ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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筆のノリがいいですねぇ、すごいですねぇ
※今回三人称視点とは言えイッセーパート含んでます


合同学習のプレアデス
One week ago.


セージが入院の話を聞かされた後――

 

 

―駒王町・宮本家―

 

 

「おっそいにゃんセージ! 女を待たせるとかそれだけで減点対象にゃん!」

 

「姉様、セージ先輩は急な入院で帰ってくるのが遅くなるって言ってましたから……」

 

「それも問題にゃん! 人に心配かけるとかそれこそ減点だにゃん!

 そもそも白音だって不調を訴えてるにゃん!

 セージ一人何呑気に病院のベッドで寝てるにゃん!

 私も入れてほしいにゃん!」

 

紆余曲折で帰るのが一週間も伸びてしまったセージに対し

これまた諸般の事情から宮本家に居候している猫魈(ねこしょう)の姉妹の姉である黒歌は

毎日のように管をまいていた。

 

「……私はまだ大丈夫ですから……というかそれが本音ですか」

 

さりげなく同衾を訴えているあたり、自分は出汁にされているのかと黒歌を白眼視する妹の白音。

その際「……自分だって我慢してるのに」とぼそりと呟いたかどうかは、定かではない。

 

白音は体質的に、体を流れる気の力がうまくコントロールできない。

最近でこそ、ある程度制御できるようになったがそもそも気の量が器に対して多すぎるのだ。

器が小さい、とも言えなくもないが。いろいろな意味で。

そのため、定期的に気の吸収を行う必要がある。その担当が、セージだったのだが。

 

今はまだ周期的に白音の気の吸収はまだやらなくてもいいはずなのだが

白音が最近体の不調を訴えている。

それを回復する役のセージがいないことが、黒歌には不服らしい。

同衾(どうきん)相手がいないことへの不服もあるが。

 

なお、黒歌はしきりにセージに同衾をせがんでいるが

セージの答えは「猫状態なら許す」の一点張りである。

これは白音相手でも同じである。セージの男子高校生特有とも言える心情もあるのだが

この意見に対しては姉妹共々難色を示している。

なぜなら猫状態で布団にもぐった際「セージが寝返りを打った際に潰されかけたから」だ。

これにはいくら猫魈といえどもたまったものではない。

詫びとしてその次の晩以降はなし崩し的に同衾が認められているが

セージとしてはたまったものではない。

 

喧々囂々と姉妹でまくし立てているところに、ニュースが入る。

セージが向かった先であるユグドラシルタワーが映ったことに気づいた白音が

黒歌を宥めすかす。

 

「……続いては、先週起きました沢芽(ざわめ)市のユグドラシルタワー爆破事件に関する続報です。

 捜査の結果、『D×D』を名乗る集団から沢芽市およびユグドラシル・コーポレーションに対し

 声明があったことが明らかになりました」

 

「…………!?」

 

アナウンサーの読み上げた「D×D」という単語に、極端に反応を示す白音。

しかし、黒歌は何のことだかわからずに首を傾げるばかりだ。

 

「白音、聞いたことあるの? 『D×D』って」

 

「い、いえ……無いはずなんですけど……

 なぜだか……『よく知っている』ような気がして……」

 

デジャヴ。そうとしか言えない白音の反応。しかし、そもそもD×Dとは一体何なのだ。

白音も黒歌も、そこの部分は全くわからない。

新手のテロ組織だろうか。話の流れからして、そうとしか思えない。

 

「本日はコメンテーターとしてフリージャーナリストの李覇池(リー・バーチ)さんをお迎えしております。

 李さん、本日はよろしくお願いします」

 

「あーっ! あいつこんなところにいたのかにゃん! 最近見かけないと思ったら!

 って言うか、あいつ悪魔じゃないの! 悪魔が何食わぬ顔で

 人間のTVに出ていいとでも思ってるのかにゃん!?」

 

リー・バーチ。セージも世話になった、冥界のフリージャーナリストだ。

彼の活動範囲は幅広く、魔王直属部隊イェッツト・トイフェルお抱えになった現在もこうして

人間界に情報を拡散していた。

 

「俺もまだ確かなことは言えないんですがね。フューラー演説があったじゃないですか。

 それに対抗する形で、『反禍の団(アンチ・カオス・ブリゲート)』とも言える集団がちらほら出ているって噂ですよ。

 自分らはテロ対策組織だなんて名乗ってますがね……

 武力を用いてる時点でテロリストですよ、テロリスト。

 きちんと統制の取れた、信頼のおける武力組織――軍隊とか、この国なら自衛隊ですね。

 それ以外の武力組織なんて危なっかしいことこの上ないですよ。

 私設武力集団なんて、俺に言わせればテロリストと大差ないですね」

 

「つまり、『D×D』とはテロ対策組織を自称する私設武装集団ということで

 間違いないのでしょうか?」

 

「そうですね。もっと言えば、テロリスト予備軍と言えるかもしれません」

 

リーの一方的な、しかし確たる情報がない上での情報提供に、アナウンサーも目を白黒させながら

リーに対し確認を取っていた。

 

「まぁ……リーの言いたいこともわからんでもないわね。

 大方、国が信用できないからって自分らで禍の団(カオス・ブリゲート)をどうにかしようって

 血気に逸って蜂起したんだろうけど。

 弱い奴、何も知らない奴に出しゃばられてもはっきり言って邪魔なのよね……

 

 ……白音? 白音?」

 

「…………ちが……っ……D×Dは……そんな……組織じゃ…………」

 

一方、白音は元々は綺麗であろう色白の肌が青褪めるように酷い顔色をしていた。

それは、D×Dなる組織に対する悪意とも取れる放送での発言に対してだった。

しかし、白音はD×Dの事を知らないと言っているのに、うわごとではあるが

放送の内容を否定するかのような発言をしている。

あからさまにおかしい白音の様子に、黒歌はテレビを消し、自分の気を白音にやっていた。

 

「大丈夫、落ち着きなさい白音。お姉ちゃんがついてるにゃん」

 

「はぁっ……はぁっ……違うんです……ごめんなさい姉様……」

 

白音の頭を撫でながら、黒歌は白音をベッドまで運んで行った。

――D×D。自分はもとより、白音も知らないはずの名前。

それなのに、何でこうして白音は反応を示しているのか。

まるで、何かの呪いであるかのように。

 

(D×D……セージが帰ってきたら、まず聞いてみるべきね。

 私の知らないところで、白音が参加していたのかもしれないし。

 けれど、私の知らない白音の交友関係なんてリアス・グレモリー絡みしか無いはずだけど……

 そのリアス・グレモリーとも、縁は切れてる。

 ここ最近にできたらしいD×Dとは繋がらないわ。

 

 ……あーもう! 私は頭使うのは苦手だにゃん!

 この知恵熱はセージに全部吸い取ってもらうにゃん!

 だから早く帰ってきてー!)

 

実際のところ、家事はセージの母が仕事帰りにやっているのだが

ピンポイントでも担当していたセージが抜けたため

宮本家の中のありさまはそこそこ酷いことになっている。

家事能力が致命的に無い黒歌は、そういう意味でもセージの帰りを心待ちにしていたのだ。

 

 

――――

 

 

――時間城・駒王町支店――

 

「――なぁるほどねぇ……そういう方向で来たか……」

 

店番をしながら、TVを眺めていた店主・布袋芙(ほていふ)ナイアがぽつりと呟く。

その呟きに、この店に――ナイアに引き取られた兵藤一誠が反応する。

 

「TVの話っすか? そういや、『D×D』ってどこかで聞いたような……」

 

一誠のどこかとぼけた反応に、思わずナイアは苦笑する。

傍から見れば、仲の良い姉弟にも近い風にも見えるのだが。

 

「忘れてしまったのかい? 珠閒瑠(すまる)市のアラヤ神社、その裏の岩戸山にあった

 『鏡の泉』で見た君の『虚億(きょおく)』の中にあっただろう。

 三大勢力トップの後援を受け、禍の団を始めとしたテロ組織に対抗するべく結成されたチーム。

 悪魔・天使・堕天使の垣根の存在しない、夢のチームだったじゃないか」

 

「わ、忘れてないっすよ! た、ただそれ以上の事があって……」

 

耳まで顔を赤くしながら、ナイアに反論する一誠。

D×Dに関する説明はナイアのもので合っているが、一誠の記憶からは抜けていた。

「虚億」には間違いなく存在していたのだが、「この世界の兵藤一誠」に

D×Dに関する記憶はないし、そもそもこの世界のD×D結成に一誠は関わっていない。

 

「ぷっ……あはははははっ! 本当に君は可愛いなぁ。

 もしかしてあの時の事を思い出したのかい?」

 

ナイアの指摘に、さらに顔を赤くし前屈みになる一誠。

鏡の泉での出来事を、鮮明に思い出してしまっていたのだ。

話の内容は忘れているのに、そこで起きた出来事は鮮明に思い出せるのは

彼が兵藤一誠であるから――というより、これくらいの年代の少年ならば

無理からぬことではあるのだが。

 

「思い出させてしまったお詫びに、その熱の源を鎮めてあげようか?

 なに、お店なら心配ない。最悪イリナ君にでも店番させておけばいいさ」

 

「えっ!? いやっ、それは……イリナに悪いし……」

 

一誠を自分の胸元に抱き寄せ、頬を指で撫でながら耳元で囁くナイア。

どう見ても、誘っている言動であり、しかもイリナに店番を押し付けるという

恐ろしい提案まで持ち出している。

一誠が優柔不断であるが故か、その提案は却下されることとなったが。

 

「そうだね。じゃあ、イリナ君も仲間に入れるかい?

 君が言えば、彼女はなんだってするんじゃないかな?」

 

「いやっ、そ、それはっ!? 不誠実って言うか、なんていうか……」

 

ナイアの豊満な肢体と、イリナの健康的で瑞々しい肢体。

その二つが自分の身体に絡みつく、その様を想像した一誠は即座に興奮状態に陥るも

ギリギリのところで理性を保っていた。鏡で見れば、酷い顔であるが。

 

(……な、何の冗談だいそれは! 君が、性欲魔人たる君が!

 誠実かそうでないかを判断材料にするなんて! 笑いすぎて死にそうだよ!

 

 ……っとと、あまり笑ってはいけないな。

 イッセー君は真剣なんだ、それを笑ってはいけないな)

 

ナイアもまた、一誠のある意味無意味な抵抗に笑いを禁じえなかった。

顔に出ないようにしていたのは、彼女も同じだったのだ。

 

「ただいまー……あらあら、お二人とも仲良しですわね。私も仲間に入れてくれないかしら?」

 

学校から帰ってきた朱乃が、ナイアと一誠の間に割って入る。

一誠はちょうど、朱乃とナイアのボリューミーな柔肉に包まれる形となっていた。

 

「ふぉ、ふぉふぁへりなふぁいふぁふぇのふぁん……」

 

「あんっ、イッセー君ったらくすぐったいですわ」

 

返事をする一誠だが、その口や鼻の位置は丁度朱乃にとっても敏感な場所であるため

一誠の呼吸で生じる空気の流れがこそばゆかったのだ。そのため、つい声が出てしまう。

 

「……朱乃君。僕は今日は非番とはいえ一応教師なんだ。

 その教師の目の前で、不純異性交遊はいかがなものと思うけどね」

 

「あらあら、先生こそイッセー君を真昼間から誑し込もうとしていたじゃないですか、うふふ」

 

「……ああ、それもそうか。なに、教師らしい事を言ってみただけさ。ふふっ」

 

イッセーのみならず、朱乃さえもおちょくって遊んでいるナイア。

本物の大人の余裕だろうか、対する朱乃の方もナイアに対して

ギスギスとした感情は向けていなかった。だが――

 

「ダーリン、店長、掃除終わった……ってこら堕天使!

 何勝手にダーリンにくっついてんのよ!」

 

「おや、ご苦労様イリナ君。お茶でも……」

 

「ふぃ、ふぃりな! ふぉふぉであふぁれたらおふぃふぇのなふぁふぁ!」

 

イリナを制止しようとする一誠だが、4つもの乳房に包まれた状態では何の説得力もない。

むしろ見苦しい。しかも一誠を包み込んでいるそれは、いずれもイリナよりも大きい。

ナイアはまだいい。名実ともに自分より年上の大人であるから。だが朱乃はなんだ。

自分とそう大差ないのに、なんでこんなにでかいのだ。そこもイリナにとっては不服だった。

 

「ごめんなさいねイリナちゃん。このイッセー君、二人乗りなのよ」

 

「どっかの金持ちのボンボンみたいなわけのわからない言い訳するな!」

 

完全におちょくっている朱乃に対し、ころころと表情を変える形で噛みつくイリナ。

しかし、イリナ当人も気づいていないことだが、朱乃を堕天使呼ばわりしているが

朱乃に対し種族としてのヘイトは向けていないのだ。女としてのヘイトは向けているが。

朱乃もまた、堕天使と呼ばれても流している。かつてあれほど堕天使を嫌悪していたのに。

 

これだけ見れば、彼女たちは過去の楔から解き放たれたようにも見える。

しかし…………

 

 

…………問題対処の方法は、何も立ち向かう、受け入れるだけではないのだということもまた

彼ら、彼女らは知らされていないのだった。

 

 

唯一知る存在は、この光景を心のどこかで嘲笑いながら眺めている。

自分自身もまた、騒動の渦中に身を窶しその混沌を楽しみながら。




原作イッセーよりは恵まれてないかもですが、現状はそれなりにおいしい思いしてます
……まあ、釣り針ももれなくついてますがね

>猫姉妹
寝返りで潰しかけたってのは多分赤土ってやつの実話
上には乗れど、頑なに布団の中には入ってきませんでしたから
自分だけ布団の中に入ってる、は割とありましたが

黒歌が割とポンコツお姉ちゃん化してる気がする
これ多分赤土ってやつの性癖

>リー・バーチ
こいつ機動力考えたら使い勝手いいんですよね……
お抱えの癖に割と自由に動ける。しかも元ネタキャラ的に割とマスゴミ行為も遠慮なくできますし
(バオクゥにマスゴミやらせるのはちと抵抗が……元ネタと師事的な意味で)

>D×D
今回の虚億案件
名付け親である白音はかなり反応しました、案の定
虚億の中では掛け値なしにイッセーハーレムの一員ですが
拙作ではんなこと無いので虚億と実億の差が酷いことに。
イッセーもある意味酷いんですがね。

なお、テロ対策組織の原作に対し、テロ組織一歩手前認定されてるのは例によって皮肉です

イッセーらが関わる前に設立されたことと、ナイアの発言から
このD×Dは……

>ナイア
どこまで本心か、どこまで戯れか
彼女は間違いなく身を滅ぼすタイプの毒婦だと思います、正体の話抜きにしても
しかも男(イッセー)だけでなく女(朱乃、イリナ)も滅亡コースに
正体考えたら両刀でも何ら問題ないですがというか多分赤土ってやつの性癖

>イッセー
D×Dが声明を上げたのに、こんなところでスケベに注力してていいのでしょうか
いいんです、なぜなら彼はイッセー
順番が違っても、最終的にハーレム王になれさえすればいい
というのが最近のイッセーの指針になってる気がします(ナイアの誘導もあるでしょうが)

>朱乃とイリナ
多分色々な意味で原作と遜色なくなっちゃった人ら
まあ、イリナは御使い化してないって違いはありますが
(どうでもいいけど、御使いって聞くと第三次Zのあのクソ集団思い出してちょっと)

お色気もできて、戦闘もできる、それでいて忠実
……本当、都合のいい存在だこと

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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