ナティシア ー平凡幼女はハードモードな世界を生きるー   作:かげはし

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第一章 狂気に堕ちる不純物たち
0話 転生したら女だった


 

 

 

 

 平凡な人生を生きて、平凡な見た目のまま、ことごとく平凡な人生を生きる。そう思ってしまうほど、俺はいろんな人間の平均値に立っていた。

 

 身長は低くなく、それほど顔は悪くないはず。

 だがしかし、何処にでもいるような『平凡顔』と言われるために彼女なんて出来たことはないものだ。一応義理チョコは貰えるけれど、長年みんなからあと一歩と惜しまれ過ぎてもう彼女とか考えるのを止めた。別に拗ねてる訳じゃない。

 高校一年の俺は学校で平均値の成績を残しながらも、何も問題を起こさずに毎日を過ごしているはずだったんだ。

 

 

「お待たせ。急に呼び出しちゃってごめんね」

「いや、別に」

 

 

 そんな平凡な俺にとっての唯一のあり得ないことといえば、この幼馴染だが。

 文武両道、いろんな意味で優秀な美人。これからの将来を約束された幼馴染が俺を公園に呼び出した。太陽が沈んだ夜の時間帯の公園に利用する人はほとんどいない為、俺と幼馴染の二人っきり。

 それにドキドキするような関係ではないが、何故かあいつは自分の……学校中の男子が下心丸出しの目で揉みたいと密かに言ってしまう程大きな胸を両手で祈るように押さえて口を開く。

 

 

 

「あのね……突然だけど私について聞きたいなって思って」

「はい?」

「私の事どう思っているのかなーって……」

 

 

 何を言っているのだろうかこの幼馴染は。

 こいつはもう俺がどう思っているのかは知っているはずだろう?

 

 ただの幼馴染。俺にとって妹のような存在。

 ずっとずっと一緒にいた。離れがたいが彼氏が出来たら祝福して、そんで大人になってこいつが結婚したらいつか俺が親友としてスピーチぐらいはするんだろうなって関係のはずだろう。

 家族であるということはちゃんとこいつも理解しているはずなのに、今更何を言っているのだろうか。

 

 しかもいつもなら俺の部屋に勝手に上がってきて宿題を共にやったり遊んだりとするはずなのに、こんな夜中に家から遠い公園まで呼び出しておいて……。

 

 

「……なあ、そんなくだらねーことで俺を呼んだのか?」

「く、くだらなくなんかないもん! 私にとっては重要だもん!」

「もん、じゃねーよ馬鹿」

 

 

 いきなり何を言ってるんだろうこいつは。しかもこんな夜に家じゃなくて公園に呼び出しておいて他愛ない話でもする気かよ。電話で良いだろそういうのは。

 ってか、こんな場所に呼び出すんだから普通友人関係で悩んでるとか、幼馴染を見る男子の目が変態過ぎてどうにかしてほしいとかそういう話かと思ってたんだが。

 

 ジト目で見つめていると何故か幼馴染は頬を赤らめて焦ったように言う。

 本当にこいつどうしたんだ? 彼氏でも出来たのか?

 

 

「あのね、違うの。わ、私のこと好きかなーとかそういうんじゃなくて。いやそうだけどそうじゃなくって。ずっと一緒だったからそろそろいいんじゃないかなーとか、まだ駄目なのかなーとか……」

「どっちだよ」

 

「ああもう! だから私は君のことが―――」

 

 

 

 何を言うつもりなのか。別の重要な話でもあるのか。そう話を促そうとしていて。

 

 

 それは有り得ないほどに急だった。

 突然の痛みと、聞いたことのない冷たい声が俺に襲いかかったのだ。

 

 

 

「死ね」

 

「え?」

 

 

 ドスリ、という鈍い音と共に広がる冷たくも鋭い痛みが身体中を蝕む。

 立っていられない衝撃。悲鳴をあげそうになって……しかし、口から出てきたのは胃から込み上げてきた吐血だった。

 

 

「な……ん……っ!?」

 

 

 現実的ではない激痛にゆらりと身体が崩れ落ちる。

 そうしてようやく見えたのは、見知らぬ誰かが俺に向かって包丁で刺そうとしている場面だ。

 

 

「っ――――――!」

 

 

 痛みの発生源は包丁だった。殺人鬼が包丁を手に持って今度は俺の腹に突き刺して来たのだ。

 

 身体に包丁を突きたてられて、俺の身体から血が噴き出した。

 だが奴はそれだけじゃ足りなかったんだろう。倒れた俺の腕を引っ張ってその場でのしかかり、何度も何度もその胴体に突き刺してきたんだ。

 

 抵抗なんてできなかった。ただ幼馴染に「逃げろ」としか言えなかった。それも込み上げる血と共にか細く言うしかなかったもの。

 目の前を見ると幼馴染が恐怖と悲痛の叫び声をあげている声が遠くから聞こえた。俺の名を必死に呼ぶ声が聞こえた。その後何かが騒ぐ音が耳鳴りのように響く。鉄臭さが鼻を通って吐き気を促し、奴は満足したのか俺の腕から手を離した。

 

 刺された場所が悪かったのだろう。

 身体中から力が抜け、一気に視界が黒く染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこしか覚えてねえんだよなぁ……」

 

 

 おぼろげの記憶にため息しか出てこない。

 以前の俺とは比べ物にならないほどの小さな手を天井に掲げ、ごわごわとしているが寝台よりも柔らかい藁に寝転がりながらもため息をつく。

 俺の口から発せられる声は少女のように可愛らしくあるもの。身体全体も小さく、以前では考えられないほど燃え広がるような真っ赤な髪が藁に広がっていく。あの刺された身体とは違う幼くも傷ひとつないものに、またため息が込み上げる。

 

 あれはきっと通り魔だった。

 誰でもいいから誰かを殺したかったのだろう。ニュースとかでよくやっていた事件を思い出してはため息が込み上げる。

 俺の知らない身近な殺意。不幸にもその犠牲になったのが俺だっただけのこと。

 

 

(あいつは無事に逃げられたかな……)

 

 

 逃げ切れたと思いたい。俺を襲った奴は頭がおかしい通り魔だと思うから。

 あいつは俺と違っていろんな意味で恵まれてる。いろんな人に愛されている。

 

 幼馴染は家族のような存在でもあるから、生き延びて幸せになってほしい。

 

 

「あー。でもなー」

 

 

 刺されるまでの記憶。すなわち以前の男の俺は前世と考えよう。

 誰が見ても幼女の身体。それも生まれつき真っ赤な髪が受け入れられるような世間。性転換しただけなら良かったが、それ以外にも問題はあった。

 

 

「アルメリア! 遊んでないで早く手伝いなさい! でないとモンスターの森に放り出すわよ!」

 

「はーい! 分かったよ母さん!」

 

 

 ここは、ゲームのようなモンスターがいる異世界。そこに俺は性転換して幼女として生まれ変わったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

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