MAJIKOI×DRIFTERS   作:霜焼雪

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第十七幕 いざたて戦人よ

 

 

 

「断る」

 

 

 

 静寂を切り裂いた三郎の不満げな一言。ある者は目を見開かせ、ある者は動揺し、ある者はただただそれを傍観している。傍観に関しては追及することなく捨て置き、自身の言葉に驚きに近いものを感じた二人には、苛立ちの籠った視線で彼らの心臓を射抜く。

 

 

 

「崩王の討伐? 廃棄物(エンズ)の打倒? 黒き兵隊の瓦解? 何故俺がそのようなことに協力してやらねばならん」

 

「い、石田くん……」

 

「義経、お前は黙っていろ」

 

 

 

 立ち上がろうとした義経の肩をグッと押さえ、義経を無理やり座らせた三郎。これで義経に対する処置は済ませたと言わんばかりに義経を意識から外し、ジッとキツを見据える。無言の圧力とでもいうべきか、強者の圧がキツに襲いかかる。

 

 

 

「貴様らが俺や義経を漂流物(ドリフターズ)などと呼ぶのは勝手だがな、俺がそれに答えると思っているその態度が気に入らん」

 

「そ、そんなことは……」

 

「ある。断じてやろう。貴様の文言には誠意が感じられん。かくかくしかじかと、この世界のことや俺たちが置かれた現状を説明してくれたのは感謝しているが、それだけの説明、説明だけで俺たちが「分かりましたお手伝いいたしましょう」となると考えていること自体、無礼でなく何だと言う」

 

 

 

 人差し指をキツの首に向け突き出す。鋭い()気を帯びた視線と指先、それを向けられたキツは無意識にゴクリ、と唾を飲み込んでしまう。首元に抜身の刀を宛がわれている、そんな脅しを受けているような錯覚。

 

 

 

「そこの東の大将は、それで上手くいったろうがな」

 

 

 

 対面、キツの隣に座る英雄を首で意識をやる。

 

 

 

「義経もそれでコロッと堕ちる。一週間でコイツの性格と人の好さは何となくだが分かったから言い切れる。頼られたら断れぬ優しすぎる奴だ」

 

「そ、そんなことは……。えへへ」

 

 

 

 三郎の指摘に、義経は若干頬を赤らめて首の後ろを軽く掻いた。小恥ずかしさからくるむず痒さを解消しようとしているのだろう。

 

 その行動が予想通りのことだったとはいえ、三郎は溜め息を吐いてキツに視線を戻す。

 

 

 

「……こうも皮肉が通らん阿呆だ。あっさり行くだろうが、俺はそうはいかんぞ」

 

「……西の、石田と言ったな。そこまで狭量とは、天神館の名が泣くぞ?」

 

 

 

 その非協力的な態度に、英雄が若干の笑みを浮かべながら三郎を弁難する。

 

 

 

「言っていろ。俺からすれば、困った者ならば誰でも幾らでも助けようとするその考えが虚けにしか思えん」

 

「困窮する民全てを救ってこそ頂点に立つ者。その志すら立てることができぬ臆病者に理解はできまい」

 

「ふん。こんなわけの分からん世界でもその王道のような持論を展開し貫き通すか。流石は川神学園代表、と褒めてやりたいところだが、所詮は“あの”反逆を引き起こしてしまった阿呆よ。褒められたものではない」

 

 

 

 足下がお留守とはこのことを言うのだろうよ、そう英雄を嘲笑う三郎。自身が生きてきた世界において、九鬼の管理能力の甘さを決して口には出さず、ただただ思い起こして微笑を浮かべる。

 

 その見下すような物言いに、流石の英雄も違和感と苛立ちを混じらせ、ずいっ、と身を乗り出し三郎に指を突き立てる。

 

 

 

「石田三郎、貴様は何を見てきた?」

 

「下らん反乱だ。他愛もない反逆だ。貴様は監禁され、貴様の姉は安否不明、奮起しているのは妹だけときた。呆れてものも言えんぞ? 次期財閥当主の候補様?」

 

 

 

 ダンッ! と机に手を着き三郎も身を乗り出した。

 

 喧嘩を売ったり買ったりしたわけでもない、単なる意地の張り合いとしか見えないその行動に、何故か義経は身震いする。互いの尊厳のかかった視線のぶつかり合いに、両者の誇りを垣間見たからだろう。

 

 しかし、ここで義経は違和感を覚えた。

 

 英雄の持つ尊厳から来る圧には納得がいく。九鬼に厄介になっている身としては、あの環境を作り上げた“九鬼”という人間に宿る生命力には幾度となく驚かされているからだ。ただ豪快であるわけではなく、それを助長させる自信と気迫を義経は知っている。

 

 だが、石田三郎は何かが違う。

 

 東西交流戦で一度しか出会ったことのなかった義経は断言できないが、一番の違いは目であると感じていた。以前であった際の三郎にはない、温かみや優しさ、何よりも更なる強さだ。少なくとも義経の世界で出会った三郎はない、人情溢れる炎が燃えている。

 

 義経はようやく三郎と言う人間を見る目を、一週間ほどの共存と今回の熱き瞳を確信とし、改めた。

 

 

 

「……妹は、紋はどうしていると言った」

 

 

 

 そこで、英雄が目を細め視線を鋭くし、三郎の双眸を射抜き問うた。

 

 

 

「九鬼紋白か。あやつは気張っていたぞ。敵陣に自ら乗り込み、貴様や他の人質どもを解放しようと意気揚々、目を見張ったものよ。それを何だ、助けられる側にいるのが兄とは、情けなくは思えんのか?」

 

 

 

 言葉だけでなく、目でも責め立てる三郎。皮肉でもなんでもない、本心からの一言であろう。三郎は英雄に対し、沸々と怒りを込み上げさせてしまっていた。

 

 一体どのような言い訳をするか、それとも黙り込むか、三郎は英雄の出方を窺いつつ精神を滾らせていく。

 

 その硬直した睨みあいの中、英雄は大きく息を吐き出した。

 

 

 

「――――そうか。紋は、無事か。それでいて尚、奮迅しているか……」

 

「……?」

 

「我が監禁、姉上が安否不明で反乱ときた。クラウディオかヒュームのどちらか、あるいは双方がそれに加担しているのだろうよ。その中で紋は逃げ切り、立て直し、諦めずにいる――――」

 

 

 

 英雄は三郎から視線を離し、ドカッ! と椅子に座り直し上を仰ぎ見て、高らかに笑う。

 

 

 

 

 

「フハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 

 

 

 

 その光景に、義経もキツも、三郎も目を見開き唖然とする。

 

 

 

「怯える必要なし、案ずる必要なし! 紋が無事ならばどうとでもなろう! フッハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 

 

 天上を見上げながら笑い続ける英雄に対し、三郎が怒りのボルテージを上げて立ち上がった。

 

 

 

「……おい九鬼英雄! 貴様、何を的外れな感想を述べて――――」

 

「――――(いず)れ、このようなことが起きる予感はしていた」

 

 

 

 笑いを失くし、三郎に視線を戻した英雄の視線は、酷く冷たく揺るぐ気配のないまっすぐなもの。自身の持つ記憶や感情を全て度外視し、客観的に全てを把握しようとするその冷たい視線は、まさしく社会の上に立つべきもののそれ、支配者だけが持つことを許されるものだ。

 

 三郎は思わず一歩下がり、椅子を蹴り倒してしまう。ガタンガタン、と大きな音を立てて倒された椅子の音は、この場にいる誰の耳にも届いていない。

 

 この場は既に、九鬼英雄に支配されている。

 

 

 

「膿を出す、というのは組織を運営するにあたって必ず通らなければならない道である。勿論、管理が甘いことや側近とも言える従者部隊に反乱分子がいたことは恥ずべきことだ。死かと受け止め、苦しませてもらう。向こうの世界に帰ったなら、即座に諮問会を開く。しかし、それは試練だ。我らが乗り切らねばならない壁だ」

 

「な、何を突然、自身の甘さを正当化しようとする! あれは過ちだ!」

 

「うむ、過ちだ。なればこそ、精算するのも我らが宿業よ」

 

 

 

 途端に気迫の性質を、学生から指導者に切り替えた英雄に動揺せざるを得なかった三郎。何とかして反論するも、それに対する切り返しにまたしても三郎は動揺させられる。

 

 三郎の思い描く展開に辿り着く道筋は、既に途絶えてしまった。

 

 

 

「くっ……! ならば! その宿業とやらを妹に押し付け、情けなく思わんのか!?」

 

「――――ふむ。ここが、見解の相違であろう」

 

「……何?」

 

 

 

 英雄は両手を組んで机の上に置き、グッと腰を曲げた。姿勢は低くなり、視線も自然と見上げるようになった。それでいて尚、英雄の気迫は途切れない。それどころか、より貫録のようなものを伴い膨れ上がる一方だ。

 

 

 

「我ら九鬼が三人の跡継ぎは、三つ首の犬とでも思え。最後の一人が残り後を討てば、それでいい。紋は我よりも人望がある故、任せられる」

 

「……違う! 俺が言いたいのは――――」

 

「「自身の組織すらまともに管理できぬ奴が、民をどうこうできるわけがない」、だろう? 実に耳の痛い話だ」

 

 

 

 そちらの我も悔やんでいることだろう、と英雄は達観したように呟いた。

 

 

 

「何を開き直って――――」

 

「もう一度言おう。これは試練だ。覇道の一歩だ。完璧な指導者など、この世には存在しない、しなかった、してはならないのだ。この地球――――ではないな、今は。“あの”地球がその証人であり証拠である」

 

 

 

 地面を指さした英雄だったが、数秒の間指をふらふらと宙に泳がせ考え抜いた結果、天井を指さした。天井を越え、雲を貫き、神秘な宇宙を駆け抜け、英雄の思い描く青い惑星を指さした。

 

 

 

「正しくあろうとし、民を思う指導者こそが真である。完璧な指導者はこれから必ず“外れる”。が、民を救い切ると言う志の結果の反乱かと聞かれれば、それもまた真と言えよう。この世は上手くいかないものでな」

 

 

 

 何も覇道に限ったことではないがな、と付けたして英雄は自嘲する。

 

 

 

「民を思った結果、民の反感を買う。民を蹴落とそうとしたが、何を血迷ったか民は高ぶり感涙を流す。散々なものだ。愛しき人のために行動しても、愛しき人には届かん。恋愛は覇道の縮図、と言えるのやもしれん」

 

 

 

 三郎も義経も、英雄のその世界を遮ることはできなかった。神聖な空間に土足で立ち入ることは許されないと、禁忌を犯そうとする体を本能が抑え込む様に、英雄の邪魔をすることを抑止している。

 

 

 

「だからこそ、我らは頭を悩ませ心を砕き、覇道を探求し歩んでいくのだ。一度立てた志を無様に引き下ろす方が、さらなる過ちだと考えるが、どうだ?」

 

 

 

 ふっ、と空間が弛緩してくのを英雄以外の三人は感じ取っていた。英雄の目は普段通り、少しだけふざけているようで至って真面目、自身の意志を貫き悪を許さず黄金の道を振り返らずに歩み続ける、快活な性格を宿す視線に戻っていた。

 

 キツはこの現象に、ある種の得心を得ていた。指導者が発する言葉には目には見えない魂が宿り、聞くものに洗脳に近い納得を与えると言う。奇跡の恩恵(カリスマ)的言語を扱ってみせた彼は、明らかに王の資格を持っていると、肌で感じとった。

 

 義経もまた、得心を得ていたと言うか、改めて九鬼英雄という人間を認識し感心させらていた。九鬼という人間が持つ気迫があればこそ、慕われ覇道を突き進むことができる。自身を生み出した組織に対する敬意は未だに膨れ上がるばかりである。

 

 三郎は言葉を失い、倒してしまった椅子を立て直し席に着き、大きく息を吐き出して英雄の言葉を脳内で何度も再生していた。出世街道などと自称し、自らの進路を歩む三郎にとって、覇道を突き進む姿は一種の尊敬の対象である。首元に噛みついたと思ったものは指先に過ぎず、逆に軽々と丸のみにされた気分を味わった三郎は、ようやく英雄の言葉を飲み込んだ。

 

 

 

「情けないなどと非難したことは謝ろう。見誤っていた」

 

「うむ、素直は美徳である」

 

「そ、それでは!」

 

「だが、貴様の頼みは聞けんな」

 

 

 

 ガタンッ! と音を立て、キツは椅子から転げ落ちた。キツはこの流れで何とか説得しきろうと思っていた矢先の否定に、勢い余ったキツの余力は転倒に使われてしまったようだ。

 

 

 

「な、何故ですがほぉっ!!」

 

 

 

 そして盛大に血を吐き出した。

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああ!? キツさああああああああああああああああああああん!!」

 

「げふっ、大丈夫ですよ義経さん。少々びっくりしただけです」

 

「……血を吐いて見せても俺の言葉は曲がらんぞ?」

 

 

 

 義経が椅子から飛び跳ねるように立ち上がってキツに駆け寄ったが、英雄も三郎も自身の席から動こうとしない。

 

 

 

「二人共! 何を落ち着いて――――」

 

「まだ毛玉は取れんか?」

 

「――――へ?」

 

「ゴホッ、ええ。大きなものが奥の方でまだつっかえて……。食道は傷だらけですよ。食事も一苦労ですよ……」

 

「え、え?」

 

「先程の吐血を見て奇妙だと思った。ただの吐血にしては妙に何かが混じっていたからな。なるほど、あれは貴様の毛か」

 

 

 

 その問答を聞き、義経はゆっくりとキツの腰臀部から飛び出す毛むくじゃらな尻尾に目をやった。フリフリと動く尻尾に生えているおびただしい数の黒い毛と、キツが吐き出した血の中に浮かぶ数十本の細い毛の束のようなものを見つけて見比べる。血が付着しているが、それは猫が吐き出す毛玉寸前のそれとほぼ同じ。

 

 

 

「やれやれ。そのように吐き出せないから痩せるのだぞ? しかも中途半端に吐き出して消化器官を傷つける」

 

「ご心配おかけして申し訳ありません。ごふっ、生理現象に近いものでして」

 

「何が生理現象だ。全く、下らんことに振り回されたものだ」

 

「…………えっ?」

 

 

 

 ◇ ◆ ◇

 

 

 

 三郎たちがいる家屋のある村の跡地から遥か東、大陸の最東端。既に主を失い何十年と経ち雨風に曝され半壊している城に、百以上の黒い塊が犇めいていた。

 

 その塊たちが集中している一階から吹き抜けて繋がっている三階の玉座の間。そこに置かれた蜘蛛の巣だらけの大きな赤い玉座に、世辞でも似つかわしいと決して言えないほど小さな体格の少女が脚を組んで一人の兵士を見下していた。

 

 目の前で跪く兵士に対し、少女は紅葉の葉のような羽扇子を突出し問いかける。

 

 

 

『こちらの損失は、どの程度に留まった』

 

『捜索部隊の斥候三名。他は怪我を負っただけで、命に別状はありません』

 

 

 

 決して頭は上げず、兵士は問われたことに対し淀みなく返答する。頭の中で何度も考えてきたのかと疑うほどにスラスラと、達成感すら覚える程の完璧な受け答えであっただろう。

 

 その完璧すぎる答えに、ふっとほくそ笑んだ少女。

 

 

 

『……ふむ。まあまずは無事であったことは誉れとして受け取れ』

 

『ありがとうございます』

 

『……で、だ。何故三名の死者を出しつつ、九割以上の兵は生きて帰ってきた?』

 

『……は?』

 

 

 

 二つ目の問いで兵士のシミュレーションは崩壊する。彼の考えは極めて単純、このまま次回の編成を効かれ、出動時間を聞かれ、またすぐに出撃するように心掛ける旨を伝えて即座にこの場から脱するつもりであった。

 

 しかし、予想外の追及が始まり、兵士は思わず顔を上げ間抜けな顔を晒してしまう。

 

 

 

『その三名がどれだけの命を奪い、どのように苦しませ蹂躙させたかという詳細も把握できず、何故お前たちは生きているのかと聞いているのだが?』

 

『そ、それは! 一刻も早く行燈機構(ラント)漂流物(ドリフターズ)の存在をお伝えしようと!』

 

『殺した、という報告でも問題はなかったが』

 

『独断での行動は控えて指示を仰ぐべきと判断した結果であります!』

 

 

 

 黒い兵士は必死の訴えかけを始めた。目の前にいる少女に懇願するように言い訳を積み上げていく。

 

 醜悪な容姿をしているといっても、生を受けてから何十年と経っているであろう人外の兵士が、ようやく両手の指では数えられなくなった程度の年齢にしか見えない少女に恐れ戦いている。

 

 

 

『戯言に過ぎん。貴様らの誉れは、新兵の初陣において首手柄のない生存報告、という児戯にすら及ばない。死を迎えた三人の斥候の誉れは貴様らに比べて、いや、比べるのが無礼なほどの大輪を咲かせている。貴様ら蕾にすら届かない枯れ枝のような兵士の生存報告など要らぬ。適当な飛龍の餌にでもなっているほうがお似合いだ』

 

『し、しかし!』

 

 

 

 何とか許しを請おうと、立ち上がり一歩前に踏み出し接近して深々と跪こうとした兵士。

 

 しかし、兵士の体は一寸たりとも動かなかった。

 

 動け動けと、脳が神経系を通して信号を四肢に伝え兵士を立ち上がらせようとするが、石膏で型でも取られているように全身が硬直し動けなかった。

 

 

 

『っ……!?』

 

漂流物(ドリフターズ)の存在と仲間の死に怯えおめおめと泣き叫び帰ってきた兵など、要らぬ』

 

 

 続いて兵士に襲ってきたのは、手首や足首といった間接を締め付けるような圧迫感。血管は押しつぶされ、筋繊維は悲鳴を上げ、神経系は全身に危険信号を送り悶える。

 

 

 

『貴様ら中隊は何人だったか、確か三十余名いたな。貴様ら全員、龍の餌すら勿体無い。麻袋を被せて新兵の試し切り用の木偶になると良い。捕虜とでも嘘をついて的にして、新兵どもに命を絶つ経験を味あわせるには丁度いいだろう』

 

 

 

 少女が右手で何かを握ったように拳を作り、それをグッと下に引き下ろした。

 

 

 

『あぎっ――――』

 

 

 

 すると、先ほどまで硬直して動けないままでいた兵士が意識を失ったように倒れこんだかと思うと、突然立ち上がって少女を背にその場を後にした。その眼は何の光も宿っていない虚ろなもので、死人と言われても不思議に思わない。

 

 兵士が玉座の間から出て行ったことを確認し、少女は呆れたようにため息をつく。

 

 

 

「……やれやれ。使えぬ人材ばかり、何故崩王様はこのような下等な臆病者共に兵を任せるのだ」

 

 

 

 少女は立ち上がって吹き抜けから一階にいる兵士たちに目をやった。醜い風貌、農具しか握ったことのない土臭い手、蹄交じりの獣脚、緑色やら泥色やら汚らしい色の肌。

 

 寄せ集めの兵士とは言っても、及第点にも満たない農民崩れ兵士未満の木偶の坊。それを指揮するべく派遣された少女は頭を抱えて再び玉座に座する。

 

 

 

「やはり、家畜を育てるよりも我が自ら「動かした」方が手っ取り早いか?」

 

 

 

 少女は両手の拳を開いたり閉じたりを繰り返しながら、右手に残る感触に嫌気を覚えたのか、眉間にしわを寄せて舌打ちをする。

 

 しかし、左手の感触には満足なようで、左手を燭台からくる明りに透かすように両面をじっくりと観察している。

 

 

 

「もう充分に、我の従者は揃っているのだが……。フハハハ、それにしても……額に斜め十字傷の、若い男が漂流物……!」

 

 

 

 両腕を胸で交差させ身震いし、ピントの合っていない虚ろな目を浮かべながら喘ぎのような感嘆の声を漏らし、恍惚な表情を浮かべる。

 

 

 

「……ふはははぁっ……! お待ちください、兄上。今すぐ、愛しき妹が馳せ参じましょう……!」

 

 

 





 あとがきしょーとすとーりー 猫人村就寝中

英雄「ぐっがぁああああああああああああああ……。ごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……」

三郎「…………」イライラ

英雄「ぐががががががぁっがぁああああああああああああああ……。フッハハハハハハハハハ……」

三郎「…………」イライラ

キツ「ゲホッ…………。ゴホゴホッ、ガッハァ!」ビシャッ

三郎「…………」イライラ

義経「すぅ…………」スヤスヤ

三郎「…………」←英雄の豪快ないびきとキツが咳き込み続ける煩さと汚さに苛立ちながらも、義経の静かな睡眠を邪魔しまいと怒りだせずにいる御大将。

義経「んっ…………。くぅ…………」スヤスヤ

英雄「フハハハハハハハ、フーッハハハハハハハハッ、ゲホッ!」

三郎(もうやだこの御曹司)

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