ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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……注意事項がガチガチになってしまい申し訳ありません。
ですが、タグによる注意喚起を無視したであろう行いが目に余ったものでして
このような措置をとらせていただきました。

見解は、すべて活動報告にて述べさせていただいていますが
本来なら、作品で語るべきことなんですよね……

いやはや、力不足を痛感しております。

閑話休題
風邪でぶっ倒れてましたが、どうぞ。


Will4. 彼らは何を思い動くのか

……遠くでアラームの音が鳴り響く。

止めようと右手を伸ばすが、妙に重く動かない。

また猫二匹が乗っているのかと今度は動いた左手を別の方向に伸ばすが

特有のもふもふ感が無い。

だというのに何故体が動かない。金縛りか? 霊体でいた期間が長かったから後遺症か?

……そうだとしても、なんか妙に体がスース―するような、それでいて暖かいような。

そして何より決定的なのが。

 

……猫二匹が乗っているにしては、異様な重みを感じる。

まるで、誰かに頭を預けられたような……

 

「……何でこんなところで寝てるんですか」

 

思い切って掛け布団をずらすと、いつの間にか潜り込んでいた黒歌さんと目が合う。

肌のぬくもりが存在感を訴えていたので、何者かの確認だけだったが

案の定、というわけだ。

 

「ここが一番落ち着いて寝られるにゃん」

 

いつもの調子で言ってのける黒歌さんに、俺は反論する気もわかなかった。

声を張り上げ、暫くしたら起きる旨を母さんに伝えておく。

公然の秘密になっているかもしれないが、かと言ってこの状況をみられるのは気恥ずかしい。

 

「いきなり近くで怒鳴らないでほしいにゃん!」

 

「だったらそんな恰好で俺の布団に潜り込まんでください」

 

恰好。

俺の目線からだと、俺の胸に押し付けられた黒歌さんの

大きくて柔らかいのが存在を主張している。

申し訳程度の黒い肩紐が、黒歌さんが裸でないことを証明しているが……

肌ざわりから、薄手の下着一枚だろう。こんなの、ほとんど裸同然だ。

だから、こんな恰好で潜り込むなって言ってるのに。

 

「……だってさ、白音。私らは良かれと思ってやってるのに酷い話にゃん」

 

どこが、と思いながらも顔を右腕の方に向けてみると穏やかな顔で寝息を立てている白音さん。

しかも、黒歌さんと遜色ない恰好……つまり、ほぼ全裸だ。

強いて違いを言うなら、黒歌さんが黒の下着(だと思う、肩紐しか確認できなかったが)

なのに対して、白音さんは白の薄手のキャミソールだってことくらいだ。

色しか変わらないじゃないか。

……なーんか、うちに来た最初に比べて白音さんの服チョイスが変わってる気がする。

肌着下着はともかく、私服は眼福なのもあるのでどうこう言う気はないが。

それに、どこかで稼いだであろう自分の金で買ってるみたいだし。

 

「……ぅん? セージ先輩、おはようございます……」

 

寝惚けた赤い眼で、こちらを見ながら挨拶してくる白音さん。

ああ、この状態だから俺は動けなかったのか……つかよく寝られたな俺。

そして、現状を把握したところで間の悪いことに俺の身体が反応してしまい……

 

「にゃんっ!? うんうん、元気なのはいいことだにゃんセージ」

 

蕩けた表情と声で、納得したように俺の眼を見ながら黒歌さんが呟く。

くっ、ちっ、違っ……これは……っ!!

朝だからしょうがないだろ!? と、大声を張り上げずに目で抗議する。

 

「んふふー、一回くらいなら時間余裕あるわよね? ヤれる時にヤっとく、それが私だにゃん。

 白音の方はおかげさまで落ち着いたから、今度は私の番だにゃん」

 

だがそんな抗議も完全に流されてしまう。

く……っ! 完全に勘違いしてやがる!

この体勢じゃ抜け出せないし、下手に騒げば母さんがこっちに来る!

こっちがそうなったのは黒歌さん関係なく生理的な意味だってのに、この駄猫は!

 

そもそも、白音さんの時とは違って完全に「ソレ」が目的だ!

今の段階でも姉さんに合わせる顔がないってのに、これ以上となったら……!

 

「しっ、白音さん、悪いけど黒歌さん剥がすの手伝ってくれないか……?」

 

「……んー……? セージ先輩、あったかいし、いい匂いですから……

 もう少し……」

 

……ダメだ。というか白音さん、朝弱かったんだっけ?

うぐぐ。まさかこんなことに記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を使うのは憚られる。

こんなことに使うなら、雑学王選手権に出るのに使った方がまだましかもしれない。

だが、そうも言ってられない。何故なら今日は俺が沢芽(ざわめ)市に入る初日。

一応、氷上(ひかみ)さんらとは別ルートで沢芽市入りすることになっているが

遅刻するわけにはいかない。何せ、要人警護が俺の役目なのだから。

隙を見て、俺は記録再生大図鑑を実体化させようとするが……

 

その左手は、黒歌さんの右手に押さえつけられた。

 

「はい。無粋なもん使わないの。だったら……そういう事考えられないようにしてやるにゃん」

 

――!?

 

黒歌さんの唇が、俺の唇に触れたと同時に、生暖かく、そして柔らかく

口の中にぬるりとしたものが入り込んでくる。

それが黒歌さんの舌であるという事を認識したのはその直後だった。

……ぐ、ザラ付き具合がちと痛いが、顔にかかる荒い鼻息が俺の思考を鈍らせて来る。

け、けれど……ここで流されたら……!

なんとか耐えようと体を強張らせるが、それが無駄なあがきだってのはすぐに思い知らされた。

 

「強情なのも嫌いじゃないにゃん。えいっ!」

 

「――――っ!?」

 

思わず、変な声が漏れ出た。黒歌さんが、尻尾も交えて俺の全身をくまなく撫で回し始めたのだ。

うぐぐ、いつぞや姫島朱乃にも言われたことだが、俺は肌の感度が高い。

そう、今の状態はかなりくすぐったい。ちょっとどころじゃない。

感触から逃れようと辛うじて声を抑えながら身をよじっているが、白音さんが起きる気配はない。

まぁ、今日「学校は」休みだからいいんだが。だが俺は外に出る用事があるのでそうもいかない。

とは言え、このままでは埒が明かない。明らかに俺は不利だ。有利不利の話じゃない気もするが。

 

この状態で、黒歌さんを引きはがす方法。それは一つしか思い浮かばなかった。

……なるべくなら、この方法はとりたくなかったがそうも言ってられないようだ。

その方法とは、つまり――

 

「にゃんっ! ふふっ、そっちもその気になってくれて嬉しいにゃん!」

 

右手は白音さんが枕に使っているため動かせない。左手は黒歌さんの手が離れたことで動かせる。

なので、俺は左手を主に使って黒歌さんの柔肌を撫で回す。

 

――相手が満足すれば、離れるだろう。

 

要求をのむことによるデメリットは、時間の消費とこちらの貞操観念だけだ。

時間の消費はもしかすると軽減できるかもしれないし。

そうなれば……

 

……ごめん、白音さん。姉さん。

 

……手や体に伝わってくる温もりや匂いは、その罪悪感を打ち消すには至らなかった。

俺は、少しだけ……いや、割と自分が嫌になった。

 

兵藤じゃないから作る気もないが、俺にハーレムは向いてないな……

と、胸の奥にこみあげてくる罪悪感が訴えていた。

 

――――

 

……寝汗をかいたというもっともらしい理由をつけてシャワーを浴びながら顔を洗う。

黒歌さんも入ってこようとしたが流石に断った。これ以上は本気で時間的な問題含めヤバい。

なので、別々にシャワーを浴びた後で朝食を済ませ出発の準備を終える。

今日は外に出るのは俺だけらしい。まぁ、落ち着いたとはいえまだ予断を許さない状況だから

不用意に外に出てほしくはないんだが。

 

「それじゃ、暫くの間行ってくる」

 

「行ってらっしゃい、お土産はざわ(めし)かユグドラ(シル)辺りをお願いね?」

 

遊びに行ってくるんじゃないんだが。

そう、これから一週間俺は向こうで寝泊まりすることになっている。

学校絡みは警察から連絡が行っている。

いくら義務教育じゃないからって、学生がこういうのはどうかと思わないでもないが……

 

ともかく、黒歌さんと白音さんがこっちに残ってくれるのは護衛という意味ではありがたい。

俺が留守中に母さんが狙われたらと思うと、どうしてもな。

 

「……そういうわけだにゃん、だから今朝のこ……むぐぐっ!?」

 

慌てて、俺は黒歌さんの口をふさぐ。

バレてるかもしれないが、大っぴらに言われるのはちょっと、困る。

 

「……? 行ってらっしゃい、セージ先輩。留守番は任せてください」

 

白音さんは首をかしげている。朝、それなりに体を動かしていたが結局起きなかったらしい。

ほっとしたような、胸が締め付けられるような。

……今までそれなりに真面目に対応していたつもりだったが

実際はすごくだらしない自分が嫌になる。

いつぞやとは違う意味で、目を合わせづらかったが――

 

ぽふっ、とまるでネコの肉球で叩かれたような感触に、俺は思わず反応する。

見ると、白音さんが俺の身体に身を預けていた。

……どうしたんだ? 急に?

 

「……一週間」

 

「うん?」

 

「一週間分の前借です。セージ先輩、いい枕ですから」

 

枕かよ。安眠寝具かよ。

……まぁ、どんな形であれ必要とされる分には悪い気はしない。

俺自身を見てくれているのならば、の話ではあるが。

この二人は、俺を代用品や付属品としてではなく俺自身として見てくれているし

今の俺は誰の代用品でも付属品でもない。宮本成二その人だ。

だからこそ、その大胆な行為にも俺は頭を撫でることで返答とした。

 

「……ふにゃあ」

 

「んふふー、白音もやるようになったにゃん。じゃあ私も――」

 

「調子に乗らんでください」

 

文字通りの猫撫で声をあげている白音さんを抱えたまま

おもむろに抱き着いてこようとする黒歌さんを躱す。

あんたそもそも朝好き勝手してでしょうが。この欲張りめ。

躱すのに思わず、白音さんを抱えたまま動いてしまったが。

 

「うーっ、セージのバカ、いけず、ロリコン!」

 

「……姉様」

 

俺から離れた白音さんが、黒歌さんを睨んでいる。

ロリコン――即ち、ロリキャラ扱いされたことに腹を立てたみたいだ。

……この件に関しては、ノーコメントとさせてほしい。

とは言え最近、俺に新しい性癖が目覚めそうになってるのも否定はしきれないが。

こんな形で自分の中の何かが目覚めたくないわ。

 

そんなこんなでしっちゃかめっちゃかになりつつあった玄関先は

母さんの一言で落ち着きを取り戻す。

 

「ほらほら、遊んでないでセージを見送るわよ」

 

「わかったにゃん」

 

「……はい。セージ先輩、必ず帰ってきてください」

 

……大げさだな。俺は要人警護に出るだけだぞ?

とは言っても、この世界情勢ではそれこそ危険かもしれない。

俺を襲ってきた黒影(くろかげ)の存在もそうだし、何より禍の団(カオス・ブリゲート)は解散していないどころか

アインストやインベスは健在だ。

なにこの世界、と思えてならないが……だからと言って戦わない理由にはならない。

生きることとは戦うこと。だから、俺は生きたい。

 

「大丈夫、来週には帰ってくるから――行ってきます」

 

マシンキャバリアーを顕現させて、マシンキャバリアーを共に顕現した軽鎧を纏い、跨る。

握ったアクセルから伝わる振動。いつもの事ながら火は、入っている。

 

「……行ってらっしゃい」

 

その言葉を背に、マシンキャバリアーは走り出す。

 

――――

 

……きちんと道理を弁えた、出掛の挨拶。

きちんと戻ってこれる場所のあることの証。

それだけでも、今の俺には十分すぎるほどの力をもたらしてくれる。

あの日とは、違うのだ。

 

マシンキャバリアーに搭載された、通信機を使って氷上さんに一報を入れる。

今、家を出たところだと。

 

『わかりました。こちらも予定通りのコースで沢芽市入りします。

 何事も無ければ、現地で合流しましょう。合流先はホテル・ユグドラシルですよ』

 

「了解しました。くれぐれも黒影や禍の団などにはお気をつけて」

 

要人警護部隊の全滅を避けるため、超特捜課(ちょうとくそうか)は二手に分かれたのだ。

もう一つの理由としては、移動中のパトロールも兼ねている。

平時ならばまとまって移動するのもありだろうが、今は戦時と言っていい。

そして相手はテロリストだったり突然現れる得体のしれない怪物だったり。

そうなれば、パトロールの目を広範囲に光らせるにはこれしかない。

 

……実際、家を出てから今までに道すがらアインストを数体倒しているし

沢芽市に入ったらインベスや黒影の襲撃頻度が増してきた。

あれから黒影を詳しく調べてみたが、本来は対インベス用の装備だというのに

その黒影がインベスと共に襲い掛かってくるのは洒落になってない。

中身は台湾マフィアの天道連(ティエンタオレン)であることを考えると、完全な内ゲバだ。バカなのか。

ゼノヴィアさんも言ってたことだが、今は人間同士で争ってる場合じゃ無かろうに。

 

マシンキャバリアーに接続している記録再生大図鑑をナビ代わりにして

ホテル・ユグドラシルへの進路を割り出し、走らせつつ遠目に沢芽市の様子を眺める。

 

町の広場でストリートダンスに興じる連中。

行列の出来ているスイーツショップ。

若者の集まっているフルーツパーラー。

 

……そして、巨大な塔、ユグドラシルタワー。

 

だが、俺はユグドラシルタワーの上空の景色に違和感を覚えた。

何か……「あるはずのものがない」、そんな違和感を。

 

『……セージ。空間偽装されてるぞ、あの塔の上』

 

「空間偽装だって? 誰がそんなことを……?」

 

『そこまでは知らねぇ。だが、その向こうにあるものを考えれば

 隠蔽したくなる気もわからんでもないけどな』

 

アモンが言うには、ユグドラシルタワー上空は何者かの手によって偽装されているという。

誰の仕業によるものなのかまではアモンにはわからなかったそうだが

その理由を聞いて俺は納得した……いや、せざるを得なかった。

 

――クロスゲート(地獄門)

 

異なる世界、異なる時間を結ぶ門。

その向こう側に何があるのか、俺はもとより神々も知らない。

そんなものが上空にあるとなれば、そりゃあ隠蔽したくなる……って。

 

「おい。じゃあこの措置をしたのは、クロスゲートの存在と効能を知っている奴に限られるぞ?

 アモン、お前から見てそのクロスゲートは『動いている』か?」

 

『……「動いている」な。こんなところで会談やるとか正気か?

 いや、あるいはこんなところだからこそやるつもりなのかもしれねぇけどよ』

 

動いている。つまり、あのクロスゲートはすぐにも異界と繋がったり

あそこからアインストが沸いてくるという事を意味していた。

今まで出くわさなかったのは、運がいいというべきか悪いというべきか。

 

「……報告事案が増えたな。下手したら、警護スケジュールも変わるかもしれない。

 だが、情報が入ったのはありがたい」

 

『……スケジュール決めるのはお前じゃないだろ?』

 

アモンの言う通りだ。そういうのは、氷上さんとか指揮官の仕事だ。

今回の俺は、あくまでも一介の警備員に過ぎない。

……と言うか、今まで指揮官じみたことをやってたのが異常で、これが普通なのかもしれないが。

 

時間が許す限りクロスゲートを監視していたが、稼働している割には変化が見受けられず

傍から見たら派手なバイクを停めて空を見上げている、アンニュイな奴に見えたのかもしれない。

 

……なのだが、腐ってもクロスゲート。

その時の俺が気付かなかっただけで、それが稼働しているという意味は

しっかりと沢芽市を蝕んでおり、沢芽市に滞在する期間は

俺がそれを知るには十分すぎる時間であることを思い知ることとなる――

 

――――

 

「宮本君、長旅お疲れ様です。部屋に荷物を置き次第、ミーティングを行いますので

 一階の大ホールまで来てください」

 

――ホテル・ユグドラシル。

 

氷上巡査に迎えられ、超特捜課をはじめとした警護メンバーの宿舎として

ユグドラシル・コーポレーションが手配したホテルだ。

元々はホテルサーゼクスとか言ってたらしいが

ユグドラシルがこのホテルを買収したことに伴い、名前も変更したらしい。

凄くどうでもいい話だが、アモンがこの件を聞いたら腹を抱えて笑っていた。

いや、アモンは俺には直接見えないがそんな感じがした。

 

『調度品に悪魔絡みのものがあったのは変だと思ったが

 サーゼクスの奴が絡んでいたとなると合点がいくな』

 

『買収したのもつい最近の事みたいだな。だからそうした品を引き取る暇がなかったという事か』

 

「……なぁアモン。お前とサーゼクスの間に、いったい何があったんだ?」

 

アモンからサーゼクスの名前が出た。これはある意味好機だ。

寄越された鍵で客室に入り、荷物を置きながら俺はかねてから気になっていた

アモンとサーゼクスの間に何があったのかを聞くことにした。

 

『……ま、隠すようなことじゃねぇしな。単純だ。

 俺達悪魔は聖書の神に喧嘩売った話は知ってるよな?

 その時に俺とルシファー軍についていたサーゼクスは組んで戦ったんだよ。

 その戦いは二天龍の介入で混沌を極めた……ってのも知ってるよな?

 ……その時に色々あって、俺とサーゼクスは言わば戦友とも言える関係だった……

 

 ……あの時まではな』

 

聖書の神に喧嘩を売った話……即ち、聖書の神が消滅し前の魔王が死んだとされる戦いの事か。

俺には何となく実感が沸かなかった話だが。

なんというか、荒唐無稽というか、よその世界の話というか。

いや、状況証拠とかから事実なんだろうとは思っちゃいるが、それにしたって。

 

……そして、アモンの言う「あの時」とは――

 

『サーゼクスが今の政権握る時も、俺はサーゼクスについた。流れ的には当然だな。

 で、サーゼクスは晴れて新政権を獲得した。ここまでは知ってるよな?』

 

「ああ。今に直接つながってるからな」

 

『……その時だ。奴は魔王の座に就いた途端、掌を返したように俺を追放処分にしやがったんだ。

 「これからは武力ではなく平和の時代」だとかぬかしてな。

 いや、言ってること自体は間違っちゃいねぇ。だが、俺としてはそれまでを蔑ろにしやがった

 サーゼクスの野郎をはじめとした四大魔王、そして奴らを魔王に推したゼクラム・バアルは

 何があったって許しちゃおけねぇ存在になった。聖書の神との戦いのときも、内戦の時も

 俺は一番槍でサーゼクスと共に戦ったってのにだ!』

 

『……大体わかった。それで「勇者」って評価と『裏切者』って評価が二分してるわけか。

 おそらくだが、お前の追放の他にも戦争に関する資料や記録なんかは

 都合の悪い資料として処分されてる可能性があるな。

 ……あるいは、歪められて伝わっているか』

 

納得したように、俺と共に話を聞いていたフリッケンが呟く。

アモンは冥界の勇者と言われていた存在だが、同時に政府からすれば裏切者であった。

俺はアモンの話を聞いたうえで、一つ気になったことが出来た。

 

「……一つ聞きたい、アモン。お前は……なんでサーゼクスと共に戦ったんだ?」

 

『……初めは義侠心だった。聖書の神の横暴に、俺達悪魔は耐えかねていたからな。

 教化の名のもとに、人間を支配しようとする姿勢は

 人間の欲望を糧とする悪魔と反りあいが致命的に悪い。

 教化された人間は、その対象を崇拝することしか頭になくなっちまうからな』

 

うん? 聞きなれない言葉が出てきたな。キョウカ? 強化? ……いやなんか違うな。

気が向いたら記録再生大図鑑で調べてみるか。

 

『とにかくだ。そんな聖書の神をぶっ飛ばすために

 先代のルシファーに続く形でサーゼクスが行こうとしたんだ。

 だが、当時のサーゼクスは今と比べてへっぽこもいいとこだった。

 聖書の神との戦いに出たら潰れちまう。「滅びの力」なんて負念もいいとこだ。

 歪んだ形だが正念を操る聖書の神との相性は最悪だ。

 だから黙って見過ごせなくてよ、俺もサーゼクスに協力する形で聖書の神に挑んだんだ。

 俺自身が聖書の神ってのを気に入らないのもあるけどな。あ、薮田(やぶた)は別だぞ?』

 

そうだ。聖書の神と言えば薮田先生――ヤルダバオトに影武者をさせて

消滅したということになっている。そして薮田先生が言うところのスタンスでは

「人類は既に神の手を離れるところにまで来た」らしい。

だが、アモンの言う聖書の神は「キョウカ」とやらで人類を言いなりにして縛る存在みたいだ。

先の戦いを経て考えが変わったのか、あるいは……

 

「宮本君、そろそろミーティングを始めますよ」

 

アモンが次の話をしようというところで、部屋を出るのが遅かったのか

氷上さんがこっちを迎えに来ていた。そんなに長話していたっけか。

 

『……っと。こっから先はまた今度話すことにするわ。思いのほか長話だしな……セージ』

 

「なんだ?」

 

『これだけは言っておく。俺は魔王になろうとかそういうつもりで

 サーゼクスについたんじゃない。実際戦争が終わったら前線は退くつもりだったしな。

 ただ、今までの事を否定するかのように厄介者扱いされたことが我慢ならなかっただけの事だ。

 俺がサーゼクスを、現政権をつぶしたいのは……それだけの理由だ』

 

『……在り方の否定か。復讐は何も生まないとか陳腐なことを言う気はないし

 契約上セージを巻き込んでるのも、それはセージの事情だからある程度仕方ない。

 国のために、世界のために戦った奴が否定されるってのは

 当事者にしたら堪らないって奴か……』

 

フリッケンが、妙にしんみりした様子でアモンの戦う理由に同意していた。

ある意味アモン以上にわからないフリッケンだが、言いたいことは何となくわかった。

多分……あれだ。敗戦国の、戦勝国の都合のために貶められた英雄。

アモンは、それに近いものなのかもしれない。

 

アモンは復讐。俺は人間の尊厳を守るため。今はそれでいいことにしよう。

まずは、この沢芽市に来るっていう神仏同盟の方々と北欧神話の神々の護衛だな。




アモンが聖書の神絡みでとんでもない爆弾発言噛ましてる件について。

>黒歌

……原作からしてあんな恰好なので拙作ではそれなりの……です。
白音が反面教師にする位にはアレだそうなので。

え? 黒歌が仲間入りするころには誰も彼も似たようなもの?
そう言われると返す言葉がないですが。

>セージ

こいつ本当にセージか?(二度目)
黒歌にとってはいいストレス発散の相手にされてたり
白音の安眠枕にされてたり。
なお微妙に純情にヒビが入っている模様。
黒歌は青少年には毒だと思うんです。
セージが純情な青少年かと言うと、疑問符が残……おっと。
(人妻に告ったりしてる時点で……)

今回、ようやくまともに裏社会絡みで家を出ることが出来ました。
そして、アモンからとんでもないことを聞かされてます。
ヤルダバオトの語る聖書の神の意見と、アモンの語る聖書の神の意見の齟齬。
教化という単語が出ているという事は……

>ホテル・ユグドラシル

京都にあった魔王の名を冠したホテルネタをこっちで回収してます。
ああ、勿論拙作であんなギャグが罷り通るわけないじゃないですか。
経済と政治の関連を考えたら、ギャグにしたって笑えませんよ。

……うちはそういうリアリティある見方をするのが芸風ですからね。今のところは。

>アモン

この辺の件はデビルマン原作やら原典のアモンやらその辺混ぜ混ぜして
HSDDの史実をちょこっと混ぜた感じです。
やっぱどう考えても、ゼクラムが覇権握るために四大魔王焚きつけた風にしか
見えない感じですねぇ、これ……
で、旧魔王派とかクリフォトとか台頭させてりゃ世話ないですよ。
話すタイミングが無かったですが、彼も聖書の神絡みの事は知ってます。

>フリッケン

「世界の破壊者」としてある意味正しく評価されない彼が語るのは
現代日本でも時折言われる「英霊の毀損」です。
今でこそある程度再評価されてますが、戦犯扱いされた旧日本軍軍人の多さたるや……
(ただし牟田口てめーはダメだ)
アモンは、そうして歪められた英雄としての一面も持っています。

歪められた英雄……英雄派はどうなるんでしょうねぇ。
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