何とかまとまりましたので、投稿させていただきます。
A.M. 06:52
ホテル・プレアデス 一室
早朝から呼び出されたと思ったら
俺は何故だかギャスパーの着替えの手伝いをすることになっていた。
なんでも――
――白音さんがいないのに、ギャスパーがいる。
これはよくないからいっそギャスパーを白音さんの替え玉にする――
――とのことだが、無茶じゃないか?
背格好とかでバレ……いや、どうだ? ギャスパーは本当に男か? ってレベルで線が細いし
「男にしては」小柄にも程があるから替え玉になるかもしれんが……
小柄って意味じゃ白音さんもだぞ?
……ま、その提案をした姫島先輩は嬉々としてギャスパーを着替えさせようとしているんだが。
「……で、俺をここに呼んだ理由は何ですかね?」
「うふふ、セージ君なら小猫ちゃんの事詳しそうですし
男同士ですからギャスパー君の着替えに立ち会っても問題ないかと思いまして」
――あんたがそこにいたら同じだろ。
思わずそう突っ込むが、笑ってごまかされた。状況を楽しんでやがるな。
……となると、この姫島先輩は
今それを突いてもどうにかなるものでもないから、とりあえずは黙っておくが。
「……ギャスパー、あんまり反応するな。あの手合いはこっちの反応を楽しんでやがるんだ。
玩具や見世物になりたくなかったら、毅然と対応するんだ」
「……む、難しいですけど……」
お? 窮地に駆け付けてきたって聞いてたから、もしやと思ったが
俺の知らない間にギャスパーも強くなってるな。男子三日会わざればとはよく言ったもんだ。
……にしても、まさかガキの頃に培った経験がこんなところで役に立つとはね。
もう思い出したくもないことだと思ってたが、こうして使う機会が来るとは。
……あんな奴らを楽しませるために、俺は生きてるわけじゃない!
「……い、痛いです……っ!」
「え? あ、すまない」
……無意識に、力が入っていたようだ。
結果として、ギャスパーを痛めつけてしまったようだ。意図が無かったとはいえ、反省せねば。
……本当、的確に嫌な記憶を突いてくれるよ、この姫島先輩は。
スカート丈、肩幅、袖の長さなどチェックしながら
ギャスパーに白音さんの制服を着せようとするが……ちょっと、待て。
「……なあ。ギャスパーは確か自分用の制服を持っていなかったか?
態々白音さんのを着なくとも、自分のを着ればいいんじゃないか?」
「それじゃあ意味がありませんわ。
小猫ちゃんがちゃんと来ている、って立証するためですもの」
……あのさ。態々タンス開けて調べるとでもいうのか?
メダル探してるわけでもないのに、そんな変態じみた……
…………ま、まさか…………
「……あ、あのですな姫島先輩。まさかとは思いますが……」
「……うふふ、勿論『下着も小猫ちゃんのを着用して』もらいますわよ?」
却下ァァァァァァ!!
却下だ却下、大・却・下!!
「ギャスパー! もうこんな奴に付き合うな!
服を着ろ! 部屋を出るぞ!」
「あらあら。そうなると困るのはセージ君もではなくて?
それに、どうしてセージ君がそんなにムキになるのかしら?」
……くっ、俺としたことが頭に血が上り過ぎたか……!
だが、こいつに白音さんのを着られると思うと思わず……
「……まあいいですわ。面白いものも見られましたし。
ですけれど、ギャスパー君には小猫ちゃんの振りをしてもらわないと
混乱が起きるのは事実ですわよ」
「……それは確かに」
とりあえず、ギャスパーには鬘と黒猫のブローチでごまかしてもらうことにした。
本人も流石に「白音さんの下着をつけること」には抵抗を示していたようだ。
乗り気になられても困るし、そうなったらもしかするとぶっ飛ばしていたかもしれないが
よもや下着まで女物とは思わなかった。筋金入りと言うか、なんというか。
まあ、男物でもそれはそれでどうなのだろうか、とは思うしなあ……
――結局、姫島先輩の監視の元ギャスパーの着替えは終わり
俺は何のために呼ばれたのかわからずじまいだった。
なので、一応聞いてみることにしたのだが――
「あら。小猫ちゃんの事なら、セージ君にお伺いを立てれば確実かと思いまして」
「なんで俺なんですか。確かにうちに住んではいますけど、相応の分別はしてますよ」
あんたと違ってな、とはさすがに言わないでおいた。
万が一にも頭を下げた方の姫島先輩だった場合、地雷になりかねないからだ。
言動を見る限りじゃ、その可能性は低そうだけど。
しかもこの一連の動作で兵藤のマークが外れてるし。
一応、部屋を出るときはあいつ寝てたから問題ないとは思ったが……
「……とにかく。用件は済みましたからレストラン降りてきてください。
飯食ったら
「ええ、わかっていますわ」
無駄に消費したエネルギーを朝食ビュッフェで回復させながら
俺達は七姉妹学園へと向かうことにした――
――のだが。
「やけに霧が濃いね……」
「天気予報じゃ、こんな霧が出るとは言って無かったですけど……」
玄関を出た俺達を待ち受けていたのは、凄く濃い霧であった。
下手をすれば迷ってしまいかねない。
「あんまりこういうことはやりたくはないけど……吹き荒べ!」
祐斗が風の魔剣で霧を払おうとするが……効果が無い。
やはり、こりゃただの霧じゃないな……
天気予報にない霧って時点で、怪しさが半端ない。
「祐斗がダメなら、私が……」
「待て待て。滅びの力なんぞ使ったら霧より先に
とりあえず、ドローンでも飛ばしてみるか」
グレモリー先輩を止めながら、超特捜課から預かっていた
ドローンドロイドの一機を飛ばしてみる。
映し出される映像は、やはり霧に包まれていて殆ど何も見えない。
ホテルの屋上階辺りまでドローンが上昇した時点で、ようやく周辺が見渡せるようにはなった。
そこで、周辺や
「なんだこりゃ……!?」
「珠閒瑠市が……霧に覆われている……!?」
ドローンの映し出した珠閒瑠市の全景。
それは、円形状になっている珠閒瑠市全域を取り囲むように霧が覆っている姿だった。
霧は珠閒瑠市全域ではなく、珠閒瑠市の市境を形作るように濃くなっており
丁度市境に位置する鳴海区は霧のど真ん中に位置していたわけ、らしい。
「この霧では、市の外に出るのは難しそうだな……」
霧は陸路を塞ぐように形成されていた。
港南区と言った海に面した場所が霧が薄くなっているのは気になるところではあるが。
海上にも霧は出ると思うが……やはり、自然現象じゃないな。この霧は。
ドローンドロイドを戻し、身の振り方を考えていると
後ろから
「何をしているんだ君達、遅刻してしまうよ?」
「え? 先生、霧が……」
「僕もまさかここに霧が出るとは思わなかったからね。
だけど、七姉妹学園を始めとした珠閒瑠市中心部には霧は出ていない。
通常通り、授業を行うよ」
調べてみると、確かに一応電車は走っている。ダイヤは乱れているようだが。
止まっていれば授業も無かったかもしれないが、やる以上は仕方がない。
「さあ、行った行った。僕も重役出勤させてもらうから、そのつもりでいることだね」
追いやられる形で俺達は七姉妹学園に向かうことになった。
……ん? となると今ホテルにいるのは布袋芙先生に紫藤、兵藤か……
……引っかかる組み合わせだが、今どうすることもできないか。
この霧じゃ、監視も出来ないだろうし……かと言って分身出すわけにもいかない。バレる。
こうなったら――!
「どうしたんだい、セージ君?」
「や、なんでもない。霧が濃いから、なるべく固まって行動しよう」
霧の中に、ドローンドロイドを紛れ込ませる。
兵藤を監視対象に、自律行動させる形だ。
少々でかいからバレてしまう可能性もあるが、無いよりマシか。
鳴海区のジュネスの前を通りながら、俺達は駅に向かう。
確かに、若干の混乱はあるようだが駅前はそれほどでも……あった。
どうやら、珠閒瑠市外と往来する列車が霧のため不通になっていたり
珠閒瑠市外の車庫から来るはずの列車が来なかったりと、確かにダイヤに乱れはあるようだ。
遅延証明書で対応しろ、って事だろうか?
幸い、時間を逆算する限りでは問題無さそうだが。
考えを巡らせていると、改札前で聞き取りをしていたアーシアさんと光実が戻ってきた。
「今聞いて回ったんですけど、日が明けるころから急に霧が立ち込めたそうです」
前触れもなく……となるとやはり、人工的に出来た霧、と見て間違いないか。
しかし、人工的に霧を出して珠閒瑠市を覆って何をするつもりだ?
……わからん。
「霧の中を無理に越えようとすると、迷わされた挙句元居た場所に戻されるそうです。
そのために電車も止まり、外との行き来も出来なくなってるみたいです。
通話も、外とは繋がりにくくなってるみたいで……」
霧で閉じ込める……そういや、聞いた話だが昔
似たようなことが起きる……その時、確か御影町には悪魔の大群がいたそうだが……
「アーシアさん、光実。聞いた話ではバケモノはいなかったか?
アインストでも、インベスでも、デーモン族でもいい。
もしかすると、別のバケモノが現れているかもしれないんだ」
「別の……? そういや、バケモノの話は聞いてないですね」
不幸中の幸いか。この状況で悪魔とか出たら洒落にならん。
……うん? そういや、英雄派が潜入しているって言ってたよな?
……まさか、この事を見越して?
或いは最悪、マッチポンプって事もありうるが……そこまでして、か?
大義名分を得たいなら、マッチポンプは確かに手っ取り早い方法ではあるが……
――間もなく、
状況について考えていると、場内アナウンスで現実に引き戻された。
この駅を始発にした蓮華台行きの列車が発車するらしい。
これに乗らないとまずい。俺達はホームへと向かい、列車に乗り込むことにした。
――――
A.M. 08:46
蓮華台 七姉妹学園
霧にも関わらず、登校してくる生徒はそこそこ多い。
やはり珠閒瑠市の外周にしか霧が出ていない、という事が影響しているのだろうか。
等と考えていると、話声が耳に入ってくる。
――え? それってヤバくない?
――でも、カメ横の近くで目撃した人がいるんだよ、JOKERを!
――ね、ねえ今珠閒瑠市の外に出られないって噂じゃん。なのにJOKERがいるって事はさ……
JOKER。
冥界でも噂になってるって話の怪人で、祐斗らが遭遇したって奴か。
確かに、目撃情報とは辻褄が合うが……
JOKERについて再確認するために、俺は祐斗に聞きなおしてみることにした。
「なあ、JOKERってどうヤバいんだっけ?」
「自分を召喚する魔法陣で自分を召喚――
人間の場合だと、自分の携帯電話から自分の携帯電話に電話をかけることで
呼び出せる願いを叶える怪人、って話は聞いているよね?
要はオカルトそのものな都市伝説の怪人なんだけど
同時に連続殺人犯でもあるそうなんだ……」
連続殺人犯。事実上の密室。でもって潜伏しているテロリスト。
……なるほど、確かにヤバいな。
外部と往来ができないとなると、超特捜課に応援を呼ぶこともできない。
クロスゲートを移動手段にするなんて、言語道断だし。
聞いた話では、ここの裏手にあるアラヤ神社ってところの境内にクロスゲートがあるらしいが……
もう、そっちまで調べてる時間はなさそうだ。
俺達は各々の教室へと向かい、授業を受けることとなった。
「お、一限目は
「あの先生『わかる~』ばっかり言ってるけど、絶対わかってないだろ。
「わかるわかる! 女の私から見てもあの先生背高いしいいよね、わかるわ~、わかる!」
「……お前、うつってるぞ」
……俺は今、駒王学園のあの癖の強い教師陣が特別ではないのだという事を思い知っていた。
一限目に来た若流先生は、オランダ帰りの華々しい経歴とは裏腹に
その精神年齢は生徒とどっこいであり、授業のほとんどが
「わかる~」と「やっば~い」で占められていた。
本来なら真面目に聞くべきなんだが、俺はどうしても霧の事や潜伏しているらしい英雄派の事。
そして何より白音さんの事が気がかりで若流先生の授業が耳に入っていなかった。
「――じゃあ~次! 駒王学園の宮本君! ここの問題、解いてみて?」
「……セージ君、セージ君!」
「――えっ? あ、はい! わかる~……じゃない。すみません、わかりません……」
……不覚を取った。上の空だったのだ。
祐斗に呼びかけられるも時すでに遅し。わからんものはわからんのだ。
まさかこんなことに
「も~ぅ、ちゃんと聞いてよ~……やっばいわ~……」
俺の内心もやべえよ。
兵藤もいないし、松田も元浜もいくらか大人しいから
駒王学園の評価が最悪に落ちることは多分無いが……
俺としたことが、情けない真似をしてしまった。
着席し、気を取り直して黒板に向かい
若流先生が教科書のページをめくったところで――
――爆発が起きた。
>ギャスパー
止む無く白音の代わりに朱乃の部屋にいた状態です。
他の部屋、ベッド埋まってますし。
性的なことはされてませんが、辱めに近い事やられてる時点で……
以前に比べてセージに苦手意識が無くなっていたり
毅然とした態度も取れるようになっているあたり
冥界で成長していたのでしょう。セージが見てなかっただけで。
原作では曲がりなりにもギャスパーのが体格いいですけど、拙作ではどっこい。
白音がアルビノですけど体格はよくなってますから。
なので着ようと思えば白音の制服も着られました。結局自前にしてますけど。
>朱乃
完全におちょくってます。
ドSっつーか、ただの虐めになってますね、これ。
>セージ
朱乃の態度に激しい嫌悪感を示していたり、昔虐められていた疑惑。
相変わらず白音の事にはムキになります。それが朱乃の狙いでしたが。
>霧
いつからここは稲羽市になったんだい? ……じゃ、なくてゲオルクの仕業です。
前回シバルバー(トリフネ)外周とほぼ同じ領域に展開していた、としましたが
そうなると蝸牛山や鳴海区があぶれるよなあ、と思いこの二か所は霧のど真ん中設定。
海側には無いので、海路から珠閒瑠市に入ることは可能です。
多分、空路での侵入も可能ですけど、珠閒瑠市に空港無いんですよね。
ヘリポートならあるでしょうけど。
>若流先生
「あーそう」麻生先生と「そうかー!」草加先生に続く
セブンスのアクの強い先生第三弾。「わかる~!」ので若流先生。
元ネタは艦これのデ・ロイテル。ちょっと艦これネタ増えすぎかもしれません。自重したい。
でも思いついたものは仕方がないじゃないですかと今回は開き直り。
流石に麻生・草加両先生は年を召してますが若流先生はついこの間実習終えたばかりの若手先生。
ハンニャはともかく、冴子先生も今はもうセブンスにはいないです。
余談ですが、麻生先生て何気に序盤からギンコの英語力に言及しているんですよね。
そこを何ら疑うことなく受け取ったので、ギンコの英語できないカミングアウトも「あーそう」で済ませてしまった記憶。
余談その2、冴子先生にそっくりな先生が中学の頃の国語の教師でした。