荒野。
ジリジリと照りつける日の光は、日影に入っていないと痛いほどだ。そんな中…
カキンッ! キーンッ!! 金属がぶつかり合う音が、高らかと響き渡った。
「遅いぞ、サラ! そんな程度では、私は倒せん!」
「…っ…、わかってるわよ!」
仮面の剣士───メタナイトと、月夜の妖怪歌姫───サラが剣の修行をしている。
メタナイトは黄金に輝く刀身を持つ【宝剣 ギャラクシア】で、サラは、しなやかなでレイピアに近い白銀の刀身を持つ【
「おーい、二人共ー! そろそろ交代の時間だぞー!」
「少し休みなよ!」
そこへ、二人の戦いの様子を休憩しながら、見ていたマルスとアイクが声をかけた。と、そこへ。
「すいませーん! そこの人達ー!」
元気な少年の声が飛んできた。
マルスが振り返って見ると、赤い帽子にジャケットを着た少年と、金髪にボーダーのシャツを着た少年がこちらに駆け寄ってきた。
「ん? どうしたの?」
マルスが問いかけると、赤い帽子を被った少年は「ここらへんで、こういうヤツとか見かけませんでしたか?」 とポケットに手を入れ、二枚の写真を取り出した。
「少し借してくれ」
それだけ言って少年から写真を借りた。
映っていたのは、オレンジ色のドラゴンと背に蕾がついている亀(?)だった。
「見た事ないなあ…」と唸っていると、「なんだ? 人を探してるのか?」とアイクが写真を除き込んだ。
「何なに? どういう事?」
「一体なんの騒ぎだ?」
そこへ、休憩に入ったサラとメタナイトも合流した。
「レ、レッド〜!」
と、金髪の少年が来た。どうやら、この帽子の少年はレッドというらしい。
「も、もう! お願いだから一人で突っ走るのやめてよ……すいません、みなさん」
金髪の少年はペコリと謝った。
「大げさだよ」と心の底で思ったマルスは「大丈夫。気にしないで」と言って微笑んだ。
「う〜ん…僕は知らないなあ…。アイクは?」
アイクに問いかけるマルス。
「いや。俺も知らん」
即答されたマルスであった。(ちなみに、この時、サラは「即答じゃない…」と小さく呟いたが、誰にも聞こえなかったようだ)
「俺達は各地を転々としているが、コイツらみたいなヤツは見た事無いぞ」
それでも、まともに意見を述べると、レッドは「……そう、ですか。ありがとうございます!」 とお辞儀をした。
「それにしても、人探しなんて珍しいわね」
少年達が去った後、サラは休憩しながらメタナイトに話しかけた。
「この世界にも、色々な人物がいるのだな…」
つくづく感心するメタナイト。
「そうね。この世界には……いえ、この世界達には、不思議な事がたくさんあるわね」
これまで、サラが見て来た世界は数少ない。そもそも異世界なんてものは信じていなかったのだから。初めてメタナイトに会ったときは、動揺と恐怖と怒りでメタナイトに敵意むき出しだったのだが、今となっては……どう言葉に表していいのかわからない想いを抱いていた。
それにしても、マルスとアイクがお互いを相手にして練習している姿は…なんとなく、二人の兄に似ている気がする…。
「ふう…。そろそろ、出発しようか?」
突然、マルスの声が聞こえたので、サラは「わっ!?」と驚きの声を上げた。
「どうした?サラ」
心配してるのかそうでないのかわからないポーカーフェイスでアイクがサラに尋ねる。
「あ…いえ、なんでもないわ! そ、それより、出発しましょう!」
完全に取り乱すサラ。立ち上がり、スタスタと歩くその姿に三人は苦笑してしまった。
しばらく歩き、今四人は崖のようになっている高台で止まっていた。理由としては…。
「ねえ…。あれ、何なの?」
というサラの言葉から始まった。残りの三人が止まり、サラが指差すほうを見てみると、荒野を進む“ナニカ”が見えた。
「迷っている暇は無い。俺は先に行くぞ」
その正体を見極めたり、立ち向かうか立ち向かわないかを判断することも無く、アイクは崖から飛び降りた。
「え!? ちょっと、アイク!」
「勝手に行くな!」
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
残されたサラ達。
「ど…どうするの? 二人共…」
混乱した声でメタナイト達に問いかけるマルス。
「仕方あるまい。私達も行こう」
そうなるか。と二人は心の中で思った。
マントを翼に変え、ザッと飛び降りた。
「ちょっと、メタナイトまで! ……はあ、僕達も行こうか…」
「ええ…。そうね」
飛び降りたメタナイトを呆れながら見ていたマルスだったが、サラの暗く沈んだ声を聞いてある事を思い出した。
あの日。サラ達と初めて会ったとき、エインシャントを深追いしすぎたのかどうかはわからないが、メタナイトの翼はエインシャントのレーザーで一部燃えてしまったのだ。今は、サラの回復妖力でなんとか回復しているが…。気の優しいサラのことだ。メタナイトに限らず、誰かが怪我をするのではないかと心配しているのだろう。
「………メタナイトやアイク、……それに、僕の事は心配しなくて大丈夫だよ」
「えっ?」
急にマルスがそんなことを言うので、サラはマルスに心でも読む力なんてあったのかしら…と心で思う程だ。
「僕達は負けない。君がそばにいてくれるから、強くいられる。だから…今回だって、絶対に負けないよ!」
「……!」
不思議だ。自然と、元気が湧いてくる。
これが、祖国を諦めずに守り抜いた英雄の姿なのだろう。
「そうよね……。あたし、なんか落ち込んでたみたいね。ありがとう、マルス」
そう言って、サラはマルスに微笑んだ。マルスも同様に微笑み、二人して崖から飛び降りた。
「遅かったな」
「何かあったのか?」
なんとか崖の下に着地すると、アイクとメタナイトが待っていてくれたようだ。
「なんでもないわよ」
「ああ。大丈夫だ」
二人はそう返した。
「そうか、なら良い。さあ、速くヤツを追うぞ……!」
「了解よ!」
「わかった!」
「おう!」
そして、風と一体化したように駆け出す四人。サラは走りながら地を蹴り、メタナイトは瞬時にマントを翼に変えて滑空した。なるほど、上空から攻められるかを見極めているようだ。
しかし、戦車はスピードを緩めるどころかどんどん増しているようにも見えた。
──まずいわね……これでは、体力を消費してしまう……。
「……サラ。マルス達と合流しよう」
「……?」
考えていたサラを呼んだのは、メタナイトのようだ。
「体力はできるだけ温存しておいたほうが良いだろう?」
どうやら、メタナイトも同じことを考えていたようだ。サラはすぐに「ええ。そうしましょう」と返した。二人はその場で急旋回し、地面に降り立った。
「どうだったんだ?」
「空から追って攻撃は無理そうよ。やっぱ地道に追って戦うしか他ないみたい」
尋ねるアイクにサラはそう返した。
「あのデカさだったら、もっと遅いかと思ったんだが…」
「ケタ違いだったみたいだね…」
「うむ」
「長丁場になりそうね…」
四人はある意味嫌な予感がした。
あの後、すぐに出発し、戦車を高い山がそびえ立つ崖付近にまで追い詰めた。
追いついた四人はそれぞれ鞘から剣を抜き、身構えた。すると───戦車が変形し始めたのだ。そして…変形したその姿は…先程までの戦車とは大違いだった。
「嘘……でしょ…」
そうつぶやいたサラの声は不安に押しつぶされそうだった。
なんと、戦車だった物体は───巨大なロボット型モンスター・ガレオムだ!! ガレオムは四人を見るや「グオォォ!!」と威嚇の咆哮を上げた。
「へえ……意外と歯ごたえのありそうな敵じゃない」
「ふむ……。これは修行の成果を見せることができそうだ」
「誰が相手であろうと、僕達は負けない!」
「親父に叩き込まれた剣術は……、誰にも負けん!!」
そう。四人にとって、咆哮は威嚇ではなく、自分達の闘志を高めるだけのものでしかない。四人は、それぞれ剣の切っ先をガレオムに向けた。
「覚悟ッッ!!」
叫び声が響き渡った。風の如く駆けだす。
「メタナイト、あたしは上から攻めるわ!! マルス、アイクは下から足を狙って!」
「了解!!」
「承知した!」
三人はそれぞれサラの指示に従い攻撃を開始した。
ガレオムはサラとメタナイトを虫でも振り払うように腕を振り回す。だが、音速の騎士と空を舞う歌姫には効かないようだ。二人は迫り来る腕を軽快に躱していく。その下───地上では、マルスとアイクがガレオムの足に近づき……
「はああああああ!!」
「せえああああ!!」
マルスは【シールドブレイカー】を、アイクは【天空】で巨大な足を斬りつけた。
ガレオムは地上の二人の存在に気がついたのか、二人を睨みつけ、足を思いっきり上げ踏みつけようとした。だが、二人は持ち前の反射神経で回避し、サラとアイコンタクトをとった。サラは「うん」と無言で頷き、ガレオムの目の前に回り込み、連続斬り技【スターライトラッシュ】で攻撃した。
「ナイスアシストだ! サラ!」
「ええ! 三人とも、ここから、一気に畳み掛けるわよ!!」
「了解!」
四人は、協力しながらガレオムを倒すことを決めた。
「これで終わりよッ!!」
美しく、凛とした少女の声が響き渡った。それと同時に、ガレオムにサラの剣が深くめり込んだ。
「グ……ガガガ……」
ガレオムは膝をついた。
「…ようやく倒せたな」
「うん…」
「意外に…強かったな…」
他の三人は疲れを隠せていなかったようだが…。
「三人共…。大丈夫だった…?」
気がつくと、アザレアピンクの髪を持つ少女が自分達の目の前に降り立っていた。悲しそうな目で、こちらを見ている。
「……ああ。大丈夫だ…。特に大きな怪我は無いぞ」
「……そう。…なら良かったけど…」
この少女は、どこまで自分達を想うのだろうか…? あの戦いで一番大変だったのは、彼女のはず。なのに、どうして…。
その時…!
「グ……オオオオオオオオ!!」
もう動かなくなったと思っていたガレオムが動き始めたのだ!
「なっ…! なんで!?」
ガレオムは大きく咆哮をあげ、その巨体では考えられない程の大ジャンプをした。
「こ、コイツ! 逃げる気だぞ!!」
逃走する。そう気づいたときは、もう時既に遅しで、近くにある谷に逃げた───いや、正確には、自分の重さで地面に着陸することができず、その下に落ちていった。
「くっ……逃げたのね…」
その後、四人はその場所から移動した。
「まさか…逃げられるなんてね」
サラは悔しそうな、皮肉そうな声色でそう言葉を放った。
「……サラ。気にしないほうが……」
と、マルスがそう言った時。
ゴォォォォォォ………!! 突然、轟音が響いた。
「な、何!?」
「先程私達がいた方向から聞こえたぞ…!?」
「っ…!? あの場所から何かが…!?」
マルスが指さした方を見ると、細長い線のようなものが空に向かっているようにも見えた。
「まさか…!」
「もしかしたら…あの場所は…!?」
サラとメタナイトが何か思いついたようだ。そして、何か思い当たるフシがある、とでも言うかのように、飛び立った。
「ちょ…! サラ! メタナイト!?」
「一体どうしたんだ!?」
二人には、どういう状況かわからなかった。
なにが起こっているのだろうか…?