ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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お待たせしました。
さて、そろそろセージが帰ってこないと
いい加減gdgdしますね……


"D"AMON Aパート

セージが入院してから一週間。

今日、セージは検査入院を終え、退院し駒王町に戻ってくる予定である。

そのせいか、朝から黒歌と白音はそわそわしていた。

 

「白音、あんた体調大丈夫なの? 私の思ってたのより周期が短いみたいだけど……

 あんた、無茶してんじゃないでしょうね?」

 

「……大丈夫です。確かにアインストともインベスとも違う

 見たこともない怪物の相手で妖力の流れが狂った部分はありますけど、大丈夫です」

 

朝っぱらから頬を紅潮させた様子で白音が答える。

白音の額に手を添える黒歌だが、熱の程度は微熱といったところだ。

 

「そう……学校行くときも気をつけなさいよ。私もお母さんの護衛で

 あんたまで気が回らないけれど、無茶だけはするんじゃないわよ。

 

 ……本当、平和な日常ってのが恋しく思えてしょうがないわ」

 

一応、宮本家をはじめ駒王町ではある程度の外出自粛要請こそあるものの

教育機関などは平時と同じように稼働していた。

介護であるセージの母の仕事となれば、なおのことだ。

 

黒歌がぼやくように、平和な日常というものは今の駒王町、いや世界のどこを探しても

中々見つけられるものではないだろう。

それほどまでに、禍の団の、アインストの爪痕は大きいのだ。

そこに、新たな怪物の影も見え隠れしている。

神の実在を暴かれつつも、世間では終末思想のカルト宗教が流行り始めている。

あるいは、現実逃避をするかの如く自ら命を絶つものも少なくない。

 

「……ったく。じーさんどもの機嫌とるのも楽じゃないにゃん。

 そう何度も乳揉ませるわけにもいかないし。

 不安を払拭させられればいいけど、それをするためのものが全然足りてない。

 痛し痒しよねぇ……」

 

歪んだ世情は、住まう者の心を等しく歪めていく。

それは、老人の相手をしている黒歌も肌身で感じていたことだ。

老い先短い老人でさえなのだから、将来のある若者ならばどうなるか。

 

その答えは――

 

 

――――

 

 

A.M. 10:40

駒王学園

 

「聞いたか!? いよいよユグドラシルのゲームの発売日が決まったんだってよ!」

 

「このご時世によく出せたよな、やっぱユグドラシルすげぇな!」

 

昨今の若者の話題は、ユグドラシルが販売する予定のARMMOに集約されていた。

これはARMMOでありながら、VRMMOとしての側面も併せ持った

体験型ゲームとしては最高峰の性質をもったゲームである。

 

――ディアボロス×クロニクル。

 

通称「D×C」と名付けられたそれは、当初ディアボロス×デスティニー。

通称「D×D」となるはずが、同名のテロ組織が登場したために

改名を余儀なくされた背景がある。

しかし、そんなことは些細な問題であったらしく

予定通りに販売するとニュースで発表されたのだ。

 

「…………」

 

沸き立つ中、一人だけ剣呑な表情を浮かべている者がいた。βテストに落ちた元浜だ。

 

「どした元浜? 楽しみにしてたゲームだろ?」

 

「いや、そうなんだけどよ……実は、妙な噂を聞いたんだよ。

 『ディアボロス×クロニクル』のβテストに参加したプレイヤーが

 こぞって謎の失踪を遂げていたり、変死体で見つかったりとかさ。

 俺も最初は無関係と思いたかったけどよ……これ見てみろよ」

 

元浜が見せたスマホの画面には「嵯峨マンサーチャー事務所」と書かれた

インターネットのサイトが表示されていた。

その名の通り人探しを行う珠閒瑠市の事務所だが、問題なのはそこの掲示板だ。

本来依頼はSNSではなくDMで行われる――個人情報の問題もあるため――のだが

SNSには「うちの子供を探してください!」だの「婚約者を探してください!」だの

「彼女が消えたんです!」といった声が数多く寄せられている。

そのすべてが、事務所の公式アカウントが

ディアボロス×クロニクルについて触れたところに書き込まれている。

どう考えても、関連性は高いだろう。

 

「偶然、にしちゃ怖いくらいの声だな……

 ゲームからログアウトできなくなってプレイヤーが次々変死を遂げる

 MMOのアニメがあったけどよ」

 

「いや、実はゲームは病原菌を感染させるための媒体で

 全プレイヤーにプレイさせてパンデミック起こさせようとしたって作品もあったぞ」

 

「それなら、実はゲーム世界はどこか別の世界で、自分の世界の存続のために

 他所の世界から人や物を取り込んで浸食、肥大化して存続を続けるって作品も……」

 

今上がったのはすべてフィクションである。

しかし、嵯峨マンサーチャー事務所に寄せられた声はノンフィクションだ。

この現状を、元浜以外の人間が知らないはずがないのだが……

 

ディアボロス×クロニクル。

この驚天動地、前代未聞、空前絶後、荒唐無稽のタイミングで発表。

発売されることが決まったゲーム。

このゲームが世界を席巻するのは、もう暫く先の話である――

 

 

――――

 

 

P.M. 15:30

駒王学園旧校舎跡 オカルト研究部仮部室

 

 

「……リアス君。実は困ったことになってね……」

 

「どうしたのかしら、先生?」

 

あまり困った素振りを見せないながらも、オカ研の顧問であるナイアがリアスに話を振る。

その手には、人間世界の週刊誌が握られていた。

 

「これを見ておくれ。顔ははっきり写ってないけれど、沢芽(ざわめ)市に現れたという

 五人組のテロリスト――『D×D』。これが、君達じゃないかって噂が流れているんだ」

 

見開きには、白黒写真で顔ははっきりと映っていないが

駒王学園の制服を着た男女4人と、スーツ姿の少年1人が映っていた。

リアス、朱乃、木場、アーシア、そしてオカ研を案内していた光実(みつざね)であった。

 

「あらあら。テロ行為をした身に覚えはありませんけれど……」

 

「勿論さ。それは僕が証人だからね。だけど、今日実は学校にマスコミが来たんだ。

 君らに接触する前に僕が追い返したけどね」

 

嘘か真かわかりにくいナイアの言葉だが、実際にリアスら生徒にマスコミは接触していない。

一応、教師として生徒を守ったことになるのだろう。

高校生テロリスト。日本ではなじみが全くないが

海外――情勢が不安定な地域ならば少年兵という概念がある。

そのことを思えば、世界的には何ら珍しくはない。無くすべき概念ではあるが。

 

ただ、今の時勢ではそれに等しい問題もあるが。

 

「……僕らは言っちゃなんだけど悪魔だからね。目の敵にもされるさ。

 けれど、光実君……だよね? これは。彼は、完全なとばっちりかもね」

 

「悪魔だから仕方ない」その木場の言葉は、リアスにとっては受け入れ難いものだった。

 

「祐斗! それ本気で言っているの!? 『悪魔だから仕方ない』って……

 悪魔はここにいてはいけないと言いたいの!?

 人間と争うつもりもないのに、ここにいてはいけないの!?」

 

それはリアスの本音であった。

自分はただ、人間の生きる世界に憧れていた。

だから、人間の世界に無理を押してやって来たし、人間の学校にも強引に通っている。

だが、人間の側はそれを快く受け入れようとしない。

何故、人間はこうも狭量なのだ、と。

悲痛で、どこか見当違いな思いが彼女の心に渦巻いていた。

 

「そこまでだ、リアス君。癇癪を起こす暇があったら、警備の段取りでも立てたらどうだい?

 模範となるべき君が、我儘三昧ではついてくるものもついてこないよ?

 ……そう、イッセー君とかね」

 

ナイアのどこか微妙にずれたアドバイスを聞き届け、リアスは平静を取り戻す。

その様子を、木場とアーシアは複雑な心境で眺めていた。

 

(リアスには悪いですけれど……イッセー君は私……とナイア先生のものですわ。

 今日も帰ったらめいっぱい可愛がってあげませんと。学校にも行けず、外も歩けずで

 イッセー君は欲求不満ですもの。欲望を叶えてあげることこそ、悪魔の本懐ではないかしら……うふふ)

 

仕えるべき主に対し、不遜な思いを抱きどこか黒い笑みを浮かべる朱乃。

そんな彼女からは、自分がテロリストになっているかもしれないという危機感はまるでなかった。

本物のテロリストとなってしまった紫藤イリナと同居しているせいもあるのかもしれないが。

 

一時からは考えられないほど針の筵と化したオカルト研究部。

一人グレモリー家の自室からパソコンで参加しているが故に

場の空気を感じ取っていないギャスパーはある意味、幸せなのかもしれない。

 

その時、そんな針の筵な空気を壊す一報が入った。

 

――クロスゲートから、また謎の怪物軍団が現れた、と。

 

 

――――

 

 

P.M. 16:20

駒王駅前広場

 

駒王町のクロスゲートは、時折移動していた。

移動による影響はないものと思われているが、実際のところどうなのかは全く以て不明だ。

そもそも、いまだクロスゲートというものを解明できていない。

デヴァ・システムという似たような装置が、かつて作られたことくらいしか判明していない。

 

「そういえば、この駅前広場……この間、何か変な集団がいたんだ」

 

「変な集団? 一体それは何なの?」

 

思い出したように口を開く木場に、リアスが問いかける。

変な集団。自分たちもある意味そうなのではあるが、それよりも変な集団となると一体何なのか。

 

「怪しげな宗教団体が、ビラを配っていたり祈りのようなものを捧げていたりしてたね。

 詳しく調べるべきだったのかもしれないけれど、近くに寄っただけで背筋が寒くなって……

 部長、申し訳ありません」

 

「絡まれなかっただけ良しとするべきかしらね。祐斗が無事で何よりだわ。

 もうこれ以上、私の大事な下僕は失いたくないもの。

 

 ……で、今日はその集団はいるのかしら?」

 

リアスの問いに、木場は首を横に振る。実際、駅前広場に人の気配はない。

別に木場は自分がリアスの下僕であることに不満は抱いていないが

リアスのその態度が反乱を招いたのだという事もまた、同時に理解していた。

眷属の主従関係は悪魔の価値観においてのみ適用される。

少なくとも、日本で育ち通常の義務教育を終えた高校生には

一部受け入れ難いものはあるだろう。

反乱を起こした者が、特別反骨心が強かったというのもあるかもしれないが。

 

「……いや。人の気配はないが、人の思念は残っているみたいだ。

 『群像の追憶(マス・レガシー)』なら読み取れるが……どうする?」

 

ナイアの神器「群像の追憶」が、駅前広場に残った人の思念を読み取った。

態々言ってくるあたり、あまりいいものではないのかもしれない。

 木場の証言を合わせても、不穏なものは隠し切れない。

 

「……確かめるわ。先生、お願い」

 

意を決して、リアスがナイアに解読を依頼する。

ナイアから現れた黒い影が、空中に映像を映し出す。

そこには――

 

 

――我らは、救済を齎すもの。

 

――巨人は、菩提樹に降り立った。

 

――我らの主の、教化を受けるのです。

 

――この荒れ果てた世界、我らの主こそが救済を齎すのです。

 

ザクロロックシードを持った宣教者らしき人間が、演説をしていた。

世界の混乱に乗じた、カルト宗教の集客に他ならない。

誰もがそう思っていたが、宣教者の目つきや行動は

それがただのカルト宗教の暴走ではないと証明していた。

 

何せ、宣教者に近づいた通行人の頭に翳された手が光ったと同時に

その通行人も瞬く間に同じようなことを口走り始めたのだ。

その異様さは、宣教者と信者仲間の勢いに押され、誰もが遠巻きに眺めるだけである。

時折、空気に呑まれ宣教者らの集団に近づくように足を運ぶ者がいるだけで

それを止める者は、誰もいなかったのだ。

 

「な……あからさまな営業妨害じゃない!

 私達の営業を停止させておいて、こんなのを許可するなんて!」

 

「……それより、警察が動いてないのが気がかりだね。

 こんなカルト宗教の演説なんか許可が……」

 

悪魔の視点からリアスが、人間の視点からナイアがそれぞれ疑問を述べるが

ナイアの言う通り、警察が動いていないのは不可解だ。

リアスに言わせば、出しゃばりと言わんばかりに出てくる超特捜課(ちょうとくそうか)

一向に出てくる気配がないのだ。

 

「恐らくだけど、人間相手だからだろうね。管轄が違うのさ。

 言うなれば、交通課に捜査一課の仕事をさせるようなもの。

 超特捜課が来ないのも、ある意味必然かもね。

 

 ただ……この通行人の豹変っぷりは、超特捜課案件って気はするけどね」

 

ナイアから見ても、通行人の豹変っぷりは異常だった。

それなのに、超常事件に対応する超特捜課が一向に出てこない。

一体、どういうことなのか。とリアスが言いかけたその時である。

 

「――憎キ神ノ気配ヲ追ッテヤッテ来テミレバ……ナニモノダ、オ前達?」

 

逆立った蛸のような頭に、乳房らしき部分からは触手を生やした

有体に言って異形そのものの存在。

 

次々と、女性の頭だけの怪物、どちらかというと二足歩行の獣のような怪物。

少なくとも、地球上に存在するどの生物とも合致しない。

今は悪魔が全国的に知れ渡っているから悪魔と見做されているだけで

もしかしたら宇宙人と見做されていたかもしれない、そんな存在。

 

「それはこっちのセリフだわ。あなたたち……はぐれ悪魔でもなさそうね。何なのかしら?」

 

「……ウン? オ前、我ラトオナジ悪魔ノ臭イガスルゾ?

 ……アア、ソウカ。『デキソコナイ』ノ放カ。人間ゴトキヲ模倣シタデキソコナイガ

 我ラト対話スルコトヲ赦サレルトデモ思ッテイルノカ?」

 

かみ合わない。目の前の異形は、自分たちが悪魔であると言い、リアスらを指して

「人間をまねた出来損ない」と言っている。少なくとも、リアスはこの格好で生まれているし

両親も知っている限りでは二本足の人間に近い姿形だ。

悪魔の中には魔力で姿形を自在に変えられるものもいるが

ここまで露骨に人間態から離れたものは、少ない。

 

「その言い分だとあなたたちも悪魔ね。なら知らないのかしら?『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』たる

 このリアス・グレモリーを!」

 

「知ラン。チョット強イ魔力ハアルミタイダカラ、神ヲ倒スタメノ腹ノ足シニハナルダロウ。

 デキソコナイ故、マズソウダガナ」

 

リアスのどこかずれた自己紹介も意に介さず

自分たちの意見だけを押し通そうとする自称悪魔の異形達。

明らかに自分たちを害しようとしているその態度に、リアスらも応戦を決意する。

 

「いちいち余計なことを言う……誰かを思い出して腹が立つわ!」

 

(セージ君今関係ないのに……)

 

挑発に乗ったリアスが滅びの魔力を放つが、その魔力は異形によって「喰われ」たのだ。

木場は以前この異形の悪魔と戦っていたが、その際に敵の全てを知ったわけではない。

他のメンバーは初戦みたいなものだ。敵のデータなど、ほとんどない。

 

「魔力を……食べた!?」

 

「……ウン。ヤハリデキソコナイノ魔力ダカラ、マズイナ。

 ダガ腹持チハヨサソウダ、直接喰ラウノデハナク、別ノ方法デ喰ラウトシヨウ」

 

魔力を喰らう異形。

アインストにも滅びの力が通らなかった前例はあるが、これは通る通らないの問題ではなく

魔力そのものを「喰った」のだ。

 

魔力を喰らう異形。

悪魔のアドバンテージを否定する、悪魔を名乗る異形。

 

平穏が戻ろうとしていた駒王町。

だが、その陰ではこうして不穏な影が蠢いていたのだ。




前書きで言ってたくせにセージが出てこない。
Bパートをお待ちください()

……えっと。今更ですしくどいようですが

「この作品はフィクションです。実際の人物、地名、出来事とは一切関係ありません」

昨今の世情を見るとどうしても、ですね

>ディアボロス×クロニクル
ついに正式タイトル発表です。
本文中にある通り話題になるのはもっと先ですが。

因みに一応会話の中に出てきたゲームは元ネタがあります。
1つ目は私がうろ覚え、2つ目はすぐお判りでしょうが
3つ目がすぐにわかった方。探さないでください。
そこに私はいません。

変死体が出たり行方不明者が出たり、元ネタ通りに不穏な空気マシマシですが
アジュカのゲームも、神器所有者発見するのはいいとして
その後どうするつもりだったんですかねぇ……?

>5人組のテロリスト
シャドウご指名入りましたー

ただ、既に影に堕ちた朱乃のシャドウに出番があるかというと……?
(なんか、拙作の朱乃ってやっぱり扱い悪いなぁ……)

この場にはナイアもいたはずですが、ちゃっかり写真からは外れてます。

それに、出そうと思えばこの場にいないゼノヴィアのシャドウも出せますからね。
セージも言わずもがな。

>黒の菩提樹
駒王駅前で勧誘活動行うという不敵行為。
警察機能が低下している証左ですね。
リアスに対する当てつけも含んでいるかもしれません。当事者にそんな意図はないでしょうが。

教化という単語がありますが……まあ、そういう事です。

>異形の悪魔
今回断言してませんが、デーモン族っぽい連中。
DD悪魔とデーモン族、全然違うけれど同じ悪魔として扱ってます。
まあ、それ言ったらメガテン悪魔とDD悪魔もまるで違う存在なんですけどね。

三大勢力共通認識である神の消滅を知らなかったり、黒の菩提樹を追って神を探していたり
この辺りで既に認識の齟齬が発生してます。

>リアス
……いつものことですが、本当に形無し。
事あるごとにセージを意識した発言しているあたり、もしかしてもしかすると?

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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