ヌカワールド召喚   作:ALEX4

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ようやく少し涼しくなってきた。
外を歩くだけで体力ゲージがゴリゴリ削れて行く暑さというデバフなんかいらないよぅ・・・・。


資源を手に入れたら

 「それでは、これより不法投棄物に対する行政代執行を行います!」

 安全ヘルメットを被った役人が宣言する。

 彼らの目的は住宅街に近い山林に不法に投棄されている文字通り山の様なゴミの処理である。

 様々なゴミが積み重なり、近くの子供が遊び場にしたりと危険だと判断され行政は投棄した業者を探したが決め手に欠け、住民からの要望で行政代執行が行われる事となったのだ。

 役人が行政代執行の根拠となる書類を読み上げた後に実際に作業を行う業者が安全の為に周囲を覆っていた囲いを外そうとし、視線を内側に向けたまま止まる。

 「どうしました?」

 役人が訝しがりながら話しかける。

 「え、あ、それが、その・・・」

 「?」

 「こ、これを見てください・・・」

 信じられないと言う表情を浮かべながら囲いを再び動かし、内側の光景が露わになる。

 「ど、どう言うことだこれは・・・!?」

 役人が唖然と目の前を見つめていた。

 役人だけでは無い。

 役人の後方にいる業者にテレビや新聞を始めとしたマスコミもその光景に唖然としていた。

 ざわざわとマスコミ同士の話し声や業者のざわめきが広がって行く。

 「まさか、盗まれた!?」

 「いや、でもどうやって!?下手すりゃ十トンはある不法投棄物の山だったんだぞ!?」

 「それに昨日の夕方にあったのは確認されていたじゃないか!周辺住民に気付かれずに半日程度でどうやって!?」

 ざわめきは拡大していくが答えは出ない。

 

 

 「不思議なこともあるもんですね」

 「まるで魔法みたいだな・・・」

 朝田と篠原が夕食を食べながらホテルのロビーに備え付けのテレビが流すニュースを眺める。

 テロップには〝怪奇現象!?日本各地で不法投棄物が消えた!〟と表示されている。

 スクラップの山、廃タイヤの山等の各地の不法投棄物や住民が居なくなり荒れ果てた廃屋が次々と消えているのだ。

 中には周囲に監視カメラが設置されている道路を通らずには行けない場所があったりするが歩行者やバイク、自家用車や軽トラ等大量の投棄物を運び出すのは不可能な物しか映っていないと言う怪奇現象としてワイドショーやネットで騒動になっている。

 ちなみに周辺住民は危険で汚いゴミの山が消えたので大喜びしているのだがそれはまた別の話である。

 

 

 一方で日本の政府によって召集された研究者達は頭を悩ませていた。

 守秘義務を宣誓する書類にサインをした科学者、技術者のみが政府の用意したこの研究施設に配属された。

 だがそこで見たものは彼らの常識を根底から覆した。

 明らかに致死量以上の発光する程の放射線を浴び、知能を失い獣の様になりつつも生きているルディアス。

 そしてレミールと言う人間の脳を演算装置として動くロボブレインなるロボット。

 どれほど精巧な技術が使われているのかと外装を慎重に外した彼らの目に移ったのは薄汚れた回路基板に真空管と言う今ではオーディオマニアがアンプに使う程度の旧時代の産物。

 そして動力源と思われる物体に書かれた見覚えのあるマークに全員が言葉を失った。

 そのマークは放射性物質を表すお馴染みのマークであった。

 そして総支配人から譲り受けた一つのRADアウェイ。

 成分も材料も未知の薬剤だが放射線汚染された人間の体内から放射性物質を一掃する驚異の効果を持ち、護衛艦で被曝した隊員は未だ精密検査の為に自衛隊病院に入院しているが放射線障害の兆候も見られない健康体と言う今までの常識から外れたこの未知の物質。

 僅か三つのものだが科学者や技術者はどこから手を付けていいものか悩みに悩む事となった。

 

 

 そしてもう一つ。

 それは総支配人が日本に来て間もない時期に起きていた。

 その舞台となったのは何の変哲も無い住宅街であった。

 ぶいいいぃぃぃぃぃーーーんっ、と掃除機をかける音がその部屋に響いていた。

 小さな子供が掃除機を掛けている母親の元に駆け寄る。

 「ママー、台所にゴキブリいたー」

 「えっ・・・・ゴキブリ?」

 「うん」

 どこの家庭でもありふれたごく一般的な光景。

 「うう、いやだなぁ・・・」

 殺虫剤を片手に台所に向かう。

 台所に入り、周囲を見回す。

 そして身体と思考が固まった。

 ゴキブリがいた。

 異常な大きさのそれが。

 ガタンッ。

 硬直した母親が閉めかけていた扉が閉まり大きな音をたてた。

 その音に反応するかの様に巨大ゴキブリ・・・ラッドローチはその家庭の母親に飛びかかった。

 「ぎゃあああああぁぁぁっ!!?」

 悲鳴を上げ、そのままその母親は昏倒してしまった。

 ただ唯一の幸運は昏倒する寸前に反射的にスプレー缶の噴霧装置を引いていた事だった。

 殺虫剤が噴霧され、ラッドローチはその薬剤から逃れる様に台所の破れた網戸から外に逃げ出した。

 

 

 しかし日本国に侵入したラッドローチはこれだけではなかった。

 ルディアスとレミールロボブレインを収容したヌカワールドの箱の中に詰め込まれていた緩衝材がわりのガラクタに紛れていた数匹のラッドローチが日本国内に侵入し、更には繁殖し始めていた。

 下水道に、飲食店の多い繁華街の路地裏に。

 ウェイストランドと違い残飯などが豊富に存在する日本においてラッドローチは爆発的に増殖していく事となった。

 放射線により変異したラッドローチの遺伝子は治るはずもなく、その巨体を遺伝させ増殖する。

 総支配人がヌカワールドに戻った数ヶ月後にはネット上でラッドローチの噂やカメラの映像に映ったラッドローチの姿が流れる様になった。

 最初は都市伝説やコラ画像と一笑されていたそれは目撃範囲が次第に拡大されていった。

 隠れる所の多い日本はラッドローチ達にとって住みやすい環境である。

 

 

 

 

 総支配人が日本からヌカワールドに帰還し少しの時が流れ・・・。

 

 

 フィルアデス大陸の旧パーパルディア属領であったとある小さな国。

 パーパルディアの圧政から解放されて国中が浮かれつつも国家再建に勤しんでいた。

 夜ともなれば酒場は繁盛して賑わうが酒場という環境故に酔っ払い同士の喧嘩も起きたりする。

 今この場でも酔っ払い同士の喧嘩が起きていた。

 大抵の場合は所謂顔役やそれに準じるものが大事になる前に仲裁なりして収めている。

 その日も酒場の一角で酒を楽しんでいた顔役の男が喧嘩をする酔っ払い同士を眺めながらもこのまま自然に収まる可能性は低いと判断し立ち上がった。

 喧嘩をしているのは酒場でよく見る坑夫と見た事がない顔の男だったが流れ者は今のご時世では珍しくない。

 「なぁ、お前ら。その辺にしとけや、楽しい酒が不味くならぁ」

 「!?へ、へぇ、すんません」

 坑夫は酔いが吹き飛んだかのように大人しくなった。

 普通なら大抵はこれで終わるのだがもう一人の男は流れ者のゴロツキなのかあまり柄が良くない。

 「あぁ!?なんだテメェは!?」

 ゴロツキの喧嘩相手は坑夫から顔役に移る。

 「なぁ、お前さんも楽しい酔いが嫌な酔いになるのは嫌だろう?な、ここは俺の顔に免じて静かに飲み直してくれや」

 「てめぇ何言ってんだ?そもそもお前誰だよ!お前の顔なんて俺は知らねぇぞ!」

 坑夫の時よりもヒートアップしている。

 何度か説得を試みるが効果はない。

 「はぁ・・・。なぁ、いい加減にしろよ?あまり気は進まねぇが痛い目を見ることになるぞ?」

 ドスを効かせた声で脅しを兼ねた最終警告を行う。

 「おう!やれるものならやってみやがれ!」

 ボカッ!

 顔役の腕の筋肉が大きく盛り上がりゴロツキを殴り飛ばした。

 バキバキッ!ガシャンッ!

 殴り飛ばされたゴロツキが椅子やテーブルに直撃し壊れ、コップや酒瓶が割れる音がする。

 「ったく、面倒かけやがって」

 飲み直そうと背を向ける。

 「ま、待ちやがれ!よくもやりやがったな!」

 今ので気絶しなかったのかと感心しつつももう一発殴って大人しくさせようかと振り向いた。

 パンッ!

 「!?」

 突然の破裂音に男は驚き、酒場の他の客も突然の破裂音に雑談を止め何が起きたのか周囲をキョロキョロと見回す。

 顔役の男が立ち尽くしていた。

 腹に熱さを感じ、手を当てる。

 ぬるり、とぬめり気のある熱い生温かい感触。

 見ればそれは真っ赤で錆のような匂いをしている。

 ゴロツキを見る。

 立ち上がって金属製の何かを両手で構えていた。

 何かに似ている気がした。

 パーパルディアの持っているマスケット銃を小さくしたらあのような感じになるのだろうかと何故か考えた。

 「し、死にやがれ!」

 パンッパンッパンッ!

 連続した破裂音。

 胸に衝撃と熱さを感じる。

 息をしようとして咳き込む。

 口を押さえた手に吐き出した血が付着する。

 ゴロツキが手にしているのは酒場の客達が見た事の無いものだった。

 その正体はパイプピストル。

 ウェイストランドではポピュラーな手製の拳銃。

 それをこのゴロツキは持っており、複数発発砲した。

 酒場の客達はパーパルディアの圧政時代にパーパルディア兵がマスケット銃を発砲して反乱分子を見せしめに公開処刑したりする光景を強制的に見せられたりした。

 しかしあの銃は次の弾丸を弾込めするのに時間がかかるために連続発砲は出来ない。

 それをこのゴロツキが持っている両手に収まるサイズの銃は弾込めなしで連続して発砲した。

 どさり、と顔役の男が倒れる。

 激痛に苦悶の声を上げて。

 「て、てめぇら死にたくなきゃどきやがれ!」

 パンッ!

 再び発砲し酒場の客達の野次馬を脅す。

 「う、うわああああぁぁぁっ!!?」

 「きゃああぁぁぁっ!!」

 酒場の客達やウェイトレスの悲鳴が飛び交い酒場から我先にと逃げ出す。

 ゴロツキはその騒ぎの乗じて姿を消した。

 この国の捜査機関は聞き取り出した情報と射殺された死体と言う証拠に騒然となる。

 だがこの事件は氷山の一角にしてほんの始まりに過ぎなかった。

 旧属領の裏社会に少しずつだがパイプピストルが流出し始めていた。

 少し前まではエストシラントから逃げ出した難民達がレイダーの捨てたパイプピストルを拾い、持ち出した物が金の為に売られそれが高額で各国の裏社会を牛耳る組織のトップが手に入れる。

 そのような事は今までにも知られていないだけで存在した。

 だが今回のこれは違った。

 総支配人の指示の元、ヌカワールドのレイダー達によってばら撒かれた物だった。

 

 

 

 ヌカワールドに支配下に置かれた工業都市デュロ。

 工業都市デュロの兵器工場の一部が今再び動いているのだった。

 人間の工員はいない。

 工場内でパイプピストルを黙々と、ただひたすらに文字通り休む事なく作り続ける第二世代人造人間達。

 材料は最初はデュロから略奪したものが使われていたがつい先日から総支配人の入手した大量の資源の一部がインスティチュートの転送装置によって送り込まれそれを人造人間が組み立てる。

 この兵器工場でパイプピストルと弾薬が次々と作られ、大部分はヌカワールドに送られるが一部は総支配人の指示の元で旧属領の裏社会にばら撒かれる。

 最初は高価格で取引されていたパイプピストルはたちまち値崩れを起こし裏社会に伝手のあるゴロツキでも手に入れられる程に安価になっていたのだった。

 フィルアデス大陸においての最初の銃犯罪は酒場での殺人という形で幕を上げた。




ヒャッハー!
銃が出回ったぜ!
ラッドローチも増えたぜ!
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