ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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セージがヴァーリと戦っているその一方で。


余談ですが。
時系列上ライチやキングドリアン、シルフィーは出すのがちと難しいんですよね。
クロスゲートって裏技が無くもないんですが、クロスゲート産ロックシードは
レジェンド枠でやっちゃってるので……
開発の前倒しとかならワンチャン? 斬月カチドキとは訳が違うからそれもなぁ。


JOKER Aパート

珠閒瑠(すまる)市。

10年前、この町ではある「噂」が広まっていた。

 

自分の携帯電話から、自分の携帯電話にかけると

ジョーカー様(JOKER)」なる存在が現れ

 

 

――願いをかなえてくれる(殺人を依頼することができる)

 

 

時を経て、その噂は風化していった。一説には「ストク様」と名を変えて

暫くは語られていたらしいが、それすらも今となっては痕跡が残っていない。

それほどまでに、人間の世界においては「JOKER」なる存在は過去のものであった。

 

…………それなのに。

 

 

「……一体、何のつもりなのかしら?」

 

珠閒瑠市・平坂(ひらさか)区。

改装中の駅ビル「スマイル平坂」を避けて駅前へと移動しようとしている途中の

リアス・グレモリーらの前に、それはいた。

 

赤と黒で彩られた、顔部分が真っ黒の仮面。しかしその口に当たる部分には

白い歯を不気味に輝かせ、血のような赤い唇をした意匠が象られている。

そんな不気味な存在が纏うのは、灰色の学ランに仮面と同配色の道化師を思わせる靴。

 

そんな存在が、リアスらに付きまとっていたのだ。有体に言えば、不審者である。

 

「だろうなァ? 俺に殺されるやつはみぃーんな、そう言った。

 俺に殺しを依頼するって事は、即ち恨みを抱いているって事だ。

 そして恨まれる奴ってのは、恨んでいる奴の事なんか

 これっぽっちも考えたりしちゃいねぇもんだ」

 

風貌からは想像もつかない、音割れしたような声色で、どこか狂気を孕んだ口調。

それはリアスのよく知る悪魔とも、リアスが少ししか知らないデーモン族とも違う。

 

「私を殺す……禍の団(カオス・ブリゲート)あたりの刺客かしら?」

 

「依頼人の秘密は厳守だ。それに俺がてめぇを殺すのは『噂』で決まってるんだ。

 何故かって? そいつぁな……

 

 俺こそが願いを叶える怪人『JOKER』なんだよ! ヒャーッハッハッハッハッハ!!」

 

狂ったような笑い声を上げながら、抜身の刀を振り回す怪人。

気づけば、似たような怪人はさらに増えていた。

しかし、それはまるで廉価量産型のように、頭の仮面は安っぽい紙袋に

同じような口の意匠を描いただけと言う

安っぽさの中にある種の不気味さを孕んだものであった。

 

「姫島朱乃、木場祐斗、それにアーシア・アルジェント。

 てめぇらも殺してくれって願い、理想ってのがあってなァ?

 俺はてめぇらに恨みはねぇんだが、これも『噂』で決まってるんだ。悪く思うなよォ?」

 

まるで映画館のサラウンド音声のように響き渡るJOKERの声。

個人的な殺意によるものではない、淡々と告げられる死刑宣告。

意思のほとんどないはぐれ悪魔の相手が殆どだったとはいえ

戦闘経験も少なくない朱乃や木場はともかく

アーシアはまだそこまでの敵意を向けられることには慣れてはいなかった。

 

「わ、私を……!?」

 

「私はもとより、朱乃や祐斗、ひいてはアーシアまで殺そうっていうの!?

 あなた、一体どういうつもりなのよ!?」

 

「言ったろ、『噂』でそう決まってるってな。てめぇらも可哀想になぁ。

 なまじてめぇらの『死』を望む奴らがいるもんだから、俺が来る羽目になっちまったんだ。

 恨むなら、てめぇらの『死』を望んだ奴を恨むんだなァ?

 俺は『噂』に従ってそいつらの『願い』を叶えてやってるだけだ」

 

噂などと言う、リアスにとっては不確定要素に他ならない要因だけで

自分たちを殺そうとするJOKERに、リアスは呆れると同時に闘志に火が付いた。

JOKERのその気配は、明らかに人間ではない。いや、人間であったとしても

自分たちに害をなす神器(セイクリッド・ギア)持ちや聖剣使い、祓魔師と言った人種であると判断したのだ。

見てくれはともかく。

 

「そんなふざけた理由で、私の朱乃や祐斗、アーシアを殺させはしないわ!」

 

「失礼なガキだな、俺はふざけちゃなんかいねェよ。

 てめぇらへの殺意、それは紛れもねぇ本物だ。聞かせてやろうか?」

 

JOKERが右手を翳すと、そこから無数の怨嗟の声が聞こえてきた。

 

 

――何でこんな奴が。

 

――こいつのせいで、私たちは苦しい生活をしている。

 

――何がグレモリーだ。何が領主だ。私たちは苦しんでいるのに、助けてくれないじゃないか!

 

――グレモリーなら助けろ! 情愛の悪魔だろう!?

 

 

流れ込んできたのは、グレモリー領に住む悪魔達の怨嗟の声。

彼らのうち、誰がJOKER呪いをしたのかはわからない。或いは、全員がやったのかさえも。

そこは頑なにJOKERは口を割らなかった。

 

ただ一つ言えるのは、今リアスと対峙しているJOKERは、一人だけの願いではなく

多くの願いが一つに集まって顕現しているという事である。

取り囲んでいる量産型のJOKERにしても、対象がリアス以外になったというだけで

ただ一人の願いから成り立っている存在などではない、という事は確かに言えるのだった。

 

 

――汚らわしい。その体で男子を誑かして地位を得ているんでしょう?

 

――なんでこんな奴が学園で人気なのよ。私の方が……!

 

――先生にも色目を使っているんですって? なんてふしだらな!

 

――何で? 兵藤なんかのどこがいいの? 特別扱いするなら他に……

 

 

「これは……私、そんなことは……そんなつもりじゃ……!!」

 

「朱乃、しっかりしなさい! こんな雑音は――」

 

 

――いけすかねぇ。てめぇに優しくされるだけで、俺は惨めになるんだよ!

 

――どうせてめぇ以外の男なんかここじゃクズなんだ。

  てめぇと宮本だけ助かろうったってそうはいくか!

 

――如何にも自分は関係ないみたいなそのすかした態度、気に入らねぇんだよ!

 

――宮本が兵藤達を制裁しても、てめぇがいる限り俺達に明日はこねぇんだよ!

  俺達男子はこの学校にいる限り永遠に女子の奴隷だ! てめぇだけ生き残ろうったって!

 

 

「これは……まさか、駒王学園の……!?」

 

 

――聖女ぶってるくせに、悪魔なんだって……?

 

――なーんか、まるで色々な男に色目使ってるあばずれみたいよね。

 

――聖女様でございって面してても、結局あいつらと同じ悪魔なのよね。それに……

 

――天使だろうと悪魔だろうと、結局人間を食い物にしてるじゃねぇか。

  どっちにもおべっか使って、そこまでして生き延びたいのか?

 

 

「違います! 私は、私は……!」

 

 

JOKERが流した声には痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみ、蔑み、妬み、怒りと言った負念が

これでもかと込められていた。それはJOKERが願いを叶える際に生じたエネルギー。

そのエネルギーで、JOKERは具現化している。

そう言う意味では、かつてJOKERを指し示したように罪が形を成したる存在と言えるだろう。

 

「違わねェよ。今のぜェんぶ、俺にてめぇらの殺しを願った連中の、心の声なんだぜ?

 俺は『噂』で『願いをかなえる怪人』って風に決まってるからよォ。

 心の声を聴くことくらい、余裕で出来るんだ。

 でなきゃ、本当に願ってることなんざ叶えられねぇからな」

 

リアスら悪魔も、人の願いを叶える。だが彼女等は、人の心の声など聞かないし、聞けない。

その点においてはJOKERが上手と言えるが、本当に上手と言い切れるかは疑わしい。

人の心を聞いたとて、それが「本当に望んだこと」かどうかは話が別だ。

心の声の一部分を拡大解釈して、JOKERに都合よく解釈された上で願いを叶えられたのでは

それは本当に望んだことを叶えてもらったとは言い切れないのだ。

 

ただ、悪魔が「命は等価値ではない」を合言葉に願いの履行を拒否することがあるのに対して

JOKERは一切そのようなことをしない。本当にどんな願いも叶えてしまうのだ。

ただし、願いを言えなかった者や分不相応な願いを告げた者は

「叶わぬ夢なら見ない方がまし」とばかりに夢見る心ないし

生きる意志を奪い取り、廃人にしてしまう。そういう意味では、悪魔とは一長一短だ。

 

「許せない……! 願いを叶えるなんて言っておいて、こんな邪な……!」

 

「ヒャハ? おいおい、てめぇがそれを言うかァ? 願いに清純も邪もねぇだろうが。

 ただあるのは、その願いに対する『情熱』や『純粋さ』だけだぜ。

 『一念岩をも通す』、って言葉があるんだが……知ってるか?」

 

JOKERの言葉に、リアスは押し黙る。

実際に言葉を知らなかったのもあるのだが、JOKERの例えには心当たりがあったのだ。

兵藤一誠。彼こそ邪な願いと情熱や純粋さを兼ね備えている好例だったのだ。

 

「てめぇが俺を糾弾するのは勝手だ。だがなァ、そいつは他でもない『矛盾』だぞ?

 忘れるなよ。てめぇが願いを叶えようとしてる奴もまた、俺に願いを言う奴の同類なんだよ。

 てめぇが俺を、俺に願った奴らを糾弾するって事はな

 てめぇに願った奴への糾弾でもあるんだよ!」

 

抜身の刀を振りかざし、JOKERが吠える。

リアスにも、多少なりとも願いを叶えるものと言う矜持はあった。

しかしそれは、目の前のよくわからない同業者に否定されていた。

目の前の不審者の言葉を違うというのは簡単だ。だが、その言葉に真実味があるかどうか。

そこまでとなると、話は別だ。

 

「さて、御託は終わりだ。そろそろ願いを叶えさせてもらうとするか。

 

 ……ヒ……ィハ……ヒャァーッハッハッハッハッハッハ!!」

 

JOKERの振り回した抜身の刀の刃から、光が放たれる。

その光は周囲を巻き込み、建物への被害もお構いなしにリアスらを狙う。

 

その事態に、このままでは危険だと判断したアーシアは咄嗟に魔力で壁を作るが

その壁さえも、光は容易く崩してしまう。

 

「きゃあっ!」

 

「アーシア!」

 

JOKERが放った光。リアスらが知る魔法の体系とはまた異なる異能。

――メギド。イスラエルの丘と同じ名を冠するその魔法は、あらゆる存在に対し

魔法の力で攻撃することができる。

それを防ぐには、魔法そのものから身を守るすべがなければ話にならない。

おまけに、威力も相応にある。故に、アーシアの防護魔法を容易く貫いたのだ。

 

「くっ、こうなったら……」

 

「リアス、ここで戦っては被害が大きくなりすぎますわ。

 何とかして、被害を広げないようにしないと……!」

 

JOKERを迎え撃とうとするリアスだったが、それは朱乃によって制止される。

今リアスらが対峙しているのは駅の近く。それも無人駅じゃない、相応に人の往来のある場所だ。

既に人だかりは出来ており、通行人は無責任にもリアスらやJOKERに対して

スマホを向けている。既にSNSにアップされていることを、リアスらは知る由もない。

 

(なんて無責任な! ここにいたら、巻き込まれるかもしれないってのに!)

 

ふと目に入ったその通行人の態度に、リアスは内心歯噛みする。

多少は「あなた達がいるから私達が戦えない」という思いもあったかもしれないが

損害を大きくしたくない、と言う思いも確かにあった。

 

「けれどバリアは容易く破ってくる……仕方ないわね、私が奴の魔法を打ち消すわ。

 小猫と光実(みつざね)、ゼノヴィアが別行動なのはいいのか悪いのか……わからないわね」

 

偶々この場にいなかった白音、ゼノヴィア、光実がJOKERの標的かどうかは、わからない。

だがJOKERの性質上、邪魔をするのであれば排除にかかるだろう。

遠くに見える廃ビルが揺れているのが、リアスの青い眼に映った。

そこではセージがヴァーリと戦っている。場所を変えるにもあの廃ビルに行くわけにはいかない。

そもそも、自分たちは珠閒瑠市の土地勘が無い。

昔珠閒瑠市に住んでいた一誠がいたならばともかく。

 

「諦めて殺される気になったかァ?」

 

「冗談! あんたみたいな奴に殺されてたまるもんですか!」

 

衆人環視の中、あからさまな不審者を相手に、リアスは戦う決心をする。しかし――

 

「おい、あいつテロリストって報道された……」

 

「本当! なんでテロリストがこんなところにいるのよ!」

 

「逃げろ! ここにいたら巻き込まれるぞ!」

 

リアスの思惑とは全く違うが、蜘蛛の子を散らしたようにばらばらと散っていく野次馬。

そんな彼らの言い分は悪く言えば勝手なものであり、中にはリアスらに対する罵声も紛れていた。

 

「なァ? これでもてめぇらに『死んでくれ』って望んでる奴がいるって話、信じられねぇか?

 ま、無理もねぇがな。俺も手心を加えるなんてことはしねぇし。

 かわいそうになァ、折角だから一思いに殺してやるぜ……ヒャアーッハッハッハッハ!!」

 

振り下ろされた刀は、舗装された地面を容易く砕いていた。

いくらリアスが悪魔で人間より多少頑丈とは言え、この一撃を受けて無傷とはいかない。

JOKERは、間違いなく口先だけの意味ではなく「悪魔をも殺せる」存在なのだ。

 

かつて珠閒瑠市を震撼させた殺人鬼は、ここに「悪魔を殺す存在」として復活を遂げた。

当時を知らぬものは「テロリストを狩る存在」として。

当時を知るものは「いつその刃が自分たちに向けられるか」に怯えながら。

 

珠閒瑠市や、その外部で実しやかに囁かれていた「JOKER復活」の噂は

今ここに実現したのだ。




JOKER!? 冥界にいたはずじゃ……

>JOKER
噂で生まれた実体を持たない存在なので、無数に存在します。
罰では「JOKER呪いをしたものはJOKERになる」と言われてましたが
現状では「JOKERは特定の一人を指すものではない」程度にしか言われてません。

最早淳でも須藤でもなく、「JOKER」と言う存在が独り歩きしているだけのただの怪人です。
中身のない噂から産まれた存在ですからね。

今のところ抜身の刀とメギド位しか使ってませんが、初見殺しのあの技も実装されてます。

>願いを叶えるメカニズム
言いたいことはわからんでもないんですが「命は等価値ではない」って言葉、やはり引っかかるんですよね。
命は生まれた瞬間からそこにあるんですから価値の差もへったくれもない、と自分は思ってます。
それを等価値ではない、なんて言ったら……

この世に生まれたことが消えない罪だとでも?
なら生きることは背負いし罰なんでしょうかね?

理解は辛うじてできても、納得も同意も出来ませんね。
何を思ってそんなことをのたまったのやら。

>JOKERを顕現させるエネルギー
罰にてJOKERは「罪が形を成したるペルソナ」と呼ばれてました。
拙作JOKERは、「願いを叶える」罪ジョーカーと
「殺しを依頼される」罰JOKERの折半として意識しています。
故に、殺人と言う「罪」で怪人体を顕現させる必要があると考え
願いに負念の要素を混ぜ込み、こうなりました。

>邪な、でも純粋な願い
この戦いに正義は無い……は別の話ですが。
この一点はイッセーもブレないと思うんです。邪だけど、純粋。
邪だけど純粋な願いって、方向性変わったら浅倉(ライダーバトルの永遠の存続)も一緒なんですがね……

>JOKERにリアスらの殺害を依頼した人ら
リアスはグレモリー領の住民悪魔で確定ですが、朱乃や祐斗、アーシアは一体。
駒王学園の生徒には違いないんですが……どこからJOKER呪いを?
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