それもこれもDays Goneが面白いのが悪い(ダイマ)
その資料に写っているのは飛行船であった。
飛行船であればこの世界にはムー国と言う機械文明国が存在しているし神聖ミリシアル帝国は魔法文明だがこの様な飛行船を作り上げる事は可能であろう。
だがその飛行船の写真の下に別の拡大写真があった。
彼我の距離と相手側のサイズの為に最大倍率で拡大されたそれと説明文を見て何人かは自らの目を疑いゴシゴシと擦る閣僚もいた。
《形状は異なるがオスプレイと同様のティルトローター機と推測される機体》
《飛行船の一部にアルファベットと思われる文字が確認された。Nuka-Worldと書かれているがこれがアルファベットであればヌカワールドと読める 》
「実はデュロ空爆後に帰還した爆撃機のパイロットからこの様な報告がありました。デュロは空爆前から都市の至る所が破壊されていた様だったと。そして昨日、パーパルディアの親日本派でクーデター実行を予定していたカイオス氏より緊急の連絡が入りました。エストシラントがヌカワールドと名乗る勢力から攻撃を受けていると」
その言葉にどよめきが起こる。
「昨日、エストシラント沖にて潜航待機中の潜水艦を使用し潜入部隊による現状のエストシラント偵察を敢行しました」
その発言に事前に知らされていなかった閣僚の全員が再びどよめく。
「そして、今から皆様にお見せするのはその部隊のヘッドギアにセットされたカメラによって撮影された映像です」
部屋の明かりが落とされプロジェクターがスクリーンに映像を投影し始める。
移動中の映像で揺れはあるがこれは仕方のない事だ。
映像に焼け落ちた民家らしき建物を映す。
しばらく移動し、ピタッと動きが止まったかと思えばカメラは建物の壁にあいた無数の穴を映す。
隊員がナイフでその穴を広げ何かが落ちた。
指で摘まれたそれは金属の塊。
『建造物の壁面に開いた穴から金属の塊を発見、おそらくこの穴は弾痕でこの金属は弾丸と思う。穴の数からみて機関銃に類する銃火器が使用されたと思われる』
隊員の推測する声がスピーカーから流れた。
他の映像に切り替わる。
『炎ではなく人工の明かりが見えた為、現在そちらに向かっている』
しばらく暗く不鮮明な画面が揺れ続け、不意に揺れが収まる。
『明かりの原因が分かったが、まさかこれは・・・・』
カメラのオートフォーカスがその物体にピントを合わせた。
『これは・・・自動車・・・!?しかも凄くレトロだが見慣れない形状・・・・ムー国とやらの自動車なのか・・・・?』
運転席には誰も乗っておらず、ライトだけが点いている。
『話し声が聞こえる、隠れる』
暗がりに隠れたのか映像はほとんど動かなくなる。
少しずつ話し声が大きくなりやがて小さくなる。
近くを通らなかったのか内容は分からない。
次の映像。
隊員は建物の内側からそれなりの広さのある広場に出た。
広場から放射状に伸びている石畳の道にはバリケードが構築され投光器らしき物が広場を照らしている。
広場内には雑多に物が置かれ隠れる場所には事欠かない。
見渡す限りに人影はない。
しかし慎重に物陰から物陰に素早く移動する。
『ふぅ・・・』
息を吐き出し呼吸を整える音に混じって何かガシャガシャと音が聞こえた。
隊員もそれに気付いたのかそうっと音の発生源を確認しようと覗き込む。
そして、そこには・・・・。
『ナニニ、シマスカ?』
『なぁっ・・・・!?』
『ナニニ、シマスカ?』
ロボットがいた。
昭和時代の少年誌の未来を描いたイラストのようなレトロなロボットだ。
半透明の頭部の中に真空管のような物も見える。
しかもこのロボットはこの位置に来る前には映像に映っていなかった。
つまり人間の接近を探知して自ら歩行して来たのだろう。
それだけでも凄まじいテクノロジーである。
『ナニニ、シマスカ?』
相変わらず同じ事を聞いて来る。
『お、おすすめを・・・・』
隊員は思わずそう口走っていた。
そのロボットは後ろを向き、再びガシャガシャと音を立てて湯気を立てる鍋のような物のところに向かい、再び戻って来た。
コトッと音を立てて隊員が隠れていた物・・・粗末なカウンターテーブルのような物の上に湯気を立てる容器を置いた。
『・・・・ラーメン・・・?』
その容器の中にはラーメンっぽい麺料理の様な何かがあった。
暫く唖然とそれを見つめていたが、話し声が聞こえ反射的に物陰に隠れる。
話し声から人数は二人らしい。
『よう、タカハシ』
『ナニニ、シマスカ?』
『ヌードルだ。ってか、お前ヌードルしか作れねぇだろうが』
『俺もヌードルだ。腹減ってるから早く頼むぜ』
再びガシャガシャと言う音がして少し経つ。
『熱いのが最高にうめぇな』
『ちげぇねぇ。って、お前またそんな棒で食ってんのか?』
『この“箸”ってので食うのが通なんだぜ?』
『んなもんか?ん?おい、あの席ヌードルだけ置いてあるが誰かいたか?』
『便所にでも行ってるんじゃねぇか?』
そんな他愛のない会話がしばらく続き腹ごしらえした二人はその場を離れた。
周囲の人の気配がなくなった事を確認し隊員もその場を離れ調査に戻った。
次の映像。
隊員は大きめの通りの何処かの建物の二階か三階にいるらしく窓の外の様子を伺っている。
隊員が何かに気付いたのか通りの奥を見た。
炎の明かりに照らされた集団・・・パーパルディア皇国の兵士達が大勢で一斉に通りを走っていた。
『皇都を蛮族から取り戻せ!ルディアス陛下をお助けするのだ!!』
隊長格の兵士が叫ぶと後方から続いている部下の兵士達が『うおおぉぉぉぉぉぉっ!!』と叫ぶ。
『敵発見!撃てぇっ!』
前方にいた兵士の数名が既に発射状態に持ち込んでいたマスケット銃を前方に向けて一斉に構える。
隊員もその射線上を追うように反対側を見た。
金属の鎧のような物体を着た人影があった。
パパパパパッパパパンッ!
発砲音が重なり連続して発砲しているようにも聞こえる音。
だがしかし、弾丸はカンカンカンッと頼りない音を立て地面に落ちる。
鎧のような物が振り返る。
炎の明かりに照らされたそれは頭にタトゥーを入れたモヒカン頭の厳つい顔をした男が着ていた。
兵士達が慌てて弾込めを行なっているがそんなものは御構い無しにとその男はガシャンッと黒光りする巨大な物体・・・ミニガンを構えた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
轟音を立て銃口から付近の物がしばらく見える程のマズルフラッシュを放つ。
数十人はいたであろうパーパルディア兵は弾丸のシャワーをあびせられその大半が原型を留めていないほどのミンチに姿を変えていた。
ガシャンガシャンと重量のある金属が動く音と共にミンチと化したパーパルディア兵のところまで歩きまだ微かに息のあった者に再び至近距離からミニガンを撃ち完全にミンチにする。
モヒカン男は煙草に火を付けながら一言言う。
『馬鹿な奴らだ、とっとと逃げ出すか総支配人に降伏してりゃあいいもんを』
ぷはぁー、と満足そうに紫煙を吐き出し軽々とミニガンを担ぎ上げ元来た方向に再度歩き出しその場を立ち去る。
『ミニガンを・・・軽々と持ち歩いていた・・・・?重量や反動で人間が携行できる兵器じゃないのに・・・まさか・・・パワードスーツ・・・・?』
モヒカン男が装着していた鎧のような物がパワードスーツのような物ではないかと推測し呟く。
次の映像。
『やばいやばいやばい!見つかった!』
隊員が必死に走っているのか映像が揺れまくっている。
複数の発砲音が聞こえ隊員の近くに着弾する音がしたり近くの壁が着弾時の埃をあげたりしている。
『待ちやがれ!』
『変な奴がいたぞ!』
『捕まえろ!』
正当防衛で発砲は可能だが明らかに複数人に追われており多勢に無勢と言うことは映像を見ている全員にも容易に想像がついた。
だが次の瞬間、閣僚一同は当然として当の隊員にも予想外の事が起きた。
ビィィィィィィンッ!
そんな奇妙な音と共に赤色の光線が隊員の僅か数十センチの距離を通過した。
『な、何だ!?』
思わず振り向く隊員が見たのは増えている追跡者とその追跡者が持っている武器から再び赤色の光線が発射されて来た。
『おい嘘だろ!?レーザー銃かよ!?』
尚も必死で逃げる隊員の視界に反対方向から逃げてくるパーパルディア人が入った。
ビィィィィィィンッ!
再び独特の音と共にレーザーが隊員に向けて発射される。
『ぐぅっ!?』
隊員が足を何かにとられたのか転倒したらしく不意に映像が乱れる。
映像は天地が逆さまになる。
レーザーは運悪く逃げて来たパーパルディア人に命中した。
『はっ・・・・?おい・・・なんて威力なんだよ・・・・・!?』
体勢を立て直した隊員が見たのはかつてパーパルディア人だった赤熱した粒子を蒸気の様に立ち上らせる塵だった。
『まずいまずいまずい・・・!当たったら死ぬ・・・!』
だが天は隊員に味方した。
『おいおい、当たっちまったぜ』
『あー、ま、仕方ねぇか』
『へっ、賭けは俺の勝ちだな』
隊員は必死に身を隠し追跡者達が立ち去るとその場を即座に離れた。
次の映像。
隊員は困惑していた。
目の前にはジェット噴射で空中に浮いている金属の物体があった。
三つのレンズでこっちを見ている。
『気を付けぇーっ!!』
ダミ声でいきなり命令をして来た。
思わず直立不動の体勢を隊員がとったのかカメラのブレが無くなる。
『貴様!単独で何をやっている!?』
『じ、自分は・・!』
『誰が口を開いていいと言った!?』
『す、すみません!』
『言葉の前と後にサーを付けろ!』
『さ、サー!すみません!サー!』
『常に気を張り詰めろ!油断していると女々しい左翼野郎に殺されるぞ!』
その映像に閣僚一同もぽかんとしていた。
つい先ほどミニガン、パワードスーツっぽい鎧、レーザーガンと出て来てもう驚かないと思っていたら今度は軍人口調の空中浮遊するロボットであった。
『いいか!共産主義者どもはこの偉大なる合衆国の敵だ!貴様も合衆国軍人なら理解しているな!?』
『さ、サー!もちろんであります!サー!』
盾突くのはまずいと判断した隊員は話を合わせる方向で行くらしい。
『共産主義者どもは虎視眈々とこの偉大なる祖国を狙っている!それを阻止するのは我々合衆国陸軍だ!一人一人が・・・むっ!?』
センサーアイが一斉に別方向を向く。
『そこの一般市民!現在合衆国は戒厳令下にある!止まれ!』
センサーアイが動く。
『逮捕する!止まれ!止まらんか!』
ジェット噴射の向きが変わりそれは移動を開始した。
『逃げるか!怪しい奴!貴様は共産主義者のスパイだな!?』
そう言い残し移動を続け、連続した発砲音とレーザーの発射音が幾度か聞こえやがて声とジェット噴射の音が聞こえなくなる。
『い、今のうちに・・・・』
好機と判断した隊員はそそくさと立ち去り偵察任務に戻った。
映像は終わったのか、画面が暗転しそのままになる。
部屋の明かりが付けられ、閣僚達は明るさに目頭を揉んだりする。
レトロなデザインの自動車、二足歩行のレトロなロボット、パワードスーツっぽい鎧にミニガン、レーザーガンと来て最後に軍人然とした空中浮遊するロボットの映像。
日本国閣僚が頭を抱える新たな問題出現の瞬間であった。
最後のロボットはみんな大好きMr.ガッツィー。
そして最近になって書籍版日本国召喚を読み始めました。
当然ながら文句なしに面白い。
そしてボリュームがすげぇ・・・。