魔法科世界に禁書魔術で挑みます!   作:Natrium

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第五話

 1

 

 

「コホン……深雪さん、私は、貴女が生徒会に入ってくださることを希望します」

 

紆余曲折あり復活した真由美は、説明の後にそう告げた。

先程までのコメディ口調とは一転し、真面目なものに変わっている。

もっとも、今更取り繕っても、ショタに昏倒させられた会長に、威厳なんてものは存在しないのだが。

 

そこ、元から威厳ないとか言わない。

 

「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」

「ええ、知っていますよ」

 

話が妙な方向へ飛んだ。

いいや。

 

「有能な人材を生徒会に迎え入れるのなら、私よりも兄の方が相応(ふさわ)しいと思います」

「おいっ、深雪!」

「私を生徒会に加えていただけるというというお話についてはとても光栄に思います。喜んで末席に加わらせていただきたいと存じますが、兄も一緒と言うわけには参りませんでしょうか?」

「残念ながら、それは出来ません」

 

その回答は、生徒会長からではなく、市原鈴音からもたらされた。

 

「生徒会の役員は、第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です」

 

淡々と説明を続けるその口調からは、現在の体制にネガティブな意見を持っていることが窺えた。

だからこそ、深雪も素直に謝ることができたのだろう。

 

「申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください」

「……ええと、それでは、深雪さんには書記として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」

「はい、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願い致します」

 

 その後も、生徒会に関する概要などの説明が続いた。

 達也の風紀委員会入りの話には、一切掠ることなく。

 

 転生者は焦った。

 だからこそ、このようなセリフが飛び出したのだろう。

 

「摩利お姉ちゃん! 風紀委員会に二科生は入れないの?」

 

 今ここに歴史は修正され、既定路線へと収束した。

 

 

  2

 

 

(なるほど、これが蝶の羽搏き(バタフライエフェクト)って奴か……)

 

 原因は恐らく、下校騒動に達也が介入しなかったからだ。

 そのときに渡辺先輩は、『起動式を読み取る能力は、未遂犯に対する大きな抑止力になる』と、考えたのだろう。

 しかし、この世界線では僕が介入したため、達也が特技を披露することはなかった。

 そのため、達也の風紀委員会入りを望むこともなく、話を流そうとしていたのだ。

 

(まぁ、達也から尋問を受けたことが、良い方向に作用したな。あの特技を知らされていなかったら、打つ手がなかった)

 

 確か、アニメの三話くらいで、達也は風紀委員会に所属することになっていた筈だ。確証はないが、恐らく重大なイベントなのだろう。

既に、僕という異分子が加わっているため、原作通りの展開にはならないだろうが……、達也が生徒会長にマークされないことで、バッドエンド直行になる可能性もある。

 

 そう考えた僕は、達也の特技をさりげなく先輩方に教え、風紀委員会入りを推し進めたのだ。

 達也の中では、『僕はその特技を信じていない』ということになっていたので、言い回しには気を付ける必要があったが……。

 

 嘘を吐いた達也に、恥をかかせようと思った。

 

という子供じみた理由から、能力を教えたということにして、なんとか誤魔化すことができた。

 その際に、話術に秀でたとある先輩(・・・・・・・・・・・)の力を借りたのはご愛敬。達也の洞察力は侮れないからね。

 

 ちなみに、僕も風紀委員会に加わることになりました。

 今日呼ばれたのはそのためで、『教職員推薦枠から外された森崎の代わりに、風紀委員会に入らないか?』との話だった。

 十中八九、昨日の事件が原因だね。

 都合がいいから利用させてもらうけど、とりあえず言っておこう。

 

……どんまい、モブ崎。

 

 

  3

 

 

「今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやって来た」

 

 風紀委員会の業務会議は、摩利の一言で開始された。

 

「今年は幸い、卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て」

 

 摩利の指示を受けて、達也と縁の二人が立ち上がる。

 彼らには緊張の表情が見えなかった。

 

「1―Aの牧原縁と、1―Eの司波達也だ。今日から早速、パトロールに加わってもらう」

 

 委員会本部にざわめきが発生した。どう見ても高校生ではない縁と、二科生である達也の実力を疑ってのことだろう。

 岡田という二年の風紀委員が、手を挙げて発言する。

 

「役に立つんですか」

「ああ、心配するな。二人とも使える奴だ。司波の腕前はこの目で見ているし、牧原の実力も確認している。少なくとも、元々配属予定だった奴よりは使える筈だ。他に異論がある者は?」

「……、」

「なら結構。……では早速行動に移ってくれ、レコーダーを忘れるなよ。司波、牧原両名については私から説明する。他の者は、出動!」

 

 全員が一斉に立ち上がり、風紀委員会独自の敬礼を行う。

 そして、達也らを除く六人のメンバーが退出し、見回りへ向かった。

 

 事件の発生までおよそ一時間。

 キャスト・ジャミングの余波を喰らわないためにも、現場からなるべく離れよう、と牧原は思った。

 

 

  4

 

 

「でもあれって、特殊な石がいるんじゃなかったっけ? アンティ……アンティ何とか」

「アンティナイトだね、お姉ちゃん。でも、達也お兄ちゃんは、そんな高い鉱石をどうやって手に入れたの?」

 

 どうやら達也は無事に、剣術部のいざこざを鎮めたようだ。

 元の流れに落ち着いたので、ひとまず安心である。

 

「いや、持っていないよ。そもそもアンティナイトは軍事物資だからね。値段以前に、一民間人が手に入れられる物じゃない」

 

「えっ? でも、キャスト・ジャミングを使ったって……」

 

「あー、この話はオフレコで頼みたいんだけど?」

 

「俺が使ったのは、キャスト・ジャミングの理論を応用した『特定魔法のジャミング』なんだよ」

 

「……えっと、そんな魔法ありましたっけ?」

 

「無いと思うけど。それって、新しい魔法を理論的に編み出したってことじゃない?」

 

 美月が放った疑問の声に、エリカが答える。

 しかし、彼女の声には驚嘆よりも、呆れのようなニュアンスが多く含まれていた。

 

「編み出したって言うより、偶然発見したと言う方が正確かな」

 

 エリカの正直な反応に、達也は笑いながら答えた。

 彼が言うには、『相反する二つの起動式を同時に展開し、無系統魔法として放てば、同系統の魔法発動を阻害できる』とのことだ。

 

「……だがよ、何でそれがオフレコなんだ? 特許取ったら儲かりそうな技術だと思うんだがなぁ」

 

 腑に落ちないと言わんばかりの顔で告げたのは、西城レオンハルト。

 首を(かし)げる彼に向けられた達也の表情には、苦みが含まれていた。

 

「一つには、この技術はまだ未完成なものだということ。それ以上に、アンティナイトを使わずに魔法を妨害できるという仕組み自体が問題だ」

「……それの何処に問題があるんだよ?」

 

 不満げなレオの声を聞き、エリカが顔を上げる。

 難しい顔で考え込んでいたが、結論が出たのだろうか。

 

「バカね、大有りじゃない。お手軽な魔法無効化技術が広まれば、社会の基盤が揺るぎかねないんだから」

 

 ………………ん?

 待って何それ聞いてな——

 

「アンティナイトは産出量が少ないから、現実的な脅威にならずに済んでい

 

「待って待って達也お兄ちゃん‼ アンティナイトって、広まったらそんなに不味いの⁉」

 

「……さっきエリカが言ったことと同じだ。社会基盤が揺らぐだろうな」

「………………………………………………………………………………………マジか」

 

 えー、そんな設定あったっけ……?

 いや、冷静に考えてみれば当然か。

 実力による支配がまかり通っているこの世界で、アンティナイトなんてものが拡散すれば、革命運動が巻き起こること間違いない。

 でも、達也なら突破口を開いてくれるはず……ッ‼

 一筋の望みに賭け、言葉をひねり出す。

 

「…………例えばの話だよ。もし、様々な偶然とかその他諸々が積み重なって、誰かがアンティナイトの量産に成功したら……社会はどうなると思う?」

 

「確実に混乱が起こるだろうな。少なくとも、プラスに転じることは有り得まい」

 

「そ、そっかー。そうだよね、達也お兄ちゃん。……教えてくれてありがとう」

 

「別に構わないが……一体どうしたんだ?」

 

 拝啓、脳内の木原様へ。

 達也お兄ちゃんが、疑惑の(こも)った目で見てきますが、今日も僕は元気です。

それと、あなた方の研究成果が()の目を浴びる日は遠そうです、とだけ伝えておきます。

 

 僕は、脳内で筆をしたためると共に、公開予定研究の大幅見直しを行うことを決定した。

 

……って言うか、木原なら分かってたと思うんだけどね、なんで教えてくれな……。

いや、わざとだなコイツら。

絶対わざと言わなかったなオイ。




第一位の能力すら再現した(と思われる)木原さんなら仕方ない。
レリックの複製とかでもやりかねないし……。

戦闘中の口調について

  • トレース先の禁書キャラそのままに
  • トレース中でも円周ちゃんらしく
  • どっちも見たい
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