ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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アンケートご協力ありがとうございました。
早速ご意見を反映させていただきたいと思います。
また折を見て行わせていただくと思いますので、その時はよろしくお願いします。

……やっぱり今まで長すぎたみたいですね。
「ゴースト」終盤が割とちょうどよかった感じでしょうか。

それに伴い、今回から投稿方式を変更します。
長引きそうな場合には、Aパート、Bパートに分割して投稿いたします。
以前もセージ復活回にて似たような方式をとりましたが
今回は別の日に分けて投稿する予定です。

今回はセージ視点から離れて祐斗視点。
セージが沢芽市でフランス外人部隊仕込みのトレーニングを受けている最中
駒王町では……


Sword6. 遅れてきた「コモン」 Aパート

駒王学園。

ここは生徒会長である支取蒼那――ソーナ・シトリーや

オカルト研究部部長、リアス・グレモリーをはじめとした悪魔が数多く通う学校。

悪魔のみならず、人間においても異能を持った人間や

怪異の存在に近しい人物も多く通っている。

 

かくいう僕、木場祐斗も神器(セイクリッド・ギア)魔剣創造(ソード・バース)を持っているばかりか

先述のリアス部長の眷属にして転生悪魔だ。

そんな僕の学校生活は充実しているかと言えば……

 

 

……最近は、そうでもなかったりする。

 

 

事の発端は梅雨明け頃に行われた駒王町に対する大々的なテロ活動と

それに伴う禍の団(カオス・ブリゲート)に所属するフューラー・アドルフという人物の演説だ。

彼が僕ら悪魔や、天使、堕天使と言った三大勢力の存在とその所業を公のものにしたばかりか

聖書の神の否定まで行った上に、それに伴う証拠まで突き付けてきたんだ。

 

一体どこでそんなものを手に入れたか、今となってはそれを気に留める人なんて誰もいない。

唯々、普通に駒王町で暮らしていた人たちはそれを機に三大勢力を敵視するようになり

僕自身、学校でも今までの扱いが嘘みたいなことになっている。

言いたいことはわからなくもないけど、掌返しが酷いとは思うね……

 

この件について、可哀想だと思うのはアーシアさんと、ギャスパー君だ。

アーシアさんは今なお懸命に奉仕活動を行ている。彼女も転生悪魔だというのに、だ。

彼女の神器・聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は確かにテロや災害に遭ったときとかにはうってつけだろう。

だが、聞いた話ではその能力故に疎まれたこともあったという。

その事についての是非を僕は問えないが、そうした経験がありながらも

それでも神器を交えた奉仕活動を行うアーシアさんは素直に凄いと思える。

 

 

――彼女が「(キング)」だったらいいのに――

 

 

……おっと。僕もここ最近の空気に滅入っているのかな。

浮かんだ考えを打ち払いながら、僕は松田君や元浜君

そしてアーシアさんやゼノヴィアさんと話をしている。

本当なら、僕は別のクラスなんだけど……

テロのお陰で疎開した人もいれば、犠牲になった人もいる。

そのおかげで、生徒数がガクッと減ってしまったのだ。

 

中には、ギャスパー君みたく引きこもってしまい出てこられない人だっている。

そのせいかどうかは知らないが、クラス統合が行われたんだ。

お陰で、今こうしてアーシアさんやゼノヴィアさんのみならず

松田君や元浜君とも何気なく話が出来ている。今の僕の数少ない心休まる時間だ。

……まぁ、昔ほどじゃないとは言っても松田君と元浜君はちょっとアレなところもあるけどね。

この辺は、更生に尽力してくれたセージ君に感謝かな。

 

ゼノヴィアさんは、聖剣を巡る騒動の時に来日してきた聖剣使いだ。

本当は相方の紫藤イリナって子が一緒にいたらしいんだけど、彼女は紆余曲折を経て

テロ組織である禍の団に入ってしまった。

なので、ゼノヴィアさんは天涯孤独かというと、そうでもない。

こっち側で、下宿先を見つけ修行も兼ねてそこの世話になっているそうだ。

勿論、イリナを探すって目的もあるそうだけど。

その下宿先にちなんで、今は「ゼノヴィア・伊草(いくさ)」と名乗っているらしい。

 

なにはともあれ。

テロによって一度は荒廃しながらも、復興の兆しを見せ始めている駒王町。

そして、そこに住む人達の一角である松田君や元浜君達とこうして話せるのは

ここ最近、心が荒みがちだった僕にとってはとてもありがたいことだった。

 

……ただ、もう取り戻せないものもある。

それは松田君や元浜君達と一緒にいた、桐生藍華さんだ。

彼女はテロの起きた初日に、召喚された悪魔によって強姦されてしまい

そのショックから、ほぼ寝たきりの状態になってしまっているそうだ。

松田君が幾度かお見舞いに行っているみたいだけど……

 

……「男だから」という理由から拒絶されているそうだ。

 

まぁ、理由は何となくわかる。

それでもめげずに桐生さんのお見舞いに行っている松田君は

ともすれば見ていられないレベルだ。

彼がセクハラじみた言動をしなくなったのは、そういう事情もあるのかもしれない。

「諦めることも肝心だ」などとは、僕も軽々しくは言えないかな。言うべきかもだけど。

 

「アーシア、そろそろ部活の時間じゃないか?」

 

「あ、もうそんな時間ですか? わかりました、行きましょう祐斗さん」

 

「……そうだね。それじゃみんな、また明日」

 

ゼノヴィアさんの指摘で、僕とアーシアさんは部室に向かうべく

皆に挨拶を済ませ、部室へと足を進める。

正直言って、僕は最近のオカ研の空気が好きじゃない。

お姉さんと住むという口実から退部した白音さんの判断も、ある意味正しいかもしれない。

そうなったある意味の原因のセージ君は当然、退部しているけれども。

……ま、彼の場合強引に出したところで

 

「こんな奴がいたら、場の空気を穢すだけだ。

 無理に俺を出したところで、誰も得しないだろうが」

 

……とか言って、抜け出そうとするだろうけど。

セージ君はセージ君で、頑固なところがあるのは僕も認める。

ただ、色々な情報をそろえて、客観的に見るとそれほど間違ってもないんだよね……

 

特に、セージ君を「人間の味方」として見た場合。

イッセー君に巻き込まれる形で転生悪魔になった時から

セージ君の身体の事情を抜きにしても、彼は人間の味方たろうとした。

部長に力を捧げるのではなく、自分の信じる正義のために戦っていたんだと思う。

眷属としては間違ってると思うけど、個人としてはセージ君の在り方は正しいだろう。

僕も、聖剣絡みでは私情を優先させたし。当のセージ君には釘を刺されたけどね。

……彼にだけは言われたくなかった。

 

……そこを踏まえた上でも、僕はどうだったろうかとふと思う。

神器を持っているってことは、もともと僕は人間だったってのは間違いない。

その人生が碌なものじゃなかったってのはあるけれど

だからって悪魔に心酔してしまえるものだろうか。

……いや、部長に拾われてから、セージ君と深く関わるまでの僕も

「悪魔は素晴らしい」って思想だったとは思う。

 

けれど、今冷静になって振り返ってみると色々不自然だ。

白音さんのお姉さんの事だって一方的な話だし

イッセー君を助けるだけなら病院でもよかったと思う。現にセージ君は病院に搬送されたし。

今の医療技術は、相当レベルが高いというし。

イッセー君が悪魔にならなかったら、セージ君はそもそも僕らに関わってない……

ってのは言い過ぎか。

 

この件はセージ君だったら

 

「『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』かどうかはともかく、レアな神器目当てに引き抜いた」

 

位は言いそうだし、実際そんなようなニュアンスの事を言ったって

前にイッセー君から聞いた気がする。

 

……やはり、悪魔って……

 

「……祐斗、祐斗!」

 

「……えっ、あ、はい」

 

考え事をしていたら、部長の声に呼び戻された。

今日は生徒会主催の部活動報告の日、らしい。それに部長と副部長が出ていたんだけど……

 

……まぁ、学校がこのありさまだから存続しているだけでも御の字、なのかな。

だけど……

 

「……困ったことが起きたわ。部費が下りないかもしれないの」

 

部長の言葉に、アーシアさんが心配そうな顔をしている。

テレビ電話越しに話を聞いているギャスパー君も、どうしたらいいのかわからない様子だ。

 

「部費が下りないって……どうしてですか? もしかして、私が活動を疎かにしてるから……」

 

恐る恐る、ベビーシッターと二足の草鞋を履いているアーシアさんが部長に尋ねている。

うーん。僕にはそれ以外の原因に思えるんだけどね。

実際、部長の話はアーシアさんの活動とは何も関係が無かった。

 

「活動報告の結果自体に問題はないの。ただ……セージ、小猫、イッセーと

 部員の数がごっそり減ったじゃない?

 それに加えて、今までは形だけの顧問を立ててやってきていたけど

 その顧問の先生も疎開の引率に回されちゃったのよ。

 今のオカ研は、部員も少ない、顧問もいないと『部としての体裁』を保てない状態なのよ。

 だから、部費が下りないってわけ」

 

「……最悪、同好会に格下げになるどころか解体も免れない状態ですわね」

 

部として学校に認められるには、それ相応に条件がある。

今のオカ研は、それすら満足に満たせる状態ではなくなってしまったという事だ。

そのことについて、僕は衝撃を受けこそしなかったものの、寂しさは覚えた。

……イッセー君とセージ君が入る前、その頃のオカ研を知っているとどうしても、ね。

 

『か、解体ですかぁ……?』

 

テレビ電話の向こうで、ギャスパー君が不安そうに声をあげる。

学校には出てきていないが、オカ研にはこうして顔を出している。

テレビ電話での会話が顔を出している、の範疇に入るのかどうかは微妙だけど。

……まぁ、ギャスパー君は頭もいいしなんだかんだで要領の良さは持っているから

学校に通わなくても何とかなってそうなんだけどね。

 

「勿論、そんなことはさせないわよ」

 

「けれど部長、そうは言っても具体的にはどうするつもりですの?」

 

部員を集める? いや、既に部長の駒王学園における求心力はゼロに近い。

セージ君に聞いた話だけど、かなり陰湿ないじめもあったらしい。最近は知らないけど。

そんな部長が声をかけたところで、来やしないだろう。

まして、一学期ならともかく二学期で、かついろいろ忙しい時期に部員が来るわけがない。

その忙しさの原因たる粗方の行事は中止が決定したそうだけど。

 

とにかく。今オカ研に追加部員が来るなんて事は絶望的だ。

幽霊部員でもいいから増やすべきなのだろうか。

幽霊部員ならセージ君や白音さん、ゼノヴィアさん辺りに協力を……ダメかな、やっぱ。

ダメもとで、提案してみることにはするけど。

 

「部長、この際幽霊部員でも……」

 

「……それしかないのかしらね。祐斗、当てはあるの?」

 

僕は正直に、セージ君達の名前を使わせてもらう事を提案した。

僕も、これくらいしか思い浮かばないからだ。

松田君なら来てくれる……と思ったのは昔の話だ。

彼は悪魔に対する悪感情が強すぎる。こっちに来るべきじゃない。

元浜君も白音さんって餌が無い以上、来やしないだろう。

……それに、白音さんはどうもセージ君に……おっと、下世話か。

 

「説得は僕かアーシアさんから頼んでみます」

 

「小猫はともかく、セージはその方がよさそうね。

 ゼノヴィアもアーシアの頼みならそう無碍にはしないと思うし……」

 

「そうなれば、今度は顧問の先生の問題ですわね」

 

部員の問題はセージ君達には悪いけどちょっと協力してもらおう。

別に顔を出せって言ってるわけじゃないし、いいよね……多分。

まぁ、何かあったら僕が動くつもりだし。それは負うべき責任だ。

それに、セージ君達だって自分の都合で動いているんだ。

ちょっとくらい、こっちの都合に合わせてくれてもいいじゃないか……ってのは

意地悪な考え方だろうか。でもやるけど。

 

部員問題が片付いても、もう一つ問題があった。

顧問の先生の問題は、少なくとも僕にはどうにもならない。

オカ研の事情――即ち、僕らの正体を知っており、かつ協力してくれそうな存在が

薮田(やぶた)先生位しかいない。しかし薮田先生は生徒会の顧問だ。

それ以外にも仕事を抱えているようだし、これ以上の掛け持ちはしてくれないだろう。

 

「そればかりは……どうしたものかしらね……」

 

頭を抱える部長。僕も、他のみんなもどう声をかけていいのかわからない。

こればかりは、解決方法が思い浮かばないのだ。

みんなして頭を抱えているとき、部室のドアをノックする音が響く。

 

「朱乃、今日誰か来る手筈になっていたかしら?」

 

「いえ、特に聞いてはいませんけど……」

 

予期せぬ客人、か。一体誰だろうね?

疑問に思っていると、部長は外の主に対して入室を促す。

さて、どんな人がやって来るのか。

 

……敵じゃないと、いいんだけどね。

 

「失礼するよ。君がリアス・グレモリー君だね? 兵藤君から話は聞いているよ。

 僕は布袋芙(ほていふ)ナイア。今度、駒王学園に赴任することになった古文の教師だ。

 よろしく頼むよ」

 

「イッセーから? それはそうと、その古文の先生がオカルト研究部に何の用かしら?」

 

「フフッ、言わずともわかると思ったけど……まぁいいや。

 単刀直入に言おう。僕はオカルト研究部の顧問になりに来たんだ。

 兵藤君のきっての頼みでもあるからね。部長の力になってほしい、って」

 

目の前に現れたのは、紫色のパンツルックのスーツに身を包んだ

部長もかくやと言わんばかりのスタイルを誇り、かつそれを強調している黒髪の女性。

イッセー君がこの場に居たら、絶対に食いつきそうなタイプだ。

 

……あれ? でもこの人、イッセー君とは知りあいみたいだけど……?

 

「そういえば、うちにイッセーの部屋を用意してくれって

 お父様に頼み込んだ人間がいたって聞いたけど……あなたの事ね。

 それにしてもイッセーったら、退学になっても私の心配だなんて……」

 

「人間界じゃ後ろ指さされる存在になってしまったけれど、冥界じゃそんなことは無いしね。

 退学という結果は残念だけれども、彼の意思は間違いなく僕が継いでいるよ。

 ……ああ、知っていると思うけど彼は無事だからね?」

 

……うん? いくらイッセー君でも、未成年という事で実名報道はされてないはずだけど?

なのに、なんでこの人はイッセー君の顛末を見てきたことのように知ってるんだ?

イッセー君ならスルーしかねないけど、この人……なんだか胡散臭いな……

 

「僕としては、学校を追い出されてしまった兵藤君に、学校の様子を伝えられる。

 君達は、僕という顧問教師を手に入れられる。どうだい? 悪くない提案だと思うけど」

 

嘘か真か、目の前の女性はオカ研の顧問になると言っている。

いくらイッセー君との接点があるって言ったって、いきなり出てこられても……ねぇ?

 

しかし、それどころかこの女性はさらにとんでもないことを言ってのけたのだ。

僕も、流石に耳を疑った。

 

「それでも信用ならないというのなら、僕を眷属にするといい。

 これでも、ちょっとした神器を持っているし、君より長生きしているんだ。

 力でも、知恵でも君の役に立てると思うよ?」

 

「……これは驚いたわ。自ら悪魔の眷属になりたいだなんて、物好きもいたものね」

 

僕もそう思う。けれど、セージ君に言わせれば「そう仕向けているのはお前達だろうが!」

位は言いそうなのが、なんともね。

 

「で、僕を眷属にするのかい? しないのかい?

 僕を眷属にすれば、オカ研の立ち回りの工面をしてあげることくらいは造作も無いよ?

 神器は……そうだね、ここで披露すると色々とうるさいから、後で開けたところに行こう。

 そこで、僕の実力をお見せしようじゃないか」

 

「……ふーん。中々の自信じゃない、あなた。それに、説明の手間が省けて助かるわ。

 いいわ。ちょうど私も顧問の先生が欲しかったところなの。

 眷属はあなたの力を見極めさせてもらってからにしてもらってもいいかしら?」

 

部長の言葉に、布袋芙ナイアと名乗った女性は首肯する。

ただ、その時の彼女の金色の瞳は……

 

 

……途轍もなく悍ましく、邪悪なものに僕には思えた。




これでも本文6000文字ちょいです。
多少のオーバーはご容赦のほどを……

>白音が触れられてないけど
下級生なので、そういう意味では接点が薄いです。ギャスパーは引きこもってますし。
一応「マスコット枠をいじめるとか許されざるよ」という意見も少なくないです。
今でこそ安住の地を得ていますが、セージと黒歌がいなかったら
ギャスパーどころか今のリアス、イッセー以上に悲惨なことになってたと思います。

>ナイアさん活躍しすぎ問題
……実は、別キャラを派遣しようとも思いましたが
適任が思い浮かばなかったのでナイアさんに出張ってもらうことになりました。
とばっちりで店番に返り咲きさせられた伯爵は泣いていい。

因みに候補として挙がっていたのは黒衣の男。
モチーフを考えたら和平結んでるわけでもない拙作で
ナイ神父をオカ研の顧問にするのは無茶があると思いましたので。

……「虚憶」の再現という意味ではこちらの方がよかったかもしれませんが。
ナイアさんでもイッセー周りなら「虚憶」に近づけることは可能かもしれませんが。
異性関係的な意味で。

つまり、イッセーだけでなくオカ研そのものにニャル様が関与するのは
不可避の状態でした。これも兵藤一誠って奴の仕業なんだ。割とマジで。

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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