ナティシア ー平凡幼女はハードモードな世界を生きるー   作:かげはし

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 彼女にはとある秘密が存在している。

 その秘密を知るのはまだ先―――――――。



 しかし彼女にとって、アルメリアという存在は驚いたことだろう。
 なんせ彼女の中には■■がいるのだから。





43話  浄化は物理系シスター

 

 

 

 

 

 

 

 様々な場所で戦争が起きている。それは文字通り好き勝手に行う国家の貴族がいけなかった。

 あいつらがやっているのはただの自己満足の我儘が原因だということを、私は知っている。

 だから私は連中の腐った精神をどうにかしたいと思っている。

 

 戦争といっても様々な意味合いがある。領土争いの問題もそうだが、奴隷売買を着手したいという貴族の輩が目を付けた弱小国を狙って奪い取っているということもあるのだ。

 王族の力が弱まるのと同時に、貴族連中が力をつけたのがいけない。帝国が金魚の糞のように甘い汁を啜りながらも身を犠牲にしていることを知らない馬鹿なのがいけない。

 貴族は国民をただの道具としか思っていない。誰かが止めないと余計な悲劇が起きてしまう。

 国王とは名ばかりの男装の少女が涙を流してどうにかしようとして奮起している事情を私は知っている。彼女は彼女なりに頑張ろうとしている。でも止められない。それが現実だ。

 

 助けてと誰かに叫んでも助けてもらえない。

 誰かが祈っていても、何も変わることはない。奇跡なんて起きない。

 

 シスターとして神に祈りを捧げて、それでもなお何も変わらない現状にただ飽きたんだ。

 

 神なんていない。祈りを捧げてもそれは自己満足に過ぎない。

 シスターとして神に仕える職業を否定する言葉だとしても、それが事実だったから私はもうどうだって良かった。

 

 ただ救いたいと思った。

 犠牲になった人たちの為に。何もかもを奪われた子供たちの為に。

 私は祈りなんて捧げない。彼らが助けてと言ったのだから、この身を使って動いて助ける。そう決めた。腐った連中は綺麗にしてやればいいんだ。

 

 ―――――――我慢の限界だった。それだけだ。

 

 

 

「赤毛ちゃん。貴方の言葉は私にやる気という名の燃料をいーっぱい捧げてくれたわ」

「は、はい……」

「でも気になるわねェ……ねえ、実験ってどういうものなのかしら? それって何のために?」

「あーっと。ド、ドラゴンの守っていた宝がどんな力を放つのかみたいらしくてお……わ、私達を実験台にしてたみたいです。あ、あの……詳細は知らない」

 

 

 ぷいっと顔を背けた瞬間に赤毛がふわりと舞う。

 私を見るのか怖いのか、ちょっと涙目で小さい身体を震わせている様子はとても傷つくわ。何か隠しているようにも見えたけれど、彼女を傷つけるつもりはない。だから後でじっくりゆっくり聞けるときに聞きましょう。

 もしも連中の腐った話を思い出してトラウマになっているというのなら、諦めましょう。代わりに連中から聞いてしまえばいい話ですもの。

 

 赤毛ちゃんに付けた首輪はただの浄化スキルを込めたもの。首輪をつけていればある程度の穢れは落ちてくれる。

 ただ逃げられると危険な物もこの教会にはたくさんあるから、だから安全の為に繋げている。見た目が酷く映ろうとも、簡単な浄化のためには必要なことなのだ。

 

 私に対して抵抗してくるのも誤解されるのも分かっている。本当は赤毛ちゃんが恐怖を感じる必要なんてないのだけれど。

 ……でも仕方ないわね。私は今浄化の真っ最中なんですもの。

 

 

「ねえ赤毛ちゃん、世の中間違ってると思わない?」

「……うん」

 

 

 ほら、純粋無垢な幼女は現実を否定している。そんな状況を作ったのは誰?

 厳しい世の中で腐った性根を持った連中を全て浄化していきたい。それだけの為に私はいる。私が生きる意味は皆を幸せにすることだって分かってる。

 

 現にこの町を管理している領主も国家の貴族と同じく腐った連中だ。身寄りのない子供を教会に育ててもらうというのは分かるけれど、その先彼らが成長したら自由に生きていてほしいという私の願いを捨て去って、国家の軍事力として一般騎士となれと命令を下してきている。

 領主は奪おうとしていたんだ。子供達の自由な未来を。なんにでもなれる明るい可能性を持った可愛い子供達を道具に扱おうとしている。

 それだけじゃない。孤児である可愛らしい見た目の女の子はそのまま娼婦に、男は騎士がメインだが使えなければスキル実験の材料に使われる。

 それが当たり前に行おうとして来ていた。それが私は許せなかった。だから潰す。それだけだ。

 

 

「赤毛ちゃん、気にすることなんて何もないのよ。私が全部やっつけてあげるから」

「やっつけて……って、何をするつもりなの?」

「うふふふふふ」

 

「アッ、すいませんなんでもないです」

 

 

 あらあら可愛らしいわ。私はただ笑っただけだというのに何ともまあ誤解しちゃって……。

 私の足もとでハァハァと息の荒い塵に比べるなんて出来ないほど純粋無垢。子供はちゃんと私が守って、悪い害虫はやっつけなきゃ。浄化してきれーいにしてあげなきゃ。

 でもふと赤毛ちゃんを見て昔を思い出す。あの時泣いていた男の子の格好をした女の子を思い出す。

 

 

 

「赤毛ちゃんは国王様と仲良くできそうねぇ」

「……はい?」

 

 

 あら、嫌そうな顔してるわ。うふふ、また誤解でもしているのかしら。

 あの国王様も貴族に搾取されていて本当に可哀そうな子よね……。

 

 

「シスターは国王と知り合いなんですか。……つまり俺達の事情を全部知ってると?」

「知らないわ。ただ国王はこの教会でお話を聞いたことがあるのよ。今はもう……あなたより大きいのだけれど」

 

 

 もう十代後半ぐらいかしら。あの子がどう育っているのかも気掛かりだ。

 純粋に育ってくれているのならそれでいい。ただ、貴族の手によって腹黒く育ったというのなら……その時は真っ白にしてあげよう。私の手で、この国を救ってみせる為に。

 ようやく始めることができるんだ。もうすぐすべてが始まる。

 

 

「赤毛ちゃん。貴方には巻き込んで悪いと思っているけれど、ここにいたら危険だからついて来てもらうわね」

「…………はい?」

 

「ほら、案内なさい塵屑(ごみくず)野郎」

 

 

 鞭で真下の塵のお尻をぴしゃりと叩くと、奴は小さく鳴いた。

 

 

「ぶっひぃぃぃ! ふぁい。こ、この薄汚い塵めがシスター様の為に案内いたしましゅうぅぅぅぅっ!!」

 

「うわっ……」

「ああ、赤毛ちゃんの教育によくないから耳は閉じててね?」

「いやもう遅いよ!!」

 

 

 あら、こういう鞭で叩いて塵を浄化しつつもう二度と悪いことをさせないようにしている光景の事を言っているのかしら?

 でもおかしいわね。町中だけでなくいろんな場所でこういうのはあるはずよ。それに私が育てた可愛い子供たちは皆たくましく成長しているのだけれど……?

 

 仕方ないわ。赤毛ちゃんが涙を浮かべて小さな両手で耳を閉じているのですもの。

 ちょっと反省して怖い場面は見せないようにしておきましょう。

 

 ただ、同行を拒否することはできないから私達と一緒に来てもらうけれど。

 

 

 

 

 

 

 

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