夏風邪には気をつけましょう。
全然治んないので……。
3バンド合同ライブがあって、あこを泣かせてしまった次の日。
今日はゴールデンウィークの間にある平日だ。本当はサボりたかったが、一人暮らしをする条件として学業を疎かにしないという約束をしているためサボるわけにはいかず、学校へと登校した。
教室に入るといつもと少しだけ違う雰囲気だった。
彩が少し気まずそうにちょこんと席に座っていた。そして俺と視線が合う。瞳から伝わってくる戸惑い、罪悪感、気まずさ…そして少しの希望。しばらく見つめ合っていたが彩が視線をそらし、首を左右に振ってまた下を向いた。
その姿を見ていると自分自身を殴りたくなった。俺は被害者ぶっておきながら結局は事務所に協力したバカだ。だから、今の俺は彩を…パスパレのみんなを慰めたり、話しかけたりすることは許されない。許されたとしても俺が俺を許さない。
俺が席に座ると紗夜と燐子が俺に話しかけようとして口を開けて、しばらくしてまた閉じる。それを見て感じた。
俺は…………だ。
そんな気まずい時間も終わり、放課後となった。誰とも話すことなく放課後を迎えた。
「あ、そうだ……事務所から呼ばれたんだっけか……。行くしか……」
「あ、ま、待って!悠君!私も一緒に行く!」
「彩……?」
「私も辛いけど…悠君はもっと辛いんだよね…?今の悠君を一人にしておけないよ」
「違う……。俺は知っていて事務所に協力したんだ」
「だとしても…だよ。なんと言われても私は悠君のそばにいるよ…」
「そうしたら彩に迷惑が……」
「関係ないよ。だって私は悠君の先輩なんだから」
「……先輩だから?」
「そう、先輩だからだよ。私だけじゃないよ。麻耶ちゃんやイヴちゃん、千聖ちゃん…それに悠君と同期の日菜ちゃんも。みんな悠君の仲間。知り合ったばかりかもしれないけど、それでも仲間なんだよ」
「…うん。ありがと。ちょっとだけ後ろ向いててくれない?」
「どうして?」
「男は涙を見られたくないんだよ……特に可愛い女の子の前では」
「悠君……。良いよ、好きなだけ泣いちゃっても」
「はずかしいなぁ、俺……」
「ふふっ」
彩に慰められた俺は年甲斐もなく大泣きした。恥ずかしがったが、それよりも彩が救ってくれたことが嬉しかった。
「じゃ、行こっか」
「そーだな」
〈芸能事務所〉
「すみません、わざわざお越しいただいて…」
「いえ、別に…」
「案内しますね。ついてきてください」
「わかりました」
〈会議室〉
「こんにちはー」
「来てくれてありがとう、ほら座って座って」
「はい」
俺と彩が会議室に入ると他のメンバーが既に揃っていた。
「さてと、今日集まってもらった理由は一つ。昨日のライブの話だ」
「……」
「すまなかった!機材トラブルで音源が途切れてしまった……」
「そう…でしたか」
「いや、それだけじゃない。音源が途切れた後、彼女たちが演奏をしようとしたところを僕個人の問題で止めてしまったんだ……」
「えっと…理由を伺っても?」
「構わない。……少ししか練習していない中途半端な演奏を聴かせたくはなかったからだ」
「………」
「僕がもっと考えて行動するべきだった。君にも迷惑をかけてしまったね…。僕にできる罪滅ぼし、償いは一つ。…僕個人の立場を捨ててでも彼女たちをキチンとした形でバンドデビューをさせること……。そしてそれを一刻も早く達成させることだ」
「本当に…できますか…?」
「やる。やらなければいけないんだ。それが僕のケジメだ」
「……そうですか。わかりました。俺も手伝います」
「本当かい!?有難い。細かい話はまた後でしようが」
「はい」
「そういうわけだ、Pastel*Palettesのみんな…すまなかった。必ず、必ずなんとかしてみせる!」
「プロデューサーさん……」
「……自分は信じています」
「うーん?よくわからないけど…このままじゃ私も嫌だなー」
「……武士の情けです、」
「………そう、ですか……」
「今更だけど申し訳ない。もう一度、バンドとしてライブが出来るよう色々とやってみるよ。各々、引き続き楽曲の練習頼んだよ」
「「「「はい」」」」
「白鷺さん?」
「…あ、はい。すみません、少しボーッとしてました」
「そう?ならいいんだけど…」
話が終わり、解散となった。俺とプロデューサーさんはそのまま残り、先程の話の続きをした。
「協力するとは言ったものの…何をすれば良いですか?」
「そうだねー。いっそ、君もアイドルになっちゃう?」
「策としてはアリですね……策としてはですけど」
「だよねー。じゃあ、ウチの事務所のお抱えタレントみたいなのはどう?」
「具体的には?」
「テレビやラジオなどのメディア関係や声優とかライブとかいろんなことをする仕事」
「うわぁ、大変そう」
「人気が出てきたらね」
「……これが一番早く済む方法なんですよね?」
「そうだよ。そして一番確実な方法」
「いいですよ。引き受けます。そのかわり給料弾んで下さい」
「重要な役割をしてもらうんだ、それくらいお安い御用だよ」
「話は変わりますけど…、千聖のこと引き留めてあげてください」
「あ、気づいちゃってたんだ?」
「もちろん、友達…仲間、ですから」
「ま、大丈夫だよ」
「どうしてです?」
「このまま辞めたら彼女のプライドが許さないだろうからね……」
〈千聖side〉
「私は……ここままじゃ…!」
「女優『白鷺千聖』というネームバリューが損なわれるのもそうだけれど……今のままじゃ私はお荷物で終わってしまう。それに、悠にも迷惑をかけてしまってる……」
「私のせいで演奏させてもらえなかったのだもの。……私がもっと真面目に取り組んでいれば…。いえ、それよりも私がすべきことをやるのよ。これだけはネームバリューのある私にしか出来ないこと……。やるしかないの…!」
〈side out〉
〈日菜side〉
千聖ちゃんの様子が気になって見に来たけど、辞める気は無かったみたい。よかったー。
「やっぱり、あたしには他人の感情がわからないみたいだよ…。もう少しで余計なことしそうだったなー。……あたしがもっと凡人だったらよかったのに……。」
「うん、考えても仕方ないや。あたしは他人から見える『天才』をあたしなりに演技するだけ……」
〈side out〉
〈悠side〉
こんな俺に優しくしてくれた彩には感謝してもしきれないな。
恩返し、といえば大袈裟かもしれないけど…今後、彩を助けていきたい。
今、辛いのは彩も同じ筈だから……。
「夢を撃ち抜くまでは終われない。こんな俺でも夢みていいんだ。BanG_Dreamの名の下に……」
頭を冷やした俺はRoselia、アフグロ、ザラのメンバーにメッセージアプリで謝ってなんとか許してもらえた。
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