魔法科世界に禁書魔術で挑みます!   作:Natrium

8 / 10
主人公の原作知識保有設定をなかったことにしました。
感想で指摘が入ったのと、今後の展開で不都合が出てしまったので。

あと、帰省するのでしばらく休載します。


第八話

 

 図書館の入り口付近には、拮抗した戦場が広がっていた。

 襲い掛かるテロリストに応戦する第一高校の三年生。

 そこに。

 そこに。

 声変りすら迎えていない、甲高い声が一つ。

 

「ゼロにする‼」

 

 直後、後方に陣取っていたテロリストからの攻撃が、不自然に鳴りやんだ。

 よくある不具合(玉詰まり)であった、が。異変はそれだけでは終わらなかった。

 

 

 熟練職人の手で鍛え上げられた日本刀——

「ゼロにする‼」

 

 海外で製造され、秘密裏に持ち込まれた突撃銃—— 

「ゼロにする‼」

 

 エガリテ所属の一高生が持つ、特化型のCAD——

「ゼロにする‼」

 

 

 そのいずれもが機能不全に陥り、攻撃力を喪失する。

 

「くそ、ジャムった……っ‼」

「な、なにが⁉」

「おい、おかしいぞ‼ 刀の切れ味も無くなっている‼」

「どうなってやがんだ⁉」

 

 自軍の攻撃が一切通用しなくなるのだ。その衝撃は計り知れない。

 しかし、彼らもただやられているだけではなかった。

 

「今がチャンスだ、一斉に掛か、ぐごぁっ……」

「武器を捨てて肉弾戦で挑めぇっ‼ そうすれば攻撃は通る!」

 

 後方から強い蹴りを入れられて悶える男子生徒を横目に、テロリストは吼えた。

 そう、ソーロルムは、あくまでも武器のみを無力化する術式。

 純粋な肉弾戦では効果を発揮しないのだ。

 しかし、武器を使えないとなると、テロリスト側の戦力は大幅に下がる。

 全滅までにさほど時間は掛からないだろう。

 

(なら、お先に失礼……ッ‼)

 

 牧原は心の中で呟き、図書館の中に踏み込む。

 何人いるかは知らないが、中にもテロリストが待ち構えている筈だ。

 対策を立ててもいいが、やはりここは。

 

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「っ、誰だ⁉」

 

 存在を隠そうともしない乱入者に、日本刀を持ったテロリストが襲い掛かる。

 対する牧原も、道中で奪った伸縮警棒を構え——

 

 疾ッ‼ と。

 一瞬の交錯で切り払った。

 

 素人に毛が生えた程度のテロリストでは、英国最強の騎士団長(ナイトリーダー)の相手にはならなかった。

 筋力などのスペックまでは模倣できないが、騎士団長の技量の前では然したる問題ではない。

 気絶させた襲撃者をそのままに、牧原は階段を駆け上がる。

 

「止まれ‼」

「ここから先は通さんぞ!」

 

 階段奥の通路に潜んでいたテロリストが、警棒を振りかぶr

 

「遅いよっ‼」

 

 手首を強く弾かれ、得物を取り落としてしまう襲撃者。

 直後、対抗手段を失った彼らの意識も同様に、深い闇の中に突き落とされた。

 

 

 2

 

 

 微かに、キーボードを叩く音が聞こえる。

 

「まだセキュリティは突破できないのか?」

「もうすぐだ。奴らがここに気付く頃には、すべて完了しているだろう」

 

 特別閲覧室の中。

 壬生紗耶香は目の前で行われている作業を、複雑な表情で見つめていた。 

 

(これが本当に、差別撤廃のためになるの……?)

 

 自分の中に幾度となく浮かぶ疑問が、紗耶香の思考に現出した。

 しかし、そこに疑問を持つ事は禁じられている。そう教えられていた彼女は、慌てて意識を目の前の任務に戻す。

 

(でも……。ううん、きっと非魔法師にも役に立つ研究が秘匿されているのよ)

 

 やはり、迷いは消えてくれない。

 どうしたものかと考える紗耶香であったが、

 

『あれー。鍵がかかってるのかなあ? あ、カード認証式か……』

 

 状況が動いた。

 扉の外から、垢抜けた少年の声が聞こえたのだ。

 その声は明らかに味方のそれではなかった。

 それが聞こえるということは、外の見張りも全滅しているのだろう。

 

「っ、もう来たのか⁉ おい、まだ終わらないのか‼」

「も、もうすぐだ……コピーはあと十数秒で終わ

 

 ゴウン……ッと。

 何かが作動する音が響いた。

 何かが? いいや、理解している筈だ。

 この部屋に侵入した際に、同じような音を聞いたのだから。

 

(嘘……だって、予備も含めて全部持ってきたのに‼)

 

「おい‼ 鍵は全部盗めと言っただろうが‼‼」

「っ、いえ、私は全て——

「言い訳するな‼ 現に奴は別のカードを持っているでは、ない……か?」

 

 テロリストの指揮を取っていた男の声が、弱く途切れた。

 彼の目線の先を追うと、そこには小さな影が。

 この学校の名物生徒となっている、一人の少年が立っていた。

しかし。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その手に持つものは明らかな非正規品。前提として、カードの形すら取っていなかった。

 

「っ、いや、まさか有り得ない‼ 仮にも最高位のセキュリティシステムだぞ⁉」

「そんな、馬鹿なことが……ッ⁉」

 

 魔法を使って強引に突破するのであれば、まだ納得できた。

 だが、これは何だ?

 小手先の技術だけで解除したとでも言うのか?

 それも、十秒にも満たない時間で、だ。

 

「……っ、指輪を使え‼」

「は、はい!」

 

 正気に戻った作業服の男が、紗耶香に命令を出した。

 いずれにせよ、相手が魔法師である以上、キャスト・ジャミングは通用するはずだ。

 だから。

 なのに。

 

「……背中刺す刃(Fallere825)

 

 示されるのは『裏切り者』の魔法名。

 直後、最高位の陰陽術が、一切の弊害なしに発動された。

 

 

 3

 

 

 巨大な水球を叩き込まれ、悶絶するテロリストを流し見ながら、牧原は思考を回す。

 

(そういえば……なんで壬生先輩はテロ組織に加担したんだっけ?)

 

 アニメは三話で切ってしまったため、知識の欠落があるのが痛かった。

 洗脳によるものなら対抗策は持っている。

 しかし、それが薬物によるものか、暗示によるものかによって、対処法も大きく変わるのだ。

 処置をするにも、まずはそこを見極めなければならない。

 

「このクソガキっ!」

「舐めるなよ……ッ‼」

 

 思考を続けていると、残りのテロリストが一斉に飛び掛かってきた。

 短剣を武器にしているところから見るに、子供でも手加減なしのようだ。

 (ある)いは、先の魔術を警戒しているのかもしれない、が。

ずぶりと、背筋が凍るような音が一つ。

 

「ぐ、ごがぁっ……」

 

 向かって右側にいた襲撃者が、両目を押さえて派手に転倒する。

 後遺症が残らない程度に抑えたので、大きな問題は発生しないだろう。

 牧原は突き出されたナイフを軽く避け、テロリストの後ろに回り込む。

 そして。

 

黒キ色ハ水ノ象徴(さあおきろクソッたれども)其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ(ぜんぶこわしてゲラゲラわらうぞ)

 

 慌てて逃げようとするが手遅れだ。魔術は既に発動している。

 何もない空間から直径一メートルほどの水球が生み出され、勢いよく敵に突き刺さった。

 学園都市のパワードスーツすら吹き飛ばす威力だ。当然、生身の人間では耐えられず、一撃で意識を失う。

 この惨状を生み出した張本人は、可愛らしく舌を出して告げる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「くっ……」

「……まぁ、あまりお姉ちゃんとはケンカしたくないんだけど、仕方な——って、どこ行くのお姉ちゃん‼」

 

 初めから、戦うつもりはなかったのか、脱兎のように特別閲覧室から逃げ出す紗耶香。

 部屋の奥に踏み込みすぎたことが災いし、牧原は彼女の逃走を許してしまった。

 慌てて移動術式を再編して追いかけようとしたが、わずかに逡巡し、

 

「……盗んでおいたら研究の役に立つかなー?」

 

 制服のポケットから取り出したのは、黒のボールペン——いや、そのように偽装された記録装置だ。

 放置されていた記録キューブに軽くかざし、内部のデータを全て盗み取る。

 滅多にお目に掛かれない文献が保存されているのだ、リスクは高いが、それに見合う価値がある。ここで迷いを見せないあたり、やはり彼の本質も『木原』であるということなのだろう。

 

 

「さて、野暮用も終わったことだし、早く紗耶香お姉ちゃんを追いかけないとね!」

 

 

 槇原は廊下に立てかけてあった箒を手に取り、飛行術式を発動させる。

 この世界では彼以外の魔術師は存在していない。故に、撃墜術式を恐れる必要はどこにもないのだ。

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