夜空で見守る
いつか 会えたら 答えて 欲しい
流れ 落ちて 消えてく
夜空で輝く
お願い 届いて この唄よ
近づきたい
心を込めた
ピアノ、ハープ、ギターの三つの旋律が織りなすその曲はマルス、アイクを眠りの世界から引き戻した。もちろん、その歌声の主は月光のスポットライトに照らされた少女、サラ。
「不思議だな……。アイツは」
「そうだね。ただ歌っているようにしか見えないのに、回復ができたり、こんなに幻想的な光景を生み出すなんて」
マルス達が現在いるこの丘は、サラが導き出したところだ。ここに来る前にとてつもなく暗い森があったのだが、その森を難なく越えてこの丘に辿り着いたのだ。
ひと目この丘を見たときには不思議な世界に迷い込んだのではないかと思った。白銀の月光は草、丘の上にある一本の木を照らし、星空と一体化していた。
そして、マルス達はその木の下で休んでいたのだ。月が空の真上に来たころ、この歌声が聞こえた。
「『ただ歌っているようにしか見えない』か。確かにそうだが、彼女には特別な力が備わっているのだぞ?」
近くから凛とした男の声が聞こえたので、二人はその人(というかまるっこ?)のほうを見た。
どうやら、メタナイトも起きて、ちょこんと座ってサラのことを見ていたようだ。
「“特別な力”? なんだ? それは」
「……そのことは、あまり話したくはないのだが……」
「メタナイト。そのことは、あたしの口から言うわ」
メタナイトが話そうとしたところでサラが来た。そして、彼女から彼女自身の事情を話し始めた。
「……というわけよ」
サラの話を聞いた二人の頭の中には、驚き、戸惑い、疑問が渦巻いた。
サラの素性はこのような内容だった。
まず、サラは人間ではなく、妖怪という生き物であること。サラ曰く、妖怪は人ではない姿を持って───例えば、猫や狛犬、物などの姿をしたもの───いる者もいるが、サラのように人間の姿をしたものもいるらしい。
次に、なぜ、メタナイトと行動を共にしているかについてだ。メタナイトが元々いた世界にどういう訳か迷い込んでしまったサラは、途方にくれているところをメタナイトに助けてもらったという。
最後に、先程の歌や、サラ自身の能力についてだ。先程の歌は月の光を自らの妖力に変換する歌【星の笛】。サラ自身は回復妖力を主流とする術を多く持っているらしく、【歌妖力】は色々と使いこなしているらしい。
「でも……サラ。君は、自分のいた世界から、メタナイトのいた世界に飛ばされて、更には
マルスは一番聞いてはいけない事を聞いた気がした。
「……こっちに飛ばされたときは流石に、絶望したわよ。兄に会えなくなるのだけは死んでもごめんだったからね」
「……!」
やはり、サラが返した答えは、哀しみに染まっていた。
「でも、いつか帰れるって思うし、過ぎた事には変わらないから」
だが、次の瞬間、サラは前向きな答えを言った。
「……ああ。会える。絶対にな」
「アイク……?」
マルスは、アイクの顔を見た。
「サラの兄貴が死んでいたら……もう会えないだろうが、生きているなら、絶対に会える。俺はそう信じる」
アイクはサラに真剣な眼差しでそう言った。その言葉はサラを励ますのと同時に、絶対にサラを元の世界に戻すという決意が見られた。
「そうだよ……会える……、絶対に! 僕が…僕達がそれを証明してみせる!」
続いてマルス。
「うむ。そうだな。私も同意見だ!」
メタナイトもそれに賛成した。
「みんな……ありがとう。でも、まずは……この世界で起きた異変を解決しなきゃね」
優しい笑顔でそう言ったサラ。この世界の異変。言わずもがなそれは亜空軍を指すだろう。
「とりあえず。今日は、もう寝ましょう。目冴えちゃったかもしれないけどね」
サラは三人を気遣ってそう促した。そして、自身も眠りについた。三人は一度顔を見合わせてから横になった。
だが、すぐに眠りにつくことはできなかった。
なぜなら、全員が同じことを考えていたからだ。それは──
サラを必ず元の世界に帰す、ということだ。