悪夢だ、余は悪い夢を見ているに違いない。
すぐに目が醒めるに違いない、目が覚めたら朝食に好物を出すよう言いつけるとしよう。
ええい、はよ目が覚めぬか!
ルディアスの脳は現実逃避をしていた。
「な、何をする!?は、離せ!痛い痛い痛いっ!髪が抜ける!!」
だが現実は非情であり、ルディアスは髪を無造作に掴まれ引き摺られる。
「こ、この無礼者!よ、余は皇帝なるぞ!うがああぁぁぁっ!やめ、止めぬか!」
ルディアスの悲鳴を無視しずるずると引きずる。
段差に背中を強打し痛がるルディアスだったが総支配人はそんなのはお構いなしであった。
総支配人はパワーアーマーを脱ぎ捨てた場所まで来ると空になったフュージョンコアを引き抜きPip-Boyのインベントリからフルチャージ状態のフュージョンコアと入れ替える。
後でここに取りに戻って来るのも面倒なのが理由である。
ちなみ何故ルディアスを捕獲しに行く時に脱ぎ捨てたのかといえば、要は気まぐれであった。
嘗ての連邦ではパンツ一丁のヤクをキメた変質者が暴れ回っていたという風の噂もあれば十年ほど前のキャピタル・ウェイストランドでは男か女かは不明だがある街の中心部にある核爆弾を起爆させて街を吹き飛ばしたりスーパーミュータントの巣窟に生身で殴り込んで警棒一本で全てのスーパーミュータントを血祭りにあげた人物がいるとかいないとかと言う噂もある。
要は力ある者は気まぐれに何をするかわからないと言う意味である。
ただでさえ有無を言わさずルディアスを引き摺っていたのにそれがパワーアーマーで更にパワーアップする。
瓦礫が邪魔ならば総支配人はジェットパックで飛び越える。
「ぎゃああああぁぁぁっ!!?熱いあづいあづいいいぃぃぃぃっ!!」
そうすればジェットパックの炎がルディアスの一部に当たりその部分が炭化するほどの火傷を負う。
壁をぶち破れば近道になればミサイルランチャーで壁を吹き飛ばす。
カンカンカンッと吹き飛んだ壁の破片がパワーアーマーの表面に容易に弾き返される。
「ひぎっ!あぎゃっ!」
しかし生身のルディアスには容赦なく爆風と凶器と化した破片が容赦なく叩き付けられ尖った破片は皮膚を抉り肉に食い込み血が流れる。
今まで誰にも叩かれた事すらないルディアスを容赦ない暴力が襲っていた。
『こちら日本国、カイオスさん聞こえますか?』
突然の無線機の音声にビクッとしたがカイオスはすぐにプレストークボタンを押す。
「はい、聞こえます」
『現在、そちらに向かいアルタラスより海から偵察部隊を送っています。到着はパーパルディアでの夜中になりますが偵察部隊の上陸艇に若干の空きがあります。そのタイミングにそちらが間に合えば回収できますが確約はできません』
「わ、わかった。私以外に一名いるが構わないか?」
『要人ですか?』
「いや、民間人だ・・・。駄目だろうか・・・・・?」
『・・・・・・・人命救助として偵察部隊に要請しておきます。いいですか、間に合わなければ置いていきます。回収地点は・・・・・』
それが昼間の出来事だった。
夜の海辺は普段の皇都でも言いようのない不気味さがあるが今は更に今でも立ち上る煙に反射する炎の明かりが所々に見える。
上空を飛び回っていた飛行機械は飛行要塞に戻り飛行要塞が地上を照らす明かりが微かに見える。
丁度ここからは死角になっている為飛行要塞は見えない。
カイオスとシルガイアはカイオス邸の地下室にある隠し通路から海岸に続く通路を通ってここまで無事に辿り着いた。
カイオスは日本とパイプを構築した時に無線機と共に秘密裏に渡された腕時計を見る。
時刻は日本時間に設定されており、それを見れば予定時刻まではまだ時間がある。
二人は息を潜め隠し通路の出口である洞穴の入り口でじっとしていた。
同時刻。
日本国の偵察部隊は回収ポイントとは異なる場所に上陸ポイントを設けパーパルディア皇国の地に足を踏み入れていた。
夜間潜入服を着た彼らは上空に停泊しているプリドゥエン号を見上げる。
「これが報告にあった飛行船か・・・」
「総員傾注。任務を再度伝える。我々の任務はエストシラントに侵入し内部の状況を確認し頭部にセットされているカメラで映像を記録することだ。銃の携帯は飽く迄も護身用であり、戦闘許可は下りていない。身の危険がある時のみの使用が許可されている」
タタタタタタッ・・・・。
エストシラントの内側から微かに銃声が聞こえる。
「今聞こえた通り、現在エストシラントを襲撃している勢力はアサルトライフルもしくは機関銃の様な銃を所持し使用している可能性が高い。昼間の偵察によればオスプレイもどきの様な回転翼機も確認されている、注意を怠るな。各員、時計を合わせるぞ」
全員が時計を見せ合い一斉にカウントダウンをスタートさせる。
「いいか、回収時間に回収ポイントに遅れるなよ。それと念を押しておくが上からの指示で人道的見地により二名のパーパルディア人を回収時に保護する事になっている。散開」
翌日。
日本時間の午後2時。
日本国総理官邸には各大臣が招集され緊急閣議を開いていた。
「それでは、始めてください」
解説役の役人が立ち上がり一礼する。
「はい。昨日パーパルディア皇国における親日本派のカイオス氏より緊急の連絡がありました。昨日はパーパルディア皇国においてカイオス派によるクーデターが行われる事になっていましたが、想定外の事態が発生しクーデターは未遂に終わりました」
その言葉に何人かが戸惑いの表情を浮かべる。
総理を始め何人かは事前にその事を知っていたため表情は変わらない。
「そ、想定外の事態とは・・・・!?」
それを知らない閣僚の一人が質問をした。
「お手元の資料の三ページ目をお開きください
紙を捲る音が複数重なる。
「なっ!?」
「これは・・・!?
「どうなっている・・・?」
そのページには至る所から煙を上げているエストシラントとその上空に停泊している飛行船の拡大写真であった。
パーパルディアと日本との時差が分からん。