ヌカワールド召喚   作:ALEX4

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なんか思いついたので一気に書き上げてみました。
粗があってもスルーしてくれるとうれしいです。


日本での初日

 九州・福岡市。

 かつては中華人民共和国・朝鮮半島に海を隔てて面していたこの都市は 今はフェン王国・ガハラ神国を挟んで第三文明圏フィルアデス大陸に面している都市圏。

 博多港にはクワ・トイネ公国及びクイラ王国から輸入した食料や地下資源を日本に運ぶ民間船に混じり一隻の護衛艦がこの日入港した。

 USSコンスティチューションは一般市民への混乱を招きかねないとの観点から要請をし接続水域で待機している。

 博多港に近いそれなりのホテルの一室に総支配人はいた。

 用意された部屋でシャワーを浴び窓の外を見る。

 ビルの立ち並ぶ光景は最終戦争前の記憶を呼び覚ますがすぐにPip-Boyを腕に装着し直し操作しマップを開く。

 Pip-Boyのモニターにはマップ画面と共に文字が表示されていた。

 〝新ロケーションを発見。福岡〟と。

 未知だったフィルアデス大陸は部下のレイダーが奪って来た地図をPip-Boyに登録する手間があったが護衛艦の船内で見た日本列島の縮尺図はPip-Boyに登録されていたマップと大差なくその手間が省けた。

 さて・・・と腕組みをし窓の外を見る。

 日が沈み始め夕暮れになっていた。

 それからしばらくし、ホテルマンが夕食を運んで来た。

 食事を終え、食器の乗ったワゴンを廊下に出しドアノブに〝起こさないで〟と書かれてプレートを引っ掛ける。

 護衛兼見張りには夕食後はすぐに寝ると伝えてある。

 部屋の明かりを消し、だがベッドには入らない。

 Pip-Boyのインベントリから一つのアイテムを取り出し使用する。

 その状態で部屋を出、効果時間が切れる前に次のそれを使いを繰り返しホテルを出てホテルを離れる。

 だがホテルにいた護衛兼見張りは総支配人がホテルの外に出た事を気付かない。

 総支配人が使用した物の名はステルスボーイ。

 有効時間が短いものの使用者の姿を不可視化するウェイストランドでは使い方によっては戦闘を有利にする程度のそれだが日本から見ればオーバーテクノロジーの産物。

 当然そんなものがあるなど想定できないし対策も出来ない。

 

 

 

 大都市は煌びやかな表の面と同時に闇の部分もある。

 それはどこの世界でも共通である。

 ギィッと軋む音を上げドアが開く。

 店主は入って来た人物を見る。

 バッグを手に持ち古ぼけたコートと帽子を被った外国人。

 「・・・なにか用かい?」

 不愛想な話し方だがそれがこの男の地だった。

 男の問いに入って来た外国人・・・総支配人はただ一言、この店の裏の用途を要求した。

 ジロリ、と値踏みするように男は総支配人を見る。

 即座に只者ではないと悟った。

 「どこで聞いた?」

 帰って来た答えはシンプルだった。

 チンピラを叩きのめして聞き出した、と。

 「ハッ、いいぜ。ただし、表と同じレートは期待するなよ」

 この店の裏の顔は盗品買取。

 チンピラやプロの空き巣などが盗品を安全にカネに変える裏の業者。

 「で?買い取って欲しいものはなんだ?」

 これだ、と示すようにバッグをカウンターに置く。

 それを無造作に開ける。

 「おい、こりゃあ・・・」

 最初はてっきり異世界転移で帰れなくなり困窮し食い詰めた外国人が盗品を売りに来た程度に思っていた。

 そういった手合いはとにかくカネになりそうなものを手当たり次第に持ってくる。

 だがバッグの中にある物はカネに〝なりそうな物〟ではなく、カネに〝なる〟物だった。

 金や銀、宝石を贅沢に使ったアクセサリー。

 それも尋常な量ではなかった。

 バッグにぎっしりと詰まっている。

 男は唖然とした。

 両手でなんとか運べる重さを顔色ひとつ変えず片手でまるで小物入れを持つかのように持っていた。

 仕事柄盗品の出所は聞かないが品定めをする男の本心は出所を知りたかった。

 持ち込まれる盗品の中には巧妙な模造品もあったりするがこのバッグの中のものは一切のブランド物などなく、それでいて精巧な装飾の施された品が多い。

 ごく一部だが血が付着していたりするのも気になる。

 裏の情報網でもこれだけの高級品が大量に盗まれたりしたとかは聞いたことが無い。

 しかしそれも当然である。

 総支配人が持ち込んだこの大量の金銀宝石は海の向こう、フィルアデス大陸でエストシラントがレイダー達に襲撃を受け略奪された時の物やエストシラントに未だ住んでいるパーパルディア人がヌカワールドへの貢物として廃墟から掻き集めた物である。

 エストシラントに住んでいた皇族や貴族の令嬢や婦人が着飾っていた物だ。

 「終わったぜ。悪いが、即金で買い取れるのはこれだけだ・・・」

 バッグの中にはまだ半分以上の物が残っていた。

 「で、金額はこれだ」

 総支配人は即座に頭の中で日本に来るまでの間に護衛艦内やホテル、この店に来る途中の繁華街で絡んで来たチンピラを叩きのめし巻き上げた金で買った英語圏向けの雑誌で得た日本国内の物価に照らし合わせる。

 「OKだな?わかった、金を準備するから待っててくれ」

 しばらくして男がガタガタと台車を押しながら戻って来た。

 「ケースの方はサービスだ。確かめてくれ」

 総支配人は無造作にケースの一つをカウンターに置き、ケースを開き中身を確認する。

 「まだ金が必要なら、同業者を紹介するぜ。俺から聞いたって言えば通じるはずだ」

 総支配人は満足そうに頷き、店を出た。

 男に紹介された店で総支配人は先程の店で見せた物以上の量の品を出した。

 当然だがPip-Boyのインベントリ内に収納していた物だしまだいくつもある。

 

 

 深夜、総支配人はホテルへとステルスボーイを使って誰にも気付かれずに戻って来た。

 暗い室内でコートをハンガーに掛け、帽子をテーブルの上に置き椅子に座るとPip-Boyを操作する。

 所有キャップ数の項目の下に新たな項目が現れていた。

 その項目名は〝¥〟であり、数字の後ろに0がズラッと並んでいた。

 日本到着後半日で第一目的であった活動資金を十分に準備出来た。

 総支配人は盗品買取所巡りをしながら入手した日本の裏社会の情報を頭の中で整理する。

 それがある程度の形を作る。

 総支配人は再度Pip-Boyのインベントリを確認し不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 翌朝。

 「えっ?風邪ですか?医者を呼びますか?」

 ゴホゴホと咳をする総支配人をこの日観光案内をする予定だった篠原だが総支配人は首を左右に振る。

 朝食を食べて寝ているから昼食は不要、夕食が必要なら連絡すると言いドアを閉めた。

 「うーん、仕方ないか。とりあえず連絡してロビーで待機しておくか」

 篠原は総支配人の部屋を後にする。

 無人となったホテルの廊下。

 しばらくし、無人の廊下で総支配人の部屋のドアが開く。

 しかし昨晩と同じく、誰も出ずにドアは閉まりオートロックで鍵がかかる。

 昨晩と同じくステルスボーイで姿を消した総支配人が廊下にいた。

 もちろん先程の風邪は仮病である。

 総支配人はそのまま昨日と同じく誰にも気付かれる事なく外に出た。

 そして順調に目的地に到着・・・とは行かなかった。

 「あ、兄貴!こいつです!この外人です!」

 その声に総支配人は振り向いた。

 数人の髪を派手な色に染めた男がいる。

 その内の一人は包帯を巻いたり絆創膏を貼ったり目の上が晴れていたりとする。

 総支配人は昨晩絡んで来て叩きのめしたチンピラの中にこの男がいたようないなかったような記憶がある。

 「おう、外人のにーちゃん。昨日はウチの若ぇ者が随分と世話になったようだな。ちぃっと顔貸してもらうぜ」

 付き合ってられないと無視して立ち去ろうとするが反対側からも連絡を受けた別の一団が現れ総支配人の進行方向を塞ぐ。

 「悪いな兄ちゃん、この稼業は舐められたら終わりだからな。落とし前つけさせてもらうぜ」

 通行人達は遠巻きに見ているだけだが仕方がない。

 誰が好き好んでヤの付く自由業に関わりたいと思うだろうか。

 

 

 総支配人が連れてこられた場所。

 そこは港の一角に隣接するように建てられたとある会社の所有する倉庫が立ち並ぶが、不自然な程人が居なかった。

 倉庫の中に入るよう促されそれに従う。

 倉庫の中はがらんどうだが地面のコンクリートが所々不自然に割れていたりどす黒い乾燥した物がこびりついていたりする。

 「今なら土下座すりゃあ半殺しで勘弁してやるが、どうする?」

 総支配人は少し腕組みし〝Why?〟のアメリカンオーバージェスチャーをする。

 「あ?」

 「兄貴、外人だから土下座が分からねぇんじゃないっすか?」

 「あー、じゃあ仕方ねぇからとりあえず半殺しにするか。死んでも沈めりゃいいしな」

 総支配人以外の全員が鉄パイプやバール等の得物を手にする。

 「いてこましたれぇっ!!」

 その合図に一斉に総支配人に向け襲いかかってくる。

 しかし総支配人は顔色一つ変えず・・・・

 パスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッ。

 

 VATS作動させ、一発も外す事なくデリバラーから発射された弾丸が向かって来たチンピラやヤクザの頭を撃ち抜いた。

 「!!?」

 「ちゃ、チャカ持ってやがる!!」

 「おい、こいつカタギじゃねぇのかよ!?」

 「くそっ!出直しだっ!!」

 大慌てで死んだ仲間を置いて車に飛び乗り逃げて行く。

 総支配人はそうっと倉庫の入口の隙間から外の様子を伺うと再度VATSを作動させる。

 先程車で逃げ去った方向にある門が閉められており港湾従事者の服装をした幾人もがこちらを見張っている。

 VATSに表示される名前は〝ヤクザの手先〟と表示される。

 総支配人は内側から倉庫の扉を閉め、行動を開始した。

 

 

 

 一時間もしないうちに倉庫に何台もの黒塗りの車やワゴン車が集結した。

 この複数の倉庫がある敷地自体がヤクザの所有地であり、人目をはばかる必要もないため既にサプレッサー付きの拳銃を抜いている。

 「いいかぁっ!!組を舐め腐りおった外人をぶち殺せぇっ!!」

 「へいっ!叔父貴!!」

 うおおおぉぉぉぉぉっ!と自らを鼓舞するかのように雄叫びをあげ一斉に倉庫へと突進、左右に分かれた先頭の二人が一気に扉を引く。

 中に飛び込んでいったヤクザ達は宙を舞った。

 「!!?」

 倉庫の中には身長二メートルに届く程の屈強な巨漢が十人以上いた。

 しかも銃の発砲に怯むどころか弾丸が当たっても意に関せず殴り、蹴り、手に持つ奇妙な銃から正体不明の光線を放って来た。

 

 

 時は総支配人が倉庫に閉じ篭った直後に戻る。

 予定とは大分違ったが最初の目的は果たせそうだった。

 総支配人はPip-Boyの中の大量の資材を使いそれをクラフトした。

 Pip-Boyのインベントリから取り出したビーコン装置を作動させるとクラフトした装置が唸るような音と共に衝撃と光を放った。

 光が収まったそこにいたのはインスティチュート・コーサー。

 戦闘に特化した人造人間。

 装置の名前はシンプルに転送装置。

 コーサーが転送装置の台から降りてすぐに次のコーサーが送り込まれて来る。

 恐怖と言う感情を持たず、正に機械のように指示された命令を遂行するインスティチュートの最高戦力。

 総支配人がコーサーに命じた命令は一つ。

 今からここを襲ってくる連中を生死を問わず叩きのめせ、である。

 

 

 そして現在。

 何人ものヤクザと三下のチンピラが地面の上で呻き、或いはピクリとも動かなくなっていた。

 「お、叔父貴!こ、こいつら化けも」

 めきょっ!

 最後までしゃべりきる前にコーサーの剛腕が逃げ惑うヤクザの頭を横薙ぎに殴る。

 眼球が飛び出し、頭が不自然な形に歪む。

 地面に倒れ、ビクンビクンと痙攣する。

 ちなみにこれだけの大騒ぎになっているのにパトカーのサイレンすら全く聞こえない。

 何故ならばこの敷地はヤクザの所有物だと周辺の港湾従事者達は知っており、そんなヤクザの敷地に黒塗りの高級車やらが集まってくる。

 堅気の人間が関わり合いになりたいと思うはずがない。

 それに下手に警察を呼んでヤクザに睨まれればこれからの仕事に支障が出る。

 極め付けはクワ・トイネとクイラからの貨物が到着した為クレーンやらフォークリフトがフル稼働しているその騒音で音がかき消されている為である。

 「く、くそっ!ズラかるぞ!とっとと出せ!!」

 叔父貴と呼ばれた現在この場所にいるヤクザの中で一番権力を握っている男が車に飛び乗り運転手に命令する。

 取り巻きのヤクザも何とか車内に入り込む。

 すぐにエンジンをかけ、敷地のゲートに向かう。

 減速はせず、門を突き破るつもりだろうか。

しかし・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グシャァッ!!

 黒塗りの高級車のエンジンルームが踏み潰され、フロントがひしゃげた。

 それだけではない。

 その重量のお陰で車軸がへし折れ、タイヤがありえない方向に歪んだ。

 当然だがエンジンは踏み潰されている。

 猛スピードから急激な強制停止。

 シートベルトをしていなかった車内の人間は慣性の法則でフロントガラスや前方のシートに突っ込んで血塗れになったりしていた。

 運転手に至ってはハンドルに顔面を強打し絶命している。

 「げぼっ!な、なにが・・・」

 〝叔父貴〟と他のヤクザから敬われていた男は割れたフロントガラスの向こうの影を見た。

 「な、なんだ・・・こいつは・・・」

 倉庫の屋上から飛び降り車のエンジンルームを踏み潰したそれは今まで見たことのないもの・・・パワーアーマーだった。

 これもコーサー達と同じくインスティチュートから転送で送り込ませた物だ。

 メキッ!ミシミシミシ・・・。

 真横からの軋む音がし、視線を向ける。

 手下のヤクザ達は既に全員が行動不能にされたのか車の周りの大男達・・・コーサーが集まってくる。

 既に一人のコーサーが車の歪んだドアを掴み、力任せに引っ張る。

 ベキンッ!!

 遂にドアが引き剥がされ数メートル後方に落ちる。

 そしてドアを引き剥がすほどの腕力がある為に体重70キロを超える壮健な男の体を片腕で車の中から引き摺り出し放り投げる。

 アスファルトの地面に落下し激痛に呻き声をあげる。

 下手を打った、とぼやける意識の中周囲を囲むように集まって来るコーサー達、そしてパワーアーマーを脱いだ総支配人を見た。

 

 




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