ナティシア ー平凡幼女はハードモードな世界を生きるー   作:かげはし

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16話 レベル上げと交渉をしましょう

 

 

 

 

 ホームの基盤は出来てきている。あの捕まえた連中は檻があった方の一つの部屋に押し込んでおいたし、そこは通常であれば滅多に行くような場所じゃないから他のモンスターになった子供達に悪影響はないだろう。今の時点で悪影響がどれぐらいなのかとかわかんねえけど。

 

 

 

「ホームをもっと有効活用できたらいいんだけどなぁ」

「何を言うんだい。現段階でもいろいろとやってるじゃないか」

「そうなんだけどさ」

 

 

 施設は洞窟を利用し、入り口付近だけ加工をして天井をぶち抜きもっと大きくした建物だ。加工した部分は木造建ての三階までの建物。

 一階は檻やら実験施設やらがあった場所。二階は複数の住居部屋と実験施設を見るための観覧広間。そして三階は今となっては俺達が会議の場所でもあり、様々な実験結果が置いてある資料室でもあった。

 資料室は必要なもの以外はいらないとグレンの炎で全部燃やしてしまったし、いろいろと利用されてない部屋が多くある。そこは後で考えよう。

 

 そして一階にある手が加えられてない洞窟の奥にはあの鍾乳洞。

 一部の天井に穴が開いていて、太陽の光が入ってくるあの場所を利用して畑を作っていきたいと思った。俺達にとってはいろいろとあった過去だけど、どうせならそこを利用してしまえばいい。

 それをルクレスさん達に相談したら、彼らは快く頷いてくれた。

 

 土を入れて耕し、畑の基盤を作っていく。食料庫からあった種を入れて、水を与えて育てていく。出来るかどうかを見極めるために育てる野菜は村で育てていた芋にした。食料が豊富にあっても、元に戻れないのならここにいるしかない。だからいつか食料がなくなるかもしれないしな。

 畑については意見はしたが、詳しい状況についてよく分からない部分もあったからみんなに任せることにした。

 

 一番大切なのはメリア大森林にいるであろう連中と対峙すること。そしてドラゴンと話し合いだ。

 でもその前に……。

 

 

「ねえルクレスさん。本当にモンスターは進化することがあるんだな?」

「ああ。レベルという概念も、スキル能力もある。人間には進化というものがないが、モンスターはそれを行って強くなる奴らがいるよ」

「……なら、できるかもしれない」

「そうだね。とりあえず地図を……」

「アぁ」

 

 

 リザードマンが出してくれた地図を広げてその一点を見る。

 俺達がいる場所はメリア大森林の東の橋。国家に近い位置にある場所だ。森の真ん中にドラゴン―――――俺の故郷の村がある。

 ドラゴンに話せるのならば、先にやれたら……。

 

 

 

「僕の蟻と蜘蛛達に森の全体を見てもらった。それと空を飛べる蝙蝠……ブラックバットになった仲間たちの中で長距離を飛べる子に視察しに行ってもらったよ」

「ドラゴンは?」

「いなかったそうだ」

 

「……そうか」

 

 

 どういうことなんだろうか。何であいつはいない?

 いや、怪我をして身体を休めていたらしいから、俺がここにきている間にどこか別の場所に向かったかもしれない。もしかしたら宝玉を取り戻しにどこかへ行ったのかも。

 

 ずっと俺の村近くにいると思っていた。だから焦りがある。

 ドラゴンは何処かにいるはずだけれど、見つからなかったら意味がない。あいつの宝玉がルクレスさん達を変えたんだから。

 

 

「……アルメリア、ドラゴンは後回しにしよう。まずは宝玉だ」

「うん……そうだな。そのためにやらないといけない……けど、見つかったのか?」

 

 首を傾けてルクレスさん達を見ると、近くで一緒に見えていた透き通った青色のスライムであるアリスさんがそのどろどろの手を伸ばして一点を指す。

 

 

「ここニはオークの群レガあるノ。レベル上げなラここガ最適よ」

「なるほど……オークか……」

「まあ、女子供は行かない方が良いかもしれないね。モンスターであっても」

 

 

 オーク。豚のように醜い頭の人型種族とされるモンスター。ゴブリンに似た性質を持ち、人間の男は食らい、女子供は巣へ持ち帰って襲うことがある種族だっけ。

 

 

「群れの規模ってどのくらい?」

「小規模の……そうだな、30匹程度のオークたちがいる」

 

 

 30匹程度といってもかなり多い方だ。

 しかも群れで襲ってくるとなるとちょっと面倒なことになる。でも強くなるためにはここが一番最適なんだよなぁ。

 

 ドラゴンと会うためには宝玉が必要だ。だから宝玉を奪うためにも強くなって備えないといけない。戦わないのならそれでいいけれど、多分無理だと思うから。

 

 

「……アルメリア、レベルに関しては彼らが行うよ。僕たちは他の村の交渉に」

「うん、分かってる」

 

 

 

 やるべきことは2つ。

 強さを手に入れるために森の最奥にあるオークの群れと戦ってレベル上げをして進化できるかどうかの検証。

 そして他の村で出来るだけ交渉をして、俺達と協力をしてもらいながらも宝玉を手に入れるための囮となってもらうこと。

 

 レベル上げはグレンたちが行い、交渉は俺と人間の姿になれるルクレスさんがやる。

 それと……いや、彼女についてはまた後で考えよう。

 

 

「第一目標は死なないこと。そしてこのホームへ無事に帰って来れること。ホームの拠点を守るのはアリスさん達に任せます」

「えエ、任せテ」

 

 

 アリスさんがぽよぽよと丸まりながらもそう話しかけてくれた。それに頷いて、ルクレスさんを見た。

 

 

「決行は明日。皆、休むようにね」

「はい!」

 

 

 

 

 

 まだ夕食まで時間があるし、小熊――――――いや、イヴァと遊ぶのも微妙だったから休もうかと思って自室へ向かったら何かベッドの上に残念美女がいた件について。

 

 

「お帰りなさいませお姉さま。さあさあ、お休みになられるのでしたらひと肌に温まりながらのご就寝はいかがでしょうか! 人と肌をすり寄せて寝ますとストレスも軽減されると言われていますわ! さあ、私の身体を抱き枕代わりに眠りましょう。さあさあさあ!」

 

「いやアンタのせいで逆にストレスたまるわ」

「むぅ。つれませんわねお姉さま」

 

 

 金髪の髪の端っこを掴んで弄りだした美女。

 美女と一緒に寝るのは前世での性別といろんな意味を含めて無理だったのでこれは譲れない。というか部屋から出て行ってほしいんだけど……いや、いいか。

 

 

「なあ、何で俺をお姉さまって呼ぶんだ?」

「何を仰っているのです? お姉さまはお姉さまですわ」

「意味わかんねえ。なんだそれ。だから……マリーさんは俺よりも年上で、大人の女性だろ」

「まあそうですけど……」

「なら、まだ子供の俺に向かって『お姉さま』って言うのはおかしいと思うんだ」

 

 

 

 お姉さまというのは姉を意味する言葉だ。

 だから子供の俺に対しての呼び方じゃないと思う。というのにそう呼ぶのには何か理由があるのだろうかと首を傾けていると、マリーさんはいつものだらしない笑みではなく真面目な表情で俺を見つめてきた。

 

 

「……まずお姉さまにお話ししなければならないことがあります」

「な、なんだよ」

 

「わたくしの立場についてですわ」

 

 

 ベッドの上に正座をして、俺に向かって話をするマリーさん。

 いつものふざけた様子が別人のように、有り得ないほど丁寧な口調で話す。

 

 

「わたくしはこの施設の魔術核として使われた存在ですわ。それはすなわち皆様を傷つけてしまった存在。わたくしは被害者でもあり加害者でもあるのですよ」

「……でもさ、加害者の部分はちょっと違うと思うぞ。正気はなかったんだろ?」

 

 

 俺の言葉にマリーさんは首を横に振った。

 

 

「傷つけたのは事実ですわ。ですからわたくしは死して当然の報いをしました。わたくしの命はもうあってないようなものなのです。そこをお姉さまに救われた。わたくしは蘇生されたあの時、お姉さまの為に生まれ変わったのです!」

 

 

 魔術核としての命は死んだから、新しく生まれた瞬間から俺の為に遣えると決めた。そうマリーさんは話す。

 心の奥底に隠した本音を曝け出し、救われた命は俺の為にあるべきだと本気で思っているようだった。

 それは凄く重くて、俺に背負いきれるかどうか分からないものだ。でも背負えなくても良いんだとマリーさんは思っているんだろう。この先の行動次第で対応は変えた方が良さそうだな……。

 

 

「……で、何でお姉さまなんだよ」

「それは妥協点ですわ。ご主人様やアルメリア様と呼ばれるのは嫌なんでしょう?」

「まあ……」

「我が主人。救世主さま。わたくしの大事なお人―――――そういう呼ばれ方も嫌でしょう?」

「そうだけど……」

 

「ならこれでいいと思いますわ!」

 

 

 何か丸め込まれた感があるような……。まあいいか。

 

 

「それにわたくし、お姉さまに救われた時に小さな夢を抱いたんですわ」

「なにを?」

 

 

 問いかけただけだと言うのに、マリーさんが不意にハイライトのない死んだ目で俺を見つめてきやがった。

 

 

 

「わたくしはお姉さまの傍にいたいと。先ほども言ったように、お姉さまの為にこの命を使いたいと。お姉さまに救われたあの瞬間から、わたくしはお姉さまに対して心を奪われてしまいましたもの。一生、この身をお姉さまの為に使って欲しい。傍を離れたくはない。周囲に何を言われても、何があろうとも絶対に絶対に絶対にぜったいにぜったいに。……死ぬはずだったわたくしの命を救ったのですから、その責任は果たしてくださいましね?」

 

「ハハハハッ……」

 

 

 いや、だからその時の事覚えてないんですけど……。

 それに重すぎてこわい。病んでるみたいでこの人マジ怖い。

 

 もはや乾いた笑みしか浮かべず、この先の前途多難な状況に頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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