ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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お待たせしました。
この先は色々ネタが出て来るんですが、そこに至るまでが……


Will16. 地獄門からの帰還 Bパート

「コ、コイツハサッキノ出来損ナイノ……ナゼ、キサマガ……!?」

 

「悪いな。俺は大体のものは真似できるんだ。本家がどういう使い方したかは知らんが

 俺は俺のやり方で力を使う。悪く思うなよ」

 

内側から滅びの力を叩きこまれる形で、テキスクは消え去った。

その瞬間、消え去ったテキスクから生じた光がディーン・レヴに吸い込まれた風にも見えたが……

これは一体、なんだろうな。これがマグネタイトとか言うやつか?

 

だとすると、ディーン・レヴはマグネタイトを吸って動いているのか?

いずれにせよ、クロスゲートを潜っただけで何故かチャージされたことと言い

状況がわからなさすぎる。今回の件で、クロスゲート、そしてディーン・レヴについて

わからないことが増えた気がする。

 

クロスゲートと言えば、ここにいる駒王学園の生徒だって

俺の知っているのと同一存在かどうか……

こっちに仕掛けてこないのは、おそらくは様子見だろうとは思うが。

 

 

思案を巡らせていたこの時、俺は完全に失念していた。

攻撃に割り込まれたことで割り込んできたテキスクにばかり意識を向けていたことで

最初に対峙していたジンメンに対する意識がまるっきり飛んでいたのだ。

チッ、結局初歩的なミスしてるじゃないか!

 

周囲の景色が歪む。

これは……サイコジェニーの力か!?

先手を打たれる形になった……まずいことにならなきゃいいが!

 

怯んだ隙に、ギャスパニッシャーを取り落としてしまう。

サイコジェニーの頭が、こっちに向かって突っ込んでくる。

辛うじて受け身は取れたが、やはり生身でデーモン族の攻撃を受けるのは痛い。

 

「が……っ!?」

 

「サア、大人シク喰ワレルガイイ。ナアニ安心シロ、喰ワレタトテ死ニハシナイ。

 コノ甲羅ノ中デ、我ラト共ニ永遠ニ生キ続ケルノダ。

 尤モ、オ前ノ時間ハ死ヌ瞬間カラ永劫ニ進ミハシナイガナ」

 

倒れこんだ俺を喰おうと、ジンメンがのしかかってくる。

生で生きた人間を喰おうなんざ、悪食もいいとこだ!

 

……ふと、俺はかつて対峙したはぐれ悪魔の事を思い出す。

初めて記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を起動させたときに戦った蜘蛛みたいな奴。

オカ研面子のはぐれ悪魔狩りに付き合わされる形で同伴した、バイサー。

その他にも、ここに来るまでに様々なはぐれ悪魔と戦った。

 

まあ中には、結局インベスみたいなもんだったドラゴンアップルの害虫と化した

元妖怪のはぐれ悪魔や、黒歌さんみたいなケースもあったりするから

全部が全部人食いの生物ってわけじゃないだろうが

インベスは主食を獲物を使って栽培する性質があるから長い目で見れば人食いの一種だし

黒歌さんだってあのまま放置してたら間違いなく食人行為を行っていただろう。

 

とにかく、ここで喰われるわけにはいかない。

何とかして引きはがそうとはするのだが、力が強すぎる。

一応バフかけてるとはいえ、元が人間ではこういう時仕方がない部分はあるのか……!

勿論、相手がパワーに長けているって部分もあるのは事実なのかもしれないが。

いずれにせよ、現状では相手を調べられない。動きを完全に封じられた。

 

「ぐぐ……っ……!」

 

周囲に注意が向いていない。これは先刻の俺もだが、今のジンメンも同じだったらしく。

どうやらサイコジェニーの頭が背中から生えたとは言っても

その頭についている目に視認能力はなく、ただ催眠術や超能力といった能力を

行使するための器官だったらしく。

 

「……隙ありです!」

 

背中のサイコジェニーの目に、ジンメンから見て背後から攻撃が加えられる。

どうやら、俺にかまけているうちにオカ研の面々に対する注意が逸れたみたいだ。

アーシアさんの蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)の雷撃や、白音さんや黒歌さんの妖力の塊。

致命的なダメージにはなっていないが、サイコジェニーの結界を破るには十分だった。

 

「ヌウッ!? 我ガ空間ガ……!」

 

拘束が緩む。抜け出して反撃するなら今だ!

 

「おい、俺を喰いたいって言ってたな?

 ……そんなに喰いたきゃ、これをくらえ!」

 

ディーン・レヴに蓄えられたエネルギーを、ジンメンに直接送り込む。

さっきからエネルギーが暴発しそうでマズかったので、どこかで放出しないといけなかった。

これが送り先としては適切……かどうかはわからないが。

風船みたいに、破裂してくれればいいが……

 

「オゴッ!? オゴゴゴッ!?」

 

目論見通り、ジンメンの内側からエネルギーが暴発を始める。

このままいけば、倒せるかもしれないが――!

 

「伏せなさい!」

 

遠くから聞こえた声に、俺は思わず身構える。

これはまずい、と慌ててディフェンダーを実体化させた。

 

SOLID - DEFENDER!!

 

「二段構エ……コンナ……出来損ナイノ悪魔如キニ……!」

 

ディーン・レヴの力で動きが鈍っていたジンメンに、遠くから魔力がぶつけられた。滅びの力か。

となると……

 

振り向いた先には、赤い髪を靡かせてやたら自己主張の激しい胸を張りながら

胸同様に自己主張しながら偉そうに立っていた。

 

……とはいえ、今日は助けてもらったのは事実だし礼は言わないと。

 

「セージ! あなたセージで間違いないのよね?

 本当にあなた一体何処から出てきて……」

 

「セージ! おかえりなさい、待ってたにゃん!」

 

リアス・グレモリーを押しのける形で黒歌さんが飛びついてくる。

ほんのごく僅かにリアス・グレモリーに同情したが、黒歌さんがすりすりごろにゃん始めるので

たちまちそれどころではなくなってしまった。

すりすりごろにゃんするのは構わないけど、猫の姿でやってくださいと

家に招き入れた時から何度も言ってるでしょうが。

とにかく、このままでは身動きもとれないし話が進まないので一度黒歌さんを引きはがさないと。

 

「……相手はうちに帰ったらしますから、今はとりあえず離れてもらえます?」

 

「言質取ったにゃん! あとで覚えてないとか言うんじゃにゃいわよ!

 今までの分構ってもらうから覚悟するにゃん!」

 

……安請け合いしたかも。だがこの場を収めるにはこれしかない、と判断した以上仕方ない。

レーダーで周囲を調べたが、デーモン族の反応はない。

とりあえず、この近辺は大丈夫という事か。

となると……と、話を進めようと思ったら今度は白音さんの視線が痛い。

 

「…………おかえりなさい、セージ先輩」

 

「……みなまで言わなくていい、俺は贔屓は嫌いな主義だし」

 

言わんとすることを察してしまった。姉がこの様子では色々苦労するだろうなあ。

猫の相手なのか、そうじゃないものの相手なのかいまいちわからん部分もあるが

それは考えるのはよそう。疲れてるときに考え事はするもんじゃない。

当初の予定より帰るの遅くなったし、このリアクションは不謹慎だが嬉しくもある。

 

……ん? 当初の予定? 今いつだ?

 

「……なあ。変なこと聞くが、今は俺が出てからどれだけ経った?」

 

「……セージ先輩が出てから、ちょうど3週間です。聞いてた話より少し早いくらいです」

 

少し早い? やはり、クロスゲートで沢芽市からこっちに飛んできたおかげで時間が狂ったか?

というか、物凄いドンピシャで来られたもんだな。

もっととんでもない場所に飛ばされるとは覚悟してたが。

別の世界に迷い込んだ様子もなさそうだし。こんなところで強運を発揮したか?

 

「おかえり……と言うより、何ともないのかい?

 だってセージ君、今どう見てもクロスゲートから出てきた風にしか見えないし……

 それに、もう転生悪魔じゃないはずなのに普通にアモンの翼で空飛んでた上に

 その状態で神器(セイクリッド・ギア)使ってた風に見えたし……」

 

そこだ。祐斗にも突っ込まれる程度には、今の俺の状態はかなり怪しい。

戦力という意味では間違いないが、状況という意味では分からないことが多すぎる。

デーモン族が突如動き出したって点にしても、だ。

 

「セージ。まさかとは思うけれど、あなた別の悪魔の眷属に……」

 

「……助けてもらったことには感謝しますが

 あんた俺がそういう決断を下すはずがないって発想はないんですか?

 とりあえず、話がしたいなら一度休めるところでお願いしたいんですが。

 俺もそれなりに疲れ……っと失礼、電話なので」

 

グレモリー先輩の見当違い甚だしい意見をあしらっていると、スマホに着信が入る。

相手は――霧島巡査?

そういや、霧島巡査の呼び出しで沢芽(ざわめ)市からこっちに向かう途中で

フリードや向こうのアーマードライダーに襲われて、クロスゲートに飛び込んだんだっけか。

 

『宮本君、何度もごめんなさい! 警察署の前に正体不明の悪魔が――』

 

「警察署……駒王警察署ですよね? 駒王町で活動している超特捜課の拠点が置いてある」

 

霧島巡査が言ってくるってことは、おそらく駒王警察署で間違いはないと思うが

念のため聞いてみる。今話しているオカ研面子や猫姉妹が俺の知っているのと

限りなく同一存在に近いから間違いはないと思うが、念のためだ。

 

その返答は「何言ってるんだこいつ」的な反応が見え隠れしていたが

確信とまでは至らないにせよ、8割くらいの確率で

ここが俺の知っている駒王町であることを示す証拠になり得た。

今の白音さんらとの対話でも確信は得ていたが、もう一つ証拠が欲しかったのだ。

 

霧島巡査。超特捜課。駒王警察署。俺の知っている単語がピンポイントでそろいすぎている。

残りの2割は偶然の一致の賜物だろうが、その偶然の一致をそろえる方が大変だ。

まあいずれにせよ、警察が襲われているのだったら応援に向かうのが道理だ。

 

飛べるのだから有効活用しよう、とばかりにアモンの翼を開こうとした矢先

背後から再び声をかけられる。

 

「セージ、どこ行くの!?」

 

「警察。救援要請蹴るわけにもいかないでしょうが。

 それと、消耗激しいから分身にどっちか片方の相手を……ってのは無しで頼みます。

 あれホイホイ使ってる風に見えますが、実際結構疲れるので……今回の警備で骨身に沁みました。

 それに、警察を襲っているのがさっきまで俺らと戦っていたデーモン族の仲間なら猶更ですな。

 アインストやインベス、もっと言えば禍の団(カオス・ブリゲート)でも一緒ですがね」

 

……面倒くせぇ。こっちは暇じゃないってのに。

話し相手が欲しければ自分の眷属に頼めばいいだろう。

こっちだって状況の把握は完全じゃないんだ。

不完全な情報をべらべら言ったら、混乱の原因になるだろうが。

 

「待って! あなたに聞きたいことが色々とあるのよ! なぜクロスゲートから出てきたの?

 こいつらは一体何? 祐斗も言ったけど、どうしてアモンの力と神器を同時に使っているの?」

 

しかも答えづらい質問までしてきやがる。本当に面倒だな。兵藤がついてないだけマシだが。

答えるのは礼儀っちゃ礼儀だが、こっちはそれより急ぎの用があるんだ。

 

「こいつらはデーモン族。あんた悪魔なのに聞いたこと無いので?

 アモンに言わせば悪魔の先祖みたいなもんらしいですがね?

 そして俺は今言った通り急いでるので。話なら俺の用事が終わってからで頼みます。

 具体的には明日……いや、明後日の夜ですね。

 話をするにしても、こっちも情報を纏める猶予と、体力回復させる猶予が欲しいです。

 俺は今そっちの眷属じゃないですが、まさか他人にブラック企業待遇を

 強要したりはしないでしょう?」

 

「……わかったわ。明後日の夜ね。絶対来なさいよ」

 

アモンの真紅の翼を広げ、俺はリアス・グレモリーを尻目に飛び去る。

その刹那、猫に化けた白音さんと黒歌さんが両肩に乗ってくるので

二人がうまく乗れるように肩を動かす。

そのまま二人を肩に捕まらせたまま、俺はこの場を後にすることにした。

これ以上の相手をするのが面倒というのもあるが、相手がデーモン族であるとなると……

急いだほうがいいかもしれない。何故だか、そんな気がしてならなかった。

 

――アインストやインベスと違い、心を喰って力を得ているような奴らだ。

俺の記憶では警察署は避難所として開放されていた。

そういう意味でそこが襲撃されるというのは、よろしくない。

グレモリー先輩の話も完全無視を決め込んでもよかったが

デーモン族と現代の悪魔の関係については、今の冥界の住人に聞いた方が早いかもしれない。

そういう思いもあったのだ。あの反応では俺の思い違いの可能性は極めて高いが。

 

「……セージ。ちょっとリアス・グレモリーに甘くないかにゃん?」

 

「デーモン族なんてもろに悪魔と深い関わりのある奴らが出てきた以上

 悪魔の意見は聞くべきだと思ったんですが……ありゃ、知らなさそうですね。

 まさかアモンより知ってる情報が無いとは思わなかった。

 そのアモンもさっきからだんまりですし」

 

「デーモン族なら、あたしも知ってるにゃん。でも、絶滅したとばっかり思ってたにゃん……」

 

黒歌さんも、デーモン族については知っているらしい。

絶滅した、という意味ではアモンとほぼ同等程度の知識量と思うべきか。

しかし、そうなると解せないのはグレモリー先輩の反応だ。

悪魔の癖に、デーモン族を知らないというリアクションを取った……どういう事だ?

冥界の情報統制を懸念しつつ、俺は警察への空路を急ぐのだった。

 

 

 

……その急いでいる後ろで、眼鏡をかけた黒髪の女性――布袋芙(ほていふ)ナイアが

不敵な笑みを浮かべていたのには、俺は気づくことはなかった。




>デーモン族の捕食合体バフ
感覚器官として使うか、能力行使の器官として使うかは任意です。
この辺、なんでもありすぎますね……

>オカ研の参戦
オカ研らしからぬハイエナプレイですが、敵が未知の存在であり
搦め手多彩で危険な相手であること、そして何より突撃バカの割合が減っているので
こういうプレイもありかな、とは……

と思ったけれどリアスは割と最序盤から脳筋プレイでしたわ……
イッセー比較で頭使ってる風に見えてただけで

>リアス
リアスに限らずなんですが、どうしても他人を測る時には自己の測りに当てはめてしまいがちです。
故に、今回セージが呆れてます(勿論、セージも自分の測りで当てはめてる罠があったり)。
そして、彼女がデーモン族を知らないという事は悪魔の歴史において地味に重要なフラグだったり。
彼女に学がないという話ではありません。悪魔絡み、神器絡みに関してはそれなりの知識は有してますしね。
そんな彼女がデーモン族の事をまるで知らない、これはつまり……?
この件についてはセージも想定外だったらしく、素で呆れてます。
一応リアスがデーモン族の事を知らないのには理由がありますが、知ったこっちゃないですので。

>猫姉妹
猫ムーブしてない、と思われるかもしれませんが、猫によっては普通にこういうことします(ソース:故・うちの猫)
ちゅーるでもやったのかってくらいに懐かれてますが……本当になんででしょう。
いくら何でもやり過ぎたかもしれません……

ちなみにセージがピンポイントで飛んでこれた理由、それについてはナイア先生がほくそ笑んでますので……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

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