日本国某所。
騒々しい都市圏とは全く真逆の静かな山林の中。
高さ三メートルはある塀に囲まれた広大な土地に洋館が建っている。
その洋館の塀と道路の間にある鬱蒼と生い茂った林の中に一台のワゴン車が止まっていた。
そのワゴン車の中には十代後半の数人の男と梯子やロープを始めとした様々な道具があった。
ワゴン車の中にいる男達には共通点があった。
全員が不良仲間であり、仲間の一人が運送業に潜り込み金目の物が運ばれた場所をターゲットにして盗みを働いていた。
彼等は歪んだ考えを持っていた。
それは〝未成年だから無罪〟と言う考え方であった。
周りが止めろと言っても「未成年だから俺たちは罪に問われない」とその行動はだんだんとエスカレートしていった。
「ひゅう、でけぇ屋敷じゃねぇか」
「なぁ、人気がねぇけど本当に金目の物があんのか?」
「ああ、まず間違いねぇ。俺のいたとこみてぇなケチな運送屋じゃねぇ、高額美術品とか絵画を専門にしてる運送屋まで搬入してたからな」
「マジかよ・・・」
「なんでもいい、早くやろうぜ」
梯子を塀に立て掛け、最初に登った男が内側を覗く。
なんの気配もない為、ロープを垂らしそれを伝い内側に降りる。
周囲を散策し、待機している仲間に入ってくる様に合図をする。
慣れた動きで内側に全員が入り込む。
「おいおい、整地してねぇのか・・・地面がデコボコで木も乱雑に生えてやがる・・・まともなのは入り口側と屋敷の周りだけか?」
「おい、無駄口をたたいてねぇで行くぞ・・・」
歩みを進めていく一行。
グォォォォォォォッ・・・!
何処からか獣の様な声が聞こえ一行は身を竦ませた。
「な、なんだ?熊か・・・?」
「や、山の方だろ。この辺りの山には熊がいるって聞いたことがある」
「熊だとしても今俺たちは頑丈な数メートルのコンクリに囲まれた所にいるんだから気にすることもねぇよ・・・」
「そ、そうかな・・・?なんか近くから聞こえた気が・・・」
「お前ビビってっんのか?」
「あっ?ビビってなんかねぇよ!見てろ!」
ビビってると馬鹿にされ頭に血が上った一人がズカズカと辺りを警戒もせず十メートル程歩く。
「おら!おめぇら遅えぞ!おめえらの方がビビっ・・・て・・・」
自分はビビってなんかいないと証明したかの様に一人先行してから振り向いた男が固まった。
「あ・・・あ・・・・」
なにかを指差すかの様に指差しながら震える声を出す。
「ぶっ!」
「ぎゃはははっ!おま、さいこー!」
「ってか古いって!くくくっ、古典すぎぷくくくくっ!!」
「はいはーい!俺、振り向きまーす!」
からかう口調で最後尾の男が振り向く。
「へ?」
直後、鋭い爪の生えた毛むくじゃらの太い腕が薙ぎ払う様に男を真横に吹き飛ばす。
グジャッ!
木に叩き付けられた肉が潰れ内臓がはみ出す嫌な音。
その音に思わず全員が音のした方を見る。
木に人の形をした肉と血とぬめぬめとてかる管の様な物が破れた腹から溢れ出している。
その肉の塊はよく知った服を着ていた。
「グオオオオオオォォォォッ!」
「う、うわああああっ!!?」
「く、熊だ!熊だああぁぁぁっ!!」
全員が一斉に逃げ出した。
しかし道が悪い上に木々が邪魔でバラバラに逃げれず纏まって逃げる。
彼等が熊だと思っている生物・・・ヤオ・グアイはペチャペチャとまだ生温かい腹に口を突っ込み肉を食い千切り咀嚼する。
「な、なんで塀の内側に熊が!?」
「し、しらねぇよ!ペットか!!?」
「なんでもいい!とにかく逃ぐがっ!?」
「お、おい!なに止ま・・・・って・・・
先頭を逃げていた男の背中に何かが生えていた。
全員が視線をゆっくりと男の背中からその向こうに向ける。
「え・・・・?わ、ワニ・・・・?蜥蜴・・・?
爬虫類っぽい肌を持ったそれがいた。
爬虫類の肌を持ち、人間を優に超える身長で二足歩行している。
その生物の名はデスクロー。
ウェイストランド人であっても出会ったら死を意識させられる生物である。
「ば、化け物・・・!!」
「お、おい!後ろからもあいつがくるぞ!!」
前門のデスクロー、後門のヤオ・グアイ・・・詰みである。
「助けて、助けて・・・・」
「お、俺達は未成年なんだ、罪には問われないんだ・・・・」
「死にたくない・・・死にたくねぇよ・・・」
「ま、ママーーー!」
口々に命乞いの言葉を発するがこの二体に意味はない。
死が逃れられないと恐怖が極限に達する寸前。
何処からともなく口笛が聞こえた。
その口笛にデスクローとヤオ・グアイは一瞬音の方向を見、再び泣きじゃくり失禁までしている目の前の集団を見る。
だがそれ以上は近付かない。
だが逃げようとするとどちらからともなくその動きを封じる様に動く。
デスクローとヤオ・グアイはこの侵入者達を逃がすつもりはなかった。
パンパンパンパン!
連続した破裂音と共に不良集団の脚に衝撃が加わった。
最初に熱を感じ、その次に激痛。
彼等は撃たれた。
再び口笛が聞こえ、デスクローとヤオ・グアイはその口笛を吹いた主・・・総支配人の元によって行く。
総支配人はデスクローとヤオ・グアイを褒める様に撫でると二匹に他に獲物がいたら狩るように合図し放つ。
二匹は別々の方向に進み他に侵入者がいないか探し始める。
不良集団は助かったと思ったがすぐに二匹の化け物を手懐けている人物の手に拳銃があるのを見て自分達を撃ったのがこの人物だと気付いた。
「も、もう悪いことはしないよ!だから助けて!」
「お、俺達は未成年なんだ!未成年だから罪に問われないんだ!」
「助けて!助けて!」
「か、金ならママに頼んで払うから助けて!」
だが総支配人は無言で指をパチンと鳴らす。
総支配人の背後から四体の人影が現れる。
しかしそれは人ではないのがすぐに分かった。
表情のない人工的な顔のパーツ、機械的な画一の動き。
不良集団は知る由もないが第二世代人造人間の集団である。
腕や足や髪等、感情を持たない機械は痛みに悲鳴をあげ、喚き散らす不良集団をズルズルと引きずって建物のガレージから内部に入って行く。
ガレージに設置されているものはお馴染みの転送装置。
不良集団を掴んだまま転送台の上に乗った人造人間達は総支配人の操作でインスティチュートへ転送される。
転送完了後、総支配人はインスティチュートに通信を行う。
今送った日本人四人で指定した人体実験を行うようにと。
通信を終え、総支配人はリビングに行きゆったりとしたソファーに腰掛け、Pip-Boyのインベントリを整理する。
一方その頃、内戦中の旧パーパルディア皇国。
属領は全て再独立を果たし旧パールネウス共和国時代にまでその領土は縮小している。
そんな中をアルーニが新生パーパルディア皇国、パールネウスが正統パーパルディア皇国と互いに自称しそれぞれが皇族の生き残りを擁立して対立をしている。
エストシラントにも細々と生き残っているパーパルディア人達がいるが嘗ての栄華は見る影もない。
デュロにはもはや元の住民は一人もおらず、総支配人によって第二世代人造人間による弾薬生産拠点に作り替えられている。
そしてパーパルディア皇国内では元々ヌカワールドにいたレイダーだけではなくフィルアデス大陸内の他国家の犯罪者が逃亡してきたりパーパルディア皇国内でも少なからず存在し属領に強制的に送られた社会不適合者、パーパルディア皇国崩壊後の荒んだ生活の中で食い詰めた者達がレイダー化したものをヌカワールドが吸収し荒らし回っている。
旧パーパルディア皇国内で比較的安定した生活を享受できているのはアルーニとパールネウスの元々の住民達であり、アルーニとパールネウスの周囲には属領内でパーパルディア人狩りが横行していると言う情報に恐怖し逃げ道を失った人々が粗末なバラックを建てスラム街が形成されていた。
スラム街の住民の主な仕事は農業と傭兵であり、男達は妻や子を食べさせて行くために傭兵となり、女や子はパーパルディアが栄華を極めていた頃には想像もできなかった農作業に必死になっていた。
それ以外にも規模の大小の違いはあれ、村や集落が形成されていた。
アルーニのスラム街はパールネウスの、パールネウスのスラム街はアルーニの傭兵達が軍事作戦の一環として行う襲撃に怯え、村や集落はレイダーの襲撃に怯えながら生活をしていた。
アルーニやパールネウスにもレイダー達は度々ちょっかいを出してくるが各政府はスラム外周部で略奪を行い去って行くレイダーは放置していた。
彼らの頭の中ではレイダーよりも内戦の相手への警戒の方が重要度が高い。
とは言えデュロを失い生産数の少なくなったマスケット銃や弾薬は互いの都心部を守る正規部隊が持てるものであり、傭兵は槍や剣、酷いものでは鍬や鎌を当てがわれていた。
そんなものではレイダーの銃に太刀打ちできるわけもなく、レイダーが略奪に現れた際にはスラムの住民はクモの子を散らす様に逃げ隠れ傭兵が遠巻きに略奪を行うレイダーを監視する状況が当たり前になっていた。
アルーニは国境線が近い事もあり、パールネウスからの侵攻やレイダーの襲撃への警戒以外にもパーパルディアに恨みを持つ周辺国家にも警戒する必要がある。
アルーニより距離にして十キロ程離れた小さな集落。
日が高くなり、昼時が近いのが感覚的にわかる。
エストシラントやデュロから逃げ出した人々が身を寄せ合い作られた集落の一つであり、住民は五十人にも満たない今ではありふれた一般的な名もなき集落である。
皇国崩壊前は若手の銀行員であったその男も今では鍬の似合う立派な農民となり集落の畑で農作業に勤しんでいた。
フッと周囲が薄暗くなる。
雨でも降りそうなのかと空を見上げた男にあの時の恐怖がフラッシュバックする。
男の視線の先に浮いているのはエストシラントを壊滅させたプリドゥエン号。
「あ、あぁ・・・!?」
声にならない声を上げる。
同じくプリドゥエン号に気付いた集落の人々が恐怖で身を竦めさせる。
子供達も遊びであげていた声を止めていた。
風の音と上空を飛ぶ飛行船の音に混じり地響きの様な微かな音が聞こえ始めていた。
音は次第に大きくなり、土煙が立っているのに気付く。
「れ、れ、レイダーだぁっ!」
誰かが叫んだ。
レイダーの大群は原子力自動車や原子力軍用輸送トラック、原子力バイク等で地上を走る。
空中のプリドゥエン号からはベルチバードが離船して行く。
レイダーの大群は目の前にあるもの全てを飲み込んでゆく勢いで進軍を続ける。
普段なら襲撃をして食料を巻き上げたり奴隷狩りをする様な集落があっても無視をする。
正確には無視どころか畑をタイヤが踏み潰し、掘立小屋を装甲の厚い原子力自動車が突き破り残骸を後続が踏み潰して行く。
人間や亜人がいても老若男女関係なく轢き殺して行く。
既に何台もの原子力自動車の車体に血や肉片がこびり付いている。
一部のレイダー達は死体を切り刻んで車体の飾り付けに使う。
レイダー達の軍勢は地形以外の障害物を踏み潰し蹂躙しながら進む。
聖都パールネウス。
パーパルディア皇国がまだパールネウス共和国時代においての首都であり、エストシラントが崩壊した事が事実と確認されたのちにパールネウス防衛隊とパールネウスに居住していた皇族達がパーパルディア皇国の正統な後継者であると主張を始めた。
同時期にアルーニにおいても防衛隊と居住していた皇族達が自分達こそが新たなパーパルディア皇国を率いる者達だと主張を始めた。
主だった皇族達はエストシラントで死亡し、残っていたのは皇位継承権においては下の下にいた皇族の中でもその都市以外では目立たない冷や飯食いの日陰者達だった。
彼らが擁立したパーパルディアの新たな皇帝とする家の格が皮肉にも同格であった事が内戦の火種の一つとなっていた。
住民を徴兵し、都市の外周部に出来たスラム街の自国の難民を使い捨ての傭兵とし二つの都市は睨み合い、小競り合いをしていた。
その二つの都市のうちの片方、アルーニに向け大量のレイダーが進軍する。
アルーニ上空を警戒していたワイバーンロードに騎乗した騎士が最初に異変に気付いた。
アルーニに向け地上を直進するレイダーの大群。
その上空を先行している飛行船とその周囲を飛び回るベルチバード。
即座に魔信で報告が飛び、アルーニは戦闘態勢へと移行し都市内部へ繋がる門を全て閉じる。
敵襲を知らせる鐘の音と次々と閉まって行く門にスラム街はパニック状態に陥る。
アルーニは旧パールネウス共和国時代の国境線に一番近い、言わば最前線時代の名残とも言える強固な壁に囲まれた都市であった。
今その壁の上には掻き集められるだけ掻き集められた魔導砲が配置され、マスケット銃を抱えた兵達が配置に着く。
魔道士はレイダーの最前列が射程距離に入るのを今か今かと待つ。
しかしアルーニの正規兵達はレイダーの力を知らなかった。
彼らはエストシラントやデュロを滅ぼした光景を直接見ておらず、逃げ出してきたスラムに住む難民達の話を人伝に聞いただけだ。
この世界の常識から見て有り得ないその内容はまさに伝言ゲームの様に尾鰭が付いたり彼等の常識によって歪曲していった。
エストシラントとデュロは地震で滅びに違いない、と。
アルーニやパールネウスは一切揺れなかったのだがいつの間にかそれが事実だと皆が思い込んでいた。
レイダー達はその混乱につけ込み皇国を荒し回るならず者集団だと。
大砲の射程距離に到達したレイダー達に向けて魔導砲が放たれる。
誘導も何もない砲弾は地面を抉り、一発もレイダー達の車両に当たる事はなかった。
しかも魔導砲の射撃に気付いたベルチバード数機が進路を変え魔導砲の設置された壁に接近し躊躇無くガンナー役のレイダーがミニガンを撃ち始める。
魔導砲に魔力を送り込む為の魔導士達とマスケット銃で応戦する兵士達はあっという間にミンチと化す。
ドォンッ!
轟音が響き渡り壁の一部が崩れた。
無数の携行ミサイルが次々と壁を崩して行く。
レイダーの軍勢はスラム街を先行する装甲を強化した大型車が掘建て小屋を逃げ遅れた住民ごと踏み潰す。
レイダー達は進行方向にいる人間は抵抗するなら殺戮欲を満たすために殺し、無抵抗ならば奴隷にするべく縛り上げトラックの荷台やバスに放り込んで行く。
逃げる者は必要以上に追わず、食料や物資のある都市内へと雪崩れ込んでゆく。
時はレイダー達の襲撃前に戻る。
他の先進国や文明国、文明圏外国からは事実上崩壊した国とされその通貨は額面の価値を失っている。
だが金貨や銀貨はそれ自体が金や銀と言う貴金属であり、商魂たくましい他国の商人達もその金や銀を目当てに商売の為に商隊を組みアルーニや パールネウスへ訪れ商売を行なっている。
この商隊だが、商人や護衛の冒険者だけではなく少数の観光客で構成されていた。
今までパーパルディアの圧政で苦しんでいた国の貴族が溜飲を下げる為に落ちぶれたパーパルディアを見る為がほとんどであった。
しかし今回アルーニに訪れていた商隊が連れて来た観光客達に商人達のリーダーは違和感を覚えながらも代金がわりに受け取ったそれを大事そうに眺めた。
それはムー国の腕時計よりも遥かに小型で洗練されたデザインの腕時計。
売ればいくらになるか分からないそれは、だが日本では一万円でお釣りが来る安物の時計だった。
商人達が宿泊する安宿ではなく、皇国時代には観光客が宿泊する中程度の宿にその腕時計を対価にアルーニに来た一行が宿泊していた。
髪の色は金髪や銀髪だが、それらは染めた物。
目の色も青や金だが、それももちろんカラーコンタクト。
ロデニウス大陸の人々やフェン王国の人々が元の姿を見れば誰もが日本人だと言うだろう。
「さて、同志達よ。いよいよパーパルディア皇国に入り込んだ。我々には政府の欺瞞を暴き日本市民達の目を覚まさせる使命がある」
恐らくはリーダーである男は静かに言う。
その部屋にいる数人の人物の中にはカメラを持った自称ジャーナリストもいる。
彼らは日本国において極左と呼ばれ、公安のマーク対象になっている団体に所属していた。
日本国がこの世界に転移した際に日本国内の反日団体は急速に力を失って行った。
地球においてこの手の組織に資金援助を行なっていた国からの資金が途絶えた事で活動資金に困窮し活動不可に陥る組織が殆どだった。
だが幾つかのフロント企業からの資金のあった極一部の集団は更に地下へ潜り先鋭化して行った。
彼らは日本政府がこの世界へ秘密裏に軍事侵攻をしている、ロウリアの後にパーパルディアへ侵略し植民地にするつもりだと決め付けていた。
観光旅行が再開されたフェン王国への観光客に協力者と共に紛れ込み、腕時計やソーラー電卓などをこっそりと大量に持ち込みそれを資金源とした。
フェンの裏社会で偽の身分を手に入れ、フェンからフィルアデス大陸への船に乗り込み一ヶ月以上をかけて遂にパーパルディアに入り込んだ。
彼等は自衛隊がこの地で略奪や虐殺を行なっているありもしない証拠をカメラに収めようとしていた。
もちろん既に彼等以外の日本人はパーパルディアには一人もいない。
せいぜいがフィルアデス大陸の他国に日本政府の派遣した外交員が幾つかの国に大使としているだけであった。
彼等はまだ、この後に訪れる悪夢を知る由もない。
テコ入れ回。
久々にDAYS GONEやったら強くてニューゲームが追加されててまたハマっていた。
そしてデスストランディングが楽しみなんじゃ~。