ナティシア ー平凡幼女はハードモードな世界を生きるー   作:かげはし

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36話 買い出し

 

 

 

 

 

 

 ドラゴンについて調べたいことがあったが、その前にいろんな意味で問題が起き始めていた。

 

 

 まず金が足りない。あと消耗品が少なくなってきた。

 それと同時に、薬草はあるんだが町にしか売っていないポーションやら毒消しなどの薬やらもないせいで困ったことになったため、気分転換も兼ねて外へ買いに向かうことになった。

 

 まだ他の余所者に対してトラウマが刻まれているであろう他の人間たちには何も説明せず、ただ少しだけルクレスさんに用事があるのだと伝えて町へ向かう。

 ランルークさん達は村の護衛についているため、なるべく日帰りで行けるようにと母さんやゴブリンのモンスターの仲間たちが共についてくれている。

 俺達にとっての問題の国家や帝国でもなく、メリア大森林近くの――――――以前薬草を売りに行ったことのある町に行くことになった。

 

 一応国家所属の町だが、森に近い位置にあるためそこまで酷いことにならずに済むだろう……おそらく。

 

 大きなリヤカーの中にたくさんの食料を詰め込んで母さんたちが引っ張ってくれる。

 それに乗り込むのは人間として交渉役の俺とマリーのみだ。

 

 だから移動している間の時間つぶしに、マリーの知識を聞くことにした。

 それが結構興味深いんだが……。

 

 

「良いですかお姉さま。スキルと言うのは大きく分けて7種類ありますの」

「7種類か。結構多いな」

「ええ! ですが職業(ジョブ)と才能があれば誰でも取ることのできるスキルは全部で5種類。あとの2種類は生まれつきか魂に刻まれたスキルだと言われているんですわ」

「へぇ?」

 

 

 マリーが言うには通常取得できる5種類のスキルは『職業スキル』『通常攻撃スキル』『通常防御スキル』『魔法攻撃スキル』『魔法防御スキル』とあるらしい。

 

 分かりやすく言うのなら、母さんが持っている薬草の知識のスキルは『職業スキル』であり、ただ拳で殴ることのできるスキルならば『通常攻撃スキル』であるということ。

 物理的な攻撃に対してガードが固く、防御に強いグローリーさんのようなスキルを『通常防御スキル』というのだとか。

 そして『魔法攻撃スキル』はグレンのような火の玉モンスター系が扱っている魔術のような特殊な物で攻撃していくことであり、それの防御に強いのが『魔法防御スキル』ということらしい。

 まあ人間とモンスターはスキルにおいて比べ物にならないほど変わっているらしいし、本能的にも獣に近くなったみたいだから例に出しても意味はないんだよな。

 

 普通の人間ならばスキルを使う場合は意識しないと使えない。モンスターの場合は意識がなくとも本能的に使っているか常時作動しているかのどちらかだ。ウィスプのグレンに聞いたけれど、身体全体の火が燃えているのは、人が血液を身体全体に送っているのと同じく意図してやっているわけじゃないのだとか。

 まあつまり、スキルを使うには意識的に発動しなきゃいけない。そしてスキルを覚えることによって当たり前に使えるようになるとのこと。

 

 その当たり前が俺にないのが問題だった。

 

 

「なあマリー。残り2つのスキルってなんだ?」

「生まれつきそれぞれの一族に備わっているか、絶対に自然とは取得できない特殊スキルと…………」

「マリー?」

 

 

 何故かマリーは、自らの両手を見て寂しそうに目を細めた。

 

 

「……特殊スキルと、禁忌スキルですわ」

「きん……きって?」

「……はい。禁忌スキルですわ。この世の理から裏切る行為をした場合に発生するとても重たいスキル。……神が唯一、わたくしたちに対して罰するとするなら禁忌スキルであるとそう決まっているんですのよ」

「へぇ。なあ、世界が決めたってどうやって決めるんだ?」

「ええと……そうですわね……」

 

 

 

 数秒だが、静寂が俺達の間を包み込んだ。

 

 その間も母さんたちは俺達の様子を窺ってはいるが会話を邪魔することはない。ただ歩いて前へ進んでいるだけだ。

 困ったようにキョロキョロと周りを見渡し、近くにあった俺の手をギュッと握りしめたマリーが言う。

 

 

「禁忌スキルとは……世界が定めた犯してはならない生き物の理なんですのよ。親族殺しや聖地汚し。国一つを滅ぼして自らの故郷を救った歴史上名高い英雄でさえもその禁忌に苦しんだと言われているんですの」

「それ……ってやばくないか? 俺達結構いろいろとやらかしてるぞ?」

「いいえお姉さま。モンスターは禁忌スキルは取得いたしませんの。それにお姉さまも……裏で活躍してくださったおかげで世界の理を汚さずにすみましたから」

「お前は?」

「えっ」

 

「お前はどうなんだマリー。大丈夫なのか?」

 

 

 俺は確かにそこまで表だっていろいろと動いた……うん。いややらかした記憶はあるし、普通にルナに敵対されたこともあったぐらいだから派手に動いてたのは事実だと思う。

 ただ決定的な事態が動く場面に限っては皆が動いてくれた。

 

 それはマリーも同じだったはず。

 ホームでの襲撃。地下一階への誘導も、モンスターたちとの戦力アップを込めた時に至ってもいろいろと動いてくれた。

 直接戦ったこともあったはずだ。だから少しだけ心配になって聞いただけのこと。

 握られている手を逆に力強く握りしめれば、マリーは頬を赤らめ照れたように笑う。

 

 

「大丈夫ですわお姉さま。わたくしはお姉さまと出会って以降禁忌スキルを取得したことはありませんわ。それにわたくしの知識は全部故郷から貰ったものですから」

「そっか。……ん? ってかマリーの故郷って?」

「はい。わたくしの故郷はここより東―――――国家が数年前に勝利を収めた小さな国。歴史の宝庫となっていた国家規模の図書館ですわ!」

「へえ……図書館か。それはちょっと行ってみたいな」

「そう言っていただけると嬉しいですわお姉さま! ……ですが、もう無理かと」

「え、なんで?」

「言いましたでしょう。国家が数年前に勝利を収めたと」

「あっ……そっか……ごめんな」

「い、いいえ違いますわ! わたくしが悲しいのはお姉さまの役に立てないのではないかと思っただけですのよ!」

 

 

 確かに悲しそうというような感じではない。

 でも嫌なことを思い出させたのは事実だ。

 ああそうか。マリーの故郷は戦争に敗れて国家のものになったのか。

 

 だとすればそこは俺達にとって危険地帯になるだろう。

 国家都市と同じぐらいに、何かあるかもしれないけれど……。

 

 ああでも危険であっても魅力的なのは確かだな。

 だって図書館だぞ?

 知識が豊富であって、歴史の宝庫って言われてんだぞ?

 

 ちょっと帰ってから考えよう。

 ドラゴンについてマリーにもう少し聞いてからにしよう。歴史っていうともしかしたらドラゴンの居場所について書かれているかもしれない。

 危険だと言われていても、前へ進むためには危険も承知で歩かないと……。

 

 

「アルメりあ」

「着きましタぜ。姉さン方」

 

「あ、うんわかったよ」

 

 

 母さんたちが指示した通り、そろそろ着く。

 人に母さんたちのモンスターの姿を見られるわけにはいかないから……そろそろ俺とマリーだけで移動を開始しないと……。

 

 

 

 

 

 ついてない。本当についてない。

 最近は国家も戦争だなんだと煩くなってきた頃だ。騎士となる奴らはみんな召集されちまったし、ずっと入り浸ってた町もすっかり荒んできたもんだ。

 それに、働く人手が足りないからとギルドの依頼書はほとんどがバイト募集だけ。モンスター退治や未知のエリアへ行くための遠征募集なんて何もない。

 

 もう一か月以上も冒険者らしいことを何もしていない。

 それどころか今日はただの草むしり、猫さがし、そして積み重なって汚れた押入れの荷物整理だと? 俺達は冒険者であって便利屋じゃねえんだよ!!

 でもそれやんないと金稼げねーからやるしかねーんだけどな!!! まったく不幸だな俺達は!!

 

 

「ギルドはつらいよ何もねえよーってなぁ!!」

「うるさいわね文句言ってる暇あるならちゃんと仕事持ってきなさいよ!」

「そうだぞ。最近の世の中は物騒なんだ。犯罪もモンスター発生率も急増だと計算上で――――」

「だぁぁっ!! 計算なんかすんな余計気分が悪くなるだろ!! んなことやるより飲みに行こうぜ!!」

「こら! 仕事やるのが先でしょうが!!」

「うるっせえよおっさん!」

「誰がおっさんだゴルァ!!」

 

 

 胸ぐらを掴んできやがった仲間に苛立ちを隠さず思いっきり頬をつねる。

 そんな俺達を止めるのはいつも計算ばっかりで煩い魔術師見習いの冒険者。

 

 

 

「私はまだおっさんじゃないわよ。これでも20代よ!!!」

「ハッ、年齢より見た目が問題なんだよおっさん!」

「おっさんじゃないオネエ様とお呼びなさい!!!」

「誰が呼ぶか馬鹿野郎!!」

「野郎じゃないオネエ!」

「そういう意味で言ったんじゃねーよ!!」

 

「喧嘩は止めないかみっともない。いいか君たち、計算上この争いは98%の確立で無駄な体力を使っているということになるんだが―――」

「喧しいわよ静かになさい!」

「うるせえ黙っとけ!」

 

 

 ってかなぁ、俺よりもガタイの良い長身の男が女口調で喋ってりゃあおっさんだっていうのは当然だろうが!

 黙ってりゃあ俺の次にイケメンだってーのにもったいない奴だぜ!

 

 

 

 

「っ……待て。喧嘩を止めろ」

「だから―――――」

 

「いいから少し落ち着いてあそこを見ろ」

 

 

 急に奴が指差したのは赤毛の幼女と金髪の美女?

 ってか金髪の美女のワンピース姿やばいな。あそこまで見目麗しいの久々に見たぞ。まるでエルフ一族の娘のように美しい。透明感のある肌も、薄着のワンピースから主張する大きくて柔らかそうなこんもりとした胸も、キュッと締まったウエストから曲線を描くあの美尻も見ていて飽きなさそうな綺麗な身体だ。

 

 ……ってか、すげえなあれ。

 いろんな男たちの視線を奪ってるっていうのに、あの金髪美女はリヤカーを引っ張ってどこかへ向かっている。リヤカーの上に乗っている幼女に幸せそうに微笑みを浮かべながら話しかけつつ、歩いている。

 結構重量がありそうだというのに大したもんだ。スキルでも使っているのか?

 

 

「見たかアレを」

「ええ見たわ」

「ああ、凄く大きなおっぱいだったな」

「アホか! そっちじゃないわよあの金髪の顔見なかったの!?」

「見たっつーのあの美女の容姿を見ないわけねーだろうが!!」

「ああもうあんたってそういうところあるわよねこの馬鹿。馬鹿!!!」

「ハァァ……」

 

 

 何だよ急に……ってか何が問題あるっていうんだよ。

 

 

「あの金髪の女の容姿をちゃんと確認しなかったのか……これを見ろ」

「はい?」

 

 

 懐から取り出してきた1枚の絵が乗った紙を俺に渡して見せる。

 仕方なく見るが――――なんかあの美女ちゃんにそっくりな絵だな。金髪だし特徴も一致してるし。

 

 

「ええっと……マーガレット・ナティシア。懸賞金は金貨5500枚……ってなんだこれ?」

「だからそのままの意味だ。ちゃんと見ろ」

 

「ええそうよ。あの子――――――犯罪者だわ」

 

 

 

 言われた言葉に少しだけ残念に思えた。

 あんな美女ちゃんを捕まえなきゃいけないだなんて……いや、捕まえるんならちょっとぐらい堪能してもいいんじゃ……。

 

 

「アンタ本当に頭の回路おかしいわね! ほら金稼ぎに行くわよ!!」

「思考回路が獣に近くなるとモンスターになるぞ」

「喧しい!!」

 

 

 

 ああくそ。マジでついてねー日だ!!!

 

 

 

 

 

 

 

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