ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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まだこうして不安定気味な投稿ペースです
申し訳ありません


Failure of Demon's regulations

駒王駅前広場。

テロによる攻撃から復興が始まりつつあるこの地においても、戦闘は行われていた。

駒王学園の生徒たちと、謎の異形。この二つがぶつかり合っていた。

 

「こいつら……やっぱりはぐれ悪魔!?」

 

その異形は、彼らの知る言葉で言うならばはぐれ悪魔。

悪魔の唱える法を破り、放逐された転生悪魔の成れの果て――と言われているが

実際のところは不明である。

むしろ、口封じのために体よく反逆者の名を宛がわれただけというケースも少なくない。

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の功罪の罪のうち、その大きなものの一つである。

 

「……でも、はぐれ悪魔とはどこか、何か違う……」

 

悪魔生活が比較的長かった木場と白音――白音はもう悪魔ではないが――が

目の前の存在が、はぐれ悪魔だとは言い切れない何かを訴えていた。

しかし、それを立証するものがない。

 

「なんでもいい、人に害をなすならば倒すまでだ!」

 

デュランダルで異形を薙ぎ払うゼノヴィア。

スタンスはまるで変わらないが、刃を交えるその相手が

今までの悪魔とは違うということもまた、彼女は感じ取っていた。

 

(話に聞いていた悪魔とは違う。まるで、かすかに理性のあるインベスのような……)

 

アーマードライダー龍玄(りゅうげん)に変身した光実(みつざね)。彼もまた異形と対峙するが

沢芽(ざわめ)市を中心に現れ、今や全国規模で出現しているインベスと比較し

目の前の異形に対処していた。自身が感染能力を持たないという一点において

目の前の異形はインベスではないということは立証できる。

 

龍玄のブドウ龍砲、白音の妖力による援護に合わせ

木場の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)とゼノヴィアのデュランダルが謎の悪魔軍団を蹴散らす。

謎の悪魔軍団の強さは、今の彼らの戦力で十分に対処可能な範囲であった。

 

――しかし、なぜ彼らが現れたのかという情報はわからずじまいであった。

遅れて駆け付けたリアス・グレモリーに情報を渡しても

彼女もまた、要領を得ない返答を返すのみであった。

 

「――はぐれ悪魔ではないというのは、間違いないのよね?」

 

「ええ。大公家から討伐依頼も出ていませんよね?」

 

木場の問いかけに、リアスは出ていないとばかりにジェスチャーを示す。

すでにリアスは駒王町の管理から外されているが、駒王町への滞在と言い

実質的な冥界からの権限としては、今までとさほど変わらなかったりする。

対外的には管理者を解任し、土地勘を活かしクロスゲート監視役として割り振った形だが

そんなものはただの口実で、実際には今までとそう変わらない状態だったりする。

 

そもそも、はぐれ悪魔討伐は基本的に大公家から討伐依頼が出された後に行われるものだ。

だが、それはあくまでも悪魔の事情。すでに実害が出ている時には、駒王町の場合だが

超特捜課による捜査、対応がなされる場合もある。

 

それを示すように、今度はパトカーがサイレンを鳴らしながらやって来たのだ。

 

「呑気なもんだな。討伐依頼が出てようやく害獣駆除か。警察の俺が言うのもなんだが

 そんなお役所仕事で、被害に対処できるのか?」

 

パトカーから降りた超特捜課の安玖(あんく)巡査。

彼もまた、先般の異形に対処するために出動していた形だ。

発足から数か月ではあるが、その間に様々な事件が起きたために

駒王町に展開している超特捜課は、限定的ではあるが今やソーナ・シトリーの一派をも

上回る戦果を挙げている。

 

「悪魔には悪魔のやり方があるの。口を挟まないで頂戴」

 

「はっ! この町は悪魔のもんじゃねぇってのによく言うぜ。

 そうでなくとも、今はもう悪魔だなんだって言ってる状況を通り越してるだろうがよ。

 そもそも、今出てきたあいつらはアインストでもインベスでもねぇ。

 となると、お前らの仲間だって思われても不思議じゃないんだぜ?」

 

安玖の挑発じみた発言に、リアスはいちいち乗ってしまう。

安玖の発言も公僕としては問題のあるものだが、仮にも統治者としての経験があるリアスの態度は

彼女の精神が幼いとしても、感情的過ぎた。

 

「冗談言わないで頂戴! あんなバケモノ、はぐれ悪魔ぐらいでしか

 見たことも聞いたこともないわ! はぐれ悪魔とつるむほど、落ちぶれてはいないわ!」

 

「どうだかな。はぐれだろうと悪魔っつー位だから

 お前らと大差ねぇって見るのが普通だろうが。俺らは兎も角、住民はそう見るぜ」

 

「安玖、子供相手に喧嘩売るのもその位にしておけ。

 だが嬢ちゃんも嬢ちゃんだ。いちいち売り言葉を買うな。

 それに安玖の言う事も言い方は兎も角一理ある。

 住民にとってみれば、はぐれ悪魔もお前たち悪魔も変わらない。違いが判らないんだ」

 

右手でじゃらじゃらとメダルを転がしながら、リアスの言葉に耳を傾ける安玖。

安玖の言う通り、はぐれ悪魔とは言え悪魔。その悪魔が人を害している以上

警察は動かざるを得ないし、故にリアス統治時代に超特捜課が発足された。

安玖はその超特捜課の一人であり、駒王町を、日本を守るという意味では

立派に警官の職務を果たしている。

だが如何せん、態度が悪い。今もこうして上司である蔵王丸(ざおうまる)警部が間に入る形で宥められている。

 

「これは私たちの問題よ。警察の人達に迷惑はかけられないわ」

 

「嬢ちゃん。俺ら人間はな、人間なりのやり方で人間の、自分たちの身を守ってるだけだ。

 そっちにそっちのやり方があるようにな、俺らにも俺らのやり方がある。

 そしてここには多くの人間が住んでるんだ。そこは忘れてくれるなよ」

 

「それに俺に言わせばな、実害出てる時点で警察の手間かけさせてんだよ」

 

それはリアスにしてみれば屈辱的なものでもあったのだが

蔵王丸の言う通り、人間にしてみれば自衛行為だ。

誹りを受ける謂れなど、どこにもありはしない。

生物が自分の命を自分で守ろうとする行為は全く以て自然なものなのだ。

自分の命も自分で守れない生物など、生物として欠陥品もいいところだ。

 

警察に迷惑をかけないためにリアスは色々と手を打っていたのだが

実害が出ていては、結局警察の手を煩わせている。

もし、ここで認識阻害などしようものならば。

 

原因不明の事故に対し警察は二手三手遅れている。それは警官の士気にもかかわるし

住民の警察に対する信頼を損なう結果となる。

信頼を損なった警察は抑止力としての効力を発揮しなくなり、結果犯罪が増える。

 

その穴をリアスらが埋める? ナンセンスだ。使い魔を総動員しようとも

警察の仕事の全てを賄えるほど、日本の警察機関は単純じゃない。

 

つまり、どう考えても警察の手を煩わせることはおろか、最悪警察の解体にも繋がりかねない。

結局、記憶改竄や認識阻害で住民の平和を維持するという事は

こういう形で綻びを生む。

 

結局、超常の脅威に対しても超常に頼り切ることなく

人間は人間自らの手で住処を守らなければならないのだ。

自分たちのコミュニティを自分たちで守れないのは、有体に言って欠陥もいいところだ。

 

「そもそもだ。はぐれ悪魔ってお前らは言うが、それを決める基準はなんだよ。

 お前ら純正悪魔が、お前らの都合で差別して

 大義名分を括り付けてそれっぽく処分してるだけじゃねぇだろうな?」

 

「ぜっ、全然違うわよ! 私は純血悪魔、はぐれ悪魔は転生悪魔、これだけでも大きく違う――」

 

言いかけて、リアスは自分が興奮するあまり自分の口走った内容の悍ましさに気が付いた。

はぐれ悪魔は転生悪魔しかなりようがない。

これは悪魔の駒による転生儀式に端を発するものなのだが、安玖はそこまでは知らない。

 

だが主となる悪魔を裏切った転生悪魔がはぐれ悪魔となるのだから

転生悪魔しかはぐれ悪魔になれない。純血悪魔は前提条件を満たさないのだ。

例外を認めるならば、それはただの国家反逆罪だ。

 

そして、リアスは今自分が純血悪魔だからはぐれ悪魔にはならない。

そう言った旨の事を口走ったのだ。これでは、露骨な転生悪魔差別思想である。

情愛の悪魔と知られ、眷属に対し情を以て接することを是とするグレモリー、その長女として

あるまじき思想である。それが首を(もた)げたというのだ。

 

幸いにして、木場やアーシア、白音といったリアスと付き合いの比較的長いメンバーは

リアスのその言葉をはっきり聞いていなかった。

 

だが、光実とゼノヴィアはそれを冷めた目で――光実は龍玄のマスク越しだが――で

リアスを見ていた。態度にこそ示していないが、犯罪や欲望の臭いをかぎ分けるのに特化している

安玖ならば、一発で見抜ける程度だ。特にゼノヴィアのそれは。

 

(やはり……悪魔は悪魔に過ぎないということか。

 人間の真似事をしたところで、悪魔の域は超えられんか。

 アーシア……君はああ言うが、私はやはり悪魔を信じる気にはなれんよ)

 

(兄さんならこれを見て何て言うだろうな。高貴なる者は高貴なる責務を負わねばならない。

 けれど、これではね……僕も、こうはなりたくないものだね)

 

「……ああ、言わんとすることはわかったからそれ以上言わなくていい。

 今のは聞かなかったことにしてやるよ」

 

「――――ッ!!」

 

建前上は、現在先進国においては存在しない差別。

それを体現する言葉を口走りかけたリアスに対し、安玖の向ける視線には憐憫の情も含まれていた。

彼女の精神が未完成であるが故のものである、そう判断したのだ。

反論しようとするリアスだったが、自分の発言を反芻した結果錯乱してしまい

二の句が継げなかった。

 

唯々、唇を血が滲むほど噛み締めるばかりだった。

 

「それより、お前のその装備――ユグドラシルのアーマードライダーシステムだろ?」

 

「え? ええ、そうですけど」

 

リアスを追求することなく、安玖はリアスに冷めた目を向けていた光実に話を振りなおす。

警察において、アーマードライダーシステムは採用されていない。

そのため、安玖にとって龍玄は物珍しさもあったのだ。

 

「聞いた話だが……ユグドラシルから警察への本格的な技術供与があったそうだな?

 お前がここにいるのも、その一環か?」

 

「いえ。僕はまた別件ですが……

 (技術供与があった? 確かに警察の装備の一部を

 ユグドラシルが生産していたことはあったけど……)」

 

安玖の質問に、光実は腑に落ちないものを感じ取った。

警察の一部装備は、確かにユグドラシルが作っている。だが、主戦力足りうるロックビークルや

アーマードライダーシステムだけは、警察で導入されることは無かったのだ。

 

しかしここに来て、ユグドラシルが警察に技術供与をしたという話が出た。

まさか、装備のライセンス生産の事ではあるまい。

警察がアーマードライダーシステムを採用したという話を

光実は聞いていないし、ニュースにもなっていない。

何の技術なのか。異形の正体もだが、光実にはそちらも気がかりであった……




前作「ゴースト」から散々突っ込まれてるはぐれ悪魔問題。
今回も可能な限り触れますとも。

>討伐依頼が下るまで
まあ、わかりやすくクエスト的な方法を示したんでしょうけれど。

……ちょっと考えてみてください。既に(一応)悪魔が統治してる場所に
どうやってはぐれ悪魔がいるって情報が伝わるんです?
はぐれになろうとも悪魔の駒が抜けていないと仮定するなら、説明はつきます。
この場合、GPSを体内に埋め込むのに等しい行いをしているわけですが。
それが許可されるのは法律上物品扱いされるペット位なもんです。
今やスマホがある意味代わりになってますし、徘徊老人や行方不明者の捜索という意味では
人間にもGPS埋め込むのも一つの手ではあるかもしれませんが……

大公から依頼が出て~って流れも、本文中で指摘している通り
お役所仕事が過ぎます。統治区域外に逃げ込んだとかならいざ知らず
原作中、少なくともバイサーに関しては依頼が出る→討伐の流れで
既にバイサーは殺傷事件を起こしています。
つまり、大公と言えども対処が後手に回ってるわけです。
勝手に討伐しないのははぐれ悪魔の権利を守った結果なのか、それとも。

また、はぐれ悪魔に至る基準も問題です。黒歌みたく明確に反旗を翻した
(ただしこれはほぼ完全に黒歌の正当防衛、罪状ついたとしても過剰防衛が精々かと)
以外には木場が反抗的な態度をとっただけではぐれをちらつかされる始末。
はぐれ化もその個々の事情に耳を傾けることなく、一概に力に溺れたとかそんな感じ。
一番力に溺れそうな筆頭格がそれ言ってるんですからお笑いですよ。

……よく界隈ではホワイトと言われるグレモリー眷属ですが、本当にそうなのかな……

そして、はぐれ悪魔は黒歌という例外を除いて軒並み即殺って対処なのも問題です。
法を破ったから処罰される、それはわかります。

ですが、その法の正しさは誰が証明するんです?
法を盲信するばかりでは、何も変えられないと思うんですがね。

結論:
今回セージこっちにいなくてよかったね

>人間の自衛

ちょっと赤土って奴の政治的思想混じっちゃったかもしれません、すみません。
ですがこの世界に照らし合わせると、間違ったこと言って無い風に思えてしまうのがなんとも。
人間が自分の身を守るための力を手に入れて何が悪い?
自衛はすべての生命に認められた生きる権利じゃないんですかね?

原作においては警察の役割をリアスやイッセーらに持たせてるってことなんでしょうが
警察の役割って学生の片手間にできることなんですか?
学園都市みたいな特殊な環境とかならいざ知らず。

そういう世界、って言ってしまえばそれまでなんですが
それはそれで、ディストピアを想起させられます。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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