魔法科世界に禁書魔術で挑みます! 作:Natrium
第一話
1
「うん、うん、建宮お兄ちゃん。こういう時、『天草式』ならこうするんだよね……ッ‼」
声が響き、小型拳銃からルーンのカードが射出される。
直後、重油の巨人の体積が増大し、この場の全てを覆いつくす。
燃え盛る炎に焼かれて絶命する、人、人、人。中には、直立戦車の残骸も混じっているようだった。
しかし、惨劇は終わらない。再び少年の瞳が不規則に揺れ、
「対象ステイル=マグヌス、アシスト」
ゴウンッッッ‼‼‼ と。
先の比ではない勢いで、炎が噴出する。もはやその色は赤に留まっていない。
淡く、透き通るような青。
魔力の流れが最適化され、ラジカルが青い光を放っているのだ。
完全燃焼状態。
魔女狩りの王——否、魔女狩りの焔帝。
火焔魔術の最高到達点とも言える巨人が、戦場を支配する。
一方的な戦いがそこにあった。
何故このような事態に陥ったのか。簡潔に述べよう。
僕、
——魔法科世界に訪れた、転生者なのである。
2
「それでは、このレバーを倒してください」
目の前のクソ野郎は開幕早々に、そう告げやがった。
「あの~、女神さんや」
「はい、何でしょうか?」
「禁書世界に転生させてくれるって言うから、許してあげたのに……もうちょっと便宜とか無いの⁉ 貴女のせいで死んだのですよ‼」
「……そうは言っても、規則なので」
「『どうも、空から落ちてくる系のヒロインです』を面白半分に再現しようとした貴女が、規則と言いますか⁉ しかも天界から落ちてくるとか、シャレにならないと言うか実際死んだし‼」
本当に冗談じゃない。
まさか、上空から時速三百キロで落ちてくる女神に圧搾されて死ぬとは……。
神雷に巻き込まれたり、ハイエースに轢かれたりする方がよっぽどマシだ。
痛いかもしれないけど、まだ仕方がないと納得できる。事故というものは無くならないのだから。
しかし。
「ただし駄女神、貴女はダメです」
「駄女神ッ⁉」
「貴女が
「ラノベじゃないです! あれはれっきとした並行世界の出来事だ、って何度言えば分かるんですか⁉ 特殊な目を持つ人間が、無意識のうちに観測した世界を一冊の本にまと
「そうかもしれないけど、問題はそこじゃない‼ その説明は何度も聞きましたよ!」
「話は最後まで聞きなさいな! いいですか、もう一度だけいいますよ。文学作品と言うものはですね——
「何回目だこのくだり! もしかしなくとも貴女、人の話を聞かないタイプですね‼」
このままでは埒が明かない。
そう判断した十五歳の少年は、大人の階段を上ることにした。
実年齢は何歳か知らないが、根っこのところで精神が幼いのだこの駄女神は‼
「とにかく、埋め合わせはないのですか⁉ 特典の指定が出来ないのであれば、原作知識の補完とかでもいいですから!」
「むー、それなら問題ないかなぁ? あとで魂そのものに書き込むから、それで許してねっ☆」
「……それでしたら、文句はありませんが」
現在は受験シーズンの真っ只中だ。ライトノベルも久しく読んでいない。
大まかな流れは思い出せるが、詳細な設定までは覚えていないのだ。
初見殺しの魔術や能力があれば、僕は間違いなく死ぬだろう。それだけは避けたかった。
「それでは、レバーを引いてください」
女神の指示に従って、スロットのような機械のレバーを倒す。
ぐるぐるぐるっとリールが回転を始める。ちらほらと見えるのは
是非とも引き当てたい。
「ここだ‼」
そして、表示されたアイコンは……。
獲得能力『学習装置を司る木原』
木原円周と同等の才能を持って誕生する。
魔術適正『超高』
魔力の操作力、保有量に優れている。
獲得補正『幻想御手』
他二つの特典の力をワンランク上昇させる。
「うーむ……」
悪くはないのだけど……、いまいちと言うか……思っていたのとは違う。
一つ一つの性能は良いけど……相性が致命的だ。
魔術を使う木原なんて
確かに加群さんは格好いいけど、相打ち上等な戦闘スタイルだけは真似できない。
僕だって死にたくはないのだ。
「……なら他の『木原』を取り入れて戦うしかないのか? んー……?」
「それでは、書き込みを開始します」
それだと折角の魔力が台無しだ。
科学の外にある概念に反発しなければ、魔術をコピー出来そうだけど……ん? いまこの野郎何て言った?
「えいっ☆」
「あばばばばばばばばばばッ‼⁉⁇」
全身に電流を流されるような感覚だった。
頭の芯から警告が鳴る。これ以上は危険だ、続けるな、と。
そうは言ってもお前、こいつは俺の意思じゃねぇんだよ‼
「ぐ、がぁ、あた、頭が……割れ、る……ッ⁉ 死、」
「はいストップ♪」
「が、ごぼふ、ぐ、ぁ?」
徐々に痛みが和らいでくる。
それと同時に欠けていた知識の補充が完了したのか、様々な情報が頭の中を舞う。
首輪の術式の隠蔽位置に、二重聖人の弱点。
法の書の解読法に、五和のスリーサイズ。
極めつけには、
ん?
あれ、おかしいな……?
それとも最新刊で判明したのかn
「さて、
「おい待て貴様何を書き込んだ」
「何って……原作知識ですよ。原作知識☆」
「違うもっと物騒な言い方したでしょ貴女! 具体的に言えば、世界の記憶とかなんとか‼︎」
「その通り、
「そこまで詳しい情報は求めてない‼
明らかに無駄な知識まで詰め込まれた。絶対記憶能力を持つ
「今はそんなこと関係ないでしょう‼」
「TPOを
「なら、早く転生を始めましょう。時間が押しているから、急いでほしいのですが……」
「だから話を——ッッッ‼⁉」
「っ?」
待て。不味いぞ。
確かに、円周ちゃんの力は強力だ。
しかし。
しかし、だ。
禁書世界でオリジナルの円周は、
確か——いや、僕の頭にある知識が嫌と言うほど自己主張してくる。
その結末とは即ち、
「監獄エンドじゃねぇか‼⁉ 対魔術式駆動鎧の存在にたどり着く可能性があるからって、アレイスターの手で少年院にぶち込まれる訳だが‼」
しかも、少年院の中が高級ホテルのように感じられるように、暗示をかけられるのだから
その上、回避方法が存在しないのだ。
『原型制御』は木原一族にとって致命的すぎる。
「待って、マジで待って‼ もう一回やり直させて頼むから‼」
「ですが……規則なので」
「またこの女は規則と……ッ‼ いえごめんなさい謝りますから、全部謝罪しますから監獄エンドだけは回避させてぇっ‼」
「……………仕方がないですね。そこまで言うなら転生先を変更してあげましょう。ですが、知識の補完は一切しませんからね。これ以上詰め込むと、本当に危険なので」
こうして僕は魔法科高校の劣等生の世界に転生した。
木原円周の能力と、禁書原作知識を連れ添って。
戦闘中の口調について
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トレース先の禁書キャラそのままに
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トレース中でも円周ちゃんらしく
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どっちも見たい