。

 

「バラキエル……母の仇、私を苦しめた元凶、全ての不幸の源

 存在が許せない、憎い、母様を裏切った愚かな男――

 

 ――殺す、殺す、殺す、殺す、死ね、死ね、死ね、死ねシネシネシネシネシネシネシネ――」

 

闇雲に稲妻を放つ朱乃。もはや、その眼には何も見えていない。

憎悪のみに囚われた、哀れな人形。

 

 

――さて。『君達』はこんな存在を……どこかで見たことはあるだろう?

  そう、この『歪んで作られた世界』で。

 

 

誰に語り掛けるでもなく、ただ独り言を呟きながら布袋芙ナイアが朱乃に加勢しようとする。

しかし、今の朱乃が加勢を素直に受けるだろうか。答えは否である。

 

 

――姫島朱乃。君の『お仲間』をここに呼んでおいてあげたよ。

  『御同輩』同士、仲良く戦いなよ。

  僕と、僕の求める『英雄』のためにね……フフフフフフ。

 

 

稲妻に割り込む形で投擲された剣。それは、アインストと化した堕天使を易々と貫き

そのまま地面に突き刺さる。その突然の出来事に、朱乃がふと我に返る。

 

「……!? わ、私は……

 

 ……こ、これはアスカロン!? どうしてここに……」

 

――そんなの、決まってるじゃない。私がここにいるからよ。

 

堕天使を蹴散らしながら朱乃の下に歩いてくるのは、赤と黒で彩られた

艶めかしいボンデージスーツとも言うべき服に身を包んだ――

 

――紫藤イリナであった。

 

彼女の身を包むボンデージスーツは、かつて教会で支給されていた

戦闘服の面影を僅かに残しながら、まるで赤龍帝の鎧のような意匠を埋め込まれた上に

高校生が着るには些か扇情的過ぎるデザインであった。

その血のせいか規格外とも言える朱乃はともかく、彼女のかつての同僚であったゼノヴィアにも

勝るとも劣らないプロポーションを誇っているのだから

その破壊力は推して知るべし、と言ったところか。

 

「ああ、これ? ダーリンの見立てなの。いいでしょ?

 これ着ちゃったら、あんなダッサイ教会の服なんか着られないわよ。

 それにこれ着てると、いつでもダーリンに抱かれてるみたいですっごくいいのよ。

 

 ……あ、わかんないかもしんないけど」

 

紅潮させながら語るイリナに、さっきまでの暴走も忘れて朱乃も呆気に取られていた。

死地において、イリナは半ば性的興奮までも覚えているのだ。

 

「な……な……」

 

「……ねえ。私としてはあんたなんかどうでもいいんだけどさ。

 ダーリンが『あんたを助けろ』って言うんだから、助太刀に来たの。

 さっさとこんな奴ら殺すわよ。

 出来れば、ダーリンが来る前に。あ、それともあんたもダーリンに会いたいの?

 いいけど、私からダーリン取らないでね? ダーリンに限ってそんな心配いらないけれど」

 

言うだけ言って、イリナは突き刺さったアスカロンを乱雑に引っこ抜き

アインストと化した堕天使を次々と切り裂いていく。

 

かつて、アスカロンは龍殺しの聖剣として伝わっていた。

しかし、神の消滅とその隠蔽の事実を知り

天界と信じていたものに裏切られ絶望したイリナが暴走。

ミカエルをアスカロンで突き刺すという凶行に走る。

 

それ以降、アスカロンには龍の他に天使をも殺す

「聖魔剣」としての性質も加味されることとなったのだ。

 

アインストと化したとはいえ、堕天使。即ち、かつて天使であった存在であるならば

アスカロンの特効からは逃れられない。

アインストへの特効ではなく、天使――堕天使への特効として

アスカロンは有効に振るわれていたのだ。

 

しかも、イリナは持ち逃げした擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)までも活用している。

擬態の聖剣を用いて作った盾で、アインストと化した堕天使の光の槍を弾いているのだ。

 

この目の前の事態を、まだ朱乃は呑み込めていない。

イリナの話は聞いていた。だが、その彼女が目の前に豹変した姿で現れて

アインスト相手に一方的な戦いを繰り広げているのだ。

 

 

――いいのかい? このままだと、君が殺すべき相手を彼女に取られてしまうよ?

 

 

朱乃の耳に、ふと「何者か」の声が響く。

それは、耳を傾けてはならない、深淵からの囁き。

悪魔が悪魔の囁きに耳を傾ける。

当然の事なのかもしれないが、皮肉めいたものも確かに存在していた。

 

 

「……そうだ。目の前に母様を殺した憎い奴がいる。この手で殺したいほどに憎い奴がいる。

 私が殺すんだ。私が、この手で……」

 

イリナの加勢のお陰で、バラキエル――アインストバルディエルの取り巻きの堕天使は

軒並み倒されていた。そのお陰か、朱乃の攻撃も一直線にアインストバルディエルを捉えたのだ。

 

 

――もう一歩を、僕が背中を押してあげよう。

 

 

さらに、回避させまいとアインストバルディエルの影から伸びた手が、動きを抑え込む。

ナイアの神器(セイクリッド・ギア)、「群像の追憶(マス・レガシー)」によるものだ。

 

朱乃の稲妻がアインストバルディエルのコアが存在する胸を貫いた瞬間。

 

 

――あ、け、の……

 

 

その瞳には、今までのものとは違う光が確かに宿っていたのだった。

しかしそれを、朱乃が知ることは無い。

 

――アインストバルディエル、いやバラキエルの自我は

彼に埋め込まれたアインストのコアが打ち砕かれた瞬間、確かに戻ったのだ。

 

だが、それではあまりにも遅すぎた。そう、彼は理解してしまったのだ。

 

異界から現れた異形の怪物に不覚を取った事。

そして自分が最愛の妻を殺してしまった事。

最愛の娘に憎しみを向けられた事。

 

 

――家族と分かり合う機会を、永遠に喪ってしまいそうな事。

 

 

――わ、私は……しね、ない……

  あけ、の……の……ため……にも……

 

 

娘の稲妻に貫かれ、そのまま地に墜ちたバラキエル。

今まで自分を構築していたコアを失った影響は大きく、五感を著しく衰えさせた彼の下には

幸か不幸か、仇を討ち狂気の笑みを浮かべる娘の姿や声は入ってこない。

朱乃のいる方角に、手を伸ばそうとするも……

 

 

――困るんだよ。君にこれ以上生きていてもらわれると。

 

 

その手を、ナイアの黒いパンプスが踏みつける。

理解できぬまま、手に走る激痛に声を上げるバラキエル。

アインストの再生能力は、すでに失われている。

コアが破壊されたことで奇跡的に自我を取り戻したが

今回は、それが彼を苦しめる毒と化すのだった。

 

 

そして、毒は致死量となって彼の身体の隅々まで既に渡ろうとしていた。




朱乃の妙なフラグ回収のカウントダウン、はっじまっるよー
なお、次回はそう遠くないうちに投稿できる予定です


>イリナ
最後に連れ去ったのが聖槍騎士団なので、そこ経由でナイアが引き取りました。
(もう隠す気が無い敵とのずぶずぶな癒着)
で、心の安定は得たのですが……

ヒントはペルソナ2罪の杏奈(ユッキー廃人ルート)

>バラキエル
本当はもう少しアインストとして暴れさせる予定だったんですが……
朱乃との確執の方が大事だと判断してこんな形に。

えっと。次回、マジで可哀想なことになります。一体彼が何をしたって言うんだ!
ネタバレはしたくないのですが、NTR要素を含むだろうため次回閲覧の際にはご注意を。

>木場
彼も朱乃の援護に向かったのですが、ナイアに擦り付けられるような形で
アインストやインベスの妨害を受けました。

……まあ、彼が向かったところで結果はあまり変わらなかったかもしれませんが。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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