ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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筆が進んだのと、Aパートが異様に短かったので。



Will14. 世界樹が生み出す影 Bパート

待合室には、既に湊さんはいなかった。

色々と忙しい身の上と聞いているので、俺が寝ている間に別の仕事に移ったのだろう。

外の喧騒が無くなっているので、戦闘もおそらくは終わっているだろう。

こっそりと記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)のレーダーを起動させ、周辺を探ってみたが

特にアインストやインベスの気配はない……が、悪魔の気配がする。

……悪魔? と思い見回してみるとそこには祐斗とアーシアさんがいた。

 

「だいぶお疲れのようだったみたいだね、セージ君」

 

「落ち着いたので来ちゃいました、大丈夫ですか?」

 

普段と変わらない様子で、二人がやって来ていた。

流石にただの病院だからか、アーシアさんは使い魔の蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)を連れては無いようだが。

 

「二人とも、どうして……ああ、龍玄(りゅうげん)ってアーマードライダーに聞いたのか。

 とりあえず、俺については無事だ。ちょっとした疲れみたいなものらしくて

 寝てたら治った。だから心配は無用だ」

 

「それならよかったです、セージさんも聞いた話だと色々大変そうですし……」

 

「龍玄……光実(みつざね)君の事か。うん、彼に君がここに来ていると聞いてね。

 とりあえず、僕らはそれほど激しい戦いに巻き込まれなかったけれど

 ユグドラシルにいるアインストやインベスは片付いたみたいだよ」

 

激しい戦い……そうだ。祐斗達はアインストではなくレモンの鎧を着た

アーマードライダーに襲われたって聞いた。その件についてはどうなんだ?

 

「俺は大丈夫だ、アーシアさん。それより祐斗、そう言えば電話口で話してた……」

 

「ああ、アーマードライダーデュークの事か。

 してやられたよ。完全に動きを読まれていたし、建物の中だから

 部長の滅びの力なんて満足に使えない。

 その挙句僕らを見逃すように退いて行ったよ」

 

かなりの実力者らしいな、そのアーマードライダーは。

だが、一つ解せない。あの場では黒影(くろかげ)も総動員して

アインストやインベスの進撃に備えていたのに、その黒影よりも聞いた話かなり強い

デュークはなんでタワー内で祐斗らと戦ってたんだ?

神話対談の護衛のために中にいたのだとしても、不自然極まりない。

オカ研が神仏同盟(しんぶつどうめい)か北欧神話に喧嘩売ったってんなら、話は別だが。

 

「……念のため聞くが、別に神仏同盟や北欧神話に喧嘩売ってないよな?」

 

「それは無いよ。だって僕ら今回は神仏同盟も北欧神話もその関係者を見てないし。

 デュークは『僕らの力を試す』みたいなことは言ってたけどね。

 

 ……それにしても、アーマードライダーって軍団は解せないね。

 龍玄みたいに僕らを助けてくれるのもいれば、デュークみたいに戦いを挑んでくるのもいる。

 黒影に至っては、僕らを狙ってきたかと思えばアインストやインベスから市民を守っている。

 

 ……黒影に関しては、中身が別って考えれば辻褄が合うけど」

 

その通りだ。黙っていても仕方ないので、俺は黒影の中身には少なくとも二種類いると

祐斗とアーシアさんの二人に伝えた。ユグドラシルの社員か民間警備会社と

台湾マフィアの天道連(ティエンタオレン)だ。黒影は所詮ガワに過ぎない。どう動くかなんて中身次第だ。

 

 

それにしても、オカ研が神仏同盟や北欧神話に喧嘩を売ってなくて助かった。

神仏同盟は俺も個人的協力を結んでいるようなものだからフォローは困難だし

北欧神話はもしかしなくても国際問題だ。結果として神仏同盟に皺寄せがくる。

兵藤がいないことが、いい方向に転がってくれたか。

 

「……兵藤がいなくて助かったな、こういう言い方は何だが」

 

「ん? ちょっと待ってくれ、それじゃセージ君もイッセー君を

 こっちで見ていないって事でいいんだよね?」

 

……なに?

俺は祐斗の発した言葉に、耳を疑った。

まるで、兵藤がこっちに来たみたいな言い草だ。

退学になっている奴が、なんで学校行事に参加するんだ?

 

「いや……副部長が『イッセー君に助けられた』って言ってるんだ。

 だけど、イッセー君は知っての通り今回の企業見学には参加していない。

 別口で沢芽市に来たのなら、そうなるとセージ君なら何か知っているかと思ったんだけど……」

 

「知っているはずがないだろう。警察ももう奴をマークしてない、出来ないしな。

 保護観察ですらない、冤罪って事に世間ではなっているんだ。

 一応冤罪の奴を、警察がどうこうしたら問題だろ。だから超特捜課(ちょうとくそうか)絡みでは情報が入らないし

 俺だって一々兵藤の奴の情報を集めてはいない。

 今のところ、奴が表向き何かやらかしてるわけでもないしな。俺が知らんだけかもしれんが」

 

兵藤に助けられただと? だとしたらレーダーに反応があるはずだが

或いは、俺がダウンした矢先の事か? ならばわからないのも道理だが

それにしても、何だって兵藤が? ……わからん。

 

「……まるでわからんな。他に何か言っていたか?

 それ次第では、姫島朱乃が虚言を弄した可能性も出て来る。理由はわからんが」

 

「そう言えば、イリナさんが来ていたとも言ってましたね」

 

なに? 俺はアーシアさんの言葉に思わずオウム返しをしてしまう。

何せ、もっと不可解な奴の名前が出てきたんだ。

紫藤イリナは兵藤と違って、禍の団(カオス・ブリゲート)に所属している本物のテロリストだ。

冤罪なんかじゃない。超特捜課にも回って来た禍の団の構成員リストにも

きちんと名前が載っていた。つまり、それなりに警察もマークしているはずだ。

なのに、超特捜課にも自衛隊にも奴が沢芽市に来たという連絡が来ていない。

 

「……すまん、少し席を外す。テロリストがこっちに来たってのはかなりヤバい事態だ。

 その情報の真偽を確かめる意味でも、警察に一報入れなきゃならないが、いいな?」

 

「そうだね、失念していたよ。セージ君より先にそっちに言うべきだったか」

 

連絡の順序が違ったことに申し訳なさそうにするアーシアさんに

俺は気にするなと声をかけた上で、氷上さんに一報を入れることにした。

どの道、俺が病院に来た経過報告はしなきゃならなかったんだ。

通話ブースに移り、俺はスマホで氷上さんに連絡を試みる。

 

氷上(ひかみ)さん、俺です。宮本です。俺は無事なんですが、そちらは大丈夫ですか?」

 

『こっちも大丈夫です。自衛隊やユグドラシルの部隊と協力して

 被害は最小限に食い止められました。それより宮本君、今本庁の蔵王丸(ざおうまる)警部から

 連絡が来たんですが……紫藤イリナが、こっちに向かっていると』

 

あっちゃー……ビンゴか。

これで、イリナがいたという事に関しては嘘はついてないことになった。

となると、兵藤に関しても嘘ではない可能性があるが……

 

「ええ、こっちもその情報を確認しました。情報の出所はユグドラシルに企業見学に来ていた

 駒王学園の生徒ですが」

 

兵藤に関しては、言おうかどうしようか悩んだが結局言わないことにした。

言ったところで、どうにもならないからだ。事実はどうあれ、世間じゃ冤罪だ。

警察――特に超特捜課は兵藤が冤罪じゃない事を知っているが、司法が無罪を言ったのだ。

無罪のものを警察が捕らえるわけにはいかない。超特捜課は警察であり、警察は公的機関。

その公的機関が暴走するなど、あってはならない事だ。

 

『被害は……無い、或いはあったとしてもアインストやインベスの影に隠れてしまったのでしょうか。

 それで、動向まではわかりますか?』

 

俺は改めてアーシアさんに聞いてみたが、要領を得ない。

どうやら「イリナがいる」ということまでは姫島朱乃は喋ったようだが

その後イリナがどこに行ったのか、とかイリナが何をしていたのか、までは聞いていないようだ。

まあ、話の流れからアインストの相手をしていたという推測までは出来るが。

だがそうなると、アインストが首魁みたいな禍の団に所属しているはずの

イリナが何でアインストに危害を加えるのか、が説明できない。

ヴァーリみたく裏切ったのか? だとしても理由がわからんが。

 

「いえ、こちらもそこまでは……」

 

『わかりました、では合流を……と言いたいところですが、今そちらの病院から連絡がありまして

 「三日間ほどの検査入院」が必要だとのことです。手続きはしておきましたので

 安静にしていてください』

 

……は? この上入院だと?

別に何処も異常は無いんだが。と言うか、今まで寝たきり――自覚は無いが――だったから

動けるなら少しでも動いておきたいのに、入院とはこれ如何に。

気が滅入る報告を受けながらも、俺は通話を切り上げて祐斗に向き直す。

 

「どうしたんだい?」

 

「……検査入院だとよ。ご丁寧に手続きは既に行われている。

 誰が言い出したのか知らんが、心配性な事で……」

 

辟易としながら、俺は祐斗に答える。まあ、考えてみたらロックシードで回復したのだから

それによる影響がないかどうか確かめるのは道理ではある。

兵藤夫妻もアインストの影響下から解放された際に検査入院をしている。

兵藤夫妻はアインスト因子の人間に与える影響の検査。

俺の場合はロックシードで回復させた経過観察。一応、理にはかなってる。

 

ロックシードによる回復……まるで、アーシアさんの聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)みたいだが……

ロックシードやアーマードライダーシステムは

神器(セイクリッド・ギア)を模倣なり参考にするなりして作ったのか? だとしたら……

 

 

……そうだ! 重要な事を伝えていなかった!

俺は周囲を見渡し、なるべく人が少ないところに二人を誘導する。

 

「フリッケン、監視カメラの死角にはなっているな?」

 

『大体問題ない。それよりセージ、あの事をこの二人に伝えてどうするって言うんだ?

 知れば知るほど、要らん心労をかけることにならないか?』

 

『概ね同意だな。現魔王の鼻を明かせるならとは思うが、こいつら巻き込んでいいか?』

 

……確かに。ユグドラシルの重要な役職の人間が魔王――おそらくサーゼクスと繋がっているのは

俺が聞いた通りだが、それをここでこの二人に話すべきか?

黒影はともかく、デュークという謎のアーマードライダーに襲われているんだ。

話したら、とんでもない火種を蒔くことになりかねない気もするが……

 

「何か、重要な話なんですか?」

 

「……これは、俺も証拠を押さえていない、立ち聞きで仕入れた程度のレベルの情報だ。

 ユグドラシルの……戦極凌馬(せんごくりょうま)って男は、恐らくだがサーゼクス・ルシファーと繋がっている。

 記録再生大図鑑で裏を取ろうと思えば取れるが……」

 

俺が意を決して話した内容を聞いた二人――特に祐斗は

「やっぱりか」という表情を浮かべていた。どういうことだ?

 

「僕らはその戦極凌馬って人に色々案内されたんだ。

 ただ、話を聞いていた時からどうも不可解でね……

 彼は悪魔の事はともかく『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』についても知っている風な感じだった。

 アーマードライダーシステムも、まるで悪魔――三大勢力に対抗するために

 作ったような口ぶりだったね」

 

「でも、そうなると何で魔王様と繋がってる人が

 悪魔に対抗するための道具なんか作るんです?」

 

アーシアさんの疑問も尤もだ。だが、人間が悪魔と肩を並べるための装備と解釈できなくもない。

黒影はともかく、その他のアーマードライダーに関しては下手な神器持ちよりはよほど強い。

アーマードライダーシステムで齎される身体能力も、下手な悪魔より上だ。

その事を考えれば、アーマードライダーシステムの製作については合点がいく。

超特捜課の装備とも開発系譜が違うようだし、な。

ただ、怪異と戦う人間の専門とも言える超特捜課の装備より強いってのが

どうにも引っかかるが……

 

「恐らくだが、人間でも悪魔と同等に渡り合えるという証拠として作っているんだろう。

 廉価版に正式版、それに聞いた話では改良試作版モデルもあるらしいしな。

 耳の痛い話かもしれんが、悪魔をはじめとした三大勢力に対する悪感情は

 日増しに強くなっている。フューラーみたいなのに煽られてるのが、その証拠だと思うがな」

 

「……でも、戦うための装備なんですよね……

 あの人は『災害救助にも応用できる』なんて言ってましたけど……」

 

耳の痛い話と前置きしたが、やはりアーシアさんにはつらい話みたいだ。

まあ、人間の側から悪魔を攻撃してる、とも取れる流れだからな。

俺にしてみれば被害者面するなと言いたいところだが

そう言い切るにはユグドラシルは怪しすぎる。

 

……人間の側のやらかし案件ではないかと、俺は思えてならない。

別に、いつまでも人間に被害者ぶれって言うつもりはない。

だが、仕返しにしてもやり方ってもんがあるんじゃないかとは思えてならない。

 

「ただ、この推測には一応根拠はある。俺の思い込みだがな。それは

 

『どこからアーマードライダーシステムやロックシードを作るためのデータを持ってきたか』だ。

 

 人間だけの力で作るには、不足してる部分が少なくない。

 となれば補うためのデータなりなんなりがいるが……

 その出所が、人間社会の中だけで完結させるには足りないんだ。

 アーマードライダーシステムは、特に龍玄や聞いた話のデュークは

 明らかに超特捜課の装備よりオーバースペックだ。

 加えて、俺がロックシードと戦極ドライバーで不可解な回復をしただろ?

 ……そのお陰で検査入院する羽目にもなってるが」

 

「それは……確かにそうだ。冥界の技術が、ユグドラシルに流れているのかもしれないね。

 その出所が魔王様と言うには、少し短絡的かもだけど……

 今ある情報だけじゃ、そう認識できるか」

 

俺の言わんとすることを理解したらしく、祐斗は頷いている。

アーシアさんも困惑こそしているようだが、見た感じは平静だ。

 

アーシアさんの言いたいこともわかる。流出した技術が、自分達の首を絞める縄になるんだ。

その事を冥界はきちんと認識しているのかまでは知らないが、もしアーマードライダーシステムが

一般販売されるようなことになれば、最悪一億ないし六十億総アーマードライダー……

三大勢力相手に一切引けを取らないどころか、下手をすれば勝ちかねない戦力が形成されるが……

それは即ち、全面戦争だ。

 

そこまで考えて、俺は背筋が寒くなった。既にその片鱗は見えている、天道連だ。

何を思って天道連なんぞにアーマードライダーシステムが横流しされているのかは知らないが

これが今考えた人類総アーマードライダーの布石だとしたら……

 

……マジで、人間は三大勢力に対し戦争を吹っ掛けるつもりなのか?

いや、これはまだ俺の憶測にすぎない。今言うべきではないな。情報も足りてないし。

 

「……ユグドラシルの動向は、注意した方がいいかもしれないな。

 下手をすれば、禍の団以上に危険だ。

 それより、そろそろ戻った方がよくないか? 俺は入院が決まったから、ここに残るが……」

 

「もうそんな時間か。それじゃセージ君、また学校で」

 

「お大事にしてくださいね、セージさん」

 

病院を後にする二人を見送った後、俺は受付で自分の病室を確かめ、病室に戻ることにした。

検査入院するならするって、先に言ってくれ……

 

なお、一応検査入院で家に帰るのが遅くなる旨を家に電話で伝えたが

電話の後ろから白音さんと黒歌さんが思いっきり不貞腐れた様子で

にゃーにゃー言ってるのが聞こえてきた。

 

 

……こりゃ、帰る時覚悟しないとな。シャルモンのお菓子だけで土産足りるかな……




戦いも一応終結したので、セージサイドと祐斗サイド(オカ研サイドではなく)の情報交換でした。

一応戦極ドライバーには生産数の限度があるのでセージが危惧してることにはならないんですが
その事を知らないので、最悪の事態を想定してます。
ただ、人類が開発した対怪異装備って戦極ドライバーだけじゃないのでやろうと思えば
三大勢力対人間って構図もできちゃうんですよね。

原作英雄派は「搾取されるだけの人間の味方」足り得たら厄介な敵になれたと思うんです。
実際?知らない子ですね。人間はいつまでたっても搾取されるだけ。
知らなければいいことは多々ありますが
だからって好き放題していい理由にはならないんですよね。
そのせいか拙作ではネオナチ対三大勢力ってちょっとわけわかんない構図。
そして全ての知的生命体を狙ってる異世界生命体と
その混沌を外から嗤ってる全人類のシャドウ。
これもうブラッド族割り込んできてもわかんないレベルの混沌だな……

因みに、ユグドラシルの動向には注意した方がいい、って言ってますが
ユグドラシルもユグドラシルで対外工作はしてるのであまり意味が無かったり。
拙作のユグドラシルは全人類巻き込んだパンデミッククソゲー出そうとしてますが。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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