ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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やることは、変わりません。
これが、これこそが自分が得た結論であり
細かいところを変えることはあっても、基幹を変えることは無いと思います。

アプローチの仕方が拙いのは、まあ……


Will33. 二つの山

誘拐された白音さんを助け出すための作戦会議は比較的順調に進んでいた。

街の防衛もあり、少数で乗り込む作戦を立ててそのメンバー分けも決まったが

肝心の犯人と白音さんがいる場所がわからない。

 

一応、犯人は「山で待つ」と言っているために

珠閒瑠(すまる)市にある山に違いはないんだが……

その山が、絞り切れないのだ。

 

俺は記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を展開し、珠閒瑠市の航空写真と地図を並べて話を進める。

独特の、市境としては非常に珍しいほぼ真円形の形をとった珠閒瑠市。

その外れにある蝸牛(かたつむり)山か、そのほぼ中心部に位置する蓮華台。

そこに位置するアラヤ神社の裏山である岩戸山か。

 

一応、山としての規模の大きさは蝸牛山の方がはるかに大きいのだが。

アラヤ神社には境内にクロスゲートがある。これがある以上、話は単純にはいかない。

 

「一応、今挙がっている候補の蝸牛山と岩戸山。

 この二か所に絞り込んでみようと思う。他に珠閒瑠市にこれ、と言った山が無いのもあるが。

 兵藤、お前はなんで犯人が蝸牛山に潜伏していると思った?」

 

「えっ? そりゃ、山頂に……」

 

「……山頂のカラコルなら、残念ながら無いわよ。私もこの目で見たもの。そうよね、セージ?」

 

まさか兵藤がカラコルを引き合いに犯人の潜伏場所に選ぶとは思わなんだ。

その根拠はグレモリー先輩が粉々に打ち砕いてくれているが。

そりゃあ、確かに確認したものを信じられないようでは言っちゃなんだが……だが。

その結論を導き出させたのは俺でもあるので、ここは素直に首肯する。嘘ついても仕方ないし。

 

「えっ…………」

 

「……だが待ってくれ。蝸牛山には他にも廃病院や寺院と言った建造物もあるだろう?

 それに、獣道側からは相当入り組んだ山道になっていたはずだ。

 それは逆に、犯人の側からは潜伏しやすいという事にもなるはずだよ。寺院は知らないけど」

 

兵藤に助け船を出すかのように布袋芙先生からの意見が出る。

寺院と言う不確定要素はあるものの、確かに廃病院は隠れ家にするにはうってつけだろう。

だがその廃病院、確か火事で焼け落ちた廃病院だったような。

寺院にしたって、調べた限りじゃまだ人が住んでいる。潜伏場所にするとは考えにくい。

 

「火事で焼け落ちた建造物はともかく、既に人が使っている家屋を潜伏場所にするものかね……」

 

そう考えれば、寺院にはいないだろうが、廃病院に潜伏している可能性はあるだろう。

まあ、当たり前だが犯人が蝸牛山にいるという前提が必要だが。

そうなると、蝸牛山か?

だが俺がその結論を出す前に、薮田先生からバオクゥに問いかけが投げられる。

 

「もう一つ、岩戸山が候補に挙がっていますが……それは何故ですか?」

 

「それが……恐縮なんですけど。これだ、って決定的な証拠がないんですよねえ……

 ただ、犯人の『山』ってキーワードで絞り込めたのが珠閒瑠市ですと

 さっきも話に出た通り蝸牛山か岩戸山位しか有名な山ってないんですよね。

 知名度ですと蝸牛山の方が圧倒的ですし、言ってしまえば蝸牛山があまりにも愚直なので

 敢えて外して岩戸山を挙げただけですよ」

 

意外だ。この手の話には必ず裏をつけるバオクゥがほぼ当てずっぽうで話を出すとは。

逆に言えば、バオクゥでさえ当てずっぽうをせねばならない程情報が無いという可能性もあるが。

 

「そんないい加減な話で大丈夫なのかよ?」

 

「それを言われると痛いですねぇ。それにクロスゲートってものが近くにありますし

 やっぱり私の見立ては間違いじゃないかと……」

 

「……いや、それは早計だな。バオクゥだっていい加減な理由で岩戸山を選んでないだろ。

 何かないか? 些細なことでもいい。例えばそう……なんか怪しい奴を見たとか」

 

バオクゥだってジャーナリストで自称盗聴バスターだ。情報の扱いにいい加減だとは思えない。

となれば、その少ない情報から探り出してみるのもいいかもしれない。

そりゃあ、蝸牛山――と言うか廃病院も怪しいと言えば怪しいが。

とは言え、この現状では兵藤でなくとも「大丈夫なのか」と言いたくもなるか。

 

「怪しい奴なら、廃病院でも目撃情報があるんですよねぇ……

 そっちは悪魔っぽいって話なので、もしかするとやっぱり蝸牛山の方が……」

 

「おい! なんで悪魔が小猫ちゃんを攫うんだよ!」

 

「黒歌さんが言うには、猫魈(ねこしょう)は悪魔的にはレアらしいからな。

 レアハンティングの標的にするなら、悪魔としては動機が十分すぎるほどある。

 こいつは俺の個人的な調べだが、レア種族、レア能力持ちってだけで眷属に入れようとする

 悪魔も少なくないらしいし。なあグレモリー先輩?」

 

「……なんで私に振るのよ」

 

我ながら、ちょっと毒づいたとは思う。だがまあ、この意見を変える気は無いが。

実際、今は世情的にどうだか知らんが禍の団(カオス・ブリゲート)――と言うかアインストが暴れる前の悪魔陣営は

そう言う一方的な転生を行ってたのは事実じゃないか。

自分だけは関係ないみたいな素振りをされるのも、正直気に入らないってのもあるし。

レア能力に関しては、まかり間違っても自分は違うなんて言えないはずだ。

アーシアさんやギャスパー、最たるものでは兵藤なんてその代表例だろうに。

 

「宮本君、あなたの言いたいことはわかりますが

 今はグレモリー君に突っかかっている時では無いはずですよ」

 

「……すみません。発言は取り下げませんが以後気をつけます」

 

本心で言ったことを取り下げる気は無い。グレモリー先輩の性質的に嘘はダメだろう。

横紙破りの常習犯とも言うべき相手だから、尚のことかもしれないが。

ま、横紙破りに関しちゃ俺も人のことは言えないが。

薮田先生にも釘を刺されたので、俺は気を取り直して話を進める。

えっと……蝸牛山と岩戸山、どっちを調査するかって話だったな。

 

「どっちも決定打に欠けるんだよねえ……要素の多い、蝸牛山を当たってみるかい?」

 

「焼け落ちた廃病院のある蝸牛山か、クロスゲートが近くにある岩戸山か。

 どちらにせよ、あまり時間をかけた捜索は難しいな。

 JOKER騒動が起きているとはいえ、明日には駒王町に戻らなきゃならんし」

 

条件はほぼ五分か……そう言えば、蝸牛山には何があるか大体わかっているが

岩戸山には何があるんだ? 中にあるもの次第では、岩戸山に構えている可能性だってある。

 

「そう言えば、岩戸山ってどんな場所なんだ?」

 

「アラヤ神社の裏山、ってのは話したかもしれませんけど……

 単に岩戸山って言った場合ですと、裏山の洞窟の事を指すことが多いですね。

 私も洞窟の中までは調べてないのでわからないんですけど……」

 

洞窟か。なるほど、焼け落ちた廃病院よりはある意味潜伏に適した場所かもしれないな。

洞窟の中だと、確かにバオクゥは戦闘に適さないし、グレモリー先輩だの姫島先輩だのは

そう言う場所での戦闘に不向きすぎる。ゼノヴィアさんでさえ怪しい。

戦闘に関しては兵藤も怪しいが、兵藤は連れて行かざるを得ないので仕方がない。

それより洞窟となれば、昨日今日出来たものじゃないだろう。

もしかすると、兵藤も行ったことがあるかもしれない。

 

「兵藤。岩戸山には行ったことはあるか?」

 

「えっ? あ……いや……ない、んじゃ……ない……かな?」

 

……うん? 目が泳いでる? 行ったことがあるのか?

だが、隠すという事は言いたくない事情があるのだろう。

言いたくない事を無理に聞き出すのも拗れる元か。

現時点じゃこれ以上兵藤に追求するのは得策とは言えないな。

 

 

さて。情報が揃っているが、潜伏場所に難のあるであろう蝸牛山か。

情報は無いが、洞窟と言う立地条件上潜伏に適した岩戸山か。

山と言う発言を鵜呑みにすれば蝸牛山かもしれないが……

何にせよ、岩戸山の情報が足らない。こうなったら調べてみるか。

 

COMMON-LIBRARY!!

 

――岩戸山。アラヤ神社の裏手に存在する山及びその洞窟の呼称。

御影町に存在する同名の神社の裏手にも、アラヤの岩戸なる洞窟が存在する。

珠閒瑠市のものの内部は比較的入り組んでおり、鏡の泉なる泉が四か所に沸いている。

この泉には、人の心を映し出すという噂があるとされている。

 

観光地と言うよりは、公開されていないパワースポット的な場所だな。

人目につかないって意味では廃病院と遜色無さそうだ。

調べても全然絞り込めんな、これ。

 

「だ、だったら蝸牛山にしようぜ? 廃病院とか誘拐犯が立てこもってそうだしよ」

 

兵藤は蝸牛山を推してくるが、何故かそこには俺達を岩戸山に行かせまいというか

寧ろ、自分が岩戸山に行きたがってないような感じも受け取れた。

なんでこいつ岩戸山に行きたがらないんだ? 何かあるのか?

いやまあ、神社なんて場所悪魔は行きたがらないだろうけれど。

 

 

…………いや、ちょっと待て。

今さっきこいつは岩戸山には「行ったことが無い」って言っていた。

にもかかわらず、こうも「行くこと自体を拒否」するのは悪魔だって以外にも何かがあるぞ。

現にメンバーに抜粋したアーシアさんやギャスパーからは

自分が悪魔だからって理由でのアラヤ神社の裏手である

岩戸山への移動を拒否する声は上がっていない。

 

ただ、そうは言っても兵藤が岩戸山へ行くことを拒否することと、犯人の行動との結びつきなんざ

何も思い浮かばないってそもそもの問題はあるわけだが。

やはり、悪魔だから神社のある岩戸山を避けているだけなのか……?

いや、こんな状況でそんなことを言っていられるものか?

俺の記憶では、そこまで問題から逃げ出すような奴では無かった気がするが……

少なくとも、ライザー戦を控えていた頃のこいつを考えれば……違和感がある。

 

そう思い、俺は敢えて候補を岩戸山に絞り込むことにした。根拠の説明が難しいが……

 

 

「…………岩戸山にしよう。人目につかない場所って意味では、蝸牛山より人目につきにくい」

 

「まあ、有名な観光地ってわけじゃないですしね。私は構いませんけど……」

 

岩戸山を挙げたバオクゥは賛成。アーシアさんとギャスパー、光実(みつざね)も特に反対意見が無いのか

ノーを突き付けてくることは無かった。

 

「お、俺は反対だぞ! そもそも俺の話聞いてたのかよ!?」

 

「逆に聞くが、お前なんでそこまで目的地を蝸牛山にしようとしたがる?

 ……いや、『岩戸山に行くのを避けようとしている』んだ?

 言っとくが、悪魔だからって言い訳はすんなよ。

 アーシアさんとギャスパーの許可は貰ってるんだ。

 聞こうか聞くまいか迷ったが、そこまで必死に岩戸山を避けるって

 それはお前に何かあるって気がするぞ」

 

俺の質問に、兵藤は何も言えなくなったのか黙り込んでしまう。

しきりに布袋芙(ほていふ)先生にアイコンタクトを取っているようだが

布袋芙先生はそれに対し特に何も反応を示していない。

こんな大事な決定を、人任せにする……

いや、こういう時に大人の意見を聞くこと自体はおかしなことじゃないし

なんならいくら超特捜課権限を発揮しているとはいえ仕切ってる俺の方が変だ。

ただ、こいつのそれはどうにも「逃げ」の姿勢が見て取れた。

理由まではわからんが。

 

「反対意見が無いなら、岩戸山を調べてみようと思う。

 蝸牛山には、念のため警察の人達に行ってもらうつもりだ。ノーマークって訳にも行かないし」

 

「私達じゃなくていいの?」

 

「今回の件は警察にも話を通してある。誘拐事件の捜査なら、本当なら警察の役割だし。

 万が一岩戸山が外れだった場合には、蝸牛山に俺と兵藤の二人で急行する作戦だ」

 

グレモリー先輩。いい加減自分がテロリスト扱いされてるって自覚持ってもらえませんかね。

迂闊に街中うろうろしてたら問題でしょうが。

いくらJOKERがある種囮になってるって言っても。

ま、それを言ったら俺だって似たようなもんではあるが。

 

「それなら、魔法陣で呼び出せば……」

 

「俺を呼び出せるんなら、その方法でも構いませんがね」

 

姫島先輩の提案は、単純な「俺を魔法陣で召喚できない」と言う一点で成立しなかった。

人間の俺は無理でも、アモンならば呼び出せるかもしれないが。

 

(アモン、蝸牛山にグレモリー先輩か姫島先輩に待機してもらって……)

 

『セージ、冗談はよしてくれ。悪魔の召喚ってのはデリケートなもんでな。

 力の強弱が召喚の可否に大きく関わってくるんだ。

 いくら俺がこいつらに言わせばロートルの悪魔でもな、力で負けた覚えはないんだぜ。

 そこの教師なら何とも言えんが、そいつは今回不参加だろ。なら無理な相談だ』

 

すまん。ちょっとアモンの力を見縊ってた。

確かに、悪魔の世界ってのは力の強弱がそのままヒエラルキーだ。

今も昔も根本は変わらないところを見るに、早々変わらない部分なんだろう。

そりゃアモンにしてみたら、悪魔目線でも未熟なグレモリー先輩如きにいいように召喚されるのは

我慢ならない、って感じなんだろうな。

 

「セージが悪魔なら、呼び出せたのだけど」

 

「そりゃさっきの意趣返しですか」

 

売り言葉に買い言葉、傍から見たらそうなのかもしれないが、黙って聞き流せない言葉でもある。

漸く人間に戻れたのに、なんでまた悪魔にしようとしたがるんだ。

俺は嫌だって言ってるのに。

 

「……さっきも言いましたが、今は言い争っている場合では無いでしょう。

 そんなことをしている暇があるのでしたら、行動に移すべきだと思いますよ。

 先ほど決めたメンバー……宮本君、兵藤君、アーシア君、ギャスパー君、呉島君。

 それとバオクゥ……でしたね。そのメンバーで岩戸山に向かうという事で宜しいですね。

 警察への連絡は私からしておきます。くれぐれも、ミイラ取りがミイラにならないように。

 何度も言いますが、今回の事件は罠の可能性が高いんです。くれぐれも、油断は禁物ですよ」

 

「薮田先生の言う通りだ。今は時間が惜しいのだろう?

 なら、早いところ囚われのお姫様を救いに行くべきだよ。

 なに、その間は事件が起こらないよう僕達も目を光らせておくさ。なあ、『ご主人様』?」

 

「そうね。イッセー、アーシア、ギャスパー。気をつけなさい。

 それとセージも。小猫の事は頼んだわよ」

 

一抹の不安を覚えながらも、俺達は岩戸山に向かう事にした。

果たして、本当に白音さんはそこにいるのか。

 

 

……そして、岩戸山と言う場所そのものに、俺も正直なところ嫌な予感を覚えていた。

場所と言うよりは、クロスゲートの近くと言う立地条件と――

 

――岩戸山の中にあるという、鏡の泉である。

 

何かが起こる。犯人絡み以外にも、俺には何か嫌な予感がぬぐい切れなかった。

もしかすると、兵藤もそれを警戒していたのかもしれない。

 

だが、それならば尚の事岩戸山に向かうべきかもしれない。

白音さんを使って俺達を呼んでいるのだとしたら。

俺達が行くのをためらう場所にこそ、犯人はいるのかもしれない。

 

――薮田先生の言う通り、罠だろうな。だが、それでも。

白音さんを助け出さない理由にはならない。

俺のせいで苦しむ人を増やすのは、もう、これ以上は…………




相変わらず変にギスギスしてるセージとリアス。
色々な意味で原作ヒロインの面目躍如してるかもしれません。
かと言ってリアス→イッセーの好感度が原作準拠かと言うとそうでもなく。

……どうなんのこれ。

さて。今後話の本流は変わらないにしても、細かな変化をつけるためのギミックとして
簡易アンケートを行う予定があります。
もし行う場合には告知させていただきますので、よろしくお願いします。

例えば今回の場合ですと
A:岩戸山 B:蝸牛山
と言った風に、目的地を選ぶ所謂「安価式」に近い事を行うかもしれません。

>御影町のアラヤ神社
あそこはあそこで長かった。おまけに2人で攻略せにゃならんし。

>イッセーが岩戸山に行くのを嫌がっている理由
……そりゃあ、相手が行かないって明言しているものの
そこで自分が何をしたかって言えば……ねえ(プルガトリオ参照)

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
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