ナティシア ー平凡幼女はハードモードな世界を生きるー   作:かげはし

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 ――――これは、襲撃が起きる前の話である。








外伝 化物と人間たちの日常
スケルトンの抗議


 

 

 

 

 とりあえずある程度の準備は終わったし、俺達だけじゃなくて一時的にダンジョン(仮)制作をしていた仲間たちもホームに戻っていろいろと準備中。

 ホームの中は9日ほど経っているというのにかなり住みやすいところへ落ち着いてきた。

 

 畑も順調。芋以外にも野菜や薬草を育てる計画を立てて土を耕している。

 始めたばかりだというのにモンスターの中にドライアドと呼ばれる植物系の仲間がいたせいか、彼女たちが手伝った植物の成長スピードが速く、最短で5日に実るというのだから驚きだ。

 だから芋はもう収穫済みであり、次の芋を育てつつ他の野菜などを育てると母さん含めて畑仕事にやりがいを感じている人が多かった。

 

 まあ、この世界はもともと疲れ切った人間が多くいたんだ。

 仕事だって手一杯で今日食べていくお金さえ厳しい生活しかなかった。それなのにモンスターの身体になって疲れ知らずになったせいか、仕事をする分だけお金が増えると分かっているからか、前世でいう『社畜』がたくさんいる。

 畑だけじゃなく建築作業も進めており、何故か地下一階の建築に乗り出したせいでいろいろとダンジョン並みに豪勢になってきているような気がした。

 ……地下一階で温泉とか作ったら気持ちいいんじゃないかなって思うし、そういう提案をあとでアリスさんにでも話しておこうかな。

 

 混浴……いや、俺は今幼女だし。そういうのは駄目だよな。

 前世の男としての性別を捨てたわけじゃないけど、今は女なのは本当のことだし。というか皆モンスターだからそういう意味で考えてるわけじゃないし。

 ああでもいつか女として成長するから性別を嫌でも気にする時が来ることになるはずだよなぁ。うわぁ面倒くせえ。

 ああもういい。後で考えよう。

 

 

 でも一番の問題は疲れ知らずのモンスターの身体になったとしても限界があるということだ。ドライアドもスライムもオークもオーガもレッドキラーも――――――ほとんどのモンスターは食事をして睡眠を必要とするんだから。

 人間より強く頑丈な生き物ではあるが、疲れを取るための休憩はとらなくちゃいけない。

 

 そう、例外を除いてであるが……。

 

 

「だカラァ、8時間でいいのよ。アタシ達に休みをくれって言っテんノ!!」

「何度も言ってイルが、却下だ」

「ふザけんじゃナイわよコの鬼トカゲ!!」

「喧しイぞ骸骨女」

 

 

 だからこうなったと言うべきなんだろうか。

 

 ―――――リザードマンのランルークさんに絡みついてるスケルトンがブラック社畜は嫌だって抗議している件について。

 

 というか、作業着のような服を着ている骨もといスケルトンがリザードマンに食って掛かる光景って凄くシュールだよなぁって思う。

 彼女以外にも抗議をしているわけじゃないが、モンスターの中で一番特殊なアンデットだけは休息は必要なくても働くことができるため、ホーム改築にかなり重要視されて動かされてきていた。だから、ストレスがたまってキレたと言ったところかな。

 

 あのまま傍観していても良いけれど、一応話しかけてみようかな。仲間を知ることも大切だってルクレスさんは言ってたから。

 

 

 

「えっと……何してるんですかランルークさんに……えっと……」

 

「あらアルメリアさまじゃナいの。ねエ聞いテよアルメリアさまぁ。この鬼トカゲってばアンデットに人権ハナいって馬鹿なコと言って来るのヨ! 有り得ナいと思わなイ!? ねェ!!?」

「マず人権云々以前にお前ハ今モンスターだロう」

「やかましい!」

「ええっと、ちょっと待ってください。まず俺に様付けで呼ばなくても……」

「ああ我儘骸骨女のことは気にスルなアルメリア。君はルクレスの元へ行っていてくレ」

 

「あー? この子の口からルクレスに話をさレルのは嫌だってコとかしらぁ? マジでいい加減にしロよこのトカゲ野郎。アタシの集落じゃア基本的なルールとしてやルベきコとハしっかりとやるケど、仕事以外の時間も大切にってマイルールがあんノ!」

「ならやるべキこトをしっかりとやレ」

「アンデットは24時間働きますってかァ!? アタシらを舐めてンのかゴラァ! トカゲの尻尾ちょん切るぞオラァ!!!」

 

「うわぁ……」

 

 

 こう言っちゃあなんだけど、骸骨の顔が怖いから動くごとにカタカタ鳴ってランルークさんが着ている服の胸ぐらを掴んで凄む様子はまるで前世での不良のようだ。

 というか、この人集落出身のスケルトンだったのか……。集落にルールがあるとは知らなかったなぁ。まあ俺の村でも助け合いは当たり前って暗黙の了解があったし、それと同じ感じかな。

 

 

「……あの、ランルークさん。アンデットに数時間だけでも休息ってとれないんですか?」

「そウよアルメリアさまぁ。このトカゲに言ってヤってよ!!」

 

「はぁマったく……一応とルこトは可能だ。だが計画にイつ狂いが生ジルか分かラナいノがルクレスの考えデな。余裕がなイ状態で休息が必要でナいアンデットに数時間もの自由時間をとラスのも変だと思うンだが?」

「いやでも……それってある意味差別だと思うんで……ほら、皆が働いている間に休み時間にするとかどうです? 子供達だって働かない時間もあるんですから。俺だってそうだし」

「そウよそうヨォ!!」

 

 

 

 スケルトンから野次が飛び、トカゲがふかーいため息を吐いて俺は苦笑する。

 ルクレスさんがそう考えてやっている計画に支障をきたすのはよくないと思うけれど、それでも仲間なんだからやっぱり妥協は必要だと思うんだよな。

 この世界がいくら厳しいと言っても、集落にルールがあって生活していたんならちょっとぐらいは良いと思う。

 

 

「ルクレスさんは俺から話します。だからランルークさん……」

「はぁぁ……いや、いいよアルメリア。俺から話しておこウ」

 

「マジで!? やっタ! ありガトうアルメリアさまァ!!!」

「あっはい。嬉しいのわかるけど骸骨に抱きしめられるのはちょっと……」

 

 

 

 骸骨の骨って意外と痛い。

 でも仲間が衝突することなく平和に問題が解決できるならそれでいい。敵はドラゴンと宝玉使った人間たちだけでいいからな。

 

 ランルークさんはため息を吐いているけれど、仕方ないとでもいうような顔だから大丈夫なはず。

 ああ。それにもう一つ言わなきゃいけないことがあった。

 

 

 

「あの……あと俺の名前を様付けで呼ぶの止めてくれませんか……?」

「あー、それは無理ィ。だってアルメリアさまのコと様付けで呼ぶのアタシだけじャなイかンね」

「……ちなみにそれを止めることは?」

「無理じゃね? だって様付け必須だっテ言っテンのあノ人間のマーガレットだし」

 

 

 

 えぇ、マジか。

 それは聞きたくなかった……。

 

 

 ああそういえば別れる前に約束で合流した後にマリーとの添い寝って話もあったんだった。

 まだやってないけどちょっと面倒だなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

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