春先に美人局に捕まったクラスメート、兵藤一誠を助けるために
奴のデートに乱入した俺だったが、その相手は人ならざるものであり
俺は返り討ちにあって瀕死の重傷を負い、駒王町を統括していたという
リアス・グレモリーという悪魔によって兵藤のついでのような形で悪魔として復活させられた。
しかし、その際の俺は肉体がない、幽霊のようなものだった。
それから俺はリアス・グレモリーの私兵として戦わせられるが
自分の肉体の手掛かりを得たこと、そしてその肉体が長く持たないことを知り
リアス・グレモリーの下から離反、自分の肉体を取り戻すために戦った。
その後、現魔王サーゼクス・ルシファーと因縁のあるという悪魔、アモンの力を借り
俺は己の肉体を取り戻すことに成功した。
そんな俺の前に広がっていたのは、戦乱に包まれていた駒王町――
いや、数多の世界だった……
Will1. 仮初の日常
宮本家。
ここに俺は母親と、さる事情から転がり込んできた
黒歌さんと白音……さんと一緒に住んでいる。
この二人が来る前、うちには猫もいたのだが
俺が体を取り戻しようやく帰って来たのと同時に他界した。
そのことを思うと、やはり寂しいものはある。
とは言え、今はそれ以上に二匹の猫が騒がしいのだが……
……ん、いや「二人」と言うべきなのかもしれないが……
「セージ、また難しい顔してるにゃん。朝っぱらからしんどくないの?」
「……考え事だ、癖みたいなもんだよ。ほら、俺の神器ってああだろ?」
俺の
相手の能力を記録、再現できる神器だ。
その影響かどうかは知らないが、俺は肉体労働よりどちらかと言えば
頭脳労働の方が得意なのかもしれない。学校の成績はまあ中の上ってとこなんだが。
ともかく、朝食の最中にしていい顔では無かったらしく
(一応言っておくが、顔は既に洗っている)黒歌さんに突っ込まれてしまった。
まぁ、言いたいことはわかるが……
「癖ならそういう事にしといてやるにゃん。私としては昨日の夜私らをひいひい言わせ……
……ふぎゃっ!? し、白音あんた脛蹴らないでよ!? 普通に痛いわよ!?」
「……姉様がそういう事言うのが悪いんです」
顔を真っ赤にして白音さんが黒歌さんの脛を思いっきり蹴飛ばしていた。
挨拶をかわそうと声をかけたが、顔を真っ赤にしてそっぽを向かれてしまった。
……実のところ、俺も白音さんにどう声をかけていいのかわかってない部分がある。
何せ、昨日の夜黒歌さんが言うようなことが起きたかどうかはともかくとして
白音さんに「治療」を施したのは間違いない。その際に……まぁ、うん。色々あったんだ。
いつぞや、俺がリアス・グレモリーに明確に反旗を翻した時に
白音さんの気の流れが暴走したことがある。
その時に近い症状が出たことと、黒歌さん曰くの「猫魈の発情期」が重なってしまったことが
白音さんの体調悪化に繋がってしまったのだ。放置すれば、白音さんの体内を流れる気が
暴発してしまい、最悪身体ごと自壊してしまうらしいのだ。
流石にそれはまずい。俺としても白音さんを助けたいし
黒歌さんも俺に協力してほしいと言ってきたので、俺は黒歌さんの教えに従うことにした。
曰く、気の流れが正常化すれば白音さんにかかる負荷は無くなる。
それと同時に、発情期の周期のコントロールもできるようにする、そうだ。
発情期に入ると、子を成すためなのか気の流れが活発化するらしい。
それが白音さんの未熟かつやや弱い体には毒になってしまっているのだ。
そのため、外部要因を用いてでも気の流れを正常化させる必要がある、らしいのだ。
で、その外部要因……ってのが俺、と言う事らしい。
暴発しそうなほど溢れている白音さんの気を、俺に肩代わりさせるって事だ。
黒歌さんがやればいいじゃないか、って思いもしたが
それだとうまくいかないらしい。種族云々じゃなく、性別的な意味だという事だ。
その話を聞いて、妙に納得できてしまったが……心情的にはともかく。
なので、他に方法がなく急を要する事態だったんだから俺は気にしてない。
とは言え俺も憧れの――と言うか、諦めきれてない姉さんのことがあるから
「まったく気にしない」ってのは難しいが。
なので、白音さんにしたってあんまり意識されたり気にされたりしてもやり辛い。
いや、普通に振舞え、ってのも難しいとは思うし、そもそも無茶ぶりだと思うが……
「……あ、あの……セージ先輩。き、昨日の事……なん、ですけど……」
「あ、ああ」
かなりぎこちない様子で、白音さんが俺に話を振ってくる。
俺の方も、ややもするとさっきとは違う意味で
あまり朝にすべきではない顔をしているかもしれない。
……正直に言うと、俺は「そういう意味」で白音さんの身体を見ることが出来ない。
そりゃあ、場の空気に呑まれれば保証はしかねるが。実際昨夜は……いや、よそう。
とにかく、俺にとって二人は「異性」と言うよりは「家族」として見ているつもりだった。
流石に「ペット」となるとまた違った意味合いが生じかねないのと
それじゃリアス・グレモリーと変わらないという意味で
そういう見方はしないようにしていたつもりだ。
「せ、セージ先輩……さえ、よかったら……
……あ、な、なんでもないです。忘れてください」
一方的に話を切り上げて、白音さんは朝飯を食べ始める。
普段の彼女に比べると、食べる量が格段に少ない。本当に後遺症とか出てないんだろうな?
黒歌さんは「健康面での後遺症は出にくい」方法だと言っていたが……
これ、どう見ても精神面での後遺症出まくってないか?
かくいう俺も、実際のところは動揺している。
まあ……動揺するなっていう方が無理な話かもしれないのだが。
「おんやぁ? 二人とも顔赤くしてどうしたのかにゃん?
ねぇセージ、白音は確かにまだきついけど、私なら言ってくれればいつでも……」
「朝っぱらからする話じゃないでしょう。そもそも、俺はそういう目的で
二人をここに連れてきたわけじゃない。そこは事前にちゃんと説明したはずだし
まだ白音さんはともかく、黒歌さんは知りあってそれほど時間経ってないでしょうが。
行きずりの女性と関係持つほど、無節操な振る舞いはしてないつもりなんですがね。
そもそも、あんまり俺もくどく言いたくはないけど
俺の心にはまだ姉さんがいる手前、妙な真似はしたくないんですよ。
昨日のアレだって、救命行為ってことで納得してる部分ありますし」
その一方で、俺達にこの話を振った黒歌さんは状況を楽しんでいるかのように
あっけらかんとしている。そう思うと、悩んでるのがばからしく思えると同時に
「この駄猫」とも思えてならない。白音さんが一命をとりとめたのは事実だし
白音さん絡みで黒歌さんは嘘はつかない――ダシにされた気はするが――ので
あまり黒歌さんを責めることもできない。俺を狙っていたのだとしても
白音さんが危ないって時にそこまでふざけている様子もなかったし。
白音さんが助かったのはいい。今後定期的に
気の流れを吸収してやらないといけない事態ではあるものの、とりあえずはいい。
……ただ、どうしても姉さんのことが頭にちらついてしまう。
施術中は、なるべく考えないようにはしていたが……
事が済めば、こうしてどうしても頭をよぎる。
俺が今しがた難しい顔をしていたのも、本を質せばそういう事だ。
「……でもセージ、どっかでその
痛い目見るのはセージなのよ……?」
黒歌さんがぽつりとつぶやいた言葉は、出発時刻を告げるアラームにかき消され
俺にはよく聞こえなかった。
――――
食事を終え、通学用品を持って俺は学校に行く準備をする。
その後ろでは母さんがこれまた出勤の支度をしている。
白音さんは後遺症からか、今日は休みだ。
看病には黒歌さんがつくことになっている、心配はいらないだろう。
「……一応、お母さんにはこれ渡しておくにゃん。
もしアインストとか
それを使えば時間が稼げるし、私やセージに連絡がいくようになってるにゃん」
「ありがとね。黒歌ちゃんもそうだけど、セージもあんた
怪物を倒す側が、怪物にならないように気をつけなさいよ?」
母さんは、よく俺にこうして深いことを言う。
まあ、普段を見ていると「それっぽいことを言っているが、実は何も考えていない」
と言うのが混じっていたりするから性質悪いんだが。
『怪物……か。俺はどうなんだろうな、セージ?』
「……今はノーコメントにさせてくれ、アモン」
霊体になった俺が肉体を取り戻すきっかけを与えてくれた悪魔、アモン。
彼もまた、己の肉体を失い封印されていたところを
紆余曲折を経て、俺に憑依する形で自由を手に入れている。
俺は肉体を取り戻すため、アモンは自分がこうなる原因を作った
サーゼクス・ルシファーに復讐するために。
利害が一部とはいえ一致したことと、その時の俺がかなり切羽詰まっていた状態だったため
俺はアモンの要求をのんだ。
これから現四大魔王と戦わなければならないことを考えると頭が痛いが
それでも、俺はこの選択を後悔したわけではない。
俺もあのサーゼクスってのは信用ならない部分があると思っているからだ。
そもそも、本を質せば俺が霊体になったのだって
悪魔政府のせいなんだから、アモンに協力する理由は十分ある。
理想はもう悪魔の世界と関わり合いになりたくないことだが、ここまで来てそれもできまい。
……そういえば、俺はアモンとサーゼクスの間の確執について詳しいことをまだ聞いてないな。
今度、暇なときにアモンに聞いてみるか。
『セージ、俺はいつでもいけるが、今日はバイク通学しないのか?』
「……昨日、あまり眠れなくてな。
運転してれば風で目は覚めるかもしれんが、不安要素があるから今日は普通に通学する」
そして、アモンと同じく俺に宿る魂――フリッケン。
彼もまた、どこか遠い世界から来た「通りすがり」で、俺が消滅の危機に瀕した時
これまたどこか遠い世界で俺を助けてくれた
即ち、フリッケンの存在そのものはPCで言えばOSに過ぎない。だが重要だ。
いわば、明確な個性と人格を有した補助OSである。
と言うのも「俺はフリッケンの本体に会ったことがない」から
フリッケンが本来どういう存在かは、フリッケン自身が語るところでしか知らない。
そもそも、フリッケンって名前だってその場ででっち上げた偽名に過ぎない。
アモンは文献が極僅かながらに残っていることと
本人が経緯を明確に記憶しているため、人となり(悪魔だが)は知ることが容易だ。
だがフリッケンにはそれらのバックボーンが無い。そのため、下手をすれば
――赤龍帝と白龍皇の力を極わずかに扱うことが出来、しかも作戦立案の意見交換もできるOS
と言う身も蓋もない扱いが出来ないこともない。あれ? こんな存在、どこかにいたな。
……いや、あれは或いはもっと酷いか。
ともかく、俺は昨日の出来事のせいであまり眠れていない。
そんな状態でバイクを運転して事故っては事だ。
つまらない理由で、せっかく苦労して取った二輪免許を失いたくない。
そんなわけで、俺は徒歩で駒王学園に向かうことにした。
「それじゃ母さん、白音さん、黒歌さん、行ってくるから。
……その、白音さん。お大事に」
「……あ、は、はい」
結局、俺が家を出るまで白音さんは顔を赤くしてしどろもどろなままだったな。
……ま、あんな事があったんじゃ仕方ない事かもしれないが……
参ったな。悪い方向に転がらなければいいんだけど。
俺は来週には
その間白音さんにはこっちで頑張ってもらいたいところだしな……
――――
さて、色々てんやわんやして家を出た今日の通学についてだが。
結論から言おう。途中でズルをした。
何せ、朝黒歌さんとのやり取りで時間を食ってしまったことと
最近バイク――マシンキャバリアーで通学しているものだから
バイク通学に時間感覚が慣れていた。
そのため、遅刻しそうになったため半ば強引にアモンの力を使い、空から行こうとしたが
『バカか。俺がそんなことに力を貸すわけがないだろうが。
そもそも遅刻しそうなのはてめぇの責任でてめぇの都合だから、俺は関係ねぇ。
だから力は貸さねぇ。俺は間違ったことは言ってねぇつもりだがな?』
と、至極尤もな意見を受けてしまい
記録再生大図鑑を駆使してショートカットを敢行、辛うじて遅刻せずに済んだのだ。
やれやれ、これでは
「あれ? セージ君、今日はギリギリな上にバイクじゃないんだね?」
「……昨日、あまり寝られなくてな。事故防止のためにバイクは自粛した」
余裕綽々で校門の内側で待ち受けていた祐斗の言葉に
「神器は使ったがな」と付け加えながら返す。
かつてはこの駒王学園ではそのルックスから大人気だった祐斗だが
以前行われた禍の団の英雄派に属しているフューラー・アドルフと言う男によって行われた
フューラー演説によって、その行いから人類の敵であるとしか言いようがない
天使・悪魔・堕天使と言った聖書三大勢力の存在が明るみに出てしまい、そのあおりを受けてか
生まれながらの悪魔ではないにせよ、悪魔である祐斗に対する風当たりはいいものとは言えない。
勿論、俺はその程度の事で祐斗に対する認識を改めることは無いし
彼の持つ聖剣絡みのごたごたは俺が率先して解決したようなものだ。
俺には、こいつのアフターケアをする義務……とまではいわないにせよ
やるべきだと思っている。
そうでなくとも、あのリアス・グレモリーの下にいるってだけでストレス事案だと思うので
話はなるべく耳を傾けるようにしている。俺達に回ってこない情報を知る意味でも重要だ。
「寝られない……ふん……ふんふん……」
「……なんだ?」
ふと、祐斗が妙ににやついた顔をしながら俺の顔を覗き込んでくる。
いつもの爽やかスマイルとはどこか違う、「男同士の話をするときの顔」で話を振って来たのだ。
こういう顔には覚えがある。松田と元浜だ。あいつらほど下卑た顔はしてないが。
「君は確か、白音さんと黒歌さんと同じ屋根の下に住んでいたよね?」
「ああ。寮住まい出来ないこともない白音さんはともかく
黒歌さんを野晒にするわけにはいかんだろ」
「……なるほどね。君が眠れなかった理由がわかったよ。
君にしては意外だな、白音さんをそういう風に見ているとは思わなかったけど。
黒歌さんの方はともかくとして。
いつかやると思ったよ。おめでとうと言うべきかな、セージ君?」
「お前ガチでしばくぞ」
……朝、黒歌さんに言われたようなことをここでも聞く羽目になった。
かなりとんでもない誤解をされているようなので、俺は仕方なく祐斗に顛末を説明する。
……少し、いやかなり説明がめんどくさいし、疲れるが仕方ない。
「……と、言うわけだ。一応親と住んでんだぞ? 治療中も親にばれないかひやひやした……
ってそんなことはどうでもいいんだよ。そういうわけで、今日白音さんは休みだ。
体調不良で禍の団やアインストとぶつかっても困るからな」
「まぁ、それはそうなんだけど……っと。そろそろ授業が始まるね。
それじゃセージ君、また後で」
うまい具合に話を切り上げる口実が出来たことと、大急ぎで教室に向かわなければならない
吉報と凶報の両方を告げるチャイムが鳴り響いた辺りで、俺達は教室へと向かった。
――――
今日は体調面から使わなかったが、マシンキャバリアーによる通学を開始してからというもの
駒王番長の面目躍如と言わんばかりに変な噂が出るようになった。
・あの派手なバイクで警察相手にもブイブイ言わせている。
しかもバイクは知らない間にどっか行ってる。
・小猫ちゃんが宮本と一緒に通学するようになったのは
学校でいじめられているのを助けられたからだ。
・
……等々。
ちなみに白音さんはまだ、学校では塔城小猫名義だ。白音はハンドルネームとか渾名とか
そういう事にして通してある。
俺個人としては彼女を「小猫」ではなく「白音」として呼びたいからだ。
名前の変更については戸籍の問題があるため、簡単に変えることは難しいらしい。
黒歌さん共々、近々届け出を行うらしいが……現状の混乱では難しいと思う。
で、噂についてだが……驚いたことに、大体当たっている。
バイクがどっか行くのは、都度フリッケンの実体化を解いているからだ。
一応、車両登録は済ませているがあんな悪目立ちするものを
馬鹿正直に駐車させるわけにもいかない。
ゴテゴテしたマゼンタ色のサイドカーとか、目立って仕方がない。
痛車もかくやと言わんばかりだ。
白音さんも、悪魔であることは知れ渡っていたためいじめの標的になりかけた。
だが、彼女の背格好的にいじめの対象とするのはあまりにも……絵面がよろしくない。
故に、ほかのメンバーには悪いが積極的に庇った部分はある。
まぁ、小さいころから猫と過ごしてた手前
「猫をいじめるなど許せん!」と言う気持ちも大きいが。
因みに、今の彼女からは
この辺は、はぐれ悪魔認定され、現在は紆余曲折を経て死亡した扱いになっている
黒歌さんとの兼ね合いだ。白音さんは、リアス・グレモリーよりも自分の姉を取ったという事だ。
なので、白音さんが悪魔だという理由でいじめられるのは見当違い甚だしいし
オカ研に所属しているからってのも、彼女は既に部を退部しているため、理由にならない。
まさかとは思うが、人間以外の種族は全部攻撃対象とかそんなことは無いだろうな?
だとしたら、それはちょっと思考がヤバい方向に転がってる気がする。
いくら同じ穴の狢とは言え天使でさえ攻撃対象なフューラー演説の事を考えると
そう言った発想もあり得そうなのが怖いところだ。
金座や出素戸炉井。後者は駒王では知らぬ者はいないほどの札付きのワル学校だが
前者は表向き有名進学校。この二つが同列に語られているのは
金座はその実績と対外的評価とは裏腹に出素戸炉井以上の悪辣さを発揮し
しかも警察の追求すら逃れるというとんでもないワルだ。
暴力団――
で、この二つだが……本当に最近大人しい。
まぁ、町がこんなだからそれどころじゃないんだろうが。
或いは、関連してるという曲津組が壊滅したから勢力が弱まったのかもしれない。
いずれにせよ、俺は直接金座をつぶしてない。何でもかんでも俺に結び付けるのはやめろ。
面ドライバーの昔のシリーズにそんな扱いを受けてる組織があった気がするが。
ともあれ、これが話に聞いた、
「噂が現実になる」のメカニズムではなかろうかと思った。
噂が本当か嘘かはどうでもいいとして、俺が目を光らせている間は
悪魔に対するいじめ問題はある程度抑えられている。
だがある程度だ。根絶なんて俺にもできないし
そんな方法があったら世界中の学校や会社はもっと平和だ。
駒王学園のケースで言えば、俺がフォローしきれるのはオカ研関係者だけで
生徒会まではフォローしきれない。
何せ人となりをろくすっぽ知らないし、どういう経緯で悪魔になったのかすら知らない。
そんな奴をフォローするほど、俺だって甘くない。
言っちゃ悪いが、自分の意思で悪魔になった奴に関しては
今回の扱いは「起こり得た未来」と言うことで受け入れるべきだとさえ思っている。
人間同士でさえ争いが絶えないのに、こんな侵略じみた方法で
悪魔が人間社会に来られても混乱を招くだけだ。
交流を持つなら、それ相応の方法と過程ってものがある。
それをガン無視されちゃ、たまったもんじゃない。
そういう意味で、俺は現悪魔政権は全く信用できない。
今回の件に関しては、俺はぶっちゃけた話加害者の気持ちは痛いほどわかる。
よくいじめには「いじめられる側に原因がある」などという
加害者の言い逃れにしか聞こえない理屈があるが
今回に限って言えば、あながち間違いでもないというかある程度自業自得な部分はあると思う。
完全に自業自得だなどとは、俺も思っちゃいないが。
あのリアス・グレモリーにしたって、育ち方でああなったのは想像に難くないから
そういう意味では彼女も被害者だ。同情する気はないが。
……と言うか、特にリアス・グレモリーや姫島朱乃がいじめの対象としてよく狙われている。
以前は学園の二大お姉さまなどと言われていたのが
今や「男子生徒の欲望の掃きだめ」と言われているとか、いないとか。
そういう対象として見られるのはある意味凄いというか、兵藤の事言えるのか? と言うか。
……正直、身体だけ見れば俺も人の事を言えたかどうか怪しい部分はあるが。
凄く疲れる噂について情報をまとめていると、世界史の担当で生徒会の顧問を務めている
はて。学校絡みで俺は何かやらかした記憶がないんだが。
それとも、装備開発と言う形で協力している
「宮本君。ちょっと君の神器で見てもらいたいものがありましてね」
「俺に? なんです?」
その言葉に促されるように校庭の片隅に来ると、そこには謎の石柱が二つ、鎮座していた。
俺は言われるがままに、記録再生大図鑑を向けてみる。
COMMON-SCANNING!!
「……『
岩質は……サマタイト。磁気異常が確認される。
これらの石の起源は……駒王学園建設の際に当時駒王町の管理者だった
クレーリア・ベリアルと
かつての高僧
その記念碑として、サマタイトで出来たこの石碑を残すものとする……
先生、ここに書いてある以上の事は読み取れないです」
俺の言葉に、薮田先生は納得したように頷く。
それはそうと……サマタイト? 聞いたことがない鉱石だな?
再度サマタイトについて検索しようとすると、薮田先生から待ったがかかった。
「サマタイト……仏教ではサマタ、と言う『止観』……
すなわち、一切の妄念を止め、正しい知恵で対象を観察することを指します。
要するに、仏教の瞑想ですね。
ここに大日如来さんがいれば、話は早かったのかもしれませんが……
今はあまり関係ありませんね」
「……うちは曹洞宗だから、道理でピンとこなかったわけだ……
って、そんなことよりも。先生、何故そんなものがここに?
俺の記憶の限りじゃ、学校にこんなもの無かったと思うんですが」
「コカビエルとの戦い、アインストレヴィアタンとの戦いに先日の
駒王学園はこの短い間に様々な戦いの舞台となり
都度復旧工事が行われていたのは宮本君もご存知ですよね?
その際に、発見されたものです。よく無事だったとは、私も思いますが。
私もここに赴任してそれほど時間がたってませんからね」
俺も二年なので、あまり昔のことは知らないが
駒王学園って、旧校舎が存在する程度には歴史のある学校のはずだ。
それなのに、今頃建設記念碑ともいうべき石碑が出土したりするものか?
あの旧校舎が悪魔が活動するためのカモフラージュと言われてしまえば、それまでだが。
「いつこの石碑が建てられた、ってのも書いてないですね。
意図的な消去の可能性もありますが、現状得られる情報では駒王学園建設と共に
この石碑が建てられた。そう考えて間違いなさそうです」
戦いの影響で、埋もれていたのが出土したとか、そういう感じなんだろうか。
別段おかしなことは無いと思い、俺は質問を切り上げる。
それにしても、なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。
虚空からの怪異、ってのもそうだし……
鳴羅門火手怖、って名前の邪鬼。これも何かすごく嫌な感じだ。
周防巡査から聞いた、ニャルラトホテプって名前の邪神。
……まさか、ね。
「……それより宮本君。ここに来てからと言うもの、顔色が優れないようですが?」
「……すみません。ちと寒気はしますが、言うほどではないです。大丈夫です」
あの二つの石碑に近づいてから、妙に背筋が寒い。
何か、ここには人の意思だの思念だの、そういった「気」に等しいものが漂っているみたいだ。
この場所と言うよりは、あの石に込められているっぽいが……
あまり、長居して気分のいいものじゃないのは事実だ。逆パワースポットか?
これ以上、この二つの石碑から得られる情報は無さそうだ。
一応、文化財と言うことで保護すべきだろうということで
薮田先生は職員会議にかけあうみたいだ。
話がまとまり、戻ろうとした矢先に生徒が駆け込んでくる。
名前は忘れたが、生徒会役員……つまり、ソーナ・シトリーの眷属だ。
「先生! 校門の前に、近隣住民の皆さんが……」
「ソーナ君ではなく私に話が来るということは……そういう事ですね?
宮本君、君は彼女を連れて校舎に戻ってください。
……おそらく、彼らの狙いは悪魔である生徒の皆さんでしょうから。
なに、生徒の身を守るのも教師の役目ですよ」
薮田先生を見送り、俺はこの女子生徒を連れて校舎に戻ることにした。
薮田先生の言う事は……多分、悪魔に関するトラブル、だろう。
敵から身を守ったり、町を守ったりはある程度出来ても傷ついた心を癒すのは容易い事じゃない。
果たして、何を思って先代の管理者サマはあの石碑を建てたんだろうな。
悪魔と人間の現状を顧みて、そう思わずにはいられなかった。
気合、入れて、やり過ぎました。
……と言うわけで久々の1万超えでした。
因みに今回からのサブタイ番号はWill(意思)で行きます。
拙作は「己が意思で生きる人々の物語」で通したく思いますので。
さて。
今回、最初からクライマックスです。
説明的な文章が多いのは地続きの続編の第一話と言うことでご勘弁を。
>白音
プルガトリオでイッセーが童貞卒業したと思しき描写がありましたが
彼女は彼女でセージと「そういう交渉」をしたのか、そうでないのか。
ただ、「猫魈の発情期」と「気の暴走」が重なったとあるので
治療のためにセージが身体張った可能性は大です。あと態度。
なお、拙作の白音は目が赤い(アルビノ)なので、体が弱いという設定があります。
そのため、原作以上にヤバいことになっていたので黒歌もセージも
治療に関しては真面目にやってました。
なので「そういう事」はしたかもしれないけど「最後までヤった」かどうかは
おそらく違うと思います。あと黒歌の意味深な発言。
>黒歌
彼女なりのやり方で妹やセージを気にかけてます。問題は多々あると思いますが。
因みに拙作の彼女は「はぐれ悪魔時代に生きるために色々やった」みたいです。
>祐斗
イッセーハーレムにちょっかいかけないどころか、イッセーそのものを狙ってる節があるから
勘違いされそうですが、彼ノンケのはずですよね?
と言うわけで、セージにそういう話題を振ってからかってます。
>駒王学園
割と平常運転に戻りつつありますが、時折こうして近隣住民が押し掛けてきます。
だって悪魔のせいでテロ起きたし、今まで悪魔がやって来たことを考えると……
因みに、拙作では旧校舎の存在から「それなりに創立から時間がたっている」
としてあります。
>クレーリアと八重垣
管理者のくせに駆け落ちしてる、ってのが引っかかりましたので
表向きには八重垣が先代町長で、クレーリアが駒王町で悪魔ビジネスやってました。
なので、この二人は原作同様の道を歩んでません。
先述の駒王学園創立時期との兼ね合い上
八重垣とイリナパパとの接点は拙作ではありません。
一応人間が噛んでいるから悪いようにはしなかったのか
人間公認で悪魔の土地にさせられたのか、今となってはわかりませんが。
>石碑二つ
それぞれ「女神異聞録ペルソナ」と「ペルソナ2」に登場したものです。
始終フィレモンに導かれていた異聞録では比麗文石
ニャル様の独壇場なペルソナ2では鳴羅門石と、構成物質は同じながらも
その冠する名前は大きく異なってました。
さて、拙作ではそれらが二つ同時に出土するという事態が。
過去いずれも学校に存在していたということで、拙作でも駒王学園に用意しました。
……ニャル様こういうことしそうな気もします。