Toshlがパワーアップしてました。
引っ越し控えてますが、こちらも徐行運転ながら続けられればと思います。
「またお会いしましたな」
気が付くと、そこは一面青で彩られたイーゼルの置かれた音楽室……
つまり、ベルベットルームだ。
そしてその次に飛び込んできたのが、ぎょろりとした目玉の鼻の長い爺さんだったので
思わず俺は飛び起きてしまった。
「おわっ!?」
「失礼、驚かせてしまいましたな。さて、どうやら貴方様は第一の試練を突破したご様子。
その証拠に……先日お持ちいただいたフリータロット、今一度見せていただけますかな?」
爺さん――イゴールの要望に応え、俺はフリータロットを取り出す。
それにしても、この個性的な顔は寝起きに見るもんじゃないな。
……寝起きと言えば、寝起きも最近は騒々しくないな。
少し寂しい気もするが……って、んな事考えてる場合じゃない。
取り出したフリータロットを、俺はイゴールに見せることにした。
床からせり上がって来た机の上に並べられたそれを、イゴールはまじまじと見つめている。
「ふむ。以前よりも力を増したカードがございますな。新たに生まれた絆もあるご様子。
『7』番――戦車のカードから、新たに強い力を感じます」
新たに……? 確かこのタロットの力の源は絆とかの人間関係だったはず。
となると、思い当たる節は
だが正直、俺にはこの「絆の力」とやらがピンと来ない。
そもそも、いくら
俺が使っているのは神器であって、ペルソナじゃない。
それなのに、ペルソナの力を向上させてどうするってんだ?
少なくとも、先日のアキシオン・バスターみたく目立った成果は出ていない。
……アキシオン・バスター……そうだ!!
「貴方様が新たな力を得られ……おっと」
「すまない! 話は後にしてくれ!」
俺はイゴールからフリータロットをひったくるようにして回収し
踵を返してイーゼルの前で絵筆をとっている悪魔絵師の下に駆け寄った。
ニットキャップとサングラスの風貌からは、驚いた様子はあまり見られない。
「タロットは心の雛形だ。心が人の運命を……っと、随分と血相を変えているな。
おそらくだが、この間渡した『アレ』――ディーン・レヴについて聞きたいんじゃないかな?」
「!! 知ってるなら教えてくれ! 俺はあれで、危機を脱しもしたし危ない目にも遭った!
あれは一体、なんだっていうんだ!?」
思わず、俺は悪魔絵師に食って掛かってしまった。
俺の中に、得体のしれないものがあるという事がそもそも気に入らない。
ようやくある程度理解出来てきたところだというのに。
これ以上、俺に危険物を持たせて一体何がしたい、やらせたいって言うんだ!?
「……すまないが、僕も君が期待している答えの全てを述べることはできない。
だが、僕の知る世界ではそのディーン・レヴにまつわるこんな言い伝えがある。
『ディーンの火が、ディスの目覚めを促す』
……とね」
ディス? 通常ディスってのは否定を意味する言葉だが……
何を否定するって言うんだ? 否定の目覚めってなんだ?
記録再生大図鑑で調べようとした矢先、俺の内側から声が聞こえてきた。
『ディス……俺も話に聞いたレベルだが、悪魔王だの冥府の神だのそういう意味合いもあるぜ。
だが、それをセージに持たせた理由がわからねえ。
そんな悪魔に連なる危険物を、どうして持たせた?』
アモンの知識が、俺の足らない知識を補う。
悪魔の王だの冥府の神だの、なんでそんな代物が出て来るんだ。
悪魔の王。それは俺にとっても、アモンにとってもあまり好ましくないワードだ。
少なくとも、今ある知識の中では。
確かにあのアキシオン・バスターはサーゼクスの力に近いものはあった。
だが、それだけで悪魔王と繋げるには、些か乱暴な意見ではあると思うし
そもそも奴は冥府の神なんかじゃない。アモンが言うには、でっち上げられた魔王らしいが。
それに、まだ俺にこのディーン・レヴを渡した理由がわからない。
「……アモンの言う通りだ。そんなものを、何故俺に渡したんです?」
「……君の疑問も尤もだ。以前僕は確かに『僕が持っていても仕方がない』とは言った。
だが、君がそれをどう使うかまでは無責任かもしれないが、僕の関与するところじゃない。
僕らは確かに君に力を貸すが、その力を君がどう使うかまで
僕らは何も口出しできない。しないんだ。僕らは、心の海の中の住人だからね。
だが、心の海から生まれた力。それは現世においてもある一定以上の力を発揮できる。
だから、君はその力で現世の全てを支配ないし破壊することだってできるんだ。
ペルソナはもとより、ディーン・レヴ……ディス・レヴにはそれが出来る可能性がある」
ディーン・レヴもだが……ペルソナって
あれのどこに、そんな力があるって言うんだ……
「人の心には、世界を変えうる力が眠っている……と、僕は聞いたことがある。
ペルソナは、そんな人の心が神や悪魔の雛形を用いて具現化した姿だ。
だからあの彼が使っているペルソナ――アポロと、実在するアポロン神に因果関係は無いね。
そしてここからが重要だが、今君が立ち向かおうとしている相手は
その世界を思うがままに改竄することが出来る相手だ。
それに対抗するには、君もまた世界を変えうる力を持たなければならない」
「
アインストは確かにその感染力や単純な戦力がヤバい。あり得る。
だが、言っては何だが禍の団にそんな世界をどうこうできるほどの危険性は感じない。
元々が自分らの政治的不満をぶつけるための集まりだ。フューラーだってその辺は変わらない。
いつぞや遠目に見たオーフィスクラスならいざ知らず、そのオーフィス――アインストの力に
いいように使われているカテレアみたいなのが幹部クラスって時点で程度が知れている。
フューラーも魔法使い派閥を取り込んでいるとはいえ、主力は人間が使う近現代軍事兵器だ。
人間の力で拮抗、うまくすれば余裕で勝てるだろう……聖槍騎士団以外は。
人間の力で対抗できる相手が世界をどうこうできるなんて考えられない。
つまり、それ以上の敵――黒幕的な何かがいるって事か? オーフィスでなく?
「アインストも、そのアプローチの一つに過ぎない。
とは言え彼らも、『奴』が生み出した存在とまでは言い切れない部分もあるけどね。
今僕が話したのは、その『奴』だ。『奴』は、その気になれば世界さえも破壊できる」
……なに?
今の言い草だと、まるで一度は世界を破壊したことがあるような……!
それが出来るような奴、そんな存在……
「『奴』に打ち克つには、君自身も強くならなければならない。
それは物理的な強さや、強い魔力を持つことじゃない。
君自身の、心の――ペルソナの強さだ。
それには力を行使することはあっても、力に流されるようなことがあってはならない」
『……そのために、こいつにディーン・レヴを持たせたのか?』
アモンの問いかけに、悪魔絵師は黙って首を縦に振る。
そして、すっと俺の目の前にラフスケッチを出してきた。
「既に君も体験したかもしれないが、これは霊魂――特に怨念を吸収して、その力に変える。
その力はディス・レヴとしての生を受けてから発現したものだと記憶しているが……
霊魂――霊的な力を取り扱ったり、死の渦巻く場所に行く際には気を付けた方がいい。
君自身にも、その性質が転移しかねないからね」
俺が……霊魂の吸収を? 力の吸収と言えば、白音さん相手に
そんなようなことをやる羽目になったが……
間違いなく、ここで言っているそれはあんな生易しいものじゃない。
いや、あれもある意味生易しくないが。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、悪魔絵師本人は言いたいことを言い終えたのか
挨拶もそこそこに再びイーゼルに向き直ってしまったようだ。
「君のフリータロットに絵を描こうと思ったが……まだそこまでには至れていないか。
いや、絆の力は一朝一夕で強くなる簡単なものじゃない。
君の歩いた道が、そのまま力になるのだからね。慌てずに正しいと思う道を進めばいいさ。
それに……僕はいつでもここにいる。気が向いたらまた立ち寄るといい。
ここでは、時間は意味をなさないからな」
新たな疑問が生まれた。アインストさえも超えかねない「奴」って何なんだ?
一番心当たりがあるのは、かつて周防巡査らが戦ったって言う「ニャルラトホテプ」だが……
要領を得ない俺は、他の二人――ナナシとベラドンナにも聞いてみることにした。
「……その名も、彼らが戦ったとされるものも、あれが持つ無数の名前、姿に過ぎない。
人の業が形成したる存在。俺に答えられるのは、それ位だな。
人を形成したるものが一つだけでないように、あれもまた幾千幾万の人の上に成り立っている」
ピアノを奏でながら、俺の質問に答える盲目のピアニスト。
言っては何だが、随分と器用だ。
音楽家に限らず、芸術家というのは何らかの障害を抱えているとは聞くが
どうも、俺が知っているそれとは違う気がしてならない。
「俺の事よりも、あれの事よりも、まずお前自身に向き合うべきだな。
お前自身が気付かない、お前の知らない……いや、そうしたいと願っているお前自身と。
お前が現世に生を受けて、六千二十八ほどの夜を迎えながら培ってきた
お前自身と向き合う時。その時は近い……俺には、そう思えてならんのだ」
「俺……自身……」
相変わらず、ここの人の言う事は一々抽象的だ。
以前であった、フィレモンほどではないにせよ。
そう考えれば、まだ理解できる範囲の話だ。夢かもしれないけど。
「私は、『夢』を見ません~♪ 過去を疑わず~♪ 未来を恐れぬから~♪」
まるで夢物語、と呟いた俺の言葉にベラドンナが反応した。
……おい。この人耳聞こえないんじゃなかったんだっけか?
まぁ、これだけ不可思議な場所だと何が起きてもおかしくは無いが……
「だけどあなたは違う~♪ 背負った過去、超えるも潰されるもあなた次第~♪
罪の記憶は何より重く~♪ あなたを蝕む毒となる~♪」
「…………っ!!」
――今、なんで「昔の明日香姉さん」が頭をよぎったんだ。
確かに、俺がしたことは…………
「毒と薬は裏表、人もまた同じ~♪ 受け入れ方、向き合い方で違う姿を見せるそれは~♪
まるで水面に映したあなた自身~♪」
……歌声で、はっと我に返る。
今までここの三人に言われたことを統括すると――
――まるで、俺自身が敵になって出てきかねない
そう、言われている気がしてならない。
だが、そんなことはあるのか?
アインストが似ても似つかない模造品や複製品を作り出すって話は
以前聞いたことがある――そもそも、今やたら出て来てるアインストアイゼンや
アインストリッターだって、元は冥界のアルトアイゼンやヴァイスリッターだ。
しかし、今聞いた話はそんな出来の悪い模造品なんかじゃない。
俺自身が立ちはだかるといったような話。俄かには信じがたい。
結局、ディーン・レヴに関しては悪魔絵師の一存による部分は多分にあるとはいえ
これから来るであろう脅威に対し、周防巡査から渡されたフリータロットと同じく
立ち向かうための力であるという事しかわからなかった……
説明が正しければ、過剰戦力って気もするが。
「……すみませんが、今一度タロットを見せていただけますかな?」
「あっとと……」
イゴールに促され、再びテーブルの上にフリータロットを並べる。
聞いた話だと「7」――戦車のカードから、新たな力を感じるというらしい。
「他には……少しではありますが、『5』――教皇のカードから感じられる力が増してますな。
後は私の予想ではありますが、『6』――恋人と、『10』――運命のカードの力が
向上する……そんな予感がいたします」
カードで言われても、誰だかわからん。
まぁ、こういうのは変に意識するよりは普段通りに振舞う方が結果的にうまくいくか……
「ですがお気を付けください。フィレモン様より伝えられたことと思いますが
貴方様の今後は、より一層厳しいものになるであろうという事を。
そして、たとえ目をそらしても心の中に確かに眠る自分自身の影からは
決して逃れられぬことをどうか、お忘れなきよう……」
「自分自身の、影……」
「左様でございます。こちらから見させていただいたところ、既に影に囚われてしまい
己を失ってしまった方が二人……いえ、三人ほどいらっしゃいます。
影は、弱き心の者を奈落へと誘うためにその手を伸ばしてきます。
彼らは、どうやらその誘惑に抗えなかったようですな」
影……もしや、それは……
俺がはっと気づき、声を出そうとした瞬間
その言葉は、イゴールに遮られた。
「彼らが特別弱かったわけではございません。
全ての人が等しく、影との対面は避けては通れぬものです。
もし、その影との対面を拒んだり、消すなどして強引に避けようとした場合……
……たちまち、その者は自我を失ってしまう事でしょう。
影は消すことはできません。大事なのは、向き合い方でございます。
貴方様も例外ではございません。どうか、己を見失わないよう……」
……なんだか、ディーン・レヴの話をしに来たつもりが
俺の影について延々と聞かされる羽目になってしまった。
結局、これの使い方とかはよくわからない。
ただ、霊魂――霊力の取扱、吸収などについては気をつけろと釘を刺されただけだ。
俺の影、か。正直、実感が沸かないが……
「……どうやら、お時間のようです。
では、新たな絆を紡ぐまでの間、しばしの別れですな……」
以前来た時と同じ、目の前が歪み、青い扉が開くのが見えた次の瞬間――
――俺は、意識を失った。
ベルベットルーム再び。
だけどペルソナが無い以上、ここに来てもこういう事しか……
ちなみにタロットは「2」仕様なので「3」以降とはちと違います。
アルカナの振り分けとか。
>ディーン・レヴ
ディス・レヴでもないのに霊魂吸収能力があることには
悪魔絵師もやや首を傾げてます。
類似品に触発されたのかもしれません。
>ナナシ、ベラドンナ
3以降とんと見ないお二方。
近代風アレンジするなら青ずくめの金目プラチナブロンド髪の女教師が
全書片手に出てくるのが相応しいのかもしれませんが
一応、2仕様ですので……
なので、語っていることは2の時間軸以降を意識してます。
ベルベットルームに時間の概念はありませんが。
>イゴール
いや、寝起きであの顔はヤバいでしょう。
触れているのは勿論彼(彼女)らのこと。
自我を失った~とありますが、これはハーレム加入後のムーブも意識してます。
いや、だって……ねぇ?
ハーレム主にしても、自分の意思で動いているとは俄かには思えない部分がありますので……>原作
>アルカナ
……戦車はともかく、それ以外をここで言い当てたら凄いと思います。
言い当ててもおめでとうの一言しかいいませんが。