ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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思ったより長引いてしまいました、すみません。
短いですがBパートです、お待たせしました。


Invitation of the evil god Bパート

――わ、私は……しね、ない……

  あけ、の……の……ため……にも……

 

 

己を只只管に憎む娘・姫島朱乃の稲妻に貫かれ、そのまま地に墜ちたバラキエル。

今までアインストへと変異していた自分を構築していたコアを失った影響は大きく

そのために五感を著しく衰えさせた彼の下には幸か不幸か

殺された母の仇を討ち狂気の笑みを浮かべる娘の姿や声は入ってこない。

 

アインストと化したことで、朧気な自我で妻や娘の下に戻ったバラキエルだったが

彼を突き動かしたのは、アインストとしての役割――静寂を乱す、不完全な生命体――

 

――即ち、人間。ひいては己の妻とその一族の排除だった。

 

幸いにして、娘である朱乃はその惨劇を逃れることが出来たが

彼女にとって父は母や姫島の一族を皆殺しにした憎むべき存在として

その日以来、彼女の心の中に巣食っていたのだ。

 

紆余曲折を経て、リアスの下に転がり込んだのも悪魔となることで

自分に流れている堕天使の血を少しでも薄めるため。

父を処罰することなく「なかったもの」として扱った堕天使に彼女は失望したのだ。

そして、己に流れる堕天使の血にも絶望した。故に、自ら悪魔となることを選んだ。

もう半分の人間の血を顧みることなく、堕天使の血を薄めるために悪魔になった朱乃。

 

しかし、結果は人間としての血が薄まるだけで、堕天使の力は消えることが無かった。

その事実に、彼女はさらなる絶望に叩き落された。

仕方なく、自ら堕天使の光の力を封印。何があろうと二度と揮うことは無く。

それが結果としてかつて堕天使が行った「なかったものにする」と遜色ない行為だったとしても。

彼女には、もうこれしか心の平静を保つ術は無かったのだ。

 

それ以来、姫島朱乃はリアス・グレモリーの腹心として振舞い。

駒王学園でもその存在感を確立し。

その一方で、自暴自棄で自堕落な影の面をリアスにはひた隠しにしつつ。

兵藤一誠や宮本成二に粉をかけていたのだ。

 

それが、姫島朱乃という少女が持つ不安定さであり、その不安定を放置した上で

敵と目するバラキエルを前にしたのだ。暴走しない方がおかしい。

そして、外的要因が入ったとはいえ敵討ちは成し遂げられたのだ。

 

――あ、け、の……

 

彼女の心も露知らず、バラキエルは朱乃のいる方角に手を伸ばそうとするも……

 

 

――困るんだよ。君にこれ以上生きていてもらわれると。

 

 

その手を、黒いパンプスが踏みつける。駒王学園オカルト研究部の顧問として

ユグドラシル・コーポレーションの企業見学にやって来ていた、布袋芙(ほていふ)ナイアだ。

ナイアのパンプスに手を踏みつけられているという状況を理解できぬまま

手に走る激痛に声を上げるバラキエル。アインストの再生能力は、すでに失われている。

アインストのコアが破壊されたことで、バラキエルの自我は奇跡的に戻ったのだが

今回は、それが彼を苦しめる毒と化したのだ。

 

「君の役目は終わりだ。『彼』の虚憶の向こうでは、『彼』の子供の師匠としての

 役割が君にはあるらしいけれど……

 正直、そんなのは『退場すべき脇役に、適当に宛がわれた役目』に過ぎないと思うんだ。

 そうでなくとも、君の存在は『彼』の思い描く世界には邪魔なんだ。そう――

 

 ――『彼』と君の娘の愛を阻むものは、たとえ実父だろうと排除するよ」

 

ナイアの姿が黒い影に包まれたと同時に、その姿は赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)

酷似したものへと変化していく。

違いと言えば、目の部分や宝玉の部分が緑色から金色へと変化している事くらいか。

 

 

「そ、その姿は……赤龍……帝……!?」

 

姿が変異したと同時に、遠くにいたボンデージ姿のイリナが駆け寄ってくる。

しなだれかかるイリナの腰を、赤龍帝の鎧は抱き寄せる。

 

「お待たせダーリンっ、邪魔なゴミは粗方片付けたわよ?

 でも……ごめんね? それだけは、あいつに任せたからちょっと汚いままで……」

 

バラキエルを指さし、嘲笑を浮かべるイリナ。

その一方では、赤龍帝の鎧に対し潤んだ熱い目線を向けている。

 

「『ああ、気にすることは無いよイリナ。

  こいつにはまだやってもらわないといけないことがあるからさ。

 

  ……さ、ご褒美だ』」

 

赤龍帝の鎧はイリナをさらに強く抱き寄せ、バラキエルがいるというのに

お構いなくイリナの臀部を撫で回し、それに応えるようにイリナもまた

程よく肉のついた太腿を赤龍帝の鎧に絡みつける。

そして、まるで鎧の持ち主の意思と言わんばかりに

イリナの太腿同様に程よく発達した乳房を揉みしだく。

イリナのあげる甘美な声と、朱乃の狂った笑いが木霊する、異様な光景。

 

イリナのあげる声が一際高まったと同時に、朱乃の笑い声も収まる。

我に返った朱乃が見たのは、己の仇を見下ろす可愛い後輩と

それにしなだれかかる墜ちた教会の戦士。

 

「……あら。あらあらあらイッセー君。どうしてここに?」

 

「『心配だから来ちゃいましたよ、朱乃さん。アインストやインベスだけでなく

  堕天使まで来てるんですから。けれど、俺が来たからにはもう大丈夫っすよ!』」

 

赤龍帝の鎧は、朱乃に向けガッツポーズをとる。

呼吸を整えたイリナが、その様子に不平を漏らす。

 

「もーぅ、ダーリンってば私の事はスルー?」

 

「『そんな事ないよ、イリナはよく頑張ってくれてるじゃないか。俺を信じてくれてるんなら

  俺もイリナに応えないといけないからさ』」

 

尤もらしいことを言っているが、「何かが歪だ」。

目の前の赤龍帝の鎧は「本当に兵藤一誠なのか?」

朱乃が疑問に思うが、次の瞬間その疑問は消え失せた。

 

「『堕天使はイリナのアスカロンで、アインストやインベスは来る途中に俺が片付けました!

  後はこの堕天使ですけど……』」

 

「……そうね、イッセー君。この堕天使だけは、私が、この手で、殺さなければならないの」

 

朱乃の右手に、再び稲妻が走る。バラキエルの五感は衰えているが、殺気には反応していた。

身構えようとするも、コアを失ったダメージで身体は言う事を聞かない。

 

「『わかりました。なら、俺は全力でそれを応援します!』」

 

TRANSFER!!

 

赤龍帝の「譲渡(ブーステッド・ギア・ギフト)」が朱乃に贈られる。

それを受けた朱乃の稲妻は、普段彼女が使うそれよりも遥かに強く

彼女一人で生み出せる力を優に超えていた。

 

「うふふ、イッセー君がいてくれるのなら心強いわ――

 

 ――そう、私に必要なのはイッセー君。母様も、私も顧みない堕天使なんかじゃない。

 イッセー君さえいればいい。イッセー君を愛してあげたいの。イッセー君に愛されたいの。

 ああ、なんで今まで気づかなかったのかしら。こんなにも素敵な子がいるなんて。

 イッセー君がいれば何でも手に入る。私を包んでくれる大きな暖かいもの、それがイッセー君」

 

 

――イッセー君は、私の弟で、恋人で、夫になるべき人で、そして――

 

 

――お父様。パパ。

 

 

「…………ッッッ!!!」

 

 

朱乃が発した言葉に、バラキエルは己の心が砕け散る音が聞こえたような気がした。

姫島朱乃。彼女は父性を求めていた。しかし本来父性を与えるべき存在であるバラキエルは

彼女が幼い頃にアインストと化してしまい、父性の対象足り得なかった。

それ以来、彼女は異性に対し無意識に父性を求めていた。

故に、とてもではないが父性の対象足り得ない同級生や同年代は異性として見做せなかった。

 

これが、彼女の男嫌いの真相であった。

 

そして今、対象は何であれ父性の象徴が手の届く位置にいる。

彼女にとって、それは心を満たすのに十分すぎるほどであった。

そうなれば、もう目の前の崩れ落ちた堕天使など必要ない。

 

 

「うふふ、ありがとうイッセー君。イッセー君がいれば、何も怖いものなんかないわ」

 

「でしょ? あ、でもダーリンは私のだからね?」

 

険悪にならない一歩手前程度に、赤龍帝の鎧の腕に抱き着いたままイリナが朱乃を牽制する。

それを見ても、朱乃は笑みを崩さない。

その様は、かつてイッセーやセージがオカ研に入部する前のそれに近く

兵藤一誠の虚憶の中に映っていた、姫島朱乃の表情にも近かった。

 

「『さ、朱乃さん……やっちゃってください!』」

 

「そうね、二度と私の目の前に現れないで。『薄汚い堕天使風情が』」

 

遠回しに彼女自身も否定しているが、その事に朱乃は気付かない。

ただ、目の前の存在に対する憎悪と、愛を向けている存在が自分を見てくれている事への高揚感。

それだけに支配された彼女にとって、もはや実父であろうとも父性の対象足り得ないバラキエルなど

不要な存在でしかなかったのだ。

 

彼女でも扱える程度の強さで極限まで倍加された稲妻が、バラキエルを叩きつける。

 

 

断末魔の叫びと共に、バラキエルは雷に打たれ、一瞬のうちに炭化した。

かつての輝かしい戦績は、アインストへと変異したことによって「無かったもの」として扱われ。

自我を取り戻した死に際にも確かに彼が愛した妻と娘への謝罪さえも許されず

娘からはその存在の一切を否定され。

 

神を見張る者(グリゴリ)有数の戦士であったバラキエルは、その魂に晴らしきれない無念を抱いたまま

炭と化した黒い羽根と共に消え去ったのだった……

 

「ふぅん、やるじゃない。ダーリンほどじゃないけど」

 

「『流石です、朱乃さん!』」

 

一方、まるでバラキエルなどいなかったかのように盛り上がる赤龍帝の鎧と二人の少女。

朱乃の足はバラキエルだったものがあった場所を足蹴にしているが、その事を誰も気に留めない。

イリナも、朱乃も赤龍帝の鎧しか目に映っていないのだ。

二人の少女の腰に、赤龍帝の鎧の手が伸びる。その瞬間、少女達からは歓喜の声が漏れる。

否。その声は少女のものではなく、既に「女」足り得ようとしていた声であった。

 

「むーっ、ダーリン取らないでって言ったじゃない」

 

「あらあら、私は二号さんでも別に構いませんわよ? 寧ろその方が燃え上がりますもの」

 

イリナという存在がいようがいまいが、朱乃は赤龍帝の鎧の傍を離れるつもりなどなかった。

赤龍帝の鎧のヘルメットに白く細い指が伸び、ある時は啄み、ある時は貪るように

朱乃の唇と舌が赤龍帝の鎧に触れる。負けじとイリナも体を摺り寄せている。

三人での行い、と言う点を除けばそれはまるで恋人同士の睦事に近いものがあった。

 

――当たり前のように行われているそれは、とても歪なようにも映っていた。

しかしそれを、当事者は確認する術を持たない。

 

 

もっと言えば、抜け殻の鎧を相手に自分を慰めているだけなのかもしれないのだ――




……うん、拙作でエロ描写したらこうなるよね……

というわけでバラキエルさん、無念の退場です……
いやマジホントごめんなさい。
一応原作では性癖がアレなだけで(多分)真面目にお父さんしてますから!
真面目過ぎるかもしれないけど。

狂った最中殺されたバルパーや断末魔すら上げさせてもらえず死んだディオドラとは
別ベクトルで無念の退場と相成りました。
これでも番外編でこっそり死んだことが示唆された幾瀬よりマシだって言う……
最期にナイア先生に踏んづけてもらってるけど、ご褒美でも何でもないよねこれ……

>イリナ
何気にハーレムの立ち位置としてはリアスに近くなってます。
朱乃と恋の鞘当てする位には。幼馴染の面目躍如? いえいえ、これは……

>朱乃
とうとうやってしまいました、父殺し。
「親殺しは石ノ森作品に不可欠」って訳じゃありませんが。
その点では、とんでもない改悪だと思います……が。

彼女はどうもバラキエルとの確執を顧みるに
父性を(も?)求めていたのではないかと思ってます。
そして、父の愛を与えてくれないバラキエルに逆切れと言うか癇癪を起していた。
結局これだけの話に帰結するのではないかと思うのです。
で、今回はこの癇癪が拗れに拗れた、と。

悪魔になった理由も拙作では「堕天使の血を薄めるため」というとんでもない理由。
堕天使憎しでこれ位やってもおかしくは無い、と思いこんな理由を付けました。
無論、より力の弱い人間の血が駆逐される結果になりましたが。

因みに、彼女がリアスに勝っている点があります。バストサイズ以外で。

「己の目的のために、家をかなぐり捨てた」点です。
グレモリーのしがらみから結局逃げられなかったリアスと違い
この世界の朱乃は姫島をほぼ捨ててます。
彼女が子供を成せば、再興はあり得ますが。

……ただ、親に愛されなかった子が、子を愛せるかと言うと……

>赤龍帝の鎧
一貫してイッセー名義ではありません。ここミソ。
そもそもナイアが化けてますし。本物は時間城かグレモリー家にいます。
イメージとしてはペルソナ2罪の「淳の理想のパパ」。
この場合、「イリナの理想のイッセー」が形を成したものでしょうか。
なので、包容力や甲斐性が本物と比べ物になりません。

……おかげで薄気味悪いなろう系主人公みたいなムーブを……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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