ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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A dear and abominable memory. Bパート

――映像は、先ほどの続きを映し出していた。

ペルソナ様遊びをやった数日後か、セージと明日香は他愛もない会話を交わしていた。

 

「――じゃあ、セーちゃんの夢にもその変なおじさんが出てきたって事?」

 

「うん。名前を聞かれたから、答えたけど。

 なんておじさんかは、忘れちゃった」

 

セージのその言葉を聞いた明日香は、険しい表情でセージに詰め寄ったのだった。

 

「ダメよ! 知らない人に名前を言ったり、口をきいたりしちゃダメ!

 お母さんやおじいちゃん、おばあちゃんに教わったでしょ!?

 お姉ちゃんとも約束して! 攫われちゃうかもしれないんだから!」

 

「う、うん……わかったよ……ごめんなさい、お姉ちゃん」

 

その血相の変わり具合はただ事では無かった。

思わずたじろぐセージだが、この場限りかもしれないとはいえ自分の言う事に従ったことに

明日香は安堵する。

明日香のいう通り、誘拐などの犯罪に巻き込まれることを未然に防ぐという意味では

知らない大人とみだりに話すことは避けるべきである。

しかし、セージの場合は夢での話である。夢だからいい、と言うものでもないだろうが

やはり、不用意な行動は危険に繋がりかねないという意味でも

年長者として、神経をとがらせた部分はあるのだろう。

 

 

「……やけに拘束してきますね?」

 

「……今思えば、そういう見方もあるわな。

 だが、姉さんには姉さんなりに責任があったんだと思う」

 

映像を見ていたアーシアが、思わずセージに問いかけてくる。

この時セージは、やたら干渉してくるリアス・グレモリーと言う存在を朧気に思い浮かべていた。

勿論、全く接点のない両者ではあるのだが。

しかし、思い返してみると強引さにもなりかねない引っ張る力などは

明日香はセージの知る限りのリアスにも通ずるところはあったのだ。

勿論、明日香はセージの知る限り人生を狂わせるほどの束縛をセージにかけた……訳では無いと

セージは思っているのだが。

 

 

「うぜーんだよ、木偶の坊!」

 

「悔しかったらやり返してみろよ、うすのろ!」

 

再び映像が切り替わる。このペルソナ様遊びを境に、セージがやけに行動的になったり

攻撃的な言動の片鱗が見え隠れしてくるようになっていたのだ。

こうして虐められている最中にも、反撃の機会を伺おうとじっと耐えていた。

攻撃を良しとしない耐久ではなく、いつか仕返しをするための耐久に

いつの間にかなっていたのだ。

 

「……けっ、つまんねーの。言う事もやる事もつまんねーんだよ」

 

「また泣きつくか? 『お姉ちゃーん』、ってよ!」

 

「…………」

 

幸い、この場では流血沙汰になることもなく、大きな騒ぎにはならなかった。

ただ、その時のセージが嫌な思いをしただけであって。

しかし、爆発するのもそれは時間の問題でもあった。

 

 

(……絶対ぶっ潰してやる)

 

 

それは、最悪の形で堰を切って溢れ出すこととなった。

切欠は、元々セージを標的にしていたいじめの矛先が

当時中学に進学していた明日香の側に向いたことによる。

セージと共に過ごしている時間の長い明日香であった。

セージをいじめから助けたことも少なくない。

そうなれば自然と標的にされてしまう。

それをセージに悟られまいと振舞っていた明日香だったが

偶然セージに現場を見られてしまい――

 

 

「せ、セーちゃん!?」

 

「なんだ、あのうすのろの木偶の坊じゃねーか。関係ねえだろ、あっち行ってろよ」

 

「……お姉ちゃんを…………いじめるな!!」

 

次の瞬間、セージの体から青白いオーラが迸り

明日香を虐めていた子供達を残らず吹き飛ばしたのだ。

しかもそれに飽き足らず、一番明日香を虐めていたリーダー格に対して馬乗りになり

近くにあった石――それも子供が持つには些か重い――をガンガンに叩きつけていたのだ。

 

「セーちゃん、やめて!!」

 

明日香の制止も聞かず、セージはひたすらに虐めリーダー格を殴り続けていた。

そのセージの背後には、うっすらと異形の姿が見えていたのだ。

 

 

(あれは……ペルソナ!? まさか、俺は……ペルソナを発現させたことがあるのか!?

 いや……ペルソナ様をやったって事は出来てもおかしくないが……

 てっきり、あの時フィレモンが言ったように神器(セイクリッド・ギア)に変異したものだとばかり……)

 

 

映像のセージがその手を止めたのは、相手の顔が血まみれになり、残りのメンバーも

骨折や切り傷などの少なくない傷を負った段階であった。

 

「セーちゃん……どうして……」

 

「お姉ちゃんをいじめてる奴が……許せなかったんだ……

 夢の中でおじさんが……力をくれるって言ったから……

 お姉ちゃんを助けたいと思って……僕は……僕は……」

 

幼いセージには、ペルソナの力は制御しきれなかったのだ。

大切な人を守りたいという一心で感情を爆発させて発現したペルソナの力であったが

結果は子供の喧嘩の範疇を越えた負傷者を出すことになったのだ。

 

当然、その結果セージは親同伴で相手の家族に謝罪をさせられることとなったのだが

その時も、セージは頑なに謝ろうとはしなかった。

 

――お姉ちゃんをいじめた奴に、ごめんなさいなんて言いたくない!

 

結局、明日香まで謝罪の場に出る羽目になってしまい

その時にようやくセージも謝罪の言葉を口にしたのだが

それ以来、セージと明日香との関係に微妙なギスギス感が生まれてしまった。

 

幸い、明日香に出会う前のような風には逆戻りこそしなかったが

以前ほどセージも明日香にべったりとはしなくなっていた。

 

時に、セージも小学六年への進級を控えている頃であった。

年頃もあるのかもしれないが、この一件も少なくない影響を与えていたのだ。

 

 

 

「……もしかして……セージさんがお姉さんに拘るのって……」

 

「…………あの映像は実際に起きた事だってのは言っておく。

 ペルソナで半殺しにしたことについては記憶が無いが……多分、母さん辺りに聞けば

 本当だって返事が返ってくるかもしれない。

 謝罪の場で謝らなくてごねたのは……なんか、覚えがある」

 

苦々しくセージは語るが、やはりその口は重く、空気もつられて重苦しいものになっていく。

しかし、この場の誰もそれを打開する言葉を持たなかった。

空気を読まない傾向の強いイッセーでさえも、その真意はさておき一切の口を開かなかったのだ。

 

(……そうだな。この分だと……この後の……「あの時」も暴いてくるかもしれない。

 あれだけは……知られたくはない……

 自分の手で……姉さんを…………した……「あの時」だけは……

 

 ……だけど、ここまでに白音さんがいないとなると、最悪最後の泉の所になるか……

 そうなると……白音さんも、その光景を見ることになりかねないか。

 白音さんには、殊更に知られたくないけど……これは……行くしか、ない、か)

 

思い詰めていたセージであったが、それはものの見事に顔に出ていた。

あまりにも深刻なセージの顔を見て、思わずアーシアは一度引き返すことを提案するが――

 

「…………いや、行こう。ここまで来て白音さんが見当たらないとなると

 この地図で言う最後の泉がある場所……最深部しか心当たりがない。

 さっきの落とし穴地帯の下も探してこれだ。となれば後は、もう……」

 

「……最後の泉の場所、ですか」

 

地図が示す最後の泉の場所は、小部屋の隣の坂を下った先の一本道の突き当り。

それこそがこの岩戸山の洞窟の最深部であり、そこに最後の鏡の泉がある。

現時点で崩落などが起きている個所と言えば、足場の悪い落とし穴地帯の

下層にあたる位置へと続く坂道が崩れ落ちていた位だ。

仕方が無いので、そこは蝙蝠姿のギャスパーやドローンドロイドで調べていたのだが

やはりと言うか、そこに白音はいなかった。

 

消去法で、最後の鏡の泉のある場所にいるのではないか。

いるとするならば、そこしか思い浮かばない。

対抗として小部屋の存在があるが、ここに来るまでに似たような小部屋がいくつかあったが

そのどれもがタイムカプセルじみた空き箱しか置いてない、何の変哲もない小部屋だったのだ。

ここに来て、白音がそんなところにいるとも考えにくい。

 

「……一応、最後の小部屋も調べてみるが、それでもそのすぐ先が鏡の泉だ。

 そこを調べない理由は無いだろ……」

 

セージにしてみれば、これ以上鏡の泉に接触することで自分の過去を暴かれるのは避けたい。

この泉は元来過去ではなく心を映すものだが、セージが過去の事に囚われているために

必然的に泉は過去の事を映し出す。セージにとっては隠したい過去を。

 

「あの……僕達で先行して調べますか?」

 

「下手なことはやめたほうがいいかもしれない。

 向こうは『俺と兵藤』を不可欠として要求してきているんだ。

 その要求を満たさない場合、白音さんが本気で危ない。

 

 ……今ほど、俺の読みが外れて欲しいと思っていることは無いよ」

 

ギャスパーの提案であるが、これもそもそも犯人の要求を満たさない形になってしまうため

人質の安全を顧みて、渋々ではあるがセージは却下した。

 

「セージ、怒られるのを承知で言うけどよ。

 ここに小猫ちゃんがいるかもしれないって言ったのはお前だろ。何渋ってんだよ。

 お前も来なきゃ、小猫ちゃんを助けられないだろ」

 

「…………ああ、そうだ。全く言い返せない」

 

イッセーにも促される形で、セージは先に進むことを決心した。

その心には、未だ迷いと恐怖を抱えたまま――

 

 

下り坂の前の小部屋も調べてみたが、やはり空の小箱がぽつんと置かれているだけで

白音は影も形も無い。

いくら白音が小さいからって、それを隠すようなスペースがあるわけでもなく

何もない事を確認したセージらは踵を返し、松明が照らす下り坂を降りていく。

 

この先は一本道。

このまま進めば、ただ最後の鏡の泉がある洞窟の最深部に到達するのみだ。

最後まで、インベスもアインストもデーモン族も出なかった。

 

しかし、鏡の泉があることを示す立て札が見えてきた辺りで

突如として、セージの意識の中に違和感が走る。

 

――何者かの気配を感じる。

 

しかし、その気配は今まで感じた誰のものでもないどころか

まるで、鏡で自分の姿を見ているような錯覚さえ覚えた。

 

「…………え?」

 

同様に、違和感を覚えたのはアーシア。

彼女も何者かの気配を感じ取ったのだが

その気配は近くにいる長身の同い年の少年によく似ていた。

まるっきり同じではないというあたりに、一応の区別はついているようだが

注意深く感じ取らないと、同じと感じ取ってもおかしくは無い。そんな気配。

 

「セージさん……ここに、います……よね?」

 

「何言ってるんだアーシア。さっきから偉そうな態度で先導切ってただろ」

 

イッセーがそんなアーシアの違和感を気のせいと切って捨てるが

アーシア自身も、そして何より当のセージ本人が違和感を覚えている。

最も、そのセージは違和感の正体に感づいてはいるようだが。

 

 

(…………そうか。やっぱりイゴールが、ベルベットルームの人達が

 言っていたのはこう言う事だったのか。

 それなら、今までの色々と不可解な話も合点がいく。

 やはり、犯人は…………!)

 

 

気配の正体、その違和感を確信に変えるためにも

意を決し、セージ達は最後の鏡の泉がある広場へと足を踏み入れたのだった。




>ペルソナ様遊びの結果
セージは名乗れたものの、力を使いこなせずに暴走し傷害沙汰。
明日香姉さんは名乗らなかった様子。
この辺はペルソナ2の達哉と詩織を意識してる部分はあります。

それにしても。
あまりセージもイッセーの事を言えない部分がちらほらと。
いくら子供の頃のこととはいえ、相手を半殺しにして謝罪も無しは……ねえ。
結果お姉ちゃんとの関係ギスってるし。

>イッセー
珍しく正論言ってますが、別に偽者にすり替わってるとかはないですよ。
これもまた前振りの一部ではありますが。

>最奥の気配
恐らくもうお気づきの方も多いかとは思いますが、とりあえずここで引きという事で。


尚、次回はまた別の個所での話になる予定です。
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