ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Will29. 学園のJOKER Aパート

アインストと化した禍の団(カオス・ブリゲート)・英雄派を名乗る

自称ヘラクレスは自爆同然に核ミサイルを撃ち上げたが

それは謎の赤い閃光によってはるか上空で撃破され、核の放射線も薮田(やぶた)先生の神器によって除去。

ナイトファウルでひび割れたヘラクレスのコアもゼノヴィアさんのデュランダルで砕かれ

塵と化した。

 

同時に現れたジャンヌもまたアインストと化し、こちらを苦しめたが

自称ヘラクレスの後を追うように崩れ去った。

その最期は、炎に包まれて焼き尽くされるという

図らずも史実のジャンヌ・ダルクと同じものであった。その際の取り乱しようは

本当にジャンヌ・ダルクの転生であると思わせるものであったが……

 

……果たして、彼女は輪廻転生を是とする教義の下で生きていたのだろうか?

そうでなかったら、色々とそれはそれで興味深い話だが。

 

 

――しかし、アインストと化した2人を倒したのもつかの間

今度は七姉妹学園(セブンス)の校舎の中から悲鳴が響き渡ってきたのだ。

確かに、中は殆ど祐斗やギャスパー、薮田先生とかに任せた形ではあるが……

 

「セージさん、ゼノヴィアさん!」

 

「あ、ああ! セージ、ミツザネ、急ぐぞ!」

 

校庭の安全を確認し、俺達は校舎へと急ぐ。

しかしその目の前に、クルゼレイと呼ばれたアインストが立ちはだかる。

くっ……アモンの言う通りなら、あのカテレア・レヴィアタンと同格。

ここで相手取るにはかなりきつい相手だ。

少なくとも、神様交えた総当たりでようやく倒せたアインストレヴィアタンと同格って事になる。

何の被害も出さずに倒すってのは、厳しそうだ。

……いくらあの時から禁手(バランスブレイカー)とか色々増えたと言っても、数としての戦力が足らなさすぎる。

分身して戦力比を埋めるとかそういう次元の話じゃない。

 

「所詮は……不完全な……生命体……

 結果も……予測の……範囲内……

 我等の……望む……世界には……不要……」

 

クルゼレイの言葉は、色々な意味で予想通りだった。

やはりあいつらは、英雄などと嘯いていてもその実使い捨てに過ぎなかったのだ。

アインスト自体が、死者を悼む発想にかけているってのもあるかもだが。

 

「然れども……目的は……達成せり……

 記録する者……古の記録に……近づかんと……する者……

 歪められた……歴史の……新たな……特異点……」

 

言ってることが要領を得ない。

まあ、アインストレヴィアタンもこんな感じだったが。

言葉はわかるが、会話ができない。そういうタイプか。

 

「……何が言いたい?」

 

「記録する者よ……お前も……我等の望む……世界には……不要……

 静寂なる世界……その静寂を乱す……特異点は……抹殺する……」

 

言いたいことはわかった。

こっちを見ながら言ってるって事は、俺がその記録する者で、特異点って事だろう。

記録する者はわからんでもないが、特異点ってのはよくわからんが。

ついでに言うと、古の記録ってのも全然わからん。

アインストの言葉をいちいち額面通りに読んでいたらキリがないのはあるが。

 

いや、それよりもだ。

いくら何でも、これだけの戦力でアインストレヴィアタンクラスと戦うのは無理が過ぎる。

禁手化(バランスブレイク)すれば、太刀打ちは出来るかもしれないが……

 

……セブンスや、珠閒瑠(すまる)市を守りながら戦うとなると……

 

「くっ、そこをどけっ!」

 

「無駄だ……不完全な……生命体に……私は……倒せぬ……」

 

問答に痺れを切らしたゼノヴィアさんがクルゼレイに飛び掛かるが

デュランダルの一撃はいとも簡単にクルゼレイのエレガントアルムに阻まれる。

サイズこそアインストレヴィアタンより小さいが、パワーは全然変わってないか……!

 

とにもかくにも、こいつを倒さないと先に進めない。

……やるしか、ないか。

 

無限大百科事典(インフィニティ・アーカイヴス)を起動させようと構えると、目の前が突如として真っ白になる。

視界が回復したその先には、白いローブに黄金の光輪を背負った――

 

――ヤルダバオトが、クルゼレイと向き合うように立ちはだかっていた。

 

「皆さん。クルゼレイの相手は私がします。皆さんは校舎の中をお願いします」

 

「や、薮田先生!? あ、あなたは……!!」

 

あれ。ゼノヴィアさんって薮田先生の正体知らなかったっけ?

いや、今はそれよりも、だ。

 

「私がこうして動けば天照様にも伝わるかもしれませんが、今はそれどころではないでしょう。

 さっきも言いましたが、力とは使うべき時に使うものです。

 私の力ならば、周囲に影響を及ぼさずに対処することなど造作もありませんよ」

 

そう言う事が必要なくらい、影響の出る戦いになるって事か。

そうなると、俺達が下手に加勢しても却って邪魔になりかねない。

それに、薮田先生がこっちに来たって事はその分校舎の中が手薄になってるって事だ。

 

「わかりました。では先生、俺達は中に向かいます!」

 

「待てセージ! あの方は……!!」

 

「ゼノヴィアさん、急いでください! 中の悲鳴も只事じゃないです!」

 

俺と光実(みつざね)はゼノヴィアさんを引っ張るような形で校舎の中へと駆け込んでいく。

直後、背後から爆発音が聞こえたが衝撃は然程伝わってこない。

セブンスを駒王学園の二の舞ににすることは避けたいが

そのために今俺達が出来るのは、この中の安全の確保だろう。

 

「そう言えばセージさん。薮田先生って、あの身なりは只者では無いと思いますが……」

 

「それはそうだろう! 私もお目にかけたことは無いが

 あれは聖書の神と言っても差し障りのないものだったぞ!」

 

興奮気味に話すゼノヴィアさんに、光実は軽く引いている。

うんまあ、日本人の感覚ならそりゃそうだと思う。

俺も慣れちゃった部分はあるが、そう言えばゼノヴィアさんって元々……なところはあったと

今更ながらに思い返していたり。

 

「ヤルダバオト。ゼノヴィアさんは聞いたことが無いか?

 本人曰く聖書の神の影武者だそうだが、聖書の神として表舞台に立つつもりは

 俺が知っている限りでは無いそうだ。三大勢力のやらかし以外では、だそうだが。

 今はこれ以上だらだら喋ってる時間も惜しいから、このまま進んでいいか?」

 

「むう……確かに、聞いたことはある……ニセモノの神の名前ではあるが。

 だが、そうであれば聖書の神が消えたという時に、彼が表舞台に立てば……!!」

 

「……ゼノヴィアさん。気持ちはわかるとは言わないし

 ムキになる理由を俺は日本人特有の信心の浅さ故に全く理解できないが

 その上で言わせてくれないか?

 

 ……問答してる時間が惜しいって言った。まずすぐそこにギャスパーがいる教室があるから

 そこから調べて、可能ならギャスパーと合流するなり情報共有するなりしたい」

 

俺も焦っていたのかもしれない。少し強い口調でゼノヴィアさんに言ってしまった。

だが、俺にはゼノヴィアさんの気持ちはわからない。わかろうとする意志は必要だが

想像もつかない気持ちを、どうわかれと言うのだ。

 

俺達はまず宣言通りギャスパーと合流することにした。

ギャスパーがいた教室に駆け込んだ先に入ってきたのは

白塗りの貌にやたらと目立つ赤い唇の生徒に掴まれているギャスパーだった。

 

……待て。いくらギャスパーが内向的でも、ここにいる普通の人間に負けるほど

膂力が弱いとは思えない。となると答えは一つだ。

 

 

――こいつは、一体何者だ!

 

 

「ゼノヴィアさん! 姿こそ違いますが、こいつは……!」

 

「JOKER! こんなところにまでいたのか!」

 

「ま……待ってください! この人はJOKERかもしれませんけど……

 ここの、セブンスの生徒です!」

 

……なんだ? ゼノヴィアさんも光実も、ギャスパーもこいつの事を知っている素振りだが

それより、ギャスパーの言葉を信じるならこいつがここの生徒? 一体どういうことだ?

 

COMMON-SCANNING!!

 

当然、調べるより他あるまい。俺のやることは決まっている。

些か遅れた感はあるものの、記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を白塗り貌の生徒に向ける。

 

――JOKER。

 

かつて珠閒瑠市で一世を風靡し、昨今では冥界でも流行している

「JOKER呪い」によって顕現する願いを叶える怪人であり、連続殺人鬼である。

かつて「JOKER呪いを行ったものはJOKERと化す」と言う伝聞が伝わった事で

それが現実化、珠閒瑠市に無数のJOKERが現れたこともあった。

 

現在では噂や流行の衰退からJOKER呪いは行われなくなったが、冥界にて再流行。

それが人間界に齎され、逆輸入の形で再流行を果たした。

長い年月の間にJOKER呪いに関する顛末は忘れ去られており

再び危険性はそのままに、世情への不安から流行の兆しを見せていた。

 

JOKER呪いで変異した者は、JOKERと呼ばれるペルソナに支配され

その力のみならず人格も連続殺人鬼としてのJOKERと遜色無くなってしまう。

ペルソナであるため、ベルベットルームで一時的な対症療法が可能。

 

能力は変異した人間の特性に応じた様々な魔法や力に加え

周囲の人間のうち、誰か一人の能力を一時的にJOKERで上書きし

無差別攻撃をさせ、自滅させる「オールドメイド」なる能力も持つ。

また、かつて澄丸清忠(すまるきよただ)なる武将が所持していた妖刀「村正」の複製品も所持しており

この妖刀には異能封じの力も込められている。

 

 

――つまり、聖槍騎士団の相互互換ってとこか。

いや、場合によっちゃ無尽蔵に増えることを考えると

一応13人で頭打ちの聖槍騎士団よりヤバい部分があるって事か!

妖刀に能力の上書き、ギャスパーが苦戦してるのはもしかしてこれか?

 

 

「聖槍と同じ能力封じなら、この中じゃ俺のアモンの力か、ギャスパーの吸血鬼としての力。

 それと光実のアーマードライダーシステムなら太刀打ちできるはずだ。

 ギャスパー、吸血鬼としての力で戦うんだ!」

 

「わ、わかりました!」

 

「そう言う事なら、ここは僕に任せてください!」

 

捕まれていたギャスパーが蝙蝠の群れに変身することで拘束を脱出。

そのままJOKERとなった生徒を翻弄している間に

光実が戦極ドライバーとロックシードを構える。

 

〈ブドウ!〉

 

〈ロック・オン!〉

 

「変身!」

 

〈ハイーッ!〉

 

〈ブドウアームズ! 龍・砲! ハッハッハッ!〉

 

緑のスーツにブドウの紫を差し色が施された中国武将を思わせるアーマードライダー、龍玄(りゅうげん)

アーマードライダーは、力の源はともかく異能に依らない人間の技術。

異能では無いので、オールドメイドでも、妖刀でも無力化出来ないのだ。

 

「ギャスパー、光実。ここは任せていいか?」

 

「セージ! 相手は……」

 

「待ってくれ。俺の検索が正しければ『この学校に、他にもJOKERがいる可能性が高い』んだ。

 そうなると、ここで全員足止めを食うわけにはいかない。

 いくら他に祐斗だの薮田先生だのいるって言っても、限度がある。

 それに、どれだけの生徒がJOKERになったかわからないんだ。

 ここのJOKERの反応は、普通の人間と変わらなかったんだ」

 

今度はゼノヴィアさんの言いたいことがわかる。

ギャスパーと光実だけで、殺さず倒すことができるかどうかと言うと困難だろう。

しかし、この校舎中に他にもいる可能性を考えると、ここで固まっているわけにはいかない。

幸い外のアインストはクルゼレイのみ。そのクルゼレイも薮田先生が押さえている。

逆に言えば、校舎内で担当するはずだった薮田先生の分を俺達が押さえなければならない。

 

後は祐斗のいる俺達がいた教室と、それ以外。

分散するのは失策かもしれないが、勝手のわからない場所ならば

まず自分達がいた教室の安全を確保した方がいいかもしれない。

 

「ゼノヴィアさん、まず俺達がいた教室の安全を確認しよう。

 俺はJOKERと戦ったことが無いから相手の強さが今一わからないが

 話に聞くのと、調べた限りでは相当な難敵だ。くれぐれも気を付けてくれ」

 

「わかった。君も気を付けてくれ」

 

二階へ戻り、俺達は各々が授業を受けていた教室へと戻ることにした。

俺もまた、教室に戻ろうと身を翻したが

次の瞬間、若流(わかる)先生の悲鳴が響き渡った。

 

どう考えても只事じゃない。

今なお襲い掛かってくるナチス製のマシンを蹴散らしながら

俺は教室に戻り、勢いよく引き戸をガラリと開ける。

 

「若流先生!?」

 

「宮本君!? ぶ、無事だったんだね……

 で、でもわかんないよ……木場君が……狂暴化した生徒を止めようとして

 取り押さえようとしてたんだけど、次の瞬間……

 

 木場君の周りにいた生徒が、次々と血まみれになって……!!」

 

俺の前の前に広がったのは、赤く染まった教室の床と

さっきギャスパーと対峙していた白塗り赤唇の生徒と

それを取り押さえながらも、茫然としている木場の姿。

そして、木場の周りで崩れ落ちているセブンスと、駒王学園の制服。

 

「いたぁ……! さっきのクソナマイキな奴!

 てめぇが勝手なことしなけりゃ、俺が学校のテロリストやっつけて

 ヒーローになって、みんなを見返して、先生にもでかい面させずに

 女の子や若流先生とかにモテモテになってるはずだったんだ!

 

 それを……てめぇがぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 何のために俺がJOKER様に願ったと思ってるんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

――JOKER呪いをしたものはJOKERとなる――

 

 

その言葉の意味を、ここで俺は完全に理解した。

何故なら、その白塗りの貌もまた、セブンスの制服を着ており

その特徴は、ギャスパーが話していたものとほとんど変わらないものであったからだ。




JOKER再び。
しかし、このJOKERは先日リアスらを襲撃したJOKERではありません。
そして目的を果たすために生み出された紙袋でもなく。

そう言えば、モチベ向上の一環で某シラカワ博士の幻想入り動画とか見返してましたが
鈴奈庵の噂って、かなりペルソナ2の噂に通ずるものがありますね。
今のところ虹川姉妹と名前だけの京都の妖怪の総大将以外に東方要素ありませんし
増やす予定はありませんが。

>JOKER
こちらは罰で大量発生した方のJOKER。
今回JOKER絡みではKEGAREがどうのって話は無いので
単純に連続殺人鬼が大量に野放しにされるだけのお話。
警察も現状JOKERを積極的に(目的のために)捕まえるって話も無いので
校舎内が阿鼻叫喚に包まれたのはそういう系のお話。

所持している妖刀のコピーは罰原作では触れられていないX-1とX-2の所持している
コピーの大本の持ち主がもしかしたら、程度の話なのでこれまた独自設定の範疇を出てません。
ちなみに妖刀はJOKER化した際に顕現したとかそんな感じ。

そのやり取りこそ描いてませんが、木場はババを引いちゃったとだけ。
いくらかまともだったはずの木場のテロリスト疑惑の噂がこれで加速します。

で、木場にババ引かせたJOKERはセージが飛び出した際に後ろでぶつくさ言ってた奴。
JOKERに「ヒーローになりたい」とでも願ったのでしょう。
罪ジョーカーは記憶の限りでは悪意のある願いの叶え方はしてませんが
あれは正体やジョーカーになった経緯故のことと解釈しましたので
その辺の無い拙作JOKERは普通にイマジンみたいな願いの叶え方もします。

ギャスパーがババ引かなかったのは、妖刀を受けただけのお話。
聖なる武器でもないので、傷こそ軽微ですが神器(と悪魔の駒)封じは健在ですので。

>クルゼレイ
カテレアみたく巨大化はしてませんが、彼の場合同様のパターンになると
カオス・レムレースみたいなことになりそうな。あるいはヴォルクルス。
……あれ? あんまり本来のアインストレジセイアと変わらないな?

と言うわけもあり、今回巨大化は無しです。
ただしパワーはカテレアと互角なので薮田先生出番ですという事で。
あの時からセージも成長してるとはいえ、本文にて触れてる通り戦力全然足りませんし
校舎内の事もありますしで。

>セージ特異点疑惑
「ハイスクールD×D」って作品と拙作を比較すれば、宮本成二ほど特異点を名乗っていい存在は無いと手前味噌ながら解釈してます。
まあ、数多の二次創作オリキャラ(特にオリ主)に言えることなんですが。
なおペルソナ2罰でも達哉が罰世界における特異点呼ばわりされてましたし

特異点と言えば、拙作は一応他平成ライダーも出せる余地があるので……


3/29追記
誤字報告ありがとうございます。
よう言わんわ、関西弁でしたねそういや。
そりゃこの場で言うのは不適切だ。

……台詞とか特に黙読しながら書いているので
時々こういうことが起きます……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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