今回は日本のターン。
外務省にこんな仕事ねぇかもしれないけど異世界転移で増えたと思って。
グラ・バルカス帝国。
日本国から見たグラ・バルカス帝国のレベルは地球の70年前、第二次世界大戦辺りの文明・軍事レベルであった。
自衛隊の装備であればアウトレンジから一方的な攻撃が可能であると言う事。
しかし日本はこの世界に転移してもなお愚直に憲法第9条を守り、専守防衛とそれを可能な限り拡大解釈する事でロウリア、パーパルディアと戦った。
グラ・バルカス帝国の軍が日本や同盟国へ攻め込めば日本からの攻撃が可能。
だがしかし、先進11カ国会議の後の海戦こそあったものの何故かグラ・バルカス帝国はピタッと侵攻を停止してしまった。
もちろん植民地化したパガンダ、レイフォルにグラ・バルカス帝国軍は駐留しているし世界を相手にした従属要求を取り下げておらず、時折り戦闘が起こる。
だがそれは小競り合い程度でよく調べるとグラ・バルカス帝国軍にちょっかいを出した国の海軍やワイバーンの部隊が返り討ちに遭っているだけで日本が自衛隊を派遣するには根拠が弱過ぎた。
外務省のグラ・バルカス帝国担当部署でもこの不気味な静寂は嵐の前の静けさではないかと囁かれていた。
「相変わらず、ヌカワールドとかは旧パーパルディアで暴れまわっているか・・・」
グラ・バルカス帝国の調査や分析を担当している部署のとある職員はパソコンで外務省内部で情報共有する専用掲示板を眺めながら茶を啜る。
アニールが陥落し、今や旧パーパルディアはパールネウス共和国時代以下の領土しか実効支配出来ていない。
食い詰めたパーパルディア人は暴力で他者から食料や金品を奪う野盗化し、その野盗がヌカワールドのレイダーと合流して暴れまわっている。
かつて総支配人が来日した際に使われた放射能除去剤も当然ながら解析に回された。
しかしながらその成分分析で相当量のヤバイ物質が検出され、日本の医薬品安全基準を根本から変えないと製造が不可能なのではないかと言われている。
それをクリアしても未知の物質もある為、再現は難しい。
その職員、名は神田が終業時間をやや過ぎた18時半にPCでデータ処理を行なっていた時だった。
JAXSから送られてきたグラ・バルカス帝国と植民地の衛星写真のデータを神田は解析していた。
植民地の駐留軍に変化はなく、グラ・バルカス帝国本土の衛星写真も前回の写真と比較する。
「ん?」
違和感。
前回の写真と決定的に異なる部分が目に留まった。
「なんだこれは・・・?」
前回の写真の同じ場所を別ウィンドウで開き、並べる。
軍の警戒が強い場所で建設されていたとある施設。
その施設を覆っていた土台やシート等が撤去され、2つの奇妙な形状の建造物が見える。
「なんだ・・・?どこかで、見たような・・・・?・・・・!まさか!?」
一気に脂汗を流す。
間違いであって欲しいと思いながらも震える手で概要データを呼び出す。
その画像を横に並べ、見比べる。
息が止まる。
その衛星写真が写しているのは旧世界のアメリカ合衆国の東北部、ペンシルバニア州スリーマイル島・・・。
「おいおいおい!冗談だろ!?原発の冷却塔だと!?」
グラ・バルカス帝国には核がある可能性も排除しきれない。
それがついさっきまでの常識だった。
しかし今や確信する。
グラ・バルカス帝国には核がある。
「・・・でも、何故最初が原発なんだ・・・?」
地球での商用原子炉第一号は旧ソ連で第二次世界大戦後の冷戦時代初期に建造されている。
グラ・バルカス帝国が圧倒的な力の差を見せつけるのならば先進11カ国会議の後の海戦で使っていてもおかしくはない。
ますます訳が分からなくなるがすぐに己の職務を思い出す。
まずは上司への報告である。
三十分もしない内に直属の上司である課長がとんぼ返りをして戻ってくる。
「間違いはないのかね?」
「はい、何度も確認しました。課長も見たでしょう」
「確かに、そうだな。で、この事は他には?」
「いえ、まだ課長だけです」
「そうか、分かった。少し待ってくれ」
そう言い課長、名を荒尾は何処かへと電話を掛けた。
「神田くん、すまないが残業になる。私と来てくれ。その資料も全部持ってだ」
「は、はい!」
神田はすぐに資料をまとめて鞄に突っ込む。
課長に付いて移動し、用意されていた車に乗り込む。
二人が乗り込むと車はすぐに走り出し、外務省から公道へと出る。
「課長、今からどちらへ?」
「首相官邸だ。ちょうど今、運良く閣僚が揃っている」
「か、官邸ですか!?す、すみません・・・あの、私なんかが?」
「第一発見者でもあるし、事態の重要性を考えてな」
「は、はい・・・」
神田は緊張を隠し切れない。
官邸に到着し、神田は荒尾と共に総理をはじめ各閣僚にグラ・バルカス帝国が原子力発電所所を建造したと思われる衛星写真をプロジェクターに映しながら説明をする。
「ふむ、原子力発電所か・・・」
「はい、核の原理を理解しているとなれば、核兵器の製造の可能性も・・・」
「そうか・・・。ところで、この事は他には?」
総理の問いに神田は今ここにいる総理と閣僚達と荒尾にしか伝えていないと事実を言う。
「そうか、それは良かった・・・」
「よかった・・・?あの、それはどう言うことなーーーーー!?」
突然、首筋に鋭い痛みを感じ振り向く。
「ああ、神田君。突然動くから針が曲がってしまったじゃないか・・・・」
荒尾が注射器を手に持って立っていた。
だが既に用は済んでいる。
注射器の中にあった薬剤は最低限の必要量が神田の体内に注入されている。
「ら、らりを・・・!?」
呂律が回らず、身体から力が抜け倒れる。
明らかに異常な事態にもかかわらず、荒尾は倒れた神田を見下ろし続け総理も閣僚達も座ったまま倒れた神田を眺めている。
背筋が冷たくなる様な嫌な感覚が身体から力が抜けた神田を襲う。
最早声を出せず、だが意識はある。
神田からははっきりと見えないが、総理は何か少し大きな物体を腕に装着していた。
「ーーー報告ーーーいいえーーーインスティチュートーーー所長ーーー」
聞き慣れない単語の混じった断片的な総理の声が神田の耳に届く。
少しの時が経ち、部屋に閃光と奇妙な音と共にインスティチュートコーサーが姿を現した。
コーサーは無造作に神田を肩に担ぐとすぐにインスティチュートへ信号を送り、神田と共に姿を消す。
総理は何事もなかったかの様に腕から物体・・・Pip-Boyを外し鞄に仕舞う。
「では、本来の会議を始めよう。進捗は?」
総理・・・総理とすり替わった人造人間が声を発する。
この場に純粋な人間はいない。
荒尾を含め、全員が既にインスティチュートの人造人間となっていた。
「野党の排除は予定通りです。大手メディアの上層部の掌握は完了し、人造人間へのすり替えが完了。野党へのネガティブキャンペーンを展開。各野党の支持率は順調に下降中です」
「結構」
「警察上層部の人造人間化も順調に進捗。次の人事異動で全国の警察署の署長に人造人間を配置するべく国内に所長が設置した人造人間生産プラントで生産を行っています。後日、研修との名目で対象人物を集め記憶を転写、すり替えを実行する予定です」
閣僚達がその後も報告を行う。
総理はその夜にその報告をまとめ、所長・・・総支配人の計画の進捗をPip-Boyで送信する。
日本の指導者層だと思った?
残念!人造人間達でした!