ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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ちょっとくどいようですが、今回も念のため。
ヘラクレス、ドイツ語表記だとヘアクレスらしいので(googleの発音もそう聞こえます)。

まあ、今回でこの告知終わる予定ですけど。


Will28. 「かつて」ですらなく Bパート

七姉妹学園(セブンス)の校庭に現れた禍の団(カオス・ブリゲート)・英雄派を名乗るジャンヌとヘラクレス。

神器(セイクリッド・ギア)の力を笠に着て英雄の、偉人の継承者や転生を嘯く奴らだったが

奴らが変異した先はアインスト。

しかもアインストにさえもニヒト――否定を突き付けられていた。

それが、奴らに提示された奴らの声に対する答えだったのかもしれない。

 

俺はヘラクレスが変異したアインストヘアクレス・ニヒトに対し

優位に戦いを進めることができたが、追い詰められた奴はさらなる切り札を出してきた。

それは、かつて自分が使っていた神器――ミサイルを生成し撃ち出す能力――の

ある意味での完成系。

 

 

核ミサイルの射出であった。

 

 

テロ行為に核兵器を持ち出すってのは、知る限りじゃフィクションの話だけだ。

それを、アインストに変異したとは言え実際にテロで運用されるのだ。

なるほど、だから聖槍騎士団もアインストを止めにかかったのか?

……などと言うのは、ちょっと奴らを買い被り過ぎか。

 

いずれにせよ、ヘラクレスは倒さなければならない。

ミサイルの発射前に倒せば、何とかなるかもしれない。

そう考え、俺は一気にナイトファウルをヘラクレスのコアに突き付けた。

 

BOOST!!

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

装填しているアルギュロスも、予備のアルギュロスも全部撃ち尽くす勢いで

トリガーをでたらめに引いている。トリガーを引くたびにナイトファウルの

杭打機、ブラスティング・ステークがヘラクレスのアインストコアを叩きつける音が響き渡る。

こいつを倒せば核ミサイルが止まるかもしれない、そんな淡い希望だ。

 

しかし、ナイトファウルも試作品の複製だからか

ここまでの連射に銃身が耐えられていないようだ。

銃身からは火花や煙が吹き出し、軋む音が混じり始めている。

 

『セージ、このままじゃ銃身が持たんぞ』

 

「わかってる! だが核撃たれるよりマシだ!」

 

手ごたえからして、後一撃加えればコアを破壊できそうな感じにはなった。だが――

 

 

――その後に響いた爆発音は、俺がトリガーを引くよりも前に響き渡った。

 

 

「ぐわあっ!!!」

 

フリッケンの指摘通り、ヘラクレスのコアを破壊する前にナイトファウルが持たなかった。

実体化させたナイトファウルが暴発してしまい、右手に灼けるような痛みが走る。

血で赤く染まった腕は、次の手を打つことができない。ついでに言えば、リロードすらできない。

 

「俺は……英雄だ……英雄は……力で……世界を……

 

 

 ……世界を……静寂で……満たす……!」

 

一方、とどめを刺すに至れなかったヘラクレスは

完全に自分の意思とアインストの意思が混ざり合っている。

このままじゃ核ミサイルが落ちる上に、こいつも倒せない。二発目を撃たれる危険もある!

だが、もう俺に出来ることは無い。無いというか、出来ない。

 

「貴っ様ァ! 街中で核ミサイル撃つなんざ、それが人間のやることか!!」

 

俺の叫びも虚しく、核ミサイルは射出された。

もしかすると、ここでこいつを倒せば機能停止するかもしれないが……

 

……今の俺には、攻撃する手立てがない。

 

「セージ、下がってくれ! 私がとどめを刺す!」

 

声に合わせて後ろに飛びのくと、俺と入れ替わる形でゼノヴィアさんが飛び込み

デュランダルをヘラクレスのコアのひび割れた部分に突き立てる。

次の瞬間、ヘラクレスのものと思われる咆哮が響き渡った。

 

「どうだ!」

 

「……お、おのれ……

 だが……俺を……倒しても……もう……遅い……

 

 世界は……俺が……せ……い……じゃ……く……に…………」

 

 

「――っ、ダメだ! 奴は倒せたが、ミサイルは健在だ!」

 

コアが砕け散ると同時に、ヘラクレスの体は崩れ去り、風化していく。

しかし、撃ち出された核ミサイルは健在だ。

この撃ち出された核ミサイルをどうにかして成層圏の向こうまで飛ばして爆破するか?

そうでもしないと、この一帯が放射能汚染されてしまう。

今から珠閒瑠市や周辺地域全域に避難を呼びかける暇もない。

 

全く、一難去ってまた一難とは言うが!

とんだ英雄の置き土産だと思う間もなく、いまだ引かぬ痛みに意識が飛びそうになる。

 

「セージ!」

 

「セージさん!」

 

光実はジャンヌに対し優位に戦っているが、こっちがこれでは……

それに、核ミサイルをどうにかしながらジャンヌと戦うなんて到底、出来ない。

 

「ぐ……ぜ、ゼノヴィアさんは光実の援護を……」

 

「しかし!」

 

こうなった以上、核ミサイルを止めるのが先だ。

とにもかくにも、そうしなければ何もかもが終わってしまう。

核ミサイルをどうにかするにしても、横槍を入れられるのは御免だ。

 

「アーシアさんじゃあるまいし……今戦えるのはあんただけだし

 そもそもあんた飛べないしあんな超高高度の標的をどうにかできるのか?

 

 ミサイルは俺が何とかする……ジャンヌ、奴とてアインストだ。

 それも俺達複数がかりでないと倒せない規模のな。

 だから早く光実の援護を……!」

 

「くっ……無理はするなよ!」

 

ゼノヴィアさんは俺を一瞥した後光実とジャンヌの戦いに加勢する。

それを見て安堵した俺は、何とかして記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)のリロードを決行。

消耗を感じながらも、右手の傷を回復させるには現状これしかなかったのだ。

 

RELOAD!!

 

EFFECT-HEALING!!

 

痛みに耐えながらカードを引く。激痛で手元が狂うのでなかなか難しかったが

何とか傷は塞がり、痛みも引いた。

血で赤く染まっちゃいるが、こればっかりは洗ったり拭いたりしてる暇がない。

不衛生ではあるが、それより急ぎの用事があるのだ。

 

……無理すんなったって、無理でもやらなきゃダメだろうが。

相手は核ミサイルなんだぞ!

 

「待たせたなアモン、後は任せていいか?

 悪いが、なるはやで頼みたいところだが」

 

相手が上空に向かっている以上、アモンの力を使わざるを得ない。

アモンも戦歴は相応にあるが、果たして核ミサイルの阻止なんざやった事があるのだろうか?

いや、今は何も思うまい。核ミサイルの阻止が最優先だ。

有無を言わせぬ形で、俺はアモンと交代する形で引っ込んだ。

 

「お前、存外に悪魔使いが荒いな。俺がやるしかねえのはわかるがよ。

 ここでどうにかしないとこの辺一帯諸共に壊滅だしな。

 セージ。お前には俺の許可なく死なれたら困るとは言った気がするが……

 

 ……万が一の時は、覚悟しとけよ」

 

そんなの、グレモリー先輩の眷属に組み込まれたときから相応に覚悟してる。

向こうは命張ってる意識は無かったのかもしれないが、やってることは普通に命がけだった。

今からやるのは、コカビエルの時どころか、下手すりゃ暴走した兵藤を止めるのよりもきつい。

 

――何せ、俺達だけで一発だけとはいえ核ミサイルをどうにかしないといけないんだ。

  どう贔屓目に見ても、一介の高校生のやれることを大幅に超えている。なんなのだ、これは。

 

『なあアモン。悪魔って、放射線とか防げるバリア張れるのか?』

 

「何とも言えん。爆発の威力はもしかしたら防げるかもしれないが

 その後の放射線の影響まで試したことが無いからな。

 純血悪魔なら放射線の影響を受けないかもしれないが、お前はそうでもないだろ。

 処理に成功しても、お前が被曝しましたじゃ笑えんぞ。

 お前の体がダメになったら、俺もダメになる」

 

じゃ、方法は一つだな。

核ミサイルが地上に落ちてこないように上空で爆破するのではなく

そのまま核ミサイルに成層圏を突破してもらう必要がある。

構造がわかれば弾頭を取り除いて破壊することもできるが

そもそも俺は核ミサイルの構造を知らないし

アモンに代わって飛び続けなければならない以上検索もできない。

 

それに、アインストが生成した核ミサイルが

人間が保有している核ミサイルと同じだって保証が無い。

だからって、威力や放射能汚染の危険性が無いってまで考えるのは楽観が過ぎる。

止めなければならないことに、変わりはあるまい。

 

アモンは赤い翼(デビルウィング)を広げ、超高速でミサイル目掛けて飛びあがろうとした時。

遠くから、赤い閃光が空に向かって放たれた。

あの方角は……鳴海(なるみ)区辺りから射出されたものだが……

 

 

…………まさか!!

 

 

次の瞬間、雲の向こうで大爆発が起きた。飛んでいたら、間違いなく巻き込まれていた。

ミサイルが落ちてくることは無くなったが、放射線はどうなってる?

ガイガーカウンターなんて俺は持ってないし作れない。

目に見えない恐怖に慄いていると、俺のスマホに連絡が入った。

 

『宮本君、私です。薮田(やぶた)です。事態は私も校舎から眺めていたから把握していましたよ。

 少々出過ぎた真似かもしれませんが、放射線については私の神器で除去しておきました。

 ここを新たな日本の被爆地にするわけにはいきませんからね』

 

ご都合主義の神頼みでも何でもいい! ありがとう薮田先生!

これで目下の心配事は片付いた!

 

「……一応、礼は言っとくぜ」

 

『その声……アモンですね。確かにミサイルの相手ならば飛べない宮本君よりは

 あなたの方が適任でしょうが……悪魔とて核ミサイルの直撃には耐えられないはずですよ?

 まして、その体は宮本君のものです。

 いくらマグネタイトで補強したとて、核ミサイルに耐えうるとは思えませんが』

 

あ、やっぱり? 俺もそれは懸念していた。ほかに方法が思いつかなかったから、空中でどうにかするつもりだったが。

アキシオン・バスターは二次災害起きそうだったし。

等と思っていたら、薮田先生から意外な言葉を聞かされた。

 

『宮本君。今みたいな時こそ、アキシオン・バスターの……ディーン・レヴの使い時でしたよ。

 今回は、這い寄る混沌の目論見に乗せられてしまった形ではありますが

 お陰で核ミサイルの脅威から逃れることは出来ましたね』

 

這い寄る混沌? なぜそこでそれが…………まさか、さっきの赤い閃光は!!

 

「おいヤルダバオト。まだアインスト残ってるから、そろそろいいか?」

 

『そうでしたね。では外は引き続きお願いしますよ。

 正直、校舎の中も安全かつ平和とは言い難い状態でしてね』

 

薮田先生が気になることを言っていたが、事情を聴く前にアモンに通話を切られてしまった。

だがまあ、アモンの言う通りまだジャンヌが残っている。

幸い怪我は治療済みなので、俺に代わってもいいが……

 

「いや、このまま俺にやらせろ。お前、疲れてるだろ」

 

……まあ、かなり無理してリロードかけたりメンタルで消耗してる部分はあるから

アモンの言う事もあながち間違いじゃない。

それに、正直ゼノヴィアさんと光実だけで行けそうな感じもしないでもないので

俺が出張ることもない。そういう意味でもアモンに任せてもいいか。

 

「俺がやるとは言ったが、俺は消化試合担当じゃないぞ」

 

……聞こえてた。そういう意味じゃないが、すまん。

とにかく、後はアモンとゼノヴィアさん、光実に任せよう。

 

アモンがジャンヌに向かって飛び掛かると、迎撃しようと触手(シュヴェールト・ギーセン)が伸びてくる。

しかしその触手はキウイ撃輪によって切り裂かれ、アモンの進路はがら空きだ。

……ん? そういや、アモンはナイトファウルは使えないはずだ。

アインストのコアを狙うなら、やはり俺が出た方がいいんじゃ……

 

……と思った矢先、アモンはある意味アルギュロスよりも、アントラクスよりも

強大な威力を発揮する特効のある攻撃を繰り出したのだ。

 

「てめえが本当にジャンヌ・ダルクなら……これに耐えられるか!」

 

そうだ。奴は自称とは言えジャンヌ・ダルクを名乗っていた。

確かジャンヌ・ダルクの末路は磔の上、火炙りだ。

そしてアモンは、炎も扱える。

ちなみに俺の手元には爆発や雷のカードはあれど、炎のカードは無かったりする。

アモンならではの攻撃だ。

 

アインストヨハンナ・ニヒトの尾の部分から焦がし焼き尽くすように

七姉妹学園の校庭は炎に包まれた。

炎はアインストヨハンナ・ニヒトを中心に火柱となって燃え上がる。

さながら、自らの体――長い尾が磔台と化したような形で。

 

「何かと思えば……そんなもの……私には……

 

 

 ……あつい、いや、いやよ、火は……火はいやああああああああああ!!

 あつい、やめて……私は、私は魔女じゃないいいいいいいい!!!」

 

確かにアインストにはそれほど火は効果的ではない。

しかし、もし本当にジャンヌ・ダルクの魂を継承しているのならば

己の死の原因となった炎には、相当なトラウマが出来ているはずだ。

 

……余裕が無かったから記録できなかったけど

こんなことならフェニックスの炎を記録しておくべきだったかな。

にしても、こんな形でジャンヌ・ダルクの魂を受け継いだってすごい皮肉だな……

 

火達磨になった人間が暴れるように、ジャンヌは触手を振り回し暴れまわるが

その攻撃はアモンの熱光線(デビルビーム)やキウイアームズからブドウアームズにアームズチェンジした

光実――アーマードライダー龍玄(りゅうげん)のブドウ龍砲によって阻まれる。

 

「合わせろ、ブドウ野郎!」

 

「間違っちゃないですけど……わかりました!」

 

「飛んでくる炎は私に任せろ。接近戦は出来なくとも、デュランダルは盾にもできる!」

 

光実と息を合わせ、ジャンヌにとどめを刺そうと必殺の一撃の準備に入る。

ジャンヌが焼かれる苦しさから暴れることで飛び散ってくる炎は

ゼノヴィアさんがデュランダルで防いでいる。とどめを刺すなら好機だ!

 

――行け、アモン、光実ェ!!

 

〈ブドウスカッシュ!!〉

 

「デビル……ビィィィィィィィム!!」

 

ブドウ龍砲のドラゴンショットと、アモンの熱光線がさらなる熱をジャンヌにもたらす。

アモンの炎を受けた時から苦悶の声を上げていたジャンヌは、ひときわ大きな悲鳴を上げた後

崩れて動かなくなった。

 

……人間の死に方としちゃ、生きたまま焼かれるって相当苦しいらしいが……

 

『言っちゃなんだが、あいつは既にアインストだった。

 現に、龍玄とアモンの一撃でコアが粉砕されたら、跡形もなくなっただろうが。

 

 ……たとえ人間みたいなことをほざきやがっても、バケモノに魂売り渡した時点で

 そいつはもう人間じゃない』

 

人間自体バケモノとの境界線に立ってるようなもんだがな、と付け加えて

フリッケンが一人ごちる。俺の心の声に反応したらしい。

 

……なんにせよ、これで校庭に入り込んだアインストは倒せたはずだ。

騒動に紛れて入り込んできた奴がいない限りは、だが。

 

アモンと交代し、レーダーをチェックしたり上空を見渡しているが

いつの間にかスツーカとフォッケウルフもいなくなっていた。

あいつら、本当に何しに来たんだ?

それにさっき、薮田先生が「這い寄る混沌のお陰で核ミサイル落下が阻止できた」って言ってたが

スツーカもフォッケウルフも這い寄る混沌の軍勢じゃないか、ある意味。

 

……なんかこの件、非常に複雑で嫌な予感がするが……

 

俺がアモンと交代したのを皮切りに、光実は変身を解きゼノヴィアさんもデュランダルをしまうが

次の瞬間、校舎から悲鳴が響き渡った。




Cパートまで行くかな、と思ってたけど
案外早く終わった。
当初の予定では核ミサイルをアモンが追っかけて、雲の上で核ミサイル狙撃に巻き込まれて
錐揉み落下するところをスイカに拾われる、って流れだったんですが
いくら何でも核ミサイルが目の前で爆発して無事に済むわけないだろとか
色々考えてこの形に。

ちなみにそうなった場合、ジャンヌの火炙りはCパートの予定でした。

>ナイトファウル
ここに来て試作品故の耐久力の低さが仇に。
原作みたく極とか複合式杭打機「鵺」とか出せればいいんですけど
現時点の機関砲オミットしたナイトファウルでさえ相当無理してるので
多分出てこない、多分。

>赤い閃光
現時点で、これが出来る奴って時点で限られてるお話。
因みに、もう少しミサイルの高度が低かったら……珠閒瑠市が被曝してました。

>被曝
原作ならニュートロンジャマーとか普通に作れそうですけど
拙作では上級悪魔でも核ミサイルの威力は危険、放射線的な意味でも。としてあります。
因みにアモン(セージ)は言わずもがな。はげるどころか……

今回薮田先生が神器で放射線除去してますが、それ以外の方法が思いつきませんでした。
やっぱ軽々しく核なんか撃つもんじゃないな!
……すみません。

>アモンの炎
バトルドッジボールで炎使ってますし、漫画版でも炎で焼き払う場面(イメージ?)ありますし。
この後デビルビームとか言っちゃって熱光線撃ってますが。
そういやデビルビームってほぼブレストファイヤーなイメージが……

……ファイナルダイナミックスペシャルできるんじゃね?

>ジャンヌ
ヘラクレスは本当に末裔ないし生まれ変わりかどうかは拙作でもわからずじまいでしたが
こちらはこんな形で本人認定。死にますけど。


さて次回。校舎の中で何が起こるやら。
ヒントはJOKER呪い。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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